東京弁護士会所属。新潟県出身。
破産してしまうかもしれないという不安から、心身の健康を損ねてしまう場合があります。
破産は一般的にネガティブなイメージですが、次のステップへのスタート準備とも言えます。
そのためには、法律上の知識や、過去の法人破産がどのように解決されてきたかという知識が必要です。
法人破産分野を取り扱ってきた弁護士は、こういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって納得のいく措置をとることができます。
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個人の借金問題を解決するための法的手段は、債務整理と呼ばれ、主に「自己破産」「個人再生」「任意整理」の3種類の方法があります。
また、これらのほかに、払い過ぎた利息を返してもらう「過払金返還請求」なども、債務整理として扱われることがあります。
3種類の債務整理のうち、自己破産と個人再生は裁判手続きですから、裁判所への申立てが必要です。
債務整理を申請すると、裁判所は、返済義務のある債権者との間で法律に基づく借金の整理を行ってくれます。
以下では、これらの個人の債務整理のうち、返済の義務を免れることができる「自己破産」について詳しく紹介します。
自己破産とは何かということや、メリット・デメリット、手続きの期間や費用、手続きによって期待できる借金の免責について、理解を深めることができます。
Contents
個人が経済的に困窮して、借金の返済ができなくなってしまった場合の破産手続きを、法人破産と区別して、自己破産と呼びます。
自己破産は裁判所が行う手続きですが、破産と同時に免責が認められると、借金をゼロにでき、返済の義務を免れることができます。
個人の債務整理には、主に「任意整理」「個人再生」「自己破産」の3種類の手続きがあります。
任意整理は、裁判外で弁護士が債権者と交渉する手続きで、法的な強制力はありません。
これに対し、残りの2種類は裁判手続きであり、法的な強制力があります。
個人再生は、債務の一部を免除した上で、残りを分割払いなどで支払っていく手続きです。
一方、自己破産は、財産を現金化して債権者に分配する破産手続きに加え、免責手続きをあわせて行う債務整理です。
裁判所から免責許可が与えられると、借金や債務についての返済義務がなくなることが最大の特徴です。
破産手続き開始の申立てをすると、同時に免責許可の申立てをしたことになり、許可があれば破産法253条により「破産債権について責任を免れる」のです。
ただし、自己破産が認められても、非免責債権など免除されない支払いもあることに注意が必要です。
自己破産によって債務を整理するためには、破産法に基づく裁判所への申立てが必要です。
手続きは、財産額や免責可能な状況かどうかによって、「同時廃止」と「管財事件」の2種類に分類されます。
また、判断や処理が簡易な管財事件に分類される場合は、裁判所の運用により、費用が少なくて済む「少額管財」手続きとして扱われることもあります。
手続きの開始を申立てた際に、価値のある財産を持っておらず、免責を許可できない理由がない場合は、同時廃止として処理されます。
つまり、破産手続きの開始決定と同時に終了(廃止)も決定され、手続き全てが終了します。
これに該当する場合は、財産処分の必要もなく、必要書類の確認のほか、本人との面接で「免責不許可」を疑う事情などがなければ、廃止の決定が下されます。
自己破産の申立てのうち、多くが同時廃止で、比較的短期間で手続きが終了する傾向にあります。
同時廃止に対し、価値のある財産を持っている場合や、免責を許可できるかどうか疑わしい場合は、「管財事件」として扱われます。
事件は、事案や案件といった意味で使用される専門用語で、管財事件に分類されると、破産手続きの開始が決定された後は「破産管財人」が手続きを進めることになります。
破産管財人は、裁判所が選任する弁護士などで、破産者の財産調査や管理を行い、最終的には現金化して債権者に配当する破産手続きを行います。
管財事件の扱いになると、同時廃止に比べて裁判所へ納める費用が多額になるとともに、手続き終了までの期間もおおむね3カ月から1年程度と長期におよびます。
なお、裁判所によっては、裁判所への支払額を通常の管財事件よりも大幅に減額する「少額管財」として扱うケースがあります。
少額管財は、管財事件のうちで比較的簡易な破産手続きに対し、裁判所の運用によって適用されるもので、資産額が大きい場合などは管財事件と扱われます。
ただし、全国すべての裁判所で運用されているわけではないため、注意してください。
自己破産が認められた場合には、主に4つのメリットがあります。
自己破産は、継続して借金を返済することができない支払い不能の状態に陥っている方なら、だれでも申立てができます。
裁判所が申立てを認め、破産手続きの開始と免責を決定した後は、借金がゼロになり、支払い義務を免れることができます。
自己破産の申立てを行う際に、専門家に手続きを依頼すると、専門家は受任と同時に全ての債権者に対して「受任通知」や「介入通知」などを送付します。
この通知が送付されると、貸金業法の規制が適用され、貸金業者は債務者本人への直接の取り立てができなくなるため、取り立てが止まるのです。
自己破産の手続きが開始されると、債権者からの取り立てだけではなく、債権者による強制執行も禁止されます。
つまり、給与所得者の場合なら、給料を差し押さえられる事態を避けることができます。
自己破産を申立てると、不動産や車など現金化できる財産がある場合は、すべて処分されることになるものの、ある程度の財産を手元に残すことができます。
基本的に、生活していくために最低限必要な生活必需品などの「差押禁止動産」や、99万円以下の現金を保有することができます。
また、破産手続き開始後に新たに取得した財産も、手元に残すことができます。
自己破産は、経済的に困窮して借金が返済できない場合に大きなメリットがありますが、逆にデメリットもあります。
主なものを3つ紹介します。
クレジットカードやローンを利用すると、氏名や生年月日など個人を特定する情報や、契約内容、返済状況、借入残高などの取引に関する信用情報は、信用情報機関に集積されます。
金融機関は、クレジットカードの新規作成やローンの申し込みの際に、この情報を確認して信用力を判断することになります。
自己破産をした場合、官報に住所と氏名が掲載され、信用情報機関では事故情報として登録されるため、このようなケースでは金融機関の審査で支払い能力が認められなくなります。
一般的に、10年程度は借入れが難しくなると言われています。
自己破産の手続開始が決定されると、手続きが終了するまでの間、法律上就業が制限される職業があります。
「制限職種」と呼ばれる、資格が必要な職業です。
具体的には、弁護士や司法書士、税理士などの士業、証券会社外交員、古物商、警備員、生命保険の募集人、宅地建物取引業者、建設業者、後見人などが該当します。
また、会社役員の場合、破産手続きが開始されると同時に解任されることになります。
破産手続きでは、本人の財産を処分して返済に充てることが基本で、不足する部分についての返済義務が免除される仕組みとなっています。
メリットとして紹介した、生活必需品や99万円以下の現金などを除き、現金化可能な財産は、基本的に換金処分されて借金の返済に充てられます。
したがって、自宅や自動車、生命保険などの有価証券、ゴルフ会員権などは保有することができなくなります。
自己破産をしたいけれど、どのような手続きで、手続きに必要な書類や期間、費用はどのようなものか、また、だれに依頼したらいいのか紹介します。
自己破産するには、必要書類を準備して裁判所に申立てを行います。
手続きは、破産と免責の2種類ですが、通常、一体化された書式を利用して申請し、同時に処理が進行します。
財産が少額で免責に反する事情もなく、同時廃止の扱いになれば、破産手続きの開始決定と同時に手続き廃止が決定されて、終了します。
一方、管財事件や少額管財の扱いになれば、破産管財人が選任され、財産調査や処分を進めていきます。
このため、かなりの期間が必要になり、おおむね3カ月から1年程度かかります。
申立てを受けた裁判所は、内容を確認し、補足の説明や資料が必要な場合は対応を求め、申立ての内容に不備がなくなれば、破産手続き開始を決定します。
この期間は、内容などによっても変わりますが、およそ2週間から1カ月程度です。
手続き開始が決まると、裁判所に選任された破産管財人が財産調査を開始し、開始から2~3カ月に設定される債権者集会で結果を報告します。
なお、この集会までに調査が完了していない場合などは、2回目の集会日が設定されて、調査などが続行されます。
破産管財人は、通常、債権者集会の終了時に免責についての意見を出し、裁判所は1週間程度以内に免責を許可する流れとなります。
債権者集会では、債権者への配当金がある場合は、配当手続きが始まり、配当金がない場合は、手続きが終了します。
配当手続きは、一般的に1~2カ月程度で終了します。
申立てには、「破産手続き開始および免責申立書」のほか、債権者名簿や自己破産の証拠書類を添付しなければなりません。
保有している財産や今後の収入では、借金が返済できないことを証明しなければならないため、自分の財産を示す証拠を嘘偽りなく提出する必要があります。
財産を示す書類としては、給与や賞与の明細、源泉徴収票、確定申告資料、退職金に関する資料、保有しているすべての口座の利用履歴、保険や自動車、不動産の資料などが必要です。
また、家計簿や公共料金の領収書などのほか、同居人の財産に関する資料の提出を求められることもあります。
手続きを依頼する場合は、大別して裁判所に納める予納金と、依頼した専門家に支払う報酬がかかります。
同時廃止の場合、費用は、裁判所へ支払う費用として3万円、専門家への報酬として25万円程度が目安です。
また、少額管財の場合は、裁判所費用が23万円、報酬で35万円程度が目安となります。
ただし、予納金は、裁判所ごとに定められていますが、依頼する専門家ごとに報酬額が異なるため、依頼する場合は事前の確認が必要です。
自己破産の申立てを行うことができる専門家は、弁護士か司法書士です。
ただし、弁護士の場合は代理人となることができるため、一切の手続きを依頼できますが、司法書士は手続き全てを代行することはできません。
司法書士の場合は、代理人になることができないことや、債権の総額が140万円以上の場合は対応できないなどの制限があります。
弁護士に依頼する場合は、全ての手続きを委ねることができ、裁判官との面談も本人が対応する必要がないケースもあります。
免責が許可されると、借金や債務の支払いが免除されることになりますが、借金や債務は消えてなくなるのでしょうか。
また、申立てをすれば誰でも認められ、税金などの支払いも免除されるのでしょうか。
ここからは、制度の趣旨や効果、認められる基準、免責される債務とされない債務について紹介します。
破産手続きは、財産を現金化して、債権者に返済、あるいは配当を行うことが主な目的です。
しかしながら、破産の道を選ぶような経済状況の場合、財産を処分しても借金や債務が支払い切れないことが通常です。
その場合に、債権者から見れば、残る債務の支払いがどうなるかが重要ですが、破産に至ってしまうような経済状態では、債務が残ったままで経済的な更生を図ることは困難です。
このために設けられているのが、免責制度です。
破産者には、財産を処分して支払いに充てさせるとともに、残った債務については帳消しして、債権者とのバランスを取りながら、経済的な更生を図るものとなっています。
このように、「債務者の経済的な更生を図る」ことが制度の趣旨とされています。
免責の効果は、破産債権の「責任を免れる」ことにあります。
しかしながら、「責任を免れる」の解釈については2種類あり、結論が出ているわけではありません。
一つは、債務そのものが消滅すると考える「債務消滅説」で、もう一つは、債務を支払う責任や義務が消滅すると考える「自然債務説」です。
二つの説は、免責が許可された後で、債権者に対して任意に支払いできるかどうかなどで相違があります。
債務消滅説では、免責によって債務が消滅するわけですから、許可後に支払うべき債務がありません。
一方、自然債務説では、債務は消滅していませんから、支払い可能な場合には、任意に返済することも可能と判断が分かれます。
なお、消滅説では法律の表現に適合しないことや、道義的に好ましくないとの指摘もあり、判例や裁判実務では自然債務説の立場が一般的と言われています。
免責は、申立てても全て許可されるとは限りません。
破産法では許可されない11の基準が定められていて、いずれにも該当しない場合に免責が許可されます。
破産手続きが始まれば、破産者の財産は債権者への返済に充てられることになり、それでも足りない部分が免責の対象となります。
返済に充てるべき財産の隠匿や破壊、処分など、財産の価値を不当に減少させる行為などがある場合は、許可が下りません。
クレジットカードで購入した商品を、口座からの引き落としが終わらないうちに、売却して現金化する行為を行った場合などは、許可が下りません。
クレジットカードを使えば借金が増えることになるだけでなく、破産申立ての直前に行ったような場合は財産が確定しないなど、手続きの開始を遅らせる行為と判断されます。
複数の借金があるような場合に、特定の債権者だけに返済したような場合は、ほかの債権者に不利益が生じる行為になることから、許可を受けることはできません。
破産手続きは、現金化した財産を債権者に平等に配当していくものであるため、特定の債権者を優遇すれば、債権者の平等が保たれなくなってしまいます。
ギャンブルや浪費のほか、株取引やFXなど「射幸行為」で財産を散逸させたり、そのような行為で発生した損を借金で賄ったりした場合は、許可を得ることはできません。
支払い能力がないにも関わらず、相手をだまして借金をしたような場合は、許可されません。
このような詐欺的な借金については、過去1年間の行為が対象になります。
裁判所から選任された破産管財人は、破産者の財産を管理することになりますが、財産管理に必要となる書類を隠したり、偽造したりした場合などは、許可が下りません。
自己破産を申立てる際は、債権者を一覧にした債権者名簿を提出する必要がありますが、この債権者名簿に虚偽の記載をした場合は、許可が下りません。
このほかにも、裁判所に対する説明拒否や、嘘、非協力、あるいは、破産管財人の財産調査や処分などを妨害した場合も、許可が下りません。
また、7年以内に自己破産したことがある場合なども、許可を得ることができません。
免責が許可されると、全ての支払い義務がなくなるとの誤解も少なくありません。
破産者の経済的な更生を図ることが制度の趣旨と言っても、債務の100%が対象にはなるわけではないことに注意が必要です。
一般の貸金業者からの借金については債務が帳消しになりますが、公の支払い義務など「非免責債権」については、支払い義務はなくなりません。
非免責債権としては、税金や罰金が代表的です。
これらについては、破産とは無関係に支払い義務が残ります。
故意や過失などによって他人に損害を与えた場合、不法行為に基づく損害賠償請求権が発生します。
たとえば、ケガを負わせれば治療費や休業補償など、損害賠償の支払い義務が生じます。
税金や罰金と同様、この支払い義務も、破産したからといって免れることはできません。
破産しても、親であれば未成年の子を扶養する義務に変わりはありません。
たとえば、離婚した際に取り決めた養育費などは、破産の事実とは無関係に、支払い義務が残ります。
ここからは自己破産を検討している人が、知っておくべきことを紹介します。
自己破産を検討していると「就職に影響があるのか?」と気になるかもしれません。
結論からいうと、自己破産をしても就職や仕事に影響はないです。
例えば就職時に、破産の経験があるか聞かれることはありません。
また破産の事実が会社に知られたとしても、会社側は自己破産を理由に解雇できないです。
破産するのに、仕事のことで心配をしている人は安心してくださいね。
破産をすると、信用情報機関に破産情報が登録されて、ブラックリストに載った状態になります。
ブラックリストに登録されると、ローンが組めなくなったり、クレジットカードが使えなくなったりします。
ただしブラックリストに情報が登録されるのは、5~10年が期限になります。
「ブラックリストに載ってしまうと、一生ローンが組めず、クレジットカードが作れない」と勘違いしている人もいますが、期限があります。
ブラックリストの登録期限を過ぎれば、ローンも組めてクレジットカードを使えるようになります。
「自己破産すると、年金・生活保護をもらえない」と思っている人もいるかもしれません。
自己破産をしても、年金・生活保護は問題なくもらえます。
ただし生活保護受給中の破産などは、専門家である弁護士に依頼した方がいいでしょう。
自己破産を検討しているなら、弁護士に依頼した方がいいです。
なぜなら裁判所へ支払う費用が安くなったり、債権者との交渉を任せたりできるからです。
しかし弁護士へ依頼するには、費用もかかります。
「弁護士に依頼したいけど、費用を払うだけのお金がない」という人もいるでしょう。
そこで下記では、お金がなくても弁護士依頼する方法を紹介します。
法テラスとは、無料で弁護士に相談できる窓口です。
誰でも利用でき、条件を満たせば無料で弁護士に依頼もできます。
無料で相談に乗ってくれるだけでなく、弁護士を紹介してくれます。
「弁護士に依頼したいけど、なにをすればいいかわからない」という人は法テラスの利用がおすすめです。
弁護士事務所では、初回の相談を無料で受け付けています。
無料の範囲内であれば、依頼費用もかからないので、気軽に相談してみましょう。
相談時にお金がないことを伝えれば、分割支払いに対応してくれるかもしれません。
直接出向かなくても、電話などで相談できます。
近年の地震や豪雨、また、新型コロナウイルスなど他律的な被害による影響を受け、会社の倒産や解雇など、突然、経済状況が劇的に変化してしまう現実もあります。
借金返済の目途が立たなくなって、これまで築き上げた財産を手放さなければならない状況も増加傾向にあることは否めません。
経済的に困窮して、債務の返済が滞ることが常態化したような場合は、個人再生や自己破産などの債務整理を利用して、生活をリセットする方法があります。
特に、破産者の経済的な更生を図ることを目的とする、自己破産の制度を利用すれば、財産は処分されてしまうものの、借金が帳消しになります。
専門家に相談しながら上手に活用すれば、生活再建の近道になると言えるでしょう。