

東京弁護士会所属。新潟県出身。
破産してしまうかもしれないという不安から、心身の健康を損ねてしまう場合があります。
破産は一般的にネガティブなイメージですが、次のステップへのスタート準備とも言えます。
そのためには、法律上の知識や、過去の法人破産がどのように解決されてきたかという知識が必要です。
法人破産分野を取り扱ってきた弁護士は、こういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって納得のいく措置をとることができます。
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書籍:この1冊でわかる もめない遺産分割の進め方: 相続に精通した弁護士が徹底解説!

詐欺破産罪は、自己破産を行う前後で財産隠しを行った際に成立する犯罪です。
詐欺破産罪に該当する行為を行うと、刑事責任を負う(破産法265条[注1])だけでなく自己破産の際に免責不許可となり、借金が免除されない恐れがあります。
自己破産を考えるにつれ、財産の家族名義への変更や預金の移動など、過去の行動が問題にならないか不安を抱く方は少なくありません。
自己破産前後に自分の判断で財産を処分する行為は大きなリスクとなるため、過去の行動も含めて弁護士に相談し、状況を立て直しましょう。
本記事では、詐欺破産罪に該当する行為の具体例や行為が発覚する理由、対処法などについて解説します。
Contents

詐欺破産罪(破産法265条1項柱書[注1])は、債権者を害する目的で財産を隠匿・仮装・処分する行為で、犯罪です。
申立て前の行為も対象になり得ますが、開始決定があって初めて問題となります。
単なる不注意との違いを具体的に見ていきます。
隠匿(破産法265条1項1号[注1])に該当し得る財産で、申告漏れが起こりやすい例は以下のとおりです。
言わなければわからない認識で申立て前に財産を移していても、開始決定後の調査で発覚すれば、遡って詐欺破産罪の対象となり得ます。
ただし、成立には単なる記載ミスではなく、債権者を害する目的があったかどうかが重要です。
財産目録の作成では、こうした申告漏れが生じないよう、弁護士が財産調査を徹底してサポートします。
譲渡の仮装(破産法265条1項2号[注1])とは、実質的な所有者が自分であるにもかかわらず、財産の名義だけを変更する行為を指します。
典型例は以下のとおりです。
単純に家族名義にすれば安全になるのではなく、実質的な支配関係が変わっていなければ問題視されます。
虚偽の売買契約書を作成すれば、かえって犯罪の証拠を自ら残す結果にもなるでしょう。
すでに移してしまった財産があれば、弁護士が速やかに譲渡を解消し、破産財団への組み戻しに向けて交渉します。
価値減少行為(破産法265条1項3号[注1])とは、財産そのものの価値を下げる行為です。
不利益処分(同項4号[注1])とは、時価2,000万円の不動産を身内に500万円で売却するなど、財産を不当な安値で手放す行為を指します。
土地や車を相場より大幅に安く売れば、本来は債権者への配当に回るはずの差額が失われるため、問題視されます。
正当な理由のない安価な売却は、管財人の否認権(破産法160条以下)によって取引自体が取り消される場合もあるでしょう。
弁護士は、時価査定書の取得など処分の正当性を事前に裏付けます。
債務負担の仮装(破産法265条1項2号)とは、実際には存在しない借金をあるように見せかけたり、返済済みの債務が残っているように装う行為です。
架空の借用書を作成する、実在しない債権者を用意するなどの手口があります。
破産財団から配当を受けられる債権者の数や金額を水増しすれば、その分だけ他の債権者に回るはずの配当が少なくなり、債権者平等の原則を害します。
そのため親族間の古い貸し借りなどは、不当な仮装と疑われないようにする必要があるでしょう。
弁護士がついていれば通帳履歴など客観的な資金移動の記録を整理し、正当な債務である旨を裁判所へ説明します。
債権者の不利益な処分とは、債権者へ配当されるはずの財産を減らしたり、借金を不当に増やしたりする行為です。
自己破産を見据えて高金利で借入れを行う、債権者に不利な条件で新たな債務を負うといった行為が典型例です。
破産手続開始決定または保全管理命令の後に、その事実を知りながら債権者を害する目的で債務者の財産を取得した場合は処分対象となります。
また、第三者に財産を取得させた者も処罰対象です(破産法265条2項[注1])。
上記の規定は開始決定後の行為に限られ、開始前の行為は対象外です。
管財人の承諾など正当な理由がある場合は、対象に含まれません。

詐欺破産罪が成立すると、刑事罰(破産法265条1項、法人の代表者には275条の両罰規定も適用[注1])と、免責への影響の2つの不利益が生じます。
両者は別の問題ですが、連動して生活再建を長く妨げる場合があります。
詐欺破産罪が成立すると、10年以下の拘禁刑(2025年6月1日以前は懲役)もしくは1,000万円以下の罰金、または両方が併科される重い処分となります(破産法265条1項[注1])。
法人の代表者や従業員が業務に関して行った場合は、法人にも1,000万円以下の罰金が科される場合があります(同法275条)。
処分の内容は、財産の額や行為の悪質性、計画性などによって評価が分かれ、手続き上の単純なミスとはまったく異なる重大な問題です。
故意の財産隠しがあったと判断されれば、免責不許可事由(破産法252条1項1号[注1])に該当し、免責を受けられず借金は免除されません。
また、免責許可決定の後に財産隠しが発覚し、詐欺破産罪の有罪判決が確定した場合は注意が必要です。
裁判所の職権または債権者の申立てにより、いったん確定した免責が遡って取り消される可能性もあります(同法254条1項[注1])。
免責決定までばれなければ大丈夫と考えるのは、極めて危険な判断です。
後から発覚すれば、刑事責任だけでなく免責取消しのリスクも背負うため、早い段階から正直に財産を申告する姿勢が欠かせません。
裁判所が財産を隠匿する行為(破産法265条1項1号[注1])を、具体的な態様を問わず、破産管財人による発見を困難にする行為全般と解した事例があります。
事例事件名:破産法違反被告事件
裁判所・部:東京地方裁判所刑事第11部
判決日:2018年3月16日
要旨:寄託先から届く書画関連の郵送先を自分から夫へ変更させ、管財人による発見を困難にした行為を隠匿と認定。
出典:裁判所判例検索(東京地裁2018/3/16判決)PDF
預金口座、保険、車、不動産についても、管財人に把握されにくくする操作を行えば、同様に隠匿と評価される危険性があるでしょう。
「家族だから安全」「頼まれて手伝っただけなら問題ない」と考えるのは誤解です。
事情を知りながら協力すれば、共同正犯(刑法60条[注2])や幇助犯(同法62条[注2])として処罰の対象となり得ます。
上記の行為が典型例で、破産法265条も他人に財産を取得させた者を処罰の対象としています(同条2項等[注2])。
善意のつもりで手を貸しても、結果として大切な家族を刑事責任のリスクにさらしかねません。
自己判断で頼みごとに応じず、事前に必ず弁護士へ相談しましょう。
刑事責任(破産法265条[注1])と、免責不許可事由による破産手続上の不利益(同法252条[注1])は、別の制度です。
前者は捜査を経て有罪となる重い処分、後者は借金が免除されない手続上の処分です。
財産隠しに関する一つの行為が、両方に関わる場合もあります。
詐欺破産罪は、犯罪として処罰されるかの問題です。
破産法265条[注1]では、財産隠しや仮装、不当な処分などの行為が対象です。
破産手続で何らかの問題が指摘された場合、直ちに刑事事件になるわけではなく、故意や悪質性、証拠関係が重視されます。
いったん疑いが生じれば、破産手続きを担う裁判所とは別に、検察庁や警察署が独自に捜査を始めるでしょう。
債権者からの刑事告発や、破産管財人による裁判所への報告を契機として、捜査が水面下で動き出します。
有罪が確定すれば重い前科が一生残る点にも十分な注意が必要です。
免責不許可事由は、借金を免除してよいかどうかを判断する、破産手続上の問題です。
犯罪の成否を問う詐欺破産罪とは性質が異なります。
対象となる行為も、財産隠しに限られず、特定の債権者だけへの偏頗弁済、浪費、ギャンブルなどの射幸行為も含まれます(破産法252条1項各号[注1])。
詐欺破産罪よりもはるかに対象範囲の広い概念といえるでしょう。
しかし免責不許可事由に該当しても、裁判所の裁量による裁量免責の余地が残されています(同条2項)。
申立て前に特定の債権者だけへ返済する行為も、詐欺破産罪の対象になり得るでしょう。
破産法は、すべての債権者を平等に扱う債権者平等の原則を前提としています。
親族や知人にだけ返済する、申立て前に財産を動かすなどの行為は、原則を害するため処罰対象とされています。
偏頗弁済は免責不許可事由(破産法252条1項3号[注1])の典型ですが、直ちに詐欺破産罪となるわけではありません。
詐欺破産罪として処罰されるのは、特定の債権者に担保を供与するなど悪質性の高い行為に限られます(破産法266条[注1])。
善意のつもりの行為でも、両方に関わり得る点に注意が必要です。
財産隠しは、誰かの告発よりも、破産管財人による申立書類と客観資料との照合で発覚するケースが多いです(破産法78条、40条1項[注1])。
照合される客観資料には、通帳や保険・車・不動産などの関係書類があります。
発覚の発端として挙げられるのは、書類の矛盾や不自然な資金移動です。
財産目録は、申立人による自己申告が出発点となりますが、虚偽の内容がそのまま通るわけではありません。
裁判所や管財人は、預金通帳、課税証明書、給与明細などの客観資料と照合し、入出金履歴から収入や支出、保有財産の手がかりを確認します。
過去2年分程度の通帳提出を求められるのが一般的です。
代理人弁護士も裁判所への提出前に、家族への送金や大口の現金引き出しなど不審な取引がないかを厳しく確認し、必要な説明書や領収書を準備します。
必ず発覚するとは言い切れませんが、照合により虚偽申告や申告漏れが判明する可能性は高く、正直な申告が重要です。
破産管財人による調査の対象は、預貯金、現金、不動産、自動車、保険、債権など、申立人が所有する財産全般に幅広く及びます(破産法78条1項[注1])。
原則としては申立人名義の財産が中心ですが、財産隠しが疑われる場合は、家族名義の口座なども調査の対象になるでしょう。
郵便物は管財人へ転送され開封が認められています(同法81条1項、82条1項[注1])。
金融機関への幅広い照会を通じて、申立て直前の名義変更や家族口座への不自然な送金も精査されます。
名義だけを変えても、実質的な所有関係によって厳しく判断される点に注意が必要です。
財産目録で見落とされやすい財産の例は、以下のとおりです。
退職金見込額は、現時点で退職したと仮定した支給額のうち、将来の不確定要素を考慮して8分の1程度を財産評価額とするのが、一般的な裁判所の運用です。
ただし、すでに退職が決定している場合は、差押禁止となる4分の3を除く4分の1程度が対象となります(民事執行法152条1項[注3])。
「少額だから不要」「家族名義だから対象外」との判断は誤りで、実質的な財産であれば漏れなく申告が必要です。
金額の大小より正直な開示が重要であり、迷う財産があれば自己判断で外さず、必ず弁護士に相談したうえで申告しましょう。
過去の財産処分や申告漏れがあっても、隠すよりも早く弁護士へ相談するのが重要です。
弁護士には守秘義務があり(弁護士法23条[注4])、今からでも隠さず打ち明ければ、状況に応じた方針を立てやすくなります。
弁護士への申告は、財産の有無だけでなく、名義変更や送金、売却など過去の取引全般が対象です。
「不利になるから隠す」のではなく、後から不一致が見つかる方がより不利になりやすいのが現実です。
管財人の調査段階で弁護士も知らない事実が発覚すれば、弁護のしようがなくなります。
自発的な開示は、裁量免責(破産法252条2項[注1])の獲得でも有利に働きます。
自己破産では一定の財産を適法に残せる場合もあるため、隠す前にまず弁護士へ相談する姿勢が重要です。
すでに名義変更や送金などの問題行為があっても、隠さずに早い段階での相談が重要です。
行為の時期や経緯、手元に残っている資料を丁寧に整理したうえで、最適な対応を早期に検討できるためです。
管財人の否認権(破産法160条以下[注1])が行使される前に、自発的に返還請求や登記の抹消を行えば、不誠実性の評価を下げられる可能性が高まります。
関係者との交渉を含め、当法人が財産の原状回復に向けて対応を進めます。
詐欺破産罪は、申立て前の行為や少額の申告漏れ、家族名義への変更など、「この程度でも問題になるのか」と不安を感じやすいテーマです。
特によくある疑問を整理し、どういった場合に注意が必要かをわかりやすく解説します。
申立て前の行為であっても、詐欺破産罪の対象になり得ます。
破産法265条1項[注1]は「破産手続開始の前後を問わず」と明文で定めています。
開始決定より前に行った名義変更や財産の移転であっても、詐欺破産罪成立の対象から除外されません。
もっとも、成立には破産手続開始決定の確定が客観的な前提となるため、決定が出た段階で過去の行為に遡って罪が成立するしくみです。
「まだ申し立てていないから何をしても自由だ」との認識は明確な誤りです。
将来の申立てを見越して債権者を害する行為は、時期を問わず深刻なリスクを伴う点に注意が必要です。
重要なのは、金額の大小よりも、正直に開示しているかどうかです。
「少しだけなら大丈夫」との考え方は誤りで、資料との不一致があれば、たとえ少額でも故意を疑われる場合があります。
詐欺破産罪の成立には、債権者を害する強い目的意識が求められます(破産法265条[注1])。
単なる書き忘れや休眠口座の存在だけで、直ちに犯罪となるわけではありません。
ただし、指摘された際に慌てて虚偽の説明をすれば、免責不許可事由(破産法252条1項1号[注1])に発展する恐れもあります。
迷う財産があれば、無理に隠さず正直に申告する方が安全です。
不動産や車を家族名義に変えても、直ちに詐欺破産罪になるわけではありません。
適正価格で売却し、代金を適切に管理して破産財団に組み入れれば、適法な換価処分といえます。
危険なのは、債権者の差し押さえを免れる目的で、財産の実質的価値を無償や格安で家族に移す行為です。
不動産や車の名義変更、配偶者口座への資金移動が典型例です。
これらは破産法265条1項2号[注1]の譲渡仮装、同項4号[注1]の不利益処分に該当する恐れがあります。
名義形式ではなく、実質的な対価の有無や資金使途で判断されるため、心当たりがある方は自己判断せず、早めに弁護士へご相談ください。
[注1]破産法/e-Gov
破産法
[注2]刑法/e-Gov
刑法
[注3]民事執行法 /e-Gov
民事執行法
[注4]弁護士法/e-Gov
弁護士法
詐欺破産罪は、刑事罰にとどまらず免責不許可や免責取消しにもつながる重大な問題です。
「少額だから」「家族名義なら」「申立前なら」といった考えは、いずれも誤解にすぎません。
破産法[注1]は財産の隠匿や偏頗弁済を幅広く規制しています。
弁護士法23条[注4]や民事執行法152条[注3]も、手続きの適正さを支えています。
自己判断による行為は、手続き全体を大きく揺るがしかねません。
VSG弁護士法人は、どのような事情があっても最後まで解決策を模索します。
不安がある方も、既に行為をしてしまった方も、隠さず早めにご相談ください。