東京弁護士会所属。新潟県出身。
破産してしまうかもしれないという不安から、心身の健康を損ねてしまう場合があります。
破産は一般的にネガティブなイメージですが、次のステップへのスタート準備とも言えます。
そのためには、法律上の知識や、過去の法人破産がどのように解決されてきたかという知識が必要です。
法人破産分野を取り扱ってきた弁護士は、こういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって納得のいく措置をとることができます。
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Contents
個人事業主が廃業するときは個人事業主の状況に応じて6種類の書類の提出が必要になります。
個人事業主の廃業時に提出が必要になる6種類の書類と提出期限、提出先などについて説明します。
個人事業主が廃業するときは「廃業届(個人事業の開業届出・廃業届出等手続)」の提出が必要です。
廃業届とは「事業を廃業します」という事実を税務署に知らせる書面になり、廃業届を提出していないと、税務署は個人事業主が廃業した事実を知りません。
そのため、税金の申告などをしていないと事業を継続しているのに税金の手続きをしていないとして脱税などの疑いをかけられる可能性があります。
廃業届は廃業を知らせるという点でも大切ですが、税務面で疑いの目を向けられないためにも重要な書類です。
忘れずに提出する必要があります。
廃業届は廃業から1カ月以内に納税地を管轄する税務署に提出します。
廃業届の提出期限の最終日が土日祝日にあたる場合は翌日が期限になります。
提出先の税務署は国税庁のホームページでも確認でき、窓口への提出のほかに郵送で提出することもできます。
廃業届を提出する際の添付書類は以下の通りです。
マイナンバーカードがある場合とない場合で添付書類が変わりますので注意してください。
マイナンバーカードの有無 | 必要書類 |
---|---|
マイナンバーカード有 | マイナンバーカードのみ |
マイナンバーカード無 | マイナンバーを確認するための書類、本人確認書類(運転免許証やパスパートなど) |
郵送の場合はマイナンバーカードなどをコピーして送付してください。
廃業届の控えが必要な場合は、控えも一緒に提出することで受領印を押して返却してくれますので、控えを返送する返送用の封筒(切手貼り付け住所記載済み)を同封してください。
廃業届のダウンロードや書き方については別の見出しで説明します。
青色申告とは個人事業主が使える簿記にそった申告方式です。
青色申告には65万円の特別控除があるなど、個人事業主にメリットのある申告方式でもあります。
青色申告をおこなうためには開業届と青色申告の申請書を提出しなければいけません。
青色申告をやめるときは、反対に青色申告をやめるための届出をしなければいけません。
青色申告を利用している個人事業主は、廃業にあたって「所得税の青色申告の取りやめ届出書」を提出しなければいけません。
青色申告の取りやめ届出書のダウンロードや書き方については別の見出しで説明します。
廃業届を提出している個人事業主が廃業するときは「都道府県・自治体に事業を廃止した旨の届出」が必要になります。
廃業に際して提出する書類は都道府県・自治体によって異なるため届出をする都道府県・自治体の書式をダウンロードまたは管轄の窓口から受け取ってください。
東京都の場合は東京都主税局のホームページから書式をダウンロードできます。
提出は廃業から10日以内ですが、都道府県・自治体によって提出期限が異なりますので、提出先の都道府県・自治体に確認する必要があります。
個人事業主の中でも課税業者である場合は「事業廃止届出書」を廃業の際に提出しなければいけません。
課税業者とは消費税の支払いのある個人事業主のことです。
引用:事業廃止届出書(国税庁)
記載後の提出先は管轄の税務署です。
提出期限は特に決まっていませんが、個人事業主が廃業してから速やかに提出することになっています。
個人事業主の中でも予定納税をしている人が提出を要する書類になります。
予定納税とは所得税の金額が一定額以上になる見込みの人が所得税や復興特別税をあらかじめ納める制度です。
先に税金を納める制度であることから、個人事業主が廃業するなどの事情があると納めた税金が多くなってしまうことがあります。
そのため予定納税額の減額申請書を提出して税金を減額調整してもらうのです。
提出の際は申告納税見積額の計算の基礎となる事実を記載した書類(損益計算書など)が1部必要になる点に注意してください。
予定納税額の減額申請書の提出期限は、第1期分および第2期分の減額申請については7月1日~7月15日までになります。
第2期分のみの減額申請の場合は11月1日~11月15日が提出期限になります。
提出期限が短い点にも注意してください。
提出先は納税先を管轄する税務署になります。
事業専従者や従業員への給与の支払いをおこなっている個人事業主が廃業する場合は「給与支払事務所等の廃止届出書」を管轄の税務署に提出します。
提出期限は廃業から1カ月以内になっています。
廃業届と一緒に提出しても差し支えありません。
個人事業主が廃業する際に提出する書類「廃業届」の書き方や提出期限、提出方法などを詳しく説明します。
引用:廃業届(国税庁)
まず、上段に以下の基本的な情報を記載します。
税務署長の欄は税務署長の個人名ではなく、管轄の税務署名を記載します。
たとえば管轄の税務署が横浜税務署であれば「横浜」と記載すれば問題ありません。
提出日は廃業届を提出する日付を記載します。
「廃業」に○をつけ、廃業の事由欄には「売上減少による廃業」や「法人化するため」、「高齢のため」など、廃業する具体的な内容を記載します。
現在の事業に該当する収入の種類に○をつけてください。また、すべての事業をを廃業する場合は「全部」に○をつけてください。
一部のみ廃業する場合は「一部」に○をつけ、廃業する事業を具体的に記載してください。
廃業する日を記載します。
個人事業から株式会社や合同会社などの法人を設立する、「法人成り」の場合のみ記入します。設立する法人名、代表者名、納税地(この場合、本店または事務所の所在地)、設立登記申請をした日を記入します。
「個人事業の開業・廃業等届出書」と同時に「青色申告の取りやめ届出書」、「(消費税)事業廃止届出書」を提出する場合は、提出する項目の「有」に○をつけてください。
「個人事業の開業・廃業等届出書」は、廃業した日から1か月以内に管轄の税務署に提出となっています。
廃業届の取得や提出に手数料はかかりません。
手数料は不要です。
個人事業主が廃業する際に提出する書類「青色申告の取りやめ届出書」の書き方や提出期限、提出方法などを詳しく説明します。
青色申告の取りやめ届出書の基本的な記入は「所得税の青色申告承認申請書」と似ています。
まずは以下の基本的な事項を記載します。
税務署長の欄は税務署長の個人名ではなく、管轄の税務署名を記載します。
たとえば管轄の税務署が横浜税務署であれば「横浜」と記載すれば問題ありません。
提出日は青色申告の取りやめ届出書を提出する日付を記載します。
青色申告の申請書と違う点は赤字の「青色申告書提出の承認を受けていた年分」と「青色申告を取りやめようとする理由」の部分です。
ここに何を記載すればいいか迷うのではないでしょうか。
青色申告書提出の承認を受けていた年分の欄には、青色申告の承認を受けていた期間を記載します。
たとえば承認を受けていたのが令和1年のみであれば「令和1年分から令和1年分まで」と書けば問題ありません。
青色申告を取りやめようとする理由は廃業です。
よって、「個人事業主を廃業するため」など、廃業について書くことになります。
欄のスペースは大き目ですが長文を書く必要はありませんので安心してください。
「青色申告の取りやめ届出書」は青色申告をやめる年の3月15日までに管轄の税務署に提出となっています。
ただし、個人事業主が廃業するときは廃業届と青色申告の取りやめ届出書を一緒に提出可能です。
提出方法は窓口への持参または郵送です。
青色申告の取りやめ届出書のコピーを一緒に提出(あるいは郵送)すれば、押印して控えとして返却してくれます。
郵送の際は控えを返送してもらう返信用封筒(切手貼り付け済のもの)を同封すると、控えを返送してくれます。
青色申告の取りやめ届出書の取得や提出に手数料はかかりません。
手数料は不要です。
個人事業主が廃業したからといって即座に個人事業主としての確定申告が不要になるわけではありません。
個人事業主を廃業した場合は廃業した年の確定申告が必要になるケースと不要になるケース、ふたつのパターンがあります。
廃業時は確定申告の要否を判断し、必要なら手続きをおこなわなければいけません。
個人事業主を廃業しても確定申告が必要になるケースは「納税が発生するケース」です。
個人事業主を廃業しても税金がゼロにならず納税が必要になるケースでは、個人事業主の廃業後でも確定申告が必要になるため注意してください。
税金が1円でも発生すれば確定申告が必要になります。
個人事業主を廃業した年は「廃業したから確定申告はいらない」と断定せず、必要な手続きをしっかりおこなうことが重要です。
不安なときは税理士にチェックしてもらいましょう。
個人事業主を廃業した年の確定申告が不要になるケースは「納税が0円になるケース」です。
納税額が0円、つまり1円もないときは基本的に確定申告不要になります。
ただし、控除を使って税金額が0円になる場合は注意が必要です。
確定申告をしてはじめて使える控除があるため、確定申告しない場合は使えたはずの控除が使えず税金が変わってくる可能性があります。
控除分や全体の金額をよく見て判断しましょう。
判断が難しい場合は税理士にチェックしてもらうことをおすすめします。
事業所得、山林所得、不動産所得、譲渡所得の金額の計算上生じた赤字を、他の所得から差し引くことを「損益通算」といい、純損失とは「損益通算」をしても控除しきれない赤字部分を指します。
青色申告事業者であれば、繰り越した赤字は、翌年以降3年間の黒字と相殺できます。
ただし、この繰越には「毎年連続して確定申告書を提出しなければならない」という要件があります。
純損失の繰越控除がある場合は、青色申告・白色申告を問わず「収入0円経費0円」の確定申告書を提出して純損失の繰越を継続しなければなりません。
個人事業主が廃業した後は経費が基本的に認められません。
なぜなら、廃業後は個人事業をおこなっていないわけですから、事業による経費は発生せず計上できないという理屈になるからです。
しかし「事業を廃止した場合の必要経費の特例」を使えば例外的に廃業後に個人事業主の事業にまつわる経費の計上が認められる場合があります。
事業を廃止した場合の必要経費の特例では、事業所得の他に山林所得や不動産所得などにおいて、税務署が認めた経費は廃業後でも計上できるというものです。
ただし、個人事業主の廃業後に無制限に経費計上が認められるわけではない点に注意してください。
あくまで税務署が認めた経費を計上できるに過ぎません。
廃業後の経費計上については、税務署の窓口などに相談しておくといいでしょう。
個人事業主が廃業届を提出するときは注意したいポイントが3つあります。
最後に補足として廃業届を提出する際に個人事業主が注意したいポイントを解説します。
個人事業主が事業をやめたいときは廃業以外に「休業」という方法もあります。
廃業は個人事業主の事業を完全にやめてしまうことですが、休業は個人事業主の事業を休止するという点に違いがあります。
休業の場合はあくまで休止であり個人事業主の事業そのものをやめてしまうわけではありませんから、後から事業を再開できるというメリットがあるのです。
たとえば家庭や体調の事情から個人事業主の事業を廃業しようかと検討していたとします。
しかし、体調や家庭の状況が変わったら、また個人事業主として仕事をしたいと思っていました。
このようなときは廃業ではなく休業を検討してみてはいかがでしょう。
休業を使った場合は引き続き青色申告を利用できるというメリットもあります。
ただ、休業中も青色申告を使い続けるために確定申告を要するというデメリットもあるため、個人事業主の事業状況や個人的な事情などをよく検討したうえで廃業と休業を使い分けることが重要です。
会社員が失業すると雇用保険を受給できますが、個人事業主が廃業によって失業しても雇用保険は受給できません。
廃業後の生活で雇用保険を頼ることは基本的にできませんので、個人事業主が廃業する際は先に廃業後の生活費などについてよく考えておく必要があります。
なお、個人事業主が廃業した場合でも例外的に雇用保険の受給が可能なケースがあります。
個人事業主として事業をはじめる前に雇用保険の受給資格を有し、かつ、所定給付日数が残っているケースなどです。
このようなケースでは個人事業主が廃業したときに雇用保険を受給できる可能性があります。
心当たりのある廃業予定の個人事業主はハローワークに相談してみてはいかがでしょう。
個人事業主が廃業したからといって債務の返済がなくなるわけではありません。
個人事業主の廃業時に残っていた債務については、個人事業主が廃業後の返済しなければならないのです。
個人事業主の廃業時の債務の解決法としては、ふたつの方法が考えられます。
ひとつは分割払いによる債務の返済です。
もうひとつは自己破産による免責になります。
分割払いによる返済とは、債権者に申し入れて承諾してもらうことで債務を分割して払う方法です。
分割払いのためにはまず債権者に相談しなければいけません。
債権者が誰になっているのか確認する必要があります。
金融機関からお金を借りた場合は金融機関が債権者ではないかと思うかもしれません。
しかし、代位弁済がおこなわれている場合は債務の債権者が金融機関から保証会社に移っているため、相談すべき債権者は金融機関ではなく保証会社になるのです。
分割払いの際はまず債権者を確認し、債権者へと返済の相談をすることが第一です。
自己破産とは裁判所に申し立てることにより債務を免責してもらう手続きになります。
自己破産の手続きには法的な知識が必要な他、予納金などの準備も要するのです。
自己破産をしても免責されない債務もあるため注意が必要になります。
個人事業主の場合は従業員の給料などが免責されない債務です。
自己破産を検討する場合はあらかじめ専門家に相談し、デメリットや手続きの流れなども把握しておくことをおすすめします。
青色申告をしている個人事業主が廃業するときは、廃業届の他に青色申告の取りやめ届出書などの書類を提出しなければいけません。
廃業時は青色申告の取りやめ届出書や廃業届などの提出の他に、債務への対処や今後の生活の準備などもしなければならないため、非常に慌ただしくなります。
廃業届や青色申告の取りやめ届出書などの提出をスムーズにおこなうためにも、専門家のサポートを受けてはいかがでしょうか。
専門家のサポートを受けることで提出すべき書類の提出忘れといったミスを防げる他、個人事業主の廃業や今後のことについてもアドバイスを受けられるというメリットがあります。
まずは専門家へ相談することをおすすめします。