東京弁護士会所属。新潟県出身。
破産してしまうかもしれないという不安から、心身の健康を損ねてしまう場合があります。
破産は一般的にネガティブなイメージですが、次のステップへのスタート準備とも言えます。
そのためには、法律上の知識や、過去の法人破産がどのように解決されてきたかという知識が必要です。
法人破産分野を取り扱ってきた弁護士は、こういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって納得のいく措置をとることができます。
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書籍:この1冊でわかる もめない遺産分割の進め方: 相続に精通した弁護士が徹底解説!
法人破産とは、裁判所へ申立てを行って進める法的な手続きです。
破産手続は、手続きの進め方に法的知識が必要となりますし、様々なメリットがあることから、弁護士へ代理を依頼することが一般的です。
ですから、破産手続自体は、弁護士へ任せておけば安心ではありますが、全体の流れや、期間については、ある程度の理解が必要です。
本記事では、法人破産の手続きを進めるにあたって、弁護士へ依頼するところから、破産手続の終了までの流れを説明するとともに、手続きに要する期間、法人破産を選択するタイミングについても解説していきます。
Contents
まず法人破産の手続きの流れを全体のフローで確認してください。
法人破産の手続きは、破産を申立てる側と裁判所側がそれぞれ手続きを進めることになりますので、全体のフローでは、左側に破産申立て側、右側に裁判所側でまとめています。
手続きは、基本的にこのフローの順序に合わせて進んでいきますが、一部並行して進むところもありますので、詳細は個別説明でご確認ください。
破産申立て側(経営者・弁護士) | 裁判所側(裁判官・破産管財人) |
---|---|
(1)弁護士への相談・依頼 | |
(2)債権者への受任通知発送 | |
(3)会社の従業員解雇・賃貸物件の明け渡し | |
(4)破産手続申立ての準備 | |
(5)裁判所への破産手続申立て | |
(6)破産手続開始決定と破産管財人の選任 | |
(7)破産管財人の財産調査と換価処分 | (7)破産管財人の財産調査と換価処分 |
(8)債権者集会の開催 | (8)債権者集会の開催 |
(9)債権者への配当・破産手続の終了 |
フローで両側に同じ項目が入っている箇所は、それぞれが協力して進めることになります。
では、(1)から順に、詳細を説明していきましょう。
まず弁護士へ法人破産手続の進め方や方針について相談します。
会社の経営が行き詰った経緯、債務状況、会社資産の現状、従業員の有無と雇用形態、事務所や店舗などの賃貸物件の有無、代表者の連帯保証債務の確認、法人破産後の代表者の生活などについて、必要書類などを準備しながら、弁護士と相談します。
破産手続の方針や、進め方に合意出来たら、正式に弁護士へ依頼します。
弁護士へ正式に依頼した後、弁護士から文書で債権者に受任通知を発送します。
受任通知とは、会社から弁護士が破産手続申立ての依頼を受けたことを知らせるものです。
この受任通知は、債権者からの取り立てを止める効果があり、代表者や会社へ債権者から直接連絡をこないようにすることができます。
破産手続を申立てるために、会社の従業員の解雇、賃貸物件がある場合は、立ち退きが必要になります。
特に従業員の解雇が発生する場合は、トラブルの元になりますので、弁護士のサポートを受けながら手続きする必要があります。
破産の申立書は、弁護士が作成することが一般的ですが、必要書類については弁護士の指示に従って経営者が準備します。
書類の準備は時間が必要となるものもありますので、段取りよく収集していきましょう。
申立書と必要書類が準備できたら、裁判所へ破産手続の申立てを行います。
この申立ては、基本的に弁護士が行いますので、経営者が同行する必要はありません。
裁判所が、破産法上の要件を満たしていると判断した場合、破産手続開始決定が下されます。
また、同時に裁判所は破産管財人を選任します。
以降、この破産管財人が破産手続きを進めていくことになります。
選任された破算管財人は、会社の財産や債務状況を調査し、会社の財産を換価(現金化)していきます。
財産の種類によっては、すぐに現金化することが難しいものもあるため、換価処分には時間がかかることもあります。
また経営者も、必要に応じて、この手続きに協力する義務があります。
債権者集会は、裁判所で行われるものです。
基本的に、破産管財人が調査状況や換価処分の進捗について報告します。
この債権者集会は、1回で終わることもありますが、換価処分が完了し、債権者への配当が終わるまで継続して複数回行われます。
債権者の配当が行われた後、破産手続は終了となり、会社は消滅します。
破算手続きにかかる期間:目安として6ヵ月~1年くらい
破産する会社の財産状況や、債権者の数などによって期間は大きく異なりますが、少額管財となるような事件の場合、弁護士へ破産手続きを依頼してから裁判所に申立てを行うまでに3ヵ月から6ヵ月、申立てから破産手続が終了となるまでに3ヵ月から6ヵ月の期間が必要となります。
ですから、弁護士へ依頼してから破産手続が終了するまでの期間は、合計で6ヵ月から1年くらいは必要ということになります。
法人破産は、会社の債務が免除されるという大きなメリットがありますが、会社が消滅してしまいますので、何とか法人破産以外の手段をとれないかと考える経営者も多いのではないでしょうか。
ですが、状況によっては法人破産を選択すべきこともあります。
以下では、法人破産を選択すべき場合について説明します。
一時的な赤字であれば、今後の事業計画を借入先に説明し、返済計画を相談することも可能でしょう。
ですが、赤字経営から脱却できる見込みが立たない場合は、法人破産を検討すべきです。
外部環境の一時的な悪化や、設備投資の回収が遅れているといった赤字要因が明確で、回復できる見込みがあれば問題ありませんが、資金不足の慢性化、設備の老朽化、従業員不足等で回復が困難である場合は、そのまま事業を継続しても赤字が増えていくだけです。
法人破産にも費用が必要ですから、回復見込みが立たないまま継続してしまうと、破産手続を行えない可能性があります。
中小規模の企業の場合、経営者が高齢となっても、事業を承継できる後継者がいないという問題が発生することがあります。
例え、会社が赤字経営となっても、後継者がいれば、会社を継続させるために事業の立て直しを図るという選択は間違っていません。
ですが、後継者がいない状況では、会社が抱える負債を短期で返済する必要があります。
このような場合は、深追いして借金額を増やしてしまうよりは、早期に法人破産を選択することをおすすめします。
会社の経営が苦しくなって債務額が増えると、会社名義で借金することができず、経営者個人が借金して会社運営に充当するケースがあります。
このような時点で、本当に会社の経営回復が見込めるのかを判断すべきですが、更に家族や、友人、知人から借金するようになってしまう前に、法人破産を検討し、一旦事業を整理するという選択をしましょう。
最終的に、法人破産と合わせて自己破産すれば、経営者個人の債務は免責されますが、家族や友人から借金してしまうと多大な迷惑を掛けてしまうことになります。
法人破産に関して、よくある質問2つを取り上げて説明しましょう。
法人破産を検討していますが、資金繰りが苦しいため、破産手続に必要な費用を用意できません。
破産手続は不可能でしょうか?
必ずしも不可能ではありません。
一番は、破産手続き費用を捻出することができない状態まで待たずに、少しでも余力がある時点で弁護士へ相談することです。
明らかに経営が行き詰ってしまうことがわかっていても、破産を決断することは難しいでしょう。
ですが、会社の債務を整理するために、最も有効なのは破産手続です。
事業を経営する者として、会社を法的にきちんと清算し、債権者へも最低限の責任を果たす義務があります。
ですから、破産できる程度の余力がある段階で、弁護士に相談することは重要です。
弁護士には守秘義務がありますから、法人破産を相談しても、外部に漏れる心配はありません。
また、破産手続費用がないからといって諦める必要はありません。
弁護士へ相談することで、手元に費用がなくても、一時的に借入金の返済を停止し、その間に売掛金の回収を行って、費用に充てるということができる場合があります。
他にも、費用捻出の方法についてアドバイスを受けることができますので、困った場合は弁護士に相談してみましょう。
弁護士費用を節約して、自分で法人破産手続を申立てることはできますか?
可能ですが、あまり意味がありません。
法人破産手続には、法的知識が必要ですが、弁護士資格がない経営者個人でも行うことはできます。
しかし、それが節約に繋がるかというと、そうとは限りません。
トータルの費用でもウエイトの大きい「引継予納金」は破産管財人の報酬に充当されるものですが、この予納金の金額は、最低でも70万円以上必要です。
ですが、弁護士が代理することを条件として、「少額管財」が適用されることがあります。
少額管財は、すべての裁判所で運用されているものではありませんが、東京地方裁判所では少額管財の適用があります。
そして少額管財が適用されると、予納金は20万円となります。
例えば弁護士費用が50万円だったとしましょう。
この弁護士費用を節約して自身で破産手続を申立てた場合、予納金は最低70万円かかりますから、費用は70万円です。
ですが、弁護士費用50万円支払っても、予納金が20万円になれば、費用合計は70万円で同じとなります。
しかも、弁護士へ依頼するメリットは、予納金だけではありません。
自身で申立てを行う場合は、多数の債権者からの連絡や取り立て行為に自分で対応しなければなりません。
相手は、よく知る取引先などですから、これには相当なストレスがかかります。
また、法律上行っていいこと、行ってはいけないことの区別が分からず、違法行為を犯してしまったり、破産手続を円滑に進めることができなかったりします。
以上を考えると、弁護士費用を節約するよりも、弁護士費用を払っても円滑に破産手続きを進めることの方が重要ではないでしょうか。
そして、よく考えていただきたいのが、法人破産では会社の資産が残っている場合でも、すべて換価処分され、債権者への配当に充てられるということです。
ですから、弁護士費用を節約して会社にお金を残しても意味がありません。
弁護士に依頼すると、下記のようなメリットがあります。
法人破産は法的な専門知識が必要な手続きになります。
裁判所へ破産申立を行う際にも、必要書類の準備や書類自体にミスがないかチェックしてくれます。
書類が正しく準備できてないと、裁判所が破産申立の受理をしてくれないかもしれません。
手続きをスムーズに進めるためには、弁護士への依頼が有効でしょう。
また破産では裁判所への申立の他に、従業員の解雇・債権者集会への出席など、会社の代表としてやるべきことがたくさんあります。
弁護士に破産手続きを任せておけば、自分は会社のことに専念できます。
弁護士に依頼した時点で、債権者に対しては受任通知が送れられます。
受任通知が送れると、債権者からの連絡・催促はすべて弁護士宛になります。
自分で債権者の対応をしなくてもよくなるため、精神的に楽になるでしょう。
会社・自宅宛に送られる破産関連の郵便物も、弁護士事務所宛に変更できます。
また弁護士であれば、債権者への対応・交渉なども依頼できるため、破産者にとっては心強い存在になります。
法人破産の費用で大きな割合を占めるのが、裁判所に支払う予納金です。
法人破産の場合は、予納金が一番少なくても70万円はかかります。
ただし弁護士に依頼して「少額管財」として扱われれば、予納金は20万円になります。
少額管財として扱うためには、弁護士への依頼が必須なので気をつけてください。
少額管財になるだけで、50万円も安くなるので、弁護士に依頼するメリットは大きいでしょう。
自分が経営している会社の破産手続きは、精神的なストレスも大きいと思います。
債権者・取引先に対して事情を説明したり、従業員に解雇を伝えたりと、負荷の大きい仕事があります。
弁護士に依頼すれば、それらの対応を任せられたり、アドバイスをもらったりできます。
精神的なストレスが大きい破産手続きにおいて、自分の味方がいるのは心強いでしょう。
弁護士に依頼するときに、気になるが弁護士費用だと思います。
法人破産の場合は、一般的に50~150万円程度の報酬費用がかかります。
「弁護士に依頼したいけど、そもそも費用がない」という状況もあるかもしれません。
多くの弁護士事務所では、初回の相談を無料で受け付けています。
弁護士への依頼費用がない場合でも、まずは無料の相談を利用してみましょう。
法人破産は、裁判所へ申立てを行う法的手続きです。
経営者自身でも申立てすることは可能ですが、様々なメリットがありますので、弁護士へ依頼することを強くおすすめします。
破産手続の全体の流れを理解することは重要ですが、円滑な破産手続を行えるように依頼した弁護士と打合せを行いながら、手続きを進めていきましょう。
また法人破産後の経営者個人の生活についても、合わせて弁護士に相談してください。