

第二東京弁護士会所属。
家族や従業員に相談できず、取引先への支払いが滞ってしまった場合などは、どこに相談すれば良いのでしょうか。
相談先は様々ですが、困った時はまずは法人破産に精通ている私たち弁護士にご相談いただければと思います。
これから何をすれば良いかなど、豊富な経験とノウハウに基づいて回答いたしますし、債権者との交渉や 後の手続きや処理などに迅速に対応できるサポートをしていきます。

借金の返済に悩む方にとって、「個人再生」は現実的な救済策となる一方で、弁護士費用やその他の出費が心配の種になりがちです。
とはいえ個人再生の申立てを自ら行う難易度は非常に高く、借金の減額のためには弁護士など専門家の力を借りるのが得策です。
この記事では、個人再生手続きにかかる弁護士費用の相場や内訳、裁判所へ納める費用などを分かりやすく解説します。
加えて、費用が支払えない場合の対処法や、よくある質問への回答もまとめていますので参考にしてください。
個人再生の費用には、「弁護士費用」と「裁判所費用」の2つがあります。
そこで、まずは弁護士費用について詳しく説明していきます。
個人再生を弁護士に依頼した場合、費用の相場は総額で50~60万円程度です。
この費用は相談料・着手金・報酬金の3つに分かれています。
ここからは、それぞれの内訳について詳しく見ていきましょう。
相談料とは、弁護士に法律相談をする際に発生する費用のことを指します。
一般的な相場としては、1時間あたり1万円程度の相談料が必要となる場合が多いです。
ただ、初回の法律相談を無料で提供している事務所も見られるため、事前に確認しておくとよいでしょう。
また、各地の弁護士会が主催する多重債務相談会や、市区町村が設けている無料相談窓口を活用可能な場合があります。
着手金とは、弁護士に個人再生の依頼をした段階で支払う必要がある費用です。
基本的に着手金は、手続きが成功したか否かにかかわらず、案件を受任した時点で発生します。
相場としては30万円程度が一般的ですが、事務所によって設定金額や請求方法に幅があります。
費用の設定は法律事務所ごとに異なるため、着手金だけでなく報酬金や実費も含めた総額で比較検討することが重要です。
報酬金は、裁判所から再生計画の認可決定を受けた際に支払う費用です。
住宅ローン特則を利用していない場合は、報酬金の相場は20万円前後とされています。
住宅を手放さずに済む住宅ローン特則を利用するケースでは、報酬金が30万円程度となることが一般的です。
報酬金の金額は事務所ごとに異なりますが、手続きの内容や住宅ローン特則の有無によっても差が生じます。
個人再生の手続きでは、弁護士費用とは別に裁判所費用が必要になります。
裁判所費用は地域や申立ての内容によって金額が変動するため、あらかじめ相場を確認しておきましょう。
ここでは、裁判所費用の目安について詳しく紹介していきます。
個人再生の裁判所費用は、申立手数料や官報公告費、郵便切手代などを合わせて、基本的には数万円程度となります。
裁判所によっては運用の違いがあるものの、これらの費用は個人再生手続きをする上で必ず発生します。
ここでは、それぞれの費用について概要や相場を確認していきましょう。
申立手数料は、個人再生を申し立てる際に裁判所へ納める費用です。
申立て時には、収入印紙を申立書に貼り付けて手数料を支払います。
金額はおおむね1万円程度となっており、全国どこの裁判所でも大きな差はありません。
予納郵券代は、裁判所から債権者へ手続きに関する書類を郵送するために必要となる郵便切手の費用です。
郵便切手代は債権者の人数に応じて異なり、必要な切手の総額もケースごとに変わります。
一般的な相場としては、2,000円から5,000円程度とされており、多くの裁判所でこの程度の金額がかかることが多いです。
官報公告費は、個人再生の開始決定や再生計画案の認可決定時などに、国の官報に掲載する際に必要となる費用です。
官報は国の公的な広報紙であり、掲載内容は誰でも閲覧できますが、実際に日常的に確認する人は限られています。
金額はおよそ14,000円程度で、全国一律の料金が設定されています。
なお、この費用は裁判所に申立て時に納める必要があり、物価や消費税の改定により変更されることもあります。
個人再生委員が選任された場合、15万円から25万円程度の報酬を支払う必要があります。
個人再生委員とは、申立人の財産や収支の状況を中立的な立場から確認し、再生計画案の妥当性などについて裁判所へ意見を述べる役割を持つ人です。
委員には主に弁護士が選任され、手続きが適切に進むよう調整します。
なお、個人再生委員が選任されるかは裁判所ごとに異なり、東京地方裁判所では原則としてすべての事件で委員が置かれます。
他の地域では弁護士による申立て代理がない場合や債務額が多いケースなど、一定の条件により委員が選任される運用もあります。
個人再生の手続きを検討している方にとって、数十万円の申立て費用が必要となる点は大きな悩みとなりがちです。
ここでは、費用を少しでも軽減するために活用できる2つの方法について紹介します。
これらの方法を知っておくことで、経済的な負担を抑えるための選択肢が広がるでしょう。
一定の資力基準を満たす必要がありますが、法テラスを利用することで、弁護士費用の立替を受けられる可能性があります。
この制度を利用するには、法テラスと契約している弁護士への依頼が必要です。
収入や資産の基準は家族の人数や居住地によって異なるため、利用の条件や手続きの流れについて事前に確認しておくことが大切です。
資金面で不安がある方は、法テラスの無料相談を活用し、利用条件や報酬基準について詳しく聞いてみるとよいでしょう。
法テラスを利用する場合には、収入や資産が定められた基準以下である必要があります。
基準額は家族の人数や居住地域によって異なり、東京都特別区や大阪市などでは金額がやや高く設定されています。
たとえば、3人家族で東京に住む場合、収入基準は299,200円、資産基準は270万円となります。
また、家賃や住宅ローン、医療費や教育費などを負担している場合は、一定額まで収入から控除することが認められています。
詳しい基準は、下表の通りです。
| 家族人数 | 収入基準 | 資産基準 |
|---|---|---|
| 1人 | 200,200円 | 180万円以下 |
| 2人 | 276,100円 | 250万円以下 |
| 3人 | 299,200円 | 270万円以下 |
| 4人 | 328,900円 | 300万円以下 |
| 家族人数 | 収入基準 | 資産基準 |
|---|---|---|
| 1人 | 182,000円 | 180万円以下 |
| 2人 | 251,000円 | 250万円以下 |
| 3人 | 272,000円 | 270万円以下 |
| 4人 | 299,000円 | 300万円以下 |
家族の人数が5人以上の場合については、1人増えるごとに収入基準に一定金額が加算されます。
加算される金額は東京や大阪では1人あたり33,000円、その他の地域では1人あたり30,000円です。
また、家賃や住宅ローン、医療費、教育費を支払っている場合などは、一定金額を収入から控除することができます。
控除限度額は以下の表の通りです。
| 人数 | 控除限度額 |
|---|---|
| 1人 | 410,00円(53,000円) |
| 2人 | 53,000円(68,000円) |
| 3人 | 66,000円(85,000円) |
| 4人 | 71,000円(92,000円) |
※東京都特別区は()内の数字が適用されます。
法テラスと契約している弁護士に個人再生手続きを依頼する場合には、債権者の数に応じた報酬基準が設けられています。
この制度では、経済的に厳しい方でも弁護士に依頼できるよう、費用の立替えと分割返済が可能です。債権者数による基準額は以下の通りです。
| 債権者数 | 実費等 | 着手金 |
|---|---|---|
| 1~10社 | 3万5,000円 | 16万5,000円~ |
| 11~20社 | 3万5,000円 | 18万7,000円~ |
| 21社以上 | 3万5,000円 | 22万円~ |
参考:「別表3 1.代理援助建て替え基準」(法テラス)の一部を加工して作成
なお、事件が複雑である場合や、再生委員が選任される場合には報酬額が加算される場合があります。
法テラスの基準に基づき、申込や審査の手続きも弁護士がサポートしてくれるため、初めての方でも安心して利用できます。
司法書士に個人再生手続きを依頼する場合、弁護士に比べて費用を抑えやすいという特徴があります。
概ね20万円から30万円程度が司法書士の費用相場とされており、経済的な負担を軽減したい方には選択肢の一つとなるでしょう。
ただし、司法書士に依頼できる業務範囲は限定的であり、代理人として裁判所とのやりとりは行えません。
個人再生手続きでは弁護士が全面的にサポートするのに対し、司法書士はあくまで「書類作成代行」という立場にとどまります。
加えて、司法書士の書面作成代行は、裁判所の運用によっては個人再生委員が選任される可能性も高くなります。
個人再生委員が選任される場合は、最大25万円程度の追加費用が発生するため、注意が必要です。
司法書士のサポート範囲を理解した上で、自身の状況や手続きの複雑さに応じて依頼先を検討するとよいでしょう。
個人再生の申立てにかかる弁護士費用の支払いが難しい場合は、早めに弁護士へ相談し、今後の対応について検討することが大切です。
これから依頼を検討している場合には、分割払いや後払いに柔軟に対応してくれる法律事務所を探す方法も有効です。
ここでは、個人再生の費用についての具体的な対処法について解説します。
弁護士費用の支払いが途中で困難になった場合は、早めに弁護士に相談し、支払い方法について相談することが重要です。
もし何も連絡をせずに支払いを滞納し続けると、弁護士が辞任してしまう可能性があります。
弁護士が手続き途中で辞めると、個人再生の申立てや今後の交渉を自分自身で進めなくてはなりません。
また、弁護士を通じて停止していた債権者からの督促も再開する可能性があるでしょう。
費用の支払いが難しくなった際は、できるだけ早い段階で弁護士に事情を説明し、現実的な支払いスケジュールや分割などの対応について相談しましょう。
弁護士費用の支払いが難しい場合、分割払いや後払いに対応してくれる法律事務所を選ぶことが有効です。
依頼者がすぐにまとまった費用を用意できない状況に配慮し、柔軟な支払い方法を提供している事務所も増えています。
分割払いにすることで、手元資金に余裕を持ちながら専門家のサポートを受けられます。
費用面で不安がある場合は、初回相談時に支払い方法についても具体的に尋ね、無理なく利用できる事務所を比較検討することをおすすめします。

ここからは、個人再生の手続きについて、読者から寄せられることの多い質問とその回答をまとめて紹介します。
手続きに関して不安や疑問を感じている方は、自身の状況に当てはまる内容がないか確認してみてください。
個人再生の手続きは債権者との調整や裁判所への書類提出など、法律的な専門知識が必要なため、ひとりで行うには難易度が高いとされています。
ひとりで申立てることが絶対に不可能というわけではありませんが、全体の90%以上が弁護士に依頼しているのが実状です。
司法書士への依頼も含めると98%が専門家の力を借りて手続きを進めています。
専門家に依頼することで手続き上のミスやトラブルを防ぐことができるため、無理に自分だけで行うよりも安心感が高まります。
参考:「2023年破産事件及び個人再生事件記録調査 個人再生申立事件の実態 P.11」(日本弁護士連合会)
個人再生手続きでは、すべての財産を正確に申告することが義務付けられています。
財産を隠すなど、実際よりも評価額を低く申告することは、虚偽の申告にあたり重大な問題となります。
このような事実が判明した場合、手続きが認可されないだけでなく、罰則を受ける可能性もあります。
正直にすべての財産を申告し、疑問点があれば専門家に相談しながら手続きを進めることが重要です。
再生計画案は申立て時の債務額をもとに作成されているため、個人再生の手続き中に新たな借入を行うことは慎まなくてはなりません。
もし手続き中に新たな借金をすると、返済計画との間に大きなズレが生じてしまいます。
仮に追加で借り入れをしてしまうと、計画通りの返済が困難と判断され、手続き自体が認可されなくなる可能性も否定できません。
新たな借金は手続きを複雑にし、最終的に再生計画の不認可や失敗のリスクを高める要因となるため、慎重に行動するよう心掛けましょう。
個人再生の手続き中に仕事を辞めることは、できる限り避けた方が賢明です。
収入の安定は再生計画案の策定や認可の前提条件となっており、計画通りの返済ができるか否かの重要なポイントだからです。
もし退職や転職などで収入が減少すると、返済計画の実現性が疑問視され、申立てが認可されないリスクが高まります。
やむを得ず職を離れる場合は、事前に担当の弁護士などに事情を説明し、適切な対応策を一緒に考えることが大切です。
個人再生の手続きでは「債権者平等の原則」が厳格に適用されるため、特定の債権者だけに優先して返済することはできません。
一部の債権者へ優先して支払いを行うと、「偏頗(へんぱ)弁済」として扱われ、再生計画案が認められない大きな原因となります。
特に身内や保証人付きの借入、担保権が付いたローンなどは注意が必要です。
個人再生から除外するために優先返済してしまうと、偏頗弁済とみなされ、手続き自体が失敗に終わる可能性が高くなります。
どうしても個別に対応が必要な場合は、弁護士へ相談し、適切な手順を踏むことが大切です。
認可前に再生計画案の内容を一部の債権者へ個別に伝えることは、手続きの公平性を損なう原因となるため避けなくてはなりません。
債権者ごとに異なる情報が伝わると、計画案に対する誤解などから無用なトラブルにつながるリスクがあります。
このような状況を回避するためには、計画案の内容は必ず弁護士と相談した上で慎重に取り扱うことが大切です。
認可前の段階で債権者から内容を尋ねられた場合でも、詳細については回答を控え、調整中であることのみを伝えておくのが望ましいでしょう。
個人再生は、法律に基づいた正確な手続きや綿密な準備が求められる制度です。
申立てを行う場合は、正確な情報や必要書類の整理を心がけ、手続きの流れを理解しておきましょう4。
収入や生活状況が変化した場合も、状況に応じた柔軟な対策が重要となります。
決して一人で抱え込まず弁護士などの専門家に相談してみてください。
自分に合った解決策を見極め、早期の再スタートに向けて確実な一歩踏み出しましょう。