東京弁護士会所属。
破産をお考えの方にとって、弁護士は、適切な手続きをするための強い味方になります。
特に、周りに相談できず悩まれていたり、負債がかさんでしまいそうで破産を考えていたりする方は、ぜひ検討してみてください。
小規模個人再生では、借金を帳消しにすることはできません。
債務を大幅に減額した上で、債務を完済する必要があります。
最終的に返済する必要のある金額のことを、最低弁済額と言います。
最低弁済額とはどのような基準で、どのように決まるのでしょうか。
今回は小規模個人再生における最低弁済額の計算方法や、返済方法について解説します。
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小規模個人再生手続きにおける最低弁済額とは、債務者が再生計画に基づいて返済しなければならない最低限の金額のことを言います。
弁済額は、債務者の債務総額、所有財産、収入状況などに応じて決定されます。
最低弁済額より高い金額で返済計画を立てることはできますが、下回る金額での計画は認められません。
必ず最低弁済額の基準となる金額を確認し、返済計画を立てる必要があります。
住宅ローン特則を利用する場合、住宅ローンは整理対象外となるため、それ以外の債務に対して最低弁済額が適用されることになります。
小規模個人再生の最低弁済額を決める基準には、最低弁済基準と清算価値の2種類があります。
この2つを比較し、より高いほうが最低弁済額として採用されます。
ここでは弁済額の基準や、具体的な計算方法について解説します。
最低弁済基準とは、債務総額に応じて支払わなければいけない最低限の金額のことです。
最低弁済基準は、以下のように定められています。
債務総額 | 最低弁済額 |
---|---|
100万円未満 | 債務全額 |
100万円~500万円 | 100万円 |
500万円~1500万円 | 債務総額の5分の1 |
1500万円~3000万円 | 300万円 |
3000万円~5000万円 | 債務総額の10分の1 |
個人再生で債務を5分の1~最大で10分の1にまで削減できる理由は、最低弁済基準が定められているためです。
どのような場合でも、最低弁済基準は債務総額を基準に一律に定められています。
個人再生では最低弁済額について、自己破産を行った場合に債権者に配当される金額を下回ってはいけない、という決まりがあります。
これを清算価値保障原則と言います。
清算価値とは、債務者が所有するほぼすべての財産を処分した場合に得られる金額のことです。
自己破産をした場合、所有する財産は換価され、債権者へ分配されます。
つまり清算価値=自己破産において債権者へ配当される金額となります。
そのため、最低弁済額が清算価値を下回ることはできません。
清算価値の対象となる財産とは、以下のようなものです。
解約返戻金や車など、20万円以上の価値があるものは、原則として清算価値の対象になります。
一方で、すべての財産が対象になるわけではなく、以下のものは対象外とされます。
自己破産でもすべての財産が換価対象にはならず、最低限の生活が営めるように、処分対象外の財産が定められています。
清算価値も同じように対象が決められています。
不動産については、評価額から残債務を引いた金額が清算価値です。
評価額が残債務を上回っていることをアンダーローンといい、売却益が清算価値とされます。
反対に評価額が残債務を下回っていれば、売却したときに債務が残るため、清算価値はないと判断されます。
最低弁済額の具体的な計算例は以下の通りです。
事例【ケース1】
この場合、最低弁済基準は100万円、清算価値基準は0円です。
より高いほうを採用し、最低弁済額は100万円となります。
事例【ケース2】
最低弁済基準は600万円×5分の1=120万円です。
清算価値は250万円であるため、最低弁済額は清算価値の250万円となります。
小規模個人再生を利用した場合の返済期間や返済方法について解説します。
小規模個人再生では、再生計画に基づき、原則3年間で返済をしていきます。
ただし、特別な事情がある場合には、裁判所の許可を得て最長5年まで延長した計画にすることも可能です。
延長が認められる主なケースは以下の通りです。
もし返済途中で何らかの事情が発生した場合は、裁判所に再生計画変更申立書を提出し、返済期間の延長を申請することができます。
返済方法については、1~3カ月ごとの分割払いが認められます。
多くの場合、毎月一定額を返済する方法が採用されますが、裁判所によっては、3カ月に1回の返済を認めている場合もあります。
この場合は、3カ月分の返済額をまとめて支払うことになります。
たとえば最低弁済額が120万円、3年間(36カ月)で返済する場合は以下のようになります。
返済方法については、申請する裁判所や再生計画の内容によっても異なるため、事前に確認が必要です。
支払方法は原則、銀行振り込みで行います。
振込予約や自動送金などを利用し、振り込み忘れがないように気を付けましょう。
弁護士など専門家に依頼すると、確実に返済計画を履行するために、債務者に代わって毎月振込みを代行してくれることもあります。
依頼先によく確認しましょう。
小規模個人再生の返済が難しくなった時は、主に3つの対処法があります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
小規模個人再生の返済期間は、特別な事情がある場合には、最大2年の延長が認められることがあります。
延長が認められるのは、病気、失業、家族の介護などやむを得ない事情が生じた場合で、債権者の利益を不当に害しないと判断される場合に限ります。
返済期間を延長したいときは、裁判所に履行期間延長の申立てを行います。
申立書に延長理由を記載し、診断書や離職票、家計資料などの証拠とともに提出し、最終的に債権者へ意見聴取が行われ、裁判所が判断します。
延長が認められるのは原則、一回限りです。
あくまで一時的な救済策であり、収入回復の見通しがない場合は延長が認められないこともあるでしょう。
ハードシップ免責とは、返済途中に特別な事情で返済が著しく困難になった場合、残りの借金を免除してもらえる制度です。
再生法第229条に定められる、法的に有効な方法です。
ハードシップ免責を申請するための要件は、以下の通りです。
申請をする場合、裁判所にハードシップ免責申立てを行います。
必要書類を提出し、裁判所の判断で免責許可が下ります。
全額免責ではなく、残額のみが免除されるものです。
返済済みの債務が戻ってくるものではありません。
また、ハードシップ免責を利用すると、住宅も手放すことになるため、よく検討する必要があります。
返済期間の延長や、ハードシップ免責でも解決できない場合、最終手段として自己破産を申立てて、すべての借金を免除してもらうことができます。
自己破産は、地方裁判所に申し立てます。
財産調査などを経て免責許可を受けると、債務すべての返済が免除されます。
ただし自己破産は原則、家や車、預貯金などの財産すべてを処分することになります。
また、士業や保険募集人など一定の職種に対して資格制限があり、自己破産をすると一時的に職に就けなくなることがあります。
デメリットが大きいため、自己破産を選択する場合はよく検討しましょう。
小規模個人再生を利用したときの最低弁済額は、明確な基準をもとに計算します。
資産が多い場合は、期待より返済額が減らない可能性もあるため、小規模個人再生を利用する場合は、よく確認することが大事です。
もしやむを得ない事情で返済が困難になれば、救済措置も検討できます。
小規模個人再生の利用や債務問題でお困りの場合は、まず専門家へ相談することをおすすめします。