東京弁護士会所属。
破産をお考えの方にとって、弁護士は、適切な手続きをするための強い味方になります。
特に、周りに相談できず悩まれていたり、負債がかさんでしまいそうで破産を考えていたりする方は、ぜひ検討してみてください。
個人再生は、年間で1万件ほど利用されている、債務整理の方法の一つです。
1万件のうち、およそ9割が小規模個人再生の手続きとされています。
利用しやすい手続きと言えますが、誰にでも有効な手段ではありません。
今回は小規模個人再生事件の概要と、手続きができないケースや注意点などを詳しく解説します。
Contents
小規模個人再生事件とは、比較的小規模な債務整理を行う事案のことを言います。
ここでは、小規模個人再生の手続きについて詳しく解説します。
小規模個人再生は、裁判所の認可を得て借金を大幅に減額し、原則3年間で返済する再生計画を立てる手続きです。
自宅を残しながら借金問題を解決することができるという特徴があります。
小規模個人再生を利用するには、以下の要件を満たさなくてはなりません。
以上の要件を満たしていない場合は、自己破産など別の方法を選択する必要があります。
令和5年(2023年)の裁判所の統計によると、小規模個人再生で再生案が認可された割合は約93%となっています。
個人再生全体の成功率も90%を超えており、成功率が非常に高い手続きと言えます。
約7%の失敗の原因は、申立て条件を満たしていないことによる棄却や、計画が取り消されることなどがあげられます。
個人再生手続きには、小規模個人再生と給与所得者等再生の2通りの手続きがあります。
主な違いは、以下の通りです。
小規模個人再生 | 給与所得者等再生 | |
---|---|---|
対象者 | 継続的な収入がある個人 | 給与など定期的収入がある人 |
債権者の同意 | 必要(反対が過半数で否認) | 不要(裁判所の判断で決定) |
最低弁済額 | 清算価値保障原則による | 清算価値または可処分所得の2年分以上 |
給与所得者等再生は、サラリーマンなど給与所得者である場合に限られますが、小規模個人再生は個人事業主なども利用できます。
債権者の同意の有無が大きな違いですが、債権者が反対することは極めてまれです。
給与所得者等再生の最低弁済額は、可処分所得2年以上という条件があるため、高額になることがあります。
以上の観点から、小規模個人再生を選択する場合が圧倒的に多いです。
小規模個人再生は、裁判所を通じて借金の大幅な減額を目指せる手続きですが、誰にとっても万能な解決策というわけではありません。
ここでは、そのメリットとデメリットを整理し、利用時の注意点についても解説します。
小規模個人再生のメリットは以下の通りです。
小規模個人再生では、債務を5分の1程度にまで減額できることが最大のメリットです。
たとえば500万円の債務であれば、100万円にまで圧縮されるため、家計への負担は大幅に軽減されます。
住宅ローン特則を利用すれば、住宅ローンの支払いを継続することを条件に、自宅を維持したままその他の債務だけを整理することができます。
持ち家がある人にとっては大きな魅力です。
自己破産では免責が下りないこともあるギャンブルや浪費が原因の借金でも、小規模個人再生では手続きの対象にできます。
ただし、手続き中や返済中にギャンブルを続けると、返済計画を履行できなくなる可能性があることには注意しましょう。
原則として、所有している車や貯金などの財産を処分しなくて済むこともメリットの一つです。
一方で、小規模個人再生のデメリットは以下のようなものがあります。
小規模個人再生の条件に、債権者の同意が含まれます。
過半数の同意が得られなければ、そもそも手続きを行うことができません。
自己破産と異なり、借金の帳消しはできないため再生計画に沿って完済をする必要があります。
そのためには、継続的な収入があることも必須です。
途中で職を失った場合や、病気で働けなくなり返済が滞ると、計画が取り消されるリスクもあります。
また、ブラックリストに掲載されるため、ローンやクレジットカードが利用できなくなります。
前述したように、小規模個人再生はすべての人が利用できるわけではありません。
ここでは、小規模個人再生が利用できないケースについて解説します。
小規模個人再生では、減額された債務を完済することが求められます。
そのため、継続的かつ安定した収入があることが前提です。
そもそも収入がない場合や、生活費で手一杯であれば返済は難しいと判断され、小規模個人再生は利用できません。
小規模個人再生を行うには債権者の同意が必要です。
債権者数の過半数、もしくは債権額の過半数の同意が得られなければ、手続きを行うことはできません。
たとえば借入先が少数、かつ一社の占める割合が大きい場合、その一社が不同意であれば手続きが却下される可能性があります。
小規模個人再生の手続きでは、様々な書類が必要です。
書類の不備や未提出があると、手続きが却下・廃止される可能性があります。
小規模個人再生の手続きでは、一定のルールを破ると手続きが廃止されることや、不認可となるリスクがあります。
ここでは、小規模個人再生の手続きでやってはいけない行動とその影響について解説します。
裁判所へ虚偽の申告をする行為や資産を隠す行為は、手続き廃止の原因になります。
たとえば実際の収入より少なく申告をする、一時的に財産を親族名義に変更するなどの行為です。
裁判所を欺くと、誠実な手続きが行えないと判断され不利益に働きます。
特定の債権者だけ優先して返済することを、偏波(へんぱ)弁済と言います。
たとえば家族から借りていた10万円を、黙って返済した場合などです。
偏波弁済は破産法でも禁止されている裁判所の信頼を損ねる行為で、絶対にしてはいけません。
債務整理では、すべての債権者を平等に扱うことが大原則です。
小規模個人再生の手続きでは、書類提出や履行テストなど、期限が設けられているものが複数あります。
一度でも期限を過ぎると、手続き廃止となる恐れもあるため、期限までに資料の提出や回答をするようにしましょう。
手続きを専門家に依頼する場合も同様です。
専門家も期限に間に合うように資料を準備しますが、申請者本人の協力が不可欠です。
裁判所や専門家の調査には積極的に協力しましょう。
小規模個人再生の申立後や返済中に、キャッシングや消費者金融などで新たな借り入れをすることは原則禁止です。
返済計画に無理があると判断され、認可が下りなくなる場合や、取り消されることもあります。
基本的に小規模個人再生は、ギャンブルや浪費を理由に手続きを拒否されることはありません。
ただし、手続き後も浪費を続けると履行テストに失敗する可能性や、債権者の同意が得られないリスクがあるため、やめましょう。
小規模個人再生の申立後に住所変更や職場変更をした場合、裁判所や個人再生委員に速やかに届け出る必要があります。
連絡が取れなくなると、計画の不認可や手続き自体が停止される可能性があります。
もし引越しや転職をする場合は、あらかじめ裁判所や専門家に相談してからにしましょう。
小規模個人再生の手続きには、様々なステップがあります。
ここでは、手続き全体の流れをわかりやすく解説します。
まずは債務整理に詳しい専門家に相談することから始めましょう。
債務の総額や収入の状況などから、本当に小規模個人再生が適しているかも判断してもらえます。
手続きに必要な書類や費用などの説明を受け、依頼する場合は契約を結びます。
専門家と契約を結ぶと、債権者からの督促を止めることができるメリットがあります。
小規模個人再生の手続きを申請するために、すべての債務の状況を調査します。
原則、住宅ローン以外のすべての債務が整理対象になるため、債権情報などを洗い出すことが重要です。
もし過去に払いすぎていた利息があれば、同時に過払い金請求をすることも可能です。
裁判所へ提出する申立書類を準備します。
提出先は原則として、債務者の住所地を管轄する地方裁判所です。
必要書類は以下のようなものです。
東京地方裁判所では、個人再生委員の選定が必須のため、この段階で選任されます。
他の地方裁判所では運用が異なるため、必ずしも選定されるとは限りません。
小規模個人再生の申立てを行ったら、再生計画に基づく返済が可能か確認する履行テストを行う必要があります。
毎月の返済予定額を一定期間、積み立てます。
通常は3カ月ほどですが、返済に疑義が生じる場合などは6カ月程度かかることもあります。
履行テストの結果は、再生計画の可否に影響します。
債権者は自身が持つ債権について裁判所へ届出を行い、申立人が内容を確認します。
もし異議がある場合は、申立てが可能です。
調査結果と債権者届出の内容に基づき、返済計画案の内容を詰めていきます。
再生計画案を作成し、裁判所に提出します。
計画は、以下の点を中心に構成します。
小規模個人再生では、再生計画案に対して債権者の同意が必要です。
そのため裁判所は、債権者に書面で意思の確認を行います。
債権者数の過半数、もしくは債権額の過半数の同意が得られれば、裁判所が再生計画を認可します。
認可後、官報に掲載され、2週間ほどで認可確定となります。
再生計画の認可が確定すれば、計画に基づき返済がスタートします。
計画通りに完済すれば、残債務は免除されることになります。
もし途中で延滞や履行不能になると、計画が取り消されるリスクがあるため注意が必要です。
取り消されると債務の減額も無効となり、全額の返済義務が残ることになります。
小規模個人再生には、裁判所に支払う費用と専門家(弁護士や司法書士)に依頼する場合の費用の、大きく2種類の費用がかかります。
【裁判所に支払う費用(予納金・手数料)】
地方裁判所によっては個人再生委員が選任されず、報酬が不要なケースもあります。
【弁護士・司法書士に依頼する場合の報酬】
弁護士に依頼する場合の相場は、30万円~50万円程度です。
着手金と成功報酬に分けて支払うケースが多いでしょう。
司法書士の相場は20万円~40万円程度です。
司法書士は地方裁判所の代理権がないため、提出書類の作成支援が中心となり、弁護士より費用がおさえられます。
弁護士と司法書士で対応範囲や手数料に違いがあるため、どちらが適しているかは状況次第です。
【その他】
総額で40~80万円程度が必要な場合が多いでしょう。
小規模個人再生事件は、個人再生の事案のおよそ9割を占めるもので、ほとんどの場合に利用できる手続きです。
しかし中には小規模個人再生が利用できないケースもあるため、債務整理を検討している場合は、よく確認することが大切です。
自分で判断が難しい場合は、早めに専門家に相談しましょう。
難しい手続きもスムーズに行うことができます。