最終更新日:2020/9/4
これさえ見ればOK【法人成りの手続き 手順ガイド】
この記事でわかること
- 法人成りに必要な手続きの流れがわかる
- 法人成りに必要な書類がわかる
- 個人事業主の廃業方法がわかる
個人事業から法人へと変えるには、法律上の手続きが必要です。
思った通りのタイミングで法人を設立できるように、事前に手順について学びましょう。
個人事業とするにはちょっと大きくなってきたから、そろそろ法人成りをしようかと考え中の方はぜひ参考にしてください。
法人成りに必要な手続きの流れ
法人成りに必要な手続きの流れを解説します。
ざっくりといえば、まずは法人の基本的な事柄を決めた後で、設立し、登記するという流れです。
そのあと、個人事業から資産を移管し、個人事業を廃業します。
したがって、法人成りと一般的に言われていますが、個人事業がそのまま格上げされて法人になっている訳ではありません。
全く別の法人格を持った団体(多くの場合は株式会社)を作り、個人事業の方を廃業するという形になります。
基本事項決定
まずはどのような法人にしたいのか、基本事項を決定しましょう。
全ての人にとって株式会社が良いわけではなく。
事業の目的や規模によっては株式会社以外の法人が合っているケースもあります。
営利目的なら株式会社がおすすめ
一般的に、営利目的の事業を考えているのならば株式会社がおすすめです。
所有と経営が分離しているスタイルをとっているので、例えば出資者が親戚、取締役は自分ということもできます。
また、多くの人からお金を集めることを考えている場合も株式会社が良いでしょう。
お金は出すけれども、経営は他の人に任せたいという場合も株式会社の方があっていると思われます。
また、株式会社という名前自体は認知度が高いため、信用力があります。
資本金は1円以上あれば大丈夫です。
現実には、スタートアップ企業の場合、100万円程度の出資金にする人が多いです。
銀行からの融資にも関わる問題なので、今後の事業展開を考えたときに、もし融資を利用したいのであればそれなりの金額の出資金を用意しておきましょう。
株式会社は一人でも設立できます。
発起人1名、取締役が1名いれば設立可能です。
発起人と取締役は同じ人でも構いません。
設立費用を抑えたいなら合同会社という選択肢もある
合同会社は、公証人による定款の認証が不要な会社です。
親族経営などの比較的小さな組織の場合は、合同会社というスタイルもあっているかも知れません。
株式会社と似ていますが、比較的規模が小さめな会社が想定されており、所有と経営が分離していません。
つまり、オーナーが経営者となるスタイルです。
出資しなければ経営に参加できないというスタイルです。
お金は出したいが、経営までは参加できないという人がいる場合は、おすすめできません。
一人で設立する分には特に気にする必要はありませんが、会社を作った後に出資者として誰か他の人を迎え入れたいという場合には注意した方がいいでしょう。
というのも、出資しないと経営に参加できないので気軽に呼び込めません。
出資者は経営者でもあるので、経営に参加してもらわないといけなくなるためです。
合同会社の良いところは、所有と経営が分離していないからこそ、意思決定のスピードが早いことです。
次に、設立費用が安く済むことです。
定款の認証がいらないので、定款認証費用の5万円は不要です。
さらに、登録免許税も株式会社は15万円ですが、合同会社の場合は6万円です。
まずは小さく始めたい、さしあたりは一人社長か、気心の知れた仲間で頑張るというのであれば、合同会社も良い選択肢になるでしょう。
必要書類や定款等を作成
設立したい法人の形態が決まったら、次は必要書類を揃えていきましょう。
まず、ざっくりとしたもので構わないので、事業計画書を書きましょう。
もし、公的金融機関からの創業融資などを検討している場合は、力を入れて作成すべきです。
というのも、事業計画書に書いてあること次第で、融資されるかどうかが決まってしまうからです。
公的金融機関の各支店では、事業計画書の書き方などのアドバイスも行われていますので、不安がある人は行ってみるといいでしょう。
事業計画が決まったら、次は定款を作成します。
定款とは、会社(もしくは法人)の憲法のようなものです。
その会社がどのような目的で設立されるのか、株式の取り扱い(株券を発行するのか、自由に譲渡できるのかなど)、会社内の組織(取締役の人数、取締役会があるのかないのかなど)やさまざまな事項を盛り込んで、定款として作成します。
本やインターネット上にも、定款の雛形はあります。
ただ、よくわからないままアレンジしてしまうと、後から定款を変えなければならなくなることもあるので注意してください。
また、絶対的記載事項と相対的記載事項、任意的記載事項があります。
絶対的記載事項については定款に必ず記載しておかなければなりません。
もし定款を自分で作成するのが大変だという場合は、会社設立の得意な行政書士、司法書士にご相談ください。
公証人による定款認証
さて、定款ができたら公証人に定款を認証してもらう段階に入ります。
管轄の公証役場に、定款の認証の予約をとってください。
メールやファックスなどで、あらかじめ定款を公証人にチェックしてもらいましょう。
おかしいところがあれば、公証人から指摘が入りますので、その都度修正してください。
従来は、印刷した定款を認証してもらうと言う方法でしたが、電子定款をオンライン送信して認証してもらうこともできます。
公証人から定款の認証を受けたら、法務局へ登記申請をしに行きます。
資本金の払込
定款の認証が完了したら、資本金を発起人の代表者の口座に振り込んでください。
その際、資本金の振込がされた通帳は、コピーをとっておいてください。
後々、払込証明書に通帳のコピーを添付します。
法務局への登記申請に行く
ここまでの準備が完了したら、法務局に登記申請をしに行きます。
以下では、従来の紙の登記申請書による登記申請を想定しています。
必要書類
必要書類を揃えてください。
原則として必要になる書類を以下で解説しました。
これ以外にも必要な書類がある可能性はあります。
法務局のホームページなどをご確認ください。
登記申請書
法務局のホームページなどに記載があります。
A4サイズの用紙に印刷して使ってください。
書き方もホームページに解説されていますので、参考にしましょう。
登録免許税納付用台紙
登録免許税は、収入印紙で収めます。
クレジットカードは使えません。
郵便局などで収入印紙を購入してください。
法務局内で販売していることもあります。
OCR用申請用紙又は磁気ディスク
法務局の窓口でOCR用申請用紙を入手できます。
登記する事項を記載して、窓口に提出します。
CD-Rなどの磁気ディスクに同じ情報を書きこみ、提出しても大丈夫です。
定款
公証人の認証が済んだ定款を添付してください。
紙の定款か、電子定款の場合は磁気ディスクを使います。
払込証明書
資本金の払い込みがあったことを証明するための書類です。
通帳のコピーを貼り付けます。
発起人の決定書(必要があれば)
もし会社の本店所在地を最小行政区画までしか記載していない場合は、本店の所在地を発起人の過半数の一致で決定した「発起人の決定書」が必要です。
就任承諾書
設立時取締役などの役員の就任承諾書を提出します。
一人で会社を設立する場合は、代表取締役は当然に取締役が就任するので、代表取締役の就任承諾書は不要です。
就任承諾書への押韻には、個人の実印を使ってください。
取締役の印鑑証明書(取締役会なしの場合)
各取締役の就任承諾書に押した取締役個人の実印の印鑑証明書が必要です。
取締役会がある場合には、代表取締役の就任承諾書にのみ実印を押します。
印鑑証明書は、書類に押してある実印が本物かどうか照合するためのものです。
印鑑届出書
会社の実印を法務局に登録するための書類です。
代表取締役個人の実印を押しますので、代表取締役個人の印鑑証明書が必要です。
登記までにかかる時間は1週間程度
登記までにかかる時間は法務局の混雑度合いによって変わりますが、1週間〜10日程度を見込んでおきましょう。
登記申請をした日が会社設立の日になりますので、大安吉日を選びたいときはご注意ください。
設立日は定款認証の日ではありません。
登記が完了したら、登記簿謄本を取得してください。銀行口座などを作るのに必要になります。
法人化したら、すぐに必要な手続き一覧
以下に一覧でまとめました。
- ・税務署宛の手続き:法人設立届出書、青色申告承認申請書、給与支払い事務所等の解説届出書、源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
- ・都道府県・市町村宛の手続き:法人設立届出書
- ・年金事務所宛の手続き:社会保険関係の届出書(健康保険・厚生年金など)、新規適用届、被保険者資格取得届
- ・労働基準監督署宛の手続き:保険関係成立届
- ・ハローワーク宛の手続き:適用事業所設置届
資産の移行も忘れずに
個人事業からの資産移行を忘れずにしましょう。
具体的には、新しい会社が個人事業から資産を買い請ける売買契約があります。
現物出資扱いにする、個人から会社へ賃貸することにするなどの方法があります。
注意すべきなのは借金がある場合です。
債権者とのやりとりが必要になりますので、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
個人事業の廃業手続きも行いましょう
資産の移行が終わったら、個人事業の廃業手続きをしましょう。
税務署に個人事業の開業届・廃業届を廃業後1ヶ月以内に提出し、都道府県税事務所には事業廃止等申告書(期限は自治体によって異なるので要確認)を提出します。
青色申告をしてきた場合は、青色申告の取りやめ届出書、従業員がいたのであれば給与支払事務所等の廃止届出書を提出しましょう。
まとめ
今回は、法人成りするときの手続きをご紹介しました。
各省庁のホームページなども確認しながら、着実に手続きを進めていきましょう。