最終更新日:2023/9/14
年収500万円の個人事業主が払う税金・保険料と手取りはいくら?
この記事でわかること
- 年収500万円の個人事業主の手取りの目安がわかる
- 年収500万円の個人事業主が払う税金の目安がわかる
- 年収500万円の個人事業主が支払う社会保険料の目安がわかる
サラリーマンやOLが独立して個人事業主になる場合、税金や保険料がいくらになるのか想定しておく必要があります。
もちろん開業資金の準備や売上予測も重要ですが、事業主の生活が成り立たなければ意味がないため、確実に発生する出費はしっかり把握しておきましょう。
また、独立前と後では税金や保険料の考え方も変わるので、年収が前職と同じでも、税額や保険料が同一になるとは限りません。
今回は年収500万円をモデルケースとして、個人事業主が払う税金や保険料がいくらになるのか解説します。
独立後の手取りが気になる方は、ぜひ参考にしてください。
目次
年収500万円の個人事業主が支払う税金と手取りの目安
個人事業主で年収が500万円(月収40万円程度)の場合、経費の金額によって手取りの目安は以下のようになります。
なお、モデルケースとして所得控除70万円と青色申告控除65万円を適用し、社会保険料などは考慮していない計算です。
計算方法の詳細については後述しますので、ここではあくまでも目安としてご覧ください。
【経費が0円だった場合】
- 手取り額:年間452万6,500円
- 所得税:23万3,500円
- 住民税:43万5,000円
【経費が100万円だった場合】
- 手取り額:年間356万2,500円
- 所得税:10万2,500円
- 住民税:33万5,000円
【経費が200万円だった場合】
- 手取り額:269万7,500円
- 所得税:6万7,500円
- 住民税:23万5,000円
年収500万円の個人事業主が支払う税金と社会保険料
では次に、年収500万円の個人事業主をモデルケースとして、各種税金や社会保険料がいくらになるか計算してみます。
なお、税金の計算上、年収と所得などの違いは重要になるので、以下のように理解してください。
- 年収:各種税金や保険料を差し引く前の年間総収入
- 所得:年間総収入から必要経費(仕入代金や光熱費など)を差し引いた金額
- 課税所得:所得税が課税される部分の金額
所得税
個人事業主の場合、所得税は以下の3ステップで計算します。
- (1)事業所得の計算:事業収入-必要経費-青色申告特別控除
- (2)課税所得の計算:事業所得-所得控除
- (3)所得税の計算:課税所得×所得税率-控除額-税額控除
青色申告制度を利用している個人事業主は、最高65万円の青色申告特別控除を受けることができます。
所得控除には医療費控除や扶養控除、配偶者控除などがあり、税額控除には住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)などがあります。
なお、所得税率と控除額は「所得税の速算表」から確認できるので、国税庁ホームページを参照してください。
では、同じ年収500万円でも、経費によって税額がどう変わるかみていきましょう。
参考:所得税の税率(国税庁)
年収500万円、経費0円のときの所得税
まず、経費が発生していない状況で年収500万円の所得税を計算してみます。
その他の条件として、青色申告特別控除は65万円、所得控除70万円、税額控除は0円とします。
- (1)事業所得の計算:500万円-経費0円-青色申告特別控除65万円=435万円
- (2)課税所得の計算:435万円-所得控除70万円=365万円
- (3)所得税の計算:365万円×23%-63万6,000円-0円=20万3,500円
年収500万円、経費100万円のときの所得税
次に、同じ年収500万円でも、経費が100万円かかった場合の所得税を計算してみます。
前述の例と同じく、青色申告特別控除は65万円、所得控除70万円、税額控除は0円とします。
- (1)事業所得の計算:500万円-経費100万円-青色申告特別控除65万円=335万円
- (2)課税所得の計算:335万円-所得控除70万円=265万円
- (3)所得税の計算:265万円×20%-42万7,500円-0円=10万2,500円
経費100万円によって課税所得が減少したため、1段階低い20%の税率が適用することになります。
年収500万円、経費200万円のときの所得税
最後に、年収500万円、経費200万円のケースで所得税を計算します。
今回の計算でも青色申告特別控除は65万円、所得控除70万円、税額控除は0円とします。
- (1)事業所得の計算:500万円-経費200万円-青色申告特別控除65万円=235万円
- (2)課税所得の計算:235万円-所得控除70万円=165万円
- (3)所得税の計算:165万円×10%-9万7,500円-0円=6万7,500円
経費の増加に伴い手取りは減少しますが、税負担はかなり軽くなっています。
住民税
住民税とは、都道府県民税と市町村民税の総称であり、市区町村へ納める地方税となります。
また、住民税には均等割と所得割があり、以下のような違いがあります。
- 均等割:すべての事業者に課税される(年間5,000~5,500円程度)
- 所得割:前年の所得に応じた税率を掛けて算出される(ほとんどの市区町村で税率10%)
所得割については次のように税額を計算します。
- 所得割の税額:(所得額-所得控除額)×10%-税額控除額
確定申告を行っている個人事業主の場合、税務署から市区町村へ所得などの情報が提供されるため、自分で申告する必要はありません。
所得控除についても、所得税と同じ種類の控除が可能であり、青色申告控除も適用できます。
年収500万円、経費0円のときの住民税
年収500万円に対して経費0円の場合、500万円がそのまま所得額となるため、住民税は以下のようになります。
なお、所得控除は70万円、均等割は5,000円、税額控除は0円で計算します。
- 所得額:500万円-経費0円=500万円
- 住民税の所得割:(500万円-70万円)×10%-0円=43万円
- 住民税の均等割:5,000円
- 合計額:43万円+5,000円=43万5,000円
年収500万円、経費100万円のときの住民税
次に、年収500万円、経費100万円のパターンで住民税を計算します。
前例と同じく、所得控除は70万円、均等割は5,000円、税額控除は0円とします。
- 所得額:500万円-経費100万円=400万円
- 住民税の所得割:(400万円-70万円)×10%-0円=33万円
- 住民税の均等割:5,000円
- 合計額:33万円+5,000円=33万5,000円
年収500万円、経費200万円のときの住民税
最後に年収500万円、経費200万円で住民税(所得控除などは前例と同じ)を計算してみます。
- 所得額:500万円-経費200万円=300万円
- 住民税の所得割:(300万円-70万円)×10%-0円=23万円
- 住民税の均等割:5,000円
- 合計額:23万円+5,000円=23万5,000円
赤字の場合は所得税も住民税もかからない
事業が赤字になっていれば、利益の発生もないため、所得税や住民税は非課税となります。
しかし損失の繰越などができるので、確定申告はした方がよいでしょう。
なお、所得税や住民税が発生する場合、経費への計上はできないので注意してください。
経費計上を税務署から指摘されると、うっかりミスであっても追徴課税の対象になる可能性があります。
国民年金保険料
個人事業主が加入する年金保険を国民年金といい、国内在住で20歳以上60歳未満の人には加入義務があります。
また、被保険者は以下のように区分されています。
- 第1号被保険者:個人事業主やその家族など、第2号被保険者や第3号被保険者ではない人
- 第2号被保険者:共済や厚生年金の加入者(公務員や会社員など)
- 第3号被保険者:第2号被保険者の扶養に入っている配偶者(年収130万円未満)
保険料は年ごとに変わりますが、第1号被保険者となる個人事業主の場合、令和4年度の保険料は1万6,590円となっています。
したがって、年間の保険料は19万9,080円となりますが、まとめて前払いすると割引の適用があります。
国民健康保険料
会社員が独立して個人事業主になると、社会保険から国民健康保険に切り替えることになります。
社会保険の保険料は労使折半となりますが、国民健康保険料は個人事業主の全額負担なので注意してください。
保険料は所得割・均等割・平等割の合計額となり、それぞれが医療給付費分、後期高齢者支援金分、介護納付金分から構成されています。
- 所得割:事業所得から基礎控除(43万円)を差し引き、保険料を掛けて計算
- 均等割:世帯あたりの国民健康保険加入者数に応じて均等負担する保険料
- 平等割:1世帯にかかる額
なお、加入者が40歳以上64歳未満の場合、介護保険料の追加納付も必要になります。
まとめ
個人事業主は所得や税金などを自己申告するため、サラリーマンやOLよりも事務負担は重くなります。
しかし、税金や保険料の仕組みを理解しておけば、経費を増額して税負担を低くするなど、事業の状態に応じたコントロールも可能になるでしょう。
また、各種税金や保険料は納付・払込みの時期が異なるため、どの時点でどれだけ現金が必要なのか、正確に把握しておかなければなりません。
高額な出費と納税時期が重ならないよう、事業計画も工夫しておく必要があるので、納税や資金繰りの問題で悩んだときは、専門家の意見も参考にしておきましょう。