最終更新日:2023/7/24
税務署(税務調査)に目をつけられる個人事業主の特徴と対策について
ベンチャーサポート税理士法人 税理士。
大学を卒業後、他業種で働きながら税理士を志し科目を取得。
その後大手税理士法人を経験し、現在に至る。
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この記事でわかること
- 税務調査とは何か理解できる
- 個人事業主でも税務調査の対象になるのかがわかる
- 個人事業主の税務調査対策がわかる
「税務調査」と聞いて、「個人事業主の私には関係ない」と思っている人がいるかもしれません。
しかし、個人事業主も税務調査の対象となるので、決して自分は無縁というわけではありません。
ここでは、税務調査とはどのようなことをするのか、税務調査を受けやすい個人事業主の特徴とは何かを詳しくご説明いたします。
目次
税務調査とは
税務調査とは、税務署が納税者に対して、税務申告が適正に行われているかを実際に訪問して、調査するものです。
統計によると、毎年全国の会社、法人、個人事業主の約6%が税務調査を受けていますから、15年に1回程度は自分の会社などに調査が来るという計算になります。
そう考えれば、自分の会社には税務調査が来ないだろう、自分とは無縁だ、という考えが間違っていることがわかると思います。
税務調査には、「任意調査」と「強制調査」の2種類がありますので、それぞれの違いを見ていきましょう。
任意調査
任意調査とは、文字どおり納税者の任意に任せる税務調査です。
特に脱税の疑いがなければ、基本的にこの任意調査が行われます。
この任意調査が行われる場合には、事前に調査に入る旨の電話連絡があります。
ただ任意とは言っても、訪れる職員に質問検査権がありますから、質問に黙秘したり、虚偽の申告をしたりすれば、罰則の対象となります。
これは、警察の職務質問に似ています。
職務質問も任意ですから、警察官の質問に対して必ず答えなければいけないわけではありませんが、逆に頑なに拒否をしてしまうと、面倒な立場に自らを追い込むことになってしまいます。
ですから、任意調査と言っても、職員に対しては真摯な態度で臨み、聞かれた質問に対しては、簡潔かつ的確に答えた方が、自分の立場を守ることになるということを覚えておきましょう。
強制調査
強制調査ですが、これは任意とは違って「強制」ですから、事態はかなり深刻だと認識する必要があります。
この強制調査を担当するのは、国税局査察部、いわゆる「マルサ」です。
この強制調査の対象は、脱税の隠蔽工作が悪質である案件、あるいは脱税額が1憶円を超えている案件で、実際に裁判所の令状を取った上で、調査が行われます。
従って、調査を拒否したり、妨害したりすると、処罰の対象となります。
つまり、強制調査が来た段階で、かなりの裏取りが行われており、調査を受ける側は観念するしかありません。
税務調査で目をつけられやすい個人事業主の特徴
税務調査が入りやすい個人事業主の特徴は次の通りです。
- 申告していない
- 売り上げが伸びている
- 売り上げに不審な数字がある
- 経費に不審な数字がある
それぞれ詳しく見ていきましょう。
特徴①:申告していない
確定申告をしていない個人事業主は、税務調査の対象になる可能性が高くなります。
税務申告をすると自分の会社の一年間の売り上げ、一年間の経費が公表され、この数値をもとに税務署が申告漏れをチェックします。
税務調査を免れたいなら、申告をしなければ良いのでは?と思われるかもしれませんが、それは大きな間違いです。
なぜなら、税務署は無申告事業者の事業内容や経営状況を常時調査しているからです。
自分が税務申告をしていなくても、取引先の税務申告や税務調査によって、自分の会社の売上高がある程度わかってしまうということです。
取引先からの調査によって自分の会社が税務調査されることを「反面調査」と言います。
現在では、税務署でもIT化が進んでいて、あらゆる資料を蓄積した上で、一つひとつの会社、法人、個人事業主を調査するための資料を持っていると思って間違いないでしょう。
また国税庁は、所得税及び消費税調査の状況調査を行っています。
その中には、申告漏れの多い個人事業主の業種も調査されており、ランキング形式で掲載されています。
ランキング内に入っている業種で個人事業主をされている人は、税務調査の対象となりやすいので気を付けましょう。
ランキング | 業種 | 1件当たりの申告漏れ 所得金額 | 1件当たりの追徴税額 (含加算税) |
---|---|---|---|
1 | プログラマー | 4,927万円 | 716万円 |
2 | 畜産農業(肉用牛) | 3,515万円 | 503万円 |
3 | 内科医 | 3,339万円 | 805万円 |
4 | キャバクラ | 2,834万円 | 864万円 |
5 | 太陽光発電 | 2,603万円 | 825万円 |
6 | 建築士 | 2,325万円 | 624万円 |
7 | 経営コンサルタント | 2,268万円 | 477万円 |
8 | 小売業・犬 | 2,051万円 | 456万円 |
9 | 不動産代理仲介 | 1,804万円 | 614万円 |
10 | 商工業デザイナー | 1,759万円 | 389万円 |
なお、申告していない、あるいは申告漏れしているなどに対しては、無申告加算税や延滞税などのペナルティが課され、本来納めるべき税金の他に10~30%程度の金額を支払うことになります。
しかも延滞税は、年率にして14.6%と、かなりの高率ですから、無申告、申告漏れ、滞納がいかに厳しい処分かがわかると思います。
特徴②:売り上げが伸びている
売り上げが伸びている個人事業主も、税務調査で目をつけられやすいといえます。
事業規模が大きくなり、それに比例して修正箇所も増加していると考えられるからです。
修正箇所が多ければ多いほど、申告漏れ、修正申告の可能性が大きくなり、税務調査に入る意義が大きいということになります。
税務署の職員の数は限られていますから、やはり修正申告の可能性が大きい会社を調査します。
また増加額が妥当かどうかという点も調査のポイントになります。
そう考えると、赤字を計上している個人事業主の所に税務調査が入る確率はかなり低くなるといえるでしょう。
特徴③:売り上げに不審な数字がある
数字に不審な点があることも、税務調査で目をつけられやすい個人事業主の特徴です。
個人事業主の場合、取引先が、一年間の取引の合計額を毎年「支払調書」という形で税務署に提出しています。
ですから、この支払調書を作成するような会社と取引している場合には、自分の会社の売上額がほぼ判明していると思っても構いません。
つまり、売り上げとは、他の会社などとの関係から生じるものですから、虚偽はすぐにわかってしまいます。
従って、売り上げを過少に申告した場合には、すぐに税務署にわかってしまうことになり、税務調査が入る可能性が高くなります。
特徴④:経費に不審な数字がある
収入に関すること以外にも、経費について不審な計上があれば、税務調査が入る可能性があります。
例えば、不動産の賃貸業なのに、あまり関係のない「接待費」や「旅費交通費」などの経費が多額に計上されていると不審に思われます。
特に、会社の経費とプライベートの出費との線引きが難しい経費で、領収書が保存できるものが多額の場合は要注意です。
また、何かを仕入れて販売する事業なのに「棚卸資産」がまったくない場合なども、目を付けられるポイントになるので気を付けましょう。
個人の税務調査対策
税務署に提出した確定申告書などの書類に不審な点があると、個人事業主に対しても税務調査が行われることがあります。
税務調査を受けることとなった場合、どのように対処するといいのでしょうか。
領収書の整理
確定申告書を提出した個人事業主は、必要経費に計上した支出の領収書を7年間保存しておく必要があります。
そのため、必要経費に計上した支出については、年度ごとなど分かりやすい形で保存しておきましょう。
個人事業主の場合、事業のための支出のほか、個人的な支出と関連した家事関連費もあります。
この家事関連費も、領収書を整理して保管しておきましょう。
なお、領収書を受け取った場合、その領収書をそのまま保管しておく必要があり、コピーや電子データとして保管することは認められません。
一方、電子帳簿保存法が施行されると、電子データで受け取った領収書や請求書は、そのまま電子データで保存しなければならなくなります。
誠実に対応する
税務調査と聞くと、何かやましいことをしていると思われていると考え、税務署に不信感を持つ方もいるかと思います。
しかし、税務調査は必ずしも申告内容が疑わしい人だけに行われるものではなく、毎年正しく申告している人も対象になることがあります。
また、申告内容に何の問題もないことが確認されれば、それで税務調査は終了することもあります。
税務署から電話で税務調査の連絡があった場合は、むげに断るのではなく、対応できる日を伝えましょう。
また、実際に調査が行われる時も、調査官の求めに応じて書類などを見てもらうようにしましょう。
税理士に相談する
税務調査が行われた時に、すべて自身で税務署の調査官の求めに対応することは、かなり大変なことです。
そこで、税理士に相談し、場合によっては税務調査に立ち会ってもらいましょう。
税務署から電話で税務調査の連絡があった時に税理士に連絡すれば、その日程の調整から税理士に依頼することができます。
また、実際の税務調査の前に、書類の準備や心構えなどをあらかじめ教えてもらうこともできます。
個人事業主自身が税務調査に対応しても、税法の知識が十分ではないため、調査官の質問や疑問に的確に対応できるとは限りません。
しかし、税理士はどのような点が問題になっているのか、あるいはどのような点が問題になりそうかが分かっているので、税務署の調査官の質問にも対応できるのです。
税務調査の流れ
税務調査は事前に税務署から連絡があるケースが多いです。
具体的な流れは下記の通りです。
- 税務署から連絡がある
- 税務調査に必要な書類を準備
- 税務調査が実施される(1~2日程度)
- 調査結果が知らされる(調査から1ヶ月程度)
税務調査の連絡がきた場合は、スムーズに調査できるよう書類をまとめておきましょう。
納品書・領収書・請求書・契約書・帳簿などが準備書類になります。
実際の税務調査では、業務内容や取引先について聞かれたり、売上・経費・帳簿の確認が行われたりします。
特に人件費・役員報酬・交際費は細かくチェックされるので、しっかり説明できるように準備しておきましょう。
調査が終わると1ヶ月後ぐらいに結果の連絡がきます。
確定申告の修正が求められる場合や、「次からは気をつけてください」という指導で終わる場合もあります。
まとめ
税務調査は個人事業主である自分には無縁だという考え方は危険です。
個人事業主も税務調査の対象ですし、税務署は税務申告を見るプロですから、不審な点、数字があれば、すぐに不自然だ、おかしいと感じます。
いつ調査が入ってもいいように、帳簿を整理し、適正な申告を行いましょう。
税務申告が正しくできているか不安だ、税務調査が入らないようにしっかりと対策したいという方は、専門的な知識を持った税理士に相談してみることをおすすめします。
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