最終更新日:2024/2/28
法人決算とは?自分でやる方法や流れ・必要書類を紹介
ベンチャーサポート税理士法人 税理士。
大学を卒業後、他業種で働きながら税理士を志し科目を取得。
その後大手税理士法人を経験し、現在に至る。
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この記事でわかること
- 法人決算とはどのようなもので何のために行われるか知ることができる
- 法人決算を自分で行う場合のメリットとデメリットがわかる
- 法人決算の流れや手順、必要書類などを知ることができる
個人事業の規模が拡大、あるいは利益が大きくなると、その事業を法人化することがあります。
法人化した場合は、それまでの確定申告に代わり、法人決算を行って税金の計算をする必要があります。
法人決算は個人の確定申告より手間がかかるのが一般的ですが、自分で行うことはできるのでしょうか。
もし自分で法人決算を行う場合、どのような流れで進めていくのか、解説していきます。
法人決算とは
法人は、個人とは別に納税義務が発生します。
法人は決算を行い、1年間に発生した利益の金額を計算した上で、その利益に対する税額を計算することとされています。
法人が決算を行う時期は、その法人が定めた事業年度により異なります。
この点は、すべての個人事業主が1月〜12月までの期間で計算を行い、確定申告を行うのとは異なる点です。
法人決算の目的
法人が決算を行うのは、1年間の経営成績と事業年度終了時点の資産や負債の状況を明らかにするためです。
法人決算を行って決算書を作成し、その決算書に基づいて法人税などの申告を行います。
また、金融機関や取引先の求めに応じて、決算書を公開することもあり得ます。
法人決算を自分でやるメリット・デメリット
法人決算を税理士などの専門家に依頼せず、自分で行うこともできます。
この場合、専門家に依頼した場合と比較して、どのようなメリット・デメリットがあるのか確認していきます。
法人決算を自分でやるメリット
法人決算を自分で行う場合、一番のメリットは専門家に対する費用を支払う必要がないことです。
法人決算を税理士に依頼した場合、どれだけ小規模の法人であっても、20万円程度の税理士報酬が発生します。
税理士に決算を依頼したからといって、税負担が軽減されるとは限らないため、この費用の負担は非常に大きなものとなります。
自分で法人決算を行えば、税理士報酬は発生しないため、金銭的な負担を軽減することができます。
また、自分で法人決算を行うと、調べながら行うことになるので様々な知識が身につきます。
会社を経営していく上で、また個人として生活していく上で役に立つ知識も少なくはありません。
法人決算を自分でやるデメリット
法人決算を自分で行うことには、いくつかのデメリットがあります。
デメリットごとに、その内容を解説していきます。
決算作業に時間がかかる
会計や税金計算の専門家でない人が決算作業を行う場合、何をしなければならないかを調べながら進めることとなります。
そのため、決算作業を行うのに時間がかかることが予測できます。
税理士に依頼した場合、どの法人でも行うべき作業がわかっているため、効率的に決算作業を進めることが可能です。
出来上がった決算書や申告書の信頼性が低い
会計や税金計算に関する知識のない人が決算書を作成すると、決算書や申告書が正しいものか疑問を持たれることがあります。
たとえば税務署に申告を行った場合、中身が正確なのか確認され、あるいは税務調査を受けやすくなるリスクがあります。
また、金融機関に決算書を提出した場合には、税務署と同じく書類の内容が正しいのか何度も確認されることや、誤りを指摘される可能性があります。
余分な税金を支払っている可能性がある
決算では、法人が納付する法人税の計算を行います。
法人税の計算においては、節税につながる特例が適用できる場合があるので、常に最新の情報をチェックしなければなりません。
ところが、節税になる特例の適用が受けられるのにも関わらず、その適用を受けずに申告してしまうことがあります。
その結果、税理士に依頼していれば支払う必要のなかった税金を支払っているケースがあり得ます。
法人決算を自分でやる流れ・手順
法人決算を自分で行う際は、どのような流れで行うのか確認していきましょう。
帳票の整理を行う
法人が日常の取引を行うと、請求書や領収書などの帳票が発生します。
これらの帳票を定期的に整理し、すぐに会計処理を行うことができるように準備しておきます。
帳票の整理は意外に時間がかかるので、どうしても後回しになってしまいがちです。
特に自分で決算を行うとなると、決算間際に年間の帳票を整理することもあるでしょう。
しかし、このような形で決算を進めると、帳票の紛失や会計処理の誤りの原因となってしまいます。
必ず日頃から帳票の整理を行い、いつでも次の段階に進める準備をしておきましょう。
会計処理を行う
自分で法人決算を行う場合、会計ソフトを購入するか、インターネット上のクラウド会計の契約をすることとなります。
帳票を整理したら、会計ソフトなどにデータの入力を行いましょう。
会計ソフトなどで伝票の作成を行いますが、1日でいくつもの取引を行っているために、数多くの仕訳が発生します。
仕訳の入力を行ったら、その金額や勘定科目に誤りがないか、繰り返し確認しておきましょう。
試算表を作成する
会計処理を終えたら、会計ソフトなどで集計を行い、試算表が自動的に作成されます。
作成された試算表の金額におかしなところがないか、帳票などと照らし合わせて確認しましょう。
日々発生した取引の会計処理を行うと、現金や預金の残高は正しい金額になっているはずです。
現金や預金の残高が合っていない場合は、どこかで処理の誤りが発生していることを意味します。
まずは現金や預金の残高が正しい金額になることを目指して、誤りがないか確認していきましょう。
決算処理を行う
日常的に発生する取引の会計処理を終えたら、次に決算処理を行います。
決算の時だけに発生する仕訳のことを決算整理仕訳といい、様々な決算処理を行わなければなりません。
主な決算処理には、以下のようなものがあります。
- 売掛債権の残高の調整
- 在庫の残高の計上
- 固定資産の減価償却費の計上
- 買掛金や未払金の計上
- 消費税の精算
この他にも、法人によってはさらに決算処理が必要なこともあります。
必要な決算処理を行わない場合は、正しい決算書を作成することができない上に、税務署から指摘を受ける原因にもなります。
法人の正しい状況を表す数字となっているか、確認しながら決算処理を進めていきましょう。
決算書類を作成する
決算処理を進めていき、正しい数字を計算することができたら、決算書類を作成します。
作成する書類の内容は、後ほど詳しくご紹介します。
いずれの書類も作成を省くことはできないので、漏れのないようにしましょう。
法人税の申告と納税を行う
決算に関する書類を作成したら、税務署に対して法人税や消費税の申告を行います。
また同時に、都道府県や市町村に対しても申告書を提出する必要があります。
さらに、発生した法人税などの税金を納める必要があります。
納付書などは税務署などから送付されてくるので、その納付書を使って発生した税金を納めましょう。
法人決算をするときの必要書類
法人決算に必要な書類はいくつもあります。
どのような場面で必要になるのか、それぞれの場面ごとの必要書類をご紹介します。
法人で保存しておく書類
法人決算で作成する書類の中には、そのまま法人で保存しておくべき書類があります。
保存期間は会社法では10年間と定められているので、必ず作成後も保存しておかなければなりません。
仕訳帳、総勘定元帳
仕訳帳は、法人で行った取引を記載した仕訳の一覧です。
また総勘定元帳は、法人が行った取引を勘定科目ごとに記載してまとめられた書類です。
会計ソフトなどを利用している場合は、いずれも自動的に作成されるので、決算のために作成する必要はありません。
これらの書類を確実に作成できるよう、日常的な会計処理が重要になります。
請求書や領収書
請求書は、自社から取引先に対して発行したものと、取引先から交付されて受け取ったものがあります。
自社で発行した請求書は、売上高の計上の根拠資料となります。
また、受け取った請求書は仕入高や費用の計上の根拠資料となります。
領収書は、費用を支払った際に受け取ったものを保存し、後から内容を確認できるようにしておく必要があります。
税務署等に提出する書類
法人決算では、法人税などの税金計算を行い、その結果を申告書として提出しなければなりません。
また、法人税申告書には添付しなければならない書類もあります。
決算書
決算書は、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表などから構成されます。
こちらも会計ソフトなどを利用していれば自動的に作成されます。
法人税申告書
税金の計算に使用する別表は会社によって異なるので、注意しましょう。
勘定科目内訳書
決算書で使用した勘定科目の明細を記載します。
こちらも会計ソフトなどを利用していれば自動的に作成されます。
法人事業概況説明書
法人の事業内容や従業員数、取引の状況などを記載します。
消費税申告書
消費税の計算・申告に使用する書類です。
地方税申告書
都道府県、市町村に提出する法人住民税・法人事業税の申告書です。
これらの書類は、税務署に申告した後に金融機関などから提出を求められることがあります。
法人決算を自分でやるときの注意点
法人決算を自分で行うことは、簡単なことではありません。
そこで、法人決算を行う際の注意点の中でも、すべての人に関係するものをご紹介します。
日常的に会計処理を行う
法人決算は1年に1回の作業となります。
ただし、決算のタイミングですべての作業を行おうとすると、非常に効率が悪くなります。
また、決算作業のミスの原因となることもあります。
法人決算とは関係なく、発生した会計処理を日常的に行うようにしましょう。
帳簿の整理や、会計ソフトなどへの入力作業は、最低でも月に1回程度行うと、決算作業は大変楽になります。
会計ソフトやクラウド会計を利用する
自分で法人決算を行う際には、自分で帳簿や申告書を作成することは大変難しいといえます。
手書きでないと計算や記帳ができないとなると、前述した決算書類をすべて手作業で作ることになるためです。
そこで、会計ソフトやクラウド会計を利用して法人決算を行いましょう。
会計ソフトなどを利用すれば、仕訳を入力するだけで決算書の作成まで行うことができます。
また、法人税や消費税の申告書など、税務署に提出する書類の作成は、別のソフトを用意しなければならないことがあります。
会計処理や申告書の作成に必要なソフトを、トータルのコストが安くなるように準備しましょう。
まとめ
個人事業主の方が法人化した場合、法人の決算を自分で行いたいと考える方もいるでしょう。
実際に、法人決算を自分ですべて行うことも、まったく無理ではありません。
ただ、個人の確定申告とは作成する書類が異なるので、あらかじめ決算を迎えるための準備が必要です。
無理に自分ですべてを行おうとするのではなく、税理士などの専門家に相談しながら進めていくといいでしょう。