最終更新日:2023/6/30
個人で税務調査がくるのはいくらから?入られやすい人の特徴について
ベンチャーサポート税理士法人 税理士。
大学を卒業後、他業種で働きながら税理士を志し科目を取得。
その後大手税理士法人を経験し、現在に至る。
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この記事でわかること
- 税務調査の種類やどのようなことが行われるのかを知ることができる
- 個人事業主に対する税務調査の対象になりやすい人がわかる
- 個人事業主に対する税務調査に関してどのような対策があるかがわかる
個人事業主の方は、自身の営んでいる事業に関して確定申告をしている方が多いでしょう。
確定申告を行うと、その後に税務調査を受けることがありますが、法人だけでなく個人もその対象になる可能性があります。
個人事業主に対する税務調査は、どのような人が対象になることが多いのか、その特徴について解説します。
また、税務調査が行われたときにどのような対策があるのか、具体的にできることをご紹介します。
目次
税務調査とは
税務調査とは、納税者が作成した申告書の内容が正しいか確認するため、税務署員により行われる調査のことです。
税務署には、法人税、所得税、消費税、相続税、贈与税などの申告書が提出されます。
申告書はすべて、納税者の計算に基づいて作成されるため、その内容が必ずしも正しいとは限りません。
また中には、税額を減らすために事実と異なる申告をしているケースもあるかもしれません。
そこで、計算の誤りや不正がないかを確認するため、税務署は税務調査を実施しています。
なお、税務調査は大きく分けて、任意調査と強制調査の2種類があります。
任意調査
任意調査とは、その名のとおり、納税者の任意の協力のもと実施される税務調査のことをいいます。
税務調査が実施される時は、税務署から納税者に対して事前に日時の打ち合わせが行われます。
通常は、税務署が一方的に日程を決めることも、急に納税者の自宅を訪ねてくるようなことはありません。
ただ、任意調査でも、税務署員が事前通知なく納税者の会社や自宅に来ることがあります。
帳簿の改ざんや隠蔽などの不正が疑われる場合には、事前通知なしの無予告調査が行われます。
強制調査
強制調査とは、事前通知なく突然実施される税務調査です。
任意調査との一番の違いは、強制調査は裁判所の令状をもって行われ、いわば犯罪の捜査にあたることです。
事前に通知されないだけでなく、調査を拒否することもできません。
悪質な脱税の疑いがある場合に実施され、任意調査とその中身はまったく異なります。
個人事業主の税務調査はいくらから調べられる?
税務調査は、法人だけに行われるものではなく、個人に対しても実施されます。
ただし、確定申告の中身にまったく疑義がなければ、税務調査を行う必要はありません。
したがって、個人が行う確定申告がすべて税務調査の対象になるわけではありません。
個人の方で確定申告しなければならない主な事例は、以下のとおりです。
- 個人事業主で所得が発生している人
- 副業の所得金額が20万円を超える人
- 不動産や有価証券を売却して所得が発生した人
このような条件に該当するにもかかわらず確定申告をしていなかった人は、申告漏れの状態となります。
そのため、税務署の税務調査を受けることがあります。
また、確定申告をしていればそれで安心、というわけではありません。
売上の計上漏れや経費の過大計上など、申告に誤りがないかを確認するために税務調査が行われることがあります。
基本的に、確定申告をした方は誰でも税務調査を受ける可能性があります。
ただ、税務調査の対象となりやすいのは、より所得金額や税額の大きな人です。
個人事業主の場合、課税所得が1,000万円を超えると税務調査を受けやすいといわれることがあります。
ただ、これは税務署の公式な見解ではありません。
あくまでも噂としていわれているものであり、実際には所得金額がこれより少なくても税務調査を受けることはあります。
個人事業主で税務調査に入られやすい人の特徴
個人で確定申告を行っている人は、誰もが税務調査を受ける可能性があります。
しかし、税務調査を受けやすい人には一定の特徴があります。
どのような人が税務調査を受けやすいのか、ご紹介します。
申告をしていない人
そもそも確定申告義務があるのに申告をしていない人は、税務調査を受ける可能性がかなり高くなります。
個人事業主の場合、1年間の損益計算を行い所得が発生していなければ、確定申告する必要はありません。
しかし、多額の売上が発生しているにも関わらず申告していなければ、税務調査のリスクは高まります。
多額の売上が発生したことは、申告しなければ税務署にはわからないはずと考える方もいるかもしれません。
しかし、税務署は様々な方法で個人事業主の売上を把握することができます。
たとえば、取引先から提出された支払調書を集計し、1年間の売上高を集計することができます。
また、他の納税者の税務調査を行った際に、経費の支払先のデータを収取することができます。
このようなデータと、提出された確定申告書を照らし合わせ、申告されているかを確認します。
そして、売上がかなりあるにもかかわらず申告されていない場合には、税務調査の対象となることがあります。
売上や経費の額が大きく変動している人
個人事業主は、基本的に毎年確定申告を行っていることが多いでしょう。
そうすると、確定申告書の数値を前年や前々年と比較し、その内容を検討することができます。
その中で、金額が大幅に伸びていること、あるいは前年から大幅に減少していることが分かります。
売上金額や経費の額の大きな変動がある人は、税務署にとっても非常に関心のあるところとなります。
とりわけ、売上高と経費の金額の変動にズレがあるような場合は要注意です。
売上高は前年より減少しているにもかかわらず、経費の額だけが大幅に増加したような場合です。
あるいは、売上高も経費の額も増加しているものの、経費の方が大きく増えているような場合です。
このような場合は、所得金額を減らして税額を意図的に少なくしようとしていないか、疑わしい状態となります。
その結果、税務署の税務調査が実施されやすくなります。
納税者が自身で申告を行った場合
個人事業主の中には、確定申告書の作成や申告を税理士に依頼せず、自身で行っている人がいます。
確定申告書の作成は決して難しいものではないため、自身でも計算や記載を行うことができます。
しかし、このような場合は税務調査を受けやすいといえます。
税理士に依頼しない場合、納税者は様々な情報を使って確定申告書の作成を行います。
ただ、税法の細かなルールまで熟知しているわけではなく、誤りも多いでしょう。
そのような申告を行っている人に対しては、税務署は税務調査を行い、その内容を確認するケースが多くなります。
税務調査が個人事業主に入ったときの対策
最後に、個人の方が税務調査を受けることとなった場合、どのような対策を行うことができるのでしょうか。
税務調査が入った時に備えての準備や、税務調査当日の対応などを確認しておきましょう。
領収書や帳簿は事前に準備しておく
個人事業主の方は、領収書などの書類の他、作成した帳簿などを保存しなければなりません。
最低でも7年間は、領収書などの書類や帳簿を保管しておく必要があります。
個人事業主がこれらの書類を保管するのは、その帳簿などに必要な情報が記載されているためです。
税務調査では、領収書などの書類に書かれたとおりの処理が行われているか、確認が行われます。
そのため、領収書などは必ず個人で保管しておかなければなりません。
税務調査の連絡を受けてから、これらの書類の準備を始めてもそれは遅いといわざるを得ません。
常に書類の作成や保管には細心の注意を払い、いつ税務調査が行われてもいいようにしておきましょう。
冷静に税務調査に対応する
税務調査当日は、税務署員が作成した帳簿や、その取引の基となっている領収書を調べます。
税務署員は、あくまでも納税者が不正を行っているのではないかという視点で様々な書類をチェックしていきます。
そのため、中には税務署員に不信感を抱くような人がいるかもしれません。
しかし税務調査は、不正がある人だけを対象とするものではありません。
税務署員からの質問には、冷静に対応するようにしましょう。
税理士に依頼する
税務調査が実施されることとなった場合、税理士に税務調査の立会いを依頼するのも1つの手です。
税務調査の立会いを税理士に依頼すれば、税務調査での不安を軽減することができるでしょう。
また、税理士は税法の知識が豊富であり、税務署員との折衝も安心して任せることができます。
税理士に依頼することで、追徴課税の対象となる金額を減らすことができるとも考えられます。
まとめ
個人事業主の方が確定申告をした場合、その人は後日、税務調査を受ける可能性があります。
税務調査は、会社に対してのみ行われるものではなく、個人にも実施されることに注意しましょう。
税務調査を受けることとなった場合、税法の知識がないと税務署の主張に対抗することはできません。
そのため、税理士に立会いを依頼し、税務署との折衝を行ってもらうのがよいでしょう。