最終更新日:2025/3/19
設立時取締役とは?取締役との違いや役割・選任方法や登記まで徹底解説します!
この記事でわかること
- 設立時取締役とは何か
- 設立時取締役の人数
- 設立時取締役と発起人の違い
- 設立時取締役と定款について
会社を設立する際に選任されるのが「設立時取締役」です。
設立時取締役は、会社設立にあたって必要な調査を行い、会社設立後は取締役として会社の運営を行う重要な役職です。設立時取締役は会社法に基づいて選任され、登記が行われる役員です。
この記事では、設立時取締役の基礎知識や人数の制限、発起人や一般の取締役との違い、選任方法、さらには定款への記載や登記の手続きについて、初心者にもわかりやすく解説します。これから会社設立を検討している方や、役員選任に関わる方にとって役立つ情報をお届けします。
目次
設立時取締役とは?
設立時取締役とは、法人の設立時に「取締役」として選任されて登記されている人のことです。まずは、設立時取締役についての基礎知識を解説します。
会社法上の設立時取締役
設立時取締役とは、会社法で規定された役員です。そのため、設立時取締役については登記が必要です。
設立時取締役については会社法第三十八条の冒頭で規定されています。
内容は「発起人は出資をしたあと遅滞なく設立時取締役を選任しなけれければならない」というものです。ポイントは「出資をしたあと遅滞なく」の部分です。
設立時取締役は、出資金の払込みをしたあとに選任します。特に厳格な期限は定められていません。
設立時取締役の役割
設立時取締役の主な役割は、会社設立のための設立事項の調査と、設立時代表取締役の選定です。
前者の「設立事項の調査」に関しては会社法で定められています。簡単に説明すると、会社設立の際のお金に関する調査です。
設立時取締役が調査をしたあとに、会社を設立して法人登記を行うという流れになります。
設立時代表取締役の選定も、設立時取締役が行います。
なぜ設立時取締役が必要なのか
設立時取締役を置くことで、会社法で定められた調査が適切に行われ、設立後スムーズに会社を運営できる土台が作られます。
会社がまだ法人登記されていない段階で責任の所在と権限を明確にすることは、将来的な会社運営の安定に不可欠です。そのため、設立時取締役の選任が必要とされています。
設立時取締役の重要な業務の1つに、代表取締役の選定があります。設立後に誰が代表者なのか不明な法人だと、社会的信用を得ることはできません。そのため、こうした重要な人事を決める意思決定機関としても、設立時取締役は非常に重要な役割を担っています。
設立時取締役の人数について
設立時取締役の人数については決まりがあるのでしょうか。ここからは、設立時取締役の人数について解説します。
人数に上限はない
設立時取締役の人数は会社の形態によって異なります。
株式譲渡制限会社(非公開会社)の場合、取締役会を設置しなくてもよいため人数の制限はありません。株式譲渡制限会社とは、全株式の譲渡が制限されている会社のことです。譲渡の際には、取締役会もしくは株主総会の承認が必要になります。
株式譲渡制限会社の場合は、設立時取締役は1人いればいいということになります。もちろん、10人でもそれ以上でも法律的には問題ありません。
公開会社を設立する場合は、取締役会を設置しなければならないため取締役は3人必要で監査役も必要です。
取締役を多くするリスク
前述のとおり設立時取締役の人数に上限はありません。つまり、設立時取締役に何人指定してもいいのですが、取締役を多くするとさまざまなリスクが生じることは知っておく必要があります。
まず、取締役の数が会社の規模に合っていない場合には「実態が伴っていない」と判断される可能性があります。また、銀行融資を受ける場合、取締役の個人情報も調査されるケースがあるため、人数が増えればその分だけ信用情報に問題が発生するリスクが高くなります。
取締役の人数は、会社の実態に合わせて適切に設定しましょう。経営に関わるかよくわからない人をとりあえず取締役にするような判断は賢明ではありません。
設立時取締役と発起人・取締役の違い
会社設立時には、設立時取締役以外にも、発起人というポジションがあります。また、設立時取締役と取締役の違いはどのようなものなのでしょうか。ここでは、設立時取締役について発起人と取締役の違いを詳しく解説します。
設立時取締役と発起人の違い
会社設立をするときには、設立時取締役とは別に発起人がいます。
発起人とは、会社設立を行う際に、資本金の払込みや定款の作成・認証などを行う人のことです。発起人は個人である必要はなく、法人であっても会社の発起人になれます。
つまり、発起人は出資金というお金を出し、そして、定款を作って会社を設立する人です。設立後はその会社の株主になります。
それに対して、設立時取締役は会社設立の際の調査と代表取締役の選定、そして、設立後は取締役として会社の運営を行います。また、設立時取締役は、必ず個人である必要があり法人が設立時取締役に選任されることはありません。
設立時取締役と取締役の違い
設立時取締役は、会社の設立時に選任された取締役を指します。一方で、一般的な取締役は設立後の株主総会などで選任される場合が多く、選任方法とタイミングに違いがあります。
設立時取締役は、会社がまだ設立登記されていない段階で発起人によって選任されます。一方で、取締役はすでに存在している会社の取締役を意味します。どちらも会社法上の役員であり、法務局に登記が必要という点は同じです。
設立時取締役は定款に記載する?
設立時取締役は定款に記載が必要なのでしょうか。会社設立時の定款についてのルールを確認しましょう。
設立時取締役は「任意的記載事項」
設立時取締役に関する記載は、会社の定款で必ず記載しなければならない絶対的記載事項ではありません。
設立時取締役については、任意的記載事項であるため定款に記載しなくても特に問題はありません。
ただし、設立時取締役という重要なポジションに誰が就いているのかを明確にするために、定款に記載しておいたほうがいい項目といえます。
設立時取締役の選任
ここからは設立時取締役の選任について解説します。まず、設立時取締役の選任日はいつなのでしょうか。
設立時取締役の選任日
設立時取締役の選任日は、定款に設立時取締役が明記されている場合は、出資金が入金されたときに設立時取締役に選任されたとみなします。これは会社法で規定されています。
つまり、設立する会社の出資金が払い込まれたという事実をもって設立時取締役になるということです。
この選任日から、設立時取締役として会社法上の責任を負う立場となります。
設立時取締役の選任方法
設立時取締役は、発起人の議決権の過半数で選任されます。そして、前述のとおり、定款で設立時取締役等を定めているケースでは、出資が完了したときに設立時取締役が選任されたものとみなされます。
通常の取締役であれば、株主総会決議で決定しますが、設立時取締役を選任する段階では会社はまだ登記されていないため、株主も株主総会も存在しません。そのため、発起人の議決権の過半数で選任します。
設立時取締役の辞任・解任
設立時取締役は、取締役と同様に解任や退任、辞任ができます。
たとえ会社設立の手続きの途中であったとしても、辞任や解任が可能です。設立時取締役が「辞任する」と意思表示したら、発起人が「辞任を拒否する」権限はありません。
設立時取締役は、会社の従業員ではなく会社と委任契約を結ぶ立場です。設立時取締役の辞任について会社法に規定はありませんが、民法の規定にしたがい、辞任の意思表示をすることでいつでも辞任できます。
また、設立時取締役は発起人の議決権の過半数をもって解任することができます。選任も発起人によって行われ、解任する場合も発起人の議決となります。
解任の場合は、本人の意思表示は必要なく発起人による過半数の議決があれば解任されます。解任の決議が可決された場合は、本人の意思に関係なく設立時取締役としての地位を失います。
設立時取締役の登記
設立時取締役は、会社法上の取締役であるため会社設立後は法務局に登記する必要があります。設立時取締役の登記について解説します。
設立時取締役は2週間以内に登記する
会社が設立された後、取締役については法務局で登記しなければなりません。選任した場合だけでなく、解任や辞任の場合も必ず登記が必要です。
この登記は設立時取締役の選任が行われてから2週間以内に法務局で行う必要があります。
登記の手続きは、設立時取締役に選任された人ではなく会社が行います。
会社設立後の設立時取締役
設立時取締役は、会社設立時の取締役であると前述しました。では、会社を設立したあとの設立時取締役の地位はどうなるのでしょうか。
設立時取締役は取締役か代表取締役になる
設立時取締役として登記された取締役は、辞任や解任がない限り、会社設立後はそのまま取締役もしくは代表取締役になります。
設立時取締役という呼び方をしますが、決して設立時のみの取締役というわけではありません。多くの場合、設立時取締役は、設立後は取締役として会社の経営を行います。
設立時取締役は、会社の設立時から深く会社に関わる立場にあります。そして会社設立後は他の取締役と同様、会社法上の責任を負う取締役(代表取締役)となります。
設立時取締役は会社を設立するときに選任される重要ポスト
設立時取締役は、会社設立時に選任される取締役です。設立時取締役は発起人によって選任されます。
発起人が資金調達や定款作成を担当するのに対し、設立時取締役は調査や法人設立後の会社運営を担当します。設立時取締役の人数は会社形態によって異なりますが、取締役の人数に上限はありません。そして、会社設立後は取締役として活動を継続するケースがほとんどです。
設立時取締役は会社法上の役員であるため、選任や辞任といった変更が発生した場合は法務局での登記が必要です。