最終更新日:2025/2/25
電子定款を自分でできる!画像で解説認証ガイド

ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネルを運営。
PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-mori
YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック
この記事でわかること
- 電子定款を使った定款認証が画像でわかる
- 電子定款のメリット・デメリット
- 電子定款と紙定款の違い
電子定款認証の流れを実際の画面を見ながらわかりやすく解説します。初心者の方でも電子定款認証が自分でできる完全ガイドです。
また、電子定款のメリット・デメリット、紙定款との違い、電子定款の利用に必要な準備や手続きの注意点、さらに専門家に依頼する際のポイントについても解説します。会社設立で電子定款認証をしようと考えている方は必見の内容です。
目次
電子定款とは何か
電子定款とは、会社の基礎である「定款」を紙ではなく電子データで作るというものです。定款認証の際にさまざまなメリットがあるため、広く利用されています。
電子定款のメリット
電子定款のメリットは主に以下の点です。
- 印刷不要
- 定款認証の印紙代を節約できる
- 手続きがスムーズ
まず、電子定款は電子データで定款を作成し保存するため、紙に印刷して保管する必要がありません。結果や収納スペースという点でも電子定款は便利です。
また、定款認証を受けるときに必要な収入印紙代が電子定款ではかかりません。
次に、電子定款での定款認証を行う場合、公証役場に足を運ばずに定款認証を終えることもできるため、手間がかからずスムーズです。
電子定款のデメリット
さまざまなメリットがある電子定款ですが、デメリットについても確認しましょう。
- PCとネット環境が必要
- PCとネットのスキル
- 法的知識
まず、電子定款を作成して公証役場に送付するためには、PCとネット環境が必要です。スマートフォンやタブレットPCだけでは手続きはできません。PCとネット環境がない場合は、紙定款を利用することになります。
また、電子データで定款を作成し、オンラインで公証役場に送付するための最低限の知識が必要です。電子署名や法務局が提供しているシステムを使えるだけのPCとインターネットの知識がなければ電子定款での認証はハードルが高くなります。
そして最後に、自分で電子定款を作成して認証を受けるためには、法的な知識も必要です。公証人との面談では、法律的な確認をされるケースもあるため、定款や会社に関する最低限の法的知識は欠かせません。
紙定款との違い
電子定款と紙定款の違いは、保存方法と定款認証の手続きの違いです。
電子定款は電子データで保管しますが、紙定款は印刷して保管します。認証手続きは、電子定款の場合はオンラインで行いますが、紙定款の場合は公証役場に定款を持参して行います。
電子定款の利用率は9割を超えている
電子定款の利用率は令和5年の時点で9割を超えており、紙定款での定款認証を大きく上回っています。電子定款には、認証手続き時の便利さや費用面でのメリットがあるため、利用が広がっているようです。
法的な効力は紙定款と同じ
電子定款と紙定款は、認証手続きの流れや保管方法などに違いがありますが、法的な効力はどちらも同じです。
形式が違うだけで、定款の重要性や法律的な意味合いなどは変わりません。
電子定款は自分で作ることができる
電子定款は、自分で作成することができます。決して簡単な作業ではありませんが、自分で作成して認証手続きまでクリアすることができます。
電子定款作成と認証の流れ
電子定款の作成の流れは以下のとおりです。
- Wordなどで定款を作る
- 文章をPDFファイルにする
- 電子証明書を発行する
まず、定款の本文を作ります。絶対的記載事項・相対的記載事項・任意的記載事項を必ず記載してください。記載事項に関しては以下の記事で解説しています。
完成した定款はPDFに変換します。そして、電子証明書を発行して定款のファイルに貼付します。
ここまでが電子定款作成の大まかな流れです。
電子定款はオンラインで申請する
電子定款は、紙に印刷する必要がありません。定款認証の手続きでは、オンラインで公証役場にファイルを送付します。保管も電子データですので、プリンターや紙の用意は必要ありません。
画像で解説!電子定款の定款認証ガイド
電子定款の認証が便利だとわかっても、経験がない手続きは不安な面もあるでしょう。そこで、電子定款認証の流れを画像で解説します。
電子定款の認証に必要な物
電子定款の認証手続きをする前に、まずは、必要な書類をチェックしましょう。
定款認証の必要書類については、囲みの下のリンク先で詳しく解説しています。電子定款・紙定款それぞれの必要書類について詳細を知りたい人は、参考にしてください。
- 印鑑証明書
- 登記事項証明書
- 実質的支配者となるべき者の申告書
- 実質的支配者となるべき者の本人確認書類
- 委任状
- 代理人の本人確認書類
- 発起人の身分証明書
- 記録媒体(CD-R等)
電子定款の認証ガイド
画像を使って電子定款の認証をひとつひとつ一緒に進めていきましょう。どこよりもわかりやすい電子定款認証ガイドです。
- 公証役場へ連絡して詳細を確認・予約
- 定款案の送付
- 申請用総合ソフトのインストール
- 料金の支払い
- 定款の原本を受け取る
電子定款の場合の定款認証の大まかな流れは以上です。では、次はひとつひとつの手続きについてさらに詳しく解説します。実際の手続きをイメージしながら読み進めていきましょう。
「Wordで定款は作れたけど、電子認証ってどうすればいいのかわからない」という方に向けて、実際のPC画面のサンプルを使いながら、電子認証の進め方を解説します。
公証役場へ連絡して詳細を確認・予約
まずは、公証役場に連絡をします。公証役場では、定款認証以外にもさまざまな業務を行っています。そして、ひとつの公証役場に複数人の公証人が在籍しています。そのため、何の連絡もなしにいきなり定款を送ると、混乱を招きます。
必ず、事前に公証役場に電話で連絡をしてください。公証役場の管轄や場所、連絡先はWebで簡単に調べることができます。
定款認証を受ける公証役場は、本店所在地を管轄する都道府県内の公証役場であればどこでも構いません。
ただし、電子認証を行った後、定款を公証役場に直接受け取りに行く場合は、公証役場の場所に注意しましょう。自宅から遠い公証役場で手続きを進めてしまうと、受け取りに行くときに時間や手間がかかります。受け取りに便利な公証役場をWebで確認して進めるようにしてください。
とはいえ、電子定款の認証はオンラインですべて完結させることもできます。
オンラインで送付する
続いて、作っておいた電子定款のPDFを公証役場にメールなどで送付します。送付してから確認が終了するまでの間に、専用ソフトのインストールをしておくといいでしょう。
電子定款の認証には「登記・供託オンライン申請システム」を利用します。このシステムを使うためのソフトが「申請用総合ソフト」で、どちらも無料です。
引用元:登記・供託オンライン申請システムとは | 登記・供託オンライン申請システム 登記ねっと 供託ねっと
「登記・供託オンライン申請システム」で電子定款認証をするためには、必ず「申請用ソフト」が必要です。インストールするのは、システムではなく申請用ソフトなので間違えないようにしてください。
インストールの方法は「ソフトウェアのダウンロード|登記ねっと 供託ねっと」で詳しく解説してあります。
電子認証の申請
定款の事前チェックが終了し、ソフトのダウンロードができたらいよいよ電子定款認証の手続きをしていきます。
ここからは実際に申請用総合ソフトを使った電子認証の手続きを、パソコン画面を使いながら解説します。
まず、デスクトップにある申請用総合ソフトを起動してください。
続いて、以下の画面にID・パスを入力してログインします。
ログインすると、申請用総合ソフトの画面が表示されます。上部のメニューバーの左端にある「申告書作成」をクリックすると下記のような画面になります。
ここから「申請様式一覧選択」画面の「電子公証」をクリックします。すると、下記の赤枠のように複数の項目が表示されます。一番上にある「電磁的記録の認証の嘱託」を選んで「選択」をクリックしてください。
すると、下記のような画面が表示されるので、赤枠で囲った箇所を埋めていってください。
入力項目や選択肢が複数あるため難しいと感じるかもしれませんが、下表を参考に進めてください。
件名 | とくに決まりなし。こだわりがなければ会社名の記載でOK |
---|---|
申請区分 | 定款認証のみの申請 |
嘱託人情報 | 電子公証を依頼する本人(またはその代理人)の情報 |
実質的支配者 | 実質的支配者の情報を入力 |
公証人氏名 | 法務局名、公証役場名、公証人をプルダウンから選択 ※事前確認をしてもらった公証人を選択 |
すべての入力が終わったら、上部のメニューバーから「完了」を選びます。画面で保存の確認が求められ「はい」をクリックすると申請書が保存されます。
次に、処理状況表示という画面に変わるので、メニューバーの右端の「電子公証」を選択します。すると、保存した申請書が表示されます(画面では複数の案件が表示されていますが、自分で会社設立をする場合は1つだけです)。
申請書をクリックすると、上部のツールバーから「ファイル添付」を選択できるようになります。選択すると次のような画面になります。
次に「ファイル追加」をクリックし、ファイルを選択する画面を表示させます。ここで、事前に公証役場で確認をしてもらった定款を選んでください。ファイル形式はPDFファイルです。
PDFが添付されるとクリップのアイコンが付加されます。このファイルを選択して、上のメニューバーから「署名付与」を選びます。
新しく「電子証明書ファイルの選択」というウィンドウが開きます。ここで、事前にPCに保存していた電子署名のファイルを選択します。これが、電子定款認証での印鑑証明のようなものです。
続いて、電子証明書を作成する手順の中で決めたパスワードを入力します。
ここで問題がなければ、署名が完了したというメッセージが表示されます。ただし、署名が完了しただけなので、定款認証の手続きはまだ続きます。
署名が無事完了すると、ファイル選択の画面に戻ります。今度は、上のメニューバーから「申請データ送信」を選択します。
ここで「送信対象」のチェックボックスにチェックを入れて、送信ボタンをクリックしてください。すると送信確認の画面が出るので「OK」をクリックします。無事に送信できれば、定款の電子認証は完了です。
ここまでが一連の流れとなります。すべてオンラインで済ませることができるため、公証役場に直接出向く必要はありません。
受け取りをする
電子定款認証の手続きが終了したら、公証役場に直接受け取りに行くか、テレビ電話で公証人と面談をした後に郵送で電子定款を受け取るかを選んでください。
無事、認証手続きが終了したら、法務局の手続きに移行します。
電子定款認証にはどのくらい時間がかかるのか
電子定款の認証手続きにはどのくらいの時間が必要なのでしょうか。できれば定款認証はスムーズに終わらせたいと考える人も多いでしょう。
電子定款の認証に必要な時間は?
電子定款の認証は、公証人との面談が終了し、問題がないと判断されればその場で終了します。定款の作成や必要書類をそろえておけば、定款認証そのものに時間がかかるということはありません。
電子定款認証の費用
電子定款の認証手続きにかかる費用はどのくらいなのでしょうか。費用についても事前にチェックしましょう。
電子定款にかかる手数料
電子定款で定款認証を行う場合の手数料は、下表のとおりです。会社の資本金等の条件で手数料は変わります。
資本金の額等が100万円未満の場合 | 3万円 1万5,000円(発起人が3人以下、法人出資でない、出資者が発起人のみ、取締役会がない会社の場合) |
---|---|
資本金の額等が100万円以上300万円未満の場合 | 4万円 |
その他の場合 | 5万円 |
※上記以外に、データ保存手数料300円・提供手数料1通700円・書面交付手数料20円×枚数を支払います。
電子定款を法務局に提出する方法
定款認証を受けたら、電子定款を法務局に提出して会社設立の登記をします。このとき、どうやって提出するのでしょうか。
オンライン申請ができる
電子定款の場合、法務局にもオンラインで申請ができます。完全オンラインで登記の申請ができるため、とても便利です。「法人設立ワンストップサービス」を利用すれば、法人設立のさまざまな手続きをまとめて済ませることができます。
電子定款認証のポイント
電子定款で定款認証手続きをする場合のポイントをご紹介します。スムーズに定款認証を済ませるためには事前の準備が大切です。
公証役場への連絡
電子定款を利用した定款認証では、公証役場に直接行かなくても認証を受けることができます。だからといって、作成した定款をいきなり公証役場に送付するというものではありません。
必ず、事前に連絡をして予約をしてから手続きを進めてください。
電子証明ファイルの作成
電子定款で定款認証をする際には、電子証明が必要です。これは、印鑑証明のようなもので非常に重要なプロセスです。
電子証明書の作成は難しいものではありませんが、慣れていないとイメージがしづらいかもしれません。電子定款を作るときに、電子証明ファイルについてあらかじめ調べておきましょう。
電子定款認証を専門家に依頼する
電子定款の認証は専門家に依頼することができます。自分で作るのはハードルが高いという人は、無理せずプロに頼るのも良い方法です。
司法書士に依頼できる
定款認証を専門家に依頼するときは、司法書士もしくは行政書士の資格を持つ人に相談しましょう。司法書士であれば、登記の手続きまですべて依頼できます。
定款認証だけを依頼するケースもありますが、定款認証を含んだ会社設立の手続きをすべて任せることもできます。
複雑な書類作成をすべて任せられる
専門家に依頼すれば、自分で調べる手間や申請の手間をすべて省くことができます。
もちろん、PCのスキルも法律のことも自分で学ぶ必要もありません。手続きが不安な場合やスムーズに会社設立をしたい場合は、専門家に任せるのが一番確実です。
電子定款ならオンラインで定款認証ができる
電子定款は、紙定款と比較して印紙代が不要、オンライン手続きが可能など多くのメリットがあります。一方で、PCスキルや法的知識が必要とされるため、ハードルが高いと感じる人もいるでしょう。
ですが、電子定款の作成・認証の具体的な手順や注意点を理解し、かつPCとネット環境があれば自分でもできる手続きです。
電子定款認証を自分でしようと考えている場合は、事前に必要書類やソフトなどの準備を整え、定款を作成してから公証役場に予約をして手続きを進めましょう。スムーズな会社設立のために、ひとつひとつチェックを怠らないことが大切です。