最終更新日:2025/3/6
執行役員と部長の違いは?役割や年収や名刺の表記まで解説します

ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
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この記事でわかること
- 執行役員と部長の基本的な違い
- 求められるスキルや役割の違い
- 年収や将来性の比較
執行役員と部長、それぞれの役割や権限にはどのような違いがあるのでしょうか?
この記事では、執行役員と部長の違いをはじめ、執行役員と部長の年収の差や仕事をする上で求められるスキル、その将来性まで詳しく解説します。
会社の役職にまつわる疑問を解決します!
目次
執行役員と部長の基本的な違いは?
執行役員と部長は、どちらも会社の中で重要な役割を果たすポジションですが、その役割や権限には大きな違いがあります。
執行役員は経営に深く関与し、会社全体の方針を把握しそれを実現するための責任を担っています。また、取締役と現場の社員との橋渡しをするポジションでもあります。一方、部長は主に各部署の責任者であり、部内での人選や実務、その他の管理を行います。
執行役員とは
執行役員は、会社の取締役が決定した経営戦略を現場に伝えて実行するというポジションです。執行役員は、取締役と部長の中間の役割であり、取締役会によって選任されます。
会社の方針を決定するのは取締役です。そして、執行役員はその決定に基づいて具体的に業務を"執行”する役員という意味合いです。ですので、あくまでも会社全体を見て大きな目標達成を目指しています。取締役のように会社法上の役員ではありませんが、役職としては取締役に次ぐ高い地位に位置します。
部長とは
部長は、自らの担当部署を統括する責任者です。わかりやすく言えば、現場の最高責任者のことです。現場のグループである「部」の「長」ですから部長なのです。
部長は、部門内の運営や実務、人選を行い現場を指揮します。社員の指導や部門の目標達成のための計画立案、進捗管理を行うなど、現場のリーダーとして役割を果たしています。部長は経営戦略の実現に貢献する役職ではありますが、役割の範囲は担当部署内のみです。
執行役員と部長の違いを役割・権限から解説
執行役員と部長は役割や権限が大きく異なります。その違いをまとめたのが下表です。
執行役員 | 部長 | |
---|---|---|
予算 | 会社全体の予算に関与する | 担当部署のみ |
コミュニケーション | 会社を代表する対外的なコミュニケーション | 担当部署・担当業務のみ |
リスク管理 | 会社全体のリスク管理 | 部内のリスク管理 |
経営戦略 | 関わる | 担当部署内のみ |
視点 | 長期的 | 短期的・中期的 |
人選 | 原則としてしない | 担当部署内の人事権を持つ |
このように、執行役員と部長には大きな違いがあります。どちらも会社内での地位が高いことは間違いありませんが、その役割と権限は大きく異なっています。
一般的には執行役員が上位
一般的には、執行役員と部長であれば、執行役員の方が社内での地位は上です。
執行役員は取締役などの登記が必要な役員ではありませんが、取締役に次ぐポジションとして認識されています。執行役員が企業全体の経営を意識するポジションであるのに対して、部長は部門運営に特化しています。
また、執行役員には、部長を含む各部門を統括する役目もあります。
執行役員と部長は役割と権限が違う
執行役員と部長は、その役割や権限がはっきりと違います。
執行役員は、経営陣が定めた決定を実現するため、会社全体を俯瞰・調整し、会社として進むべき方向に向かわせるという役割や権限を持っています。
たとえば、新規事業の推進、コスト削減計画、環境に応じたリスク管理など、会社全体を見て対応するのが執行役員の役割です。
一方で、部長は自らの部署を統括する現場のリーダーです。部長は、担当部署を把握する必要があり、部署に与えられた短期的な目標の達成に注力します。
部長は部署内のプロジェクトの計画を立て、社員の人選を行いつつ実行する責任を負います。たとえば、営業部門の部長であれば、営業目標の達成、顧客対応の向上、部員の育成などです。
このように、部長の役割は、部門内にとどまっています。リスクに関しても、部門内での課題やリスクに限定されています。一方で執行役員は、会社全体のリスク管理を行います。
執行役員の役割と権限
執行役員は、企業の経営戦略を実行するのが主な役割で、経営陣と現場をつなぐ重要なポジションでもあります。
企業の規模や業種により若干異なる場合がありますが、社内の重要なポストであり重要な権限を持っています。
執行役員は経営陣との橋渡しをする
執行役員は会社の上層部である経営陣と実際に現場で働く社員の間の橋渡しをするという重要な役割を担います。
取締役の決定を執行役員が現場に伝え、また、現場からのフィードバックを経営陣に報告して会社全体の調整をしているのです。
このように、執行役員が、取締役と現場の社員の橋渡し役としてバランスをとることで、会社がスムーズに動くようになります。つまり、執行役員は、社内のバランサーとしての機能を持っているのです。
社内全体を俯瞰で見ている
執行役員は、会社全体の動きを把握している必要があります。
会社や会社を取り巻くさまざまな環境を俯瞰で見た上で、全体的な流れを把握して動く必要があります。ひとつの部署名やプロジェクトに肩入れするのではなく、全体を俯瞰で見ているからこそ、調整役としての役割をこなすことができるのです。
長期的視点を持つ
執行役員は、今起こっていることに目を向けるだけでなく、長期的視点を持つ必要があります。
もちろん、数カ月・数年先を見越して行動することも求められますが、場合によってはさらに先の5年10年というスパンで会社やそのプロジェクトを動かしています。
リスク管理と経営判断
執行役員は、幅広いリスク管理を行いつつ重要な判断を下す立場です。もちろん、会社の重要事項を決定するのは取締役ですが、執行役員にも重要な決定をする権限があります。
対外的なコミュニケーション
執行役員は、社内の各部署の部長とのコミュニケーションだけでなく、社外の人間とのコミュニケーションを行う立場です。
会社の上層部に位置する役職であるため、対外的なコミュニケーションを行う際には「会社の顔」としての責任を負うことになります。
また、執行役員は会社全体の経営などを把握する立場にあるため、取引先などと大きな契約交渉をするケースもあります。部長は部の代表であるのに対して、執行役員は会社の経営陣の一人として他社との関わりを持ちます。
部長の役割と権限
ここからは部長の役割と権限について説明します。部長は会社の中では中間管理職というポジションです。部長は、自分が担当している部署全体を管理する立場にあります。もちろん、会社によって役割は異なりますが、ここからは一般的な部長職について解説します。
担当部署の管理がメイン
部長の役割は、担当部署の管理・運営を行うことです。部署に与えられた目標や作業を完成させるため、部署の日常業務を監督したり、一般社員が効率よく業務を進められるようサポートしたりします。
会社全体を監督している執行役員に対して、部長は担当部署の管理に特化しています。その上で、社内の他の部署や執行役員などの上層部と連携して業務を進めていきます。
担当部署の人選
部長は、担当部署内で誰がどんな仕事をするのかを割り振って作業を進めます。適材適所な人員配置を行うことで、仕事がスムーズに進むようにしているのです。現場で部内の社員の個性や特徴を把握しているからこそできる仕事です。
部長以下のポストの人事権や、採用に関する人事権を持つことも珍しくありません。
他にも、スタッフの能力の評価や士気向上のための職場環境作りなども部長が行います。
具体的な指示を現場で出す
部長は、部署に与えられたタスクに優先順位をつけたり、各従業員のフォローをしながら的確な指示を出したりする立場にあります。
部署内で「誰にどの業務を割り当てるのか」や「どの作業から行うのか」といった具体的で細かい指示を出します。
一方で、執行役員が一般社員に個別に指示を出すということはあまりないでしょう。
対外的な役割の違い
部長と執行役員には社内での役割に違いがありますが、社外の取引先などとの関係においてもその役割は異なります。
部長が取引先や協力会社と直接的なコミュニケーションを取る場合、その内容は自らの担当部署の業務に限定されます。
執行役員と部長の違いをさらに深掘り!
ここまで、執行役員と部長の違いを解説してきました。以下では、執行役員と部長の職位の違いや求められるスキルについてさらに深掘りしていきます。
職位の違いと社内の立ち位置
執行役員は、経営陣の一員として会社の方向性を意識する立場にあります。
一方、部長は経営陣ではなく現場の責任者であり、現場に密着した職位だと言えます。ただし、一般社員とは異なり、執行役員とのコミュニケーションや他部署との調整を行い、スムーズな業務の進行を行います。
つまり「執行役員と部長のどちらがより偉いのか」と尋ねられた場合、一般的には「執行役員の方が偉い」ということになります。
執行役員と部長それぞれに求められるスキル
社内での地位も役割も違う執行役員と部長ですが、求められるスキルにはどのような違いがあるのでしょうか。
執行役員に求められるスキル
執行役員には、会社全体を俯瞰で見た上での意思決定と統括力、そして、上層部と現場との調整役としてのスキルが求められます。
執行役員は、現場の従業員に対して直接的に指示をしたり個別のフォローをすることはあまりありません。求められているスキルは、全体のバランスをとるためのコミュニケーション能力や調整力です。
戦略的思考力 | 長期的な視点を持って市場や業界の動向を分析する能力 |
---|---|
リーダーシップ | 取締役と中間管理職の橋渡しを行い、各部署の連携を促進するリーダーシップ |
交渉力 | 大口の取引先や株主とやり取りする高い交渉力 |
財務知識 | 会社の財務諸表を理解し、利益とコストを把握した上で判断を下す能力・知識・経験 |
部長に求められるスキル
部長には、現場の責任者として、また、中間管理職として現場の管理・運営を行うスキルが求められます。また、部署内のモチベーションを高めるためのフォロースキルも必要です。
部長は現場の従業員と共に働くポジションであり、現場での細かい指示や従業員のフォローをしています。
スキル | 説明 |
---|---|
現場管理・運営スキル | 現場の責任者として、また中間管理職として現場の管理・運営を行うスキル。部署内のモチベーションを高めるためのフォロースキル |
実行力と統率力 | 経営戦略を具体的なプランに変換して、実際に部署内で実行する行動力と統率力 |
コミュニケーション能力 | 現場の従業員や他部署、執行役員との円滑な意思疎通を図り、部門全体の連携を強化するコミュニケーション能力 |
問題解決能力 | 現場で発生するさまざまなトラブルに対処する柔軟な対応力。トラブル発生時の従業員へのフォロー |
マネジメント力 | 部署内での人員配置や育成、チームのパフォーマンス向上を計画的に進める能力 |
執行役員と部長の将来性の違いは?
執行役員も部長も管理職であり、社内で上位の地位にあることは間違いありません。では、両者の将来性はどうなのでしょうか。
執行役員から取締役への昇格の可能性
執行役員は、取締役への登竜門のようなポジションです。
もちろん企業によって異なりますが、いきなり取締役にするのではなく部長と取締役の中間の位置にある執行役員をいったん経験してから、取締役に昇進するというケースも少なくありません。
部長から執行役員に昇進する可能性
部長は、担当部署の最高責任者ですから、現場の社員としては上位の役職であることは間違いありません。そして、さらに昇進する可能性もあります。
部長は将来、執行役員に登用される可能性があるポジションです。部長としての働きが認められれば、より経営陣に近い執行役員のポストも見えてきます。
執行役員と部長の年収比較:実際どれくらい差があるのか?
最後に、気になる年収の差について解説します。執行役員と部長の年収はどのくらい違うのでしょうか。
平均年収は執行役員の方が高い
一般的には、平均年収は執行役員の方が高い傾向にあります。
労務行政研究所の調査では、部長と執行役員の年収は以下のとおりです。
専務執行役員 | 3,434万円 |
---|---|
常務執行役員 | 2,404万円 |
非役付執行役員 | 1,649万円 |
部長(従業員数1,000人以上) | 1,082万円 |
この表から、専務や常務といった役職と執行役員を兼務している場合と、執行役員という肩書きのみの場合では、報酬に大きな差があることがわかります。
一方で、部長の平均年収は非役付執行役員より567万円低く、執行役員の方がより高い報酬となっています。
参考:2023年役員報酬・賞与等の 最新実態(PDF)| 労務行政研究所
執行役員と部長は役割や立場が大きく異なる
執行役員は上層部と現場の架け橋であり、また、経営的視点から会社全体を見ています。対して、部長は担当部署という現場で役割を担っています。
会社内の地位でいうと、執行役員が上位ですが、執行役員と部長が連携することで会社全体の業務がスムーズになります。
執行役員と部長はどちらも会社をスムーズに動かしてプロジェクトを進めるための重要ポストです。両者は、役割や立場は異なるもののいずれも従業員であることは変わりません。