合資会社、合名会社、社団法人、財団法人、NPO法人の違いについて
ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネルを運営。
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YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック
会社設立を考えたときには5つの選択肢がある
これから事業を始める方は、漠然と株式会社の設立を考えるかも知れません。
会社法の改正により、1000万円の最低資本金の制度が撤廃され、株式会社も資本金1円から設立可能となりました。
この意味においては、以前よりも株式会社設立のハードルが下がり、だれでも会社を設立できるようになったといえるかもしれません。
ただし、その代わりに株式会社という組織形態をとるだけでは簡単に信用を得られる時代は終わった考えることもできます。
これから会社設立を考える方は、主に次の5つの法人の形態を検討することができます。
株式会社、合同会社、社団法人(一般・公益)、財団法人(一般・公益)、NPO法人の5種類です。
それぞれの法人形態には当然特徴があり、メリット・デメリットが存在します。
株式会社か合同会社か
通常、法人形態での事業を考えた場合には株式会社もしくは合同会社を選択することになります。
これらは、有限責任法人と呼ばれます。
その名の通り、出資者は限定された責任のみ追うことになります。
具体的には、自分が出資した金額の範囲内で責任を負えば足ります。
これは、自分行った出資の価値がなくなることが最大限のリスクということです。
イメージとしては、せっかく購入した株券が0円となってしまった場合を想像すればよいと思います。
確かに、お金を払って購入した株券が紙切れとなり、だれも買ってくれない状態になってしまうのは、厳しいものがありますが、それ以上の損失はありません。
これに対して、無限責任は当初に投資した金額以上の責任を負う可能性があります。
先物取引に失敗して元本が吹っ飛んだ以上に巨額の負債を抱えてしまうイメージでしょうか。
これから事業を始める際には、上記のようなリスクがありますので、有限責任の形式の法人を選択する場合がほとんどです。
実際には、中小企業の場合、銀行から資金調達を行う際には代表取締役が保証人となる条件が付されるケースがほとんどですから、1人株主で1人社長のような有限責任法人を作った場合でも、出資した金額以上の責任を負う可能性もあります。
税制面での違い
会社を設立して、事業を始めた場合、一年に一回以上の決算が必要なことは誰でも知るところです。
この決算において、税制面での優遇や差異はありません。
社会福祉法人や医療法人など、事業の目的が限定されそれに応じた税制面での優遇を受けることのできる法人格に対して、株式会社と合同会社にはこの様な違いはありません。
基本的に、どのような事業をおこなっても法人税の対象となり利益に対して同一水準での税金の負担が必要です。
会社設立時の違い
次に株式会社と合資会社の設立の違いを見ていきましょう。
株式会社の設立
株式会社を設立する場合には、24万円程度の費用が必要です。
大まかな内訳は、定款認証の手数料として公証人役場へ5万円、印紙税4万円、登記の際に登録免許税として法務局へ15万円です。
このうち、印紙税については、最近導入された電子認証を用いれば節約することができます。
印紙税法が規定されたのは数十年も昔で、現在のような電子による手続きは想定されていませんでした。
なので、実際に紙を用いて手続きを行った場合にのみ課税されることと規定されています。
このため、電子認証を用いた手続きを行う場合、課税の対象外とされるのです。
さらに、これらの手続きを専門家に依頼した場合には、5万円から10万円程度の手数料が発生することになります。
また、上記の法務局への登録免許税は資本金があまり大きくない会社の設立を想定しています。
登録免許税は、資本金の金額に対して1000分の7の割合で発生します。
この割合で金額を計算した際に、15万円に満たない場合については、一律に15万円とされています。
従って、よっぽど大きな資本金を有する会社を設立しない限りは15万円ですむと考えてよさそうです。
ただし、不動産を現物出資した場合など、一気に資本金の金額が大きくなるような場合には注意が必要です。
合同会社の設立
これに対して合同会社を設立する場合には、10万円程度の費用が必要です。
合同会社を作る場合には、公証人役場での定款認証が必要ありません。
収入印紙の金額は4万円と、株式会社と同額ですが、これについては電子認証の場合には節約できることは説明しました。
これに加えて、法務局で支払う登録免許税の金額が6万円となります。
こちらも、株式会社と同様に出資金の金額の1000分の7の登録免許税が必要になりますが、最低金金額が異なります。
最低金が6万円なので、株式会社の場合の15万円と比較した場合、半分以下の金額となります。
広く市場から資金を集めるための形態である株式会社と、限られた人からの出資を集めることを前提とした合同会社では想定される資本金(出資金)の金額が違い、これに伴って登録免許税の最低金額が異なることは当然です。
上記の通り、会社を設立する際の手続き費用については約2倍の金額の開きがあります。
少しでも設立に関する費用を抑えたいという場合には合同会社を選択することが良いかもしれません。
決算公告の義務
決算を組んで作成した財務諸表を一般に公開する必要があるかという点で2つの会社は異なります。
株式会社は、市場から不特定多数の出資者からお金を集めることが前提として制度が設計されています。
従って、1年間の経営成績を示す財務諸表を公表することが義務となっています。
しかしながら、実際の中小企業の実務においては決算公告を行っている会社はまれです。
そのような制度があることさえ知らない代表者の方も多いのでしょうか。
広告の方法については、本来的には非常に重要な事項ですので、登記簿謄本への絶対的記載事項とされています。
本店所在地の記載のすぐ下に、広告の方法が定められています。
広告を官報により行った場合には、その都度数万円の費用が発生します。
一方、合同会社は出資者が限定され、不特定多数の人から広く出資を募ることは想定されていません。
従って、会計の目的の一つである説明責任は重視されず、決算を広告する義務もありません。
毎年数万円の官報費用でも、十年続ければ数十万円の出費になります。
信用力の問題
数年前の会社法改正までは、株式会社の最低資本金は1,000万円とされていました。
そこまでの大きな金額の出資を行えない場合は、300万から設立することのできる有限会社という形態が用意されていました。
このため、「株式会社」というだけで、ある程度の資金力の証明になり、社会的に信頼できる法人形態であるとの認知が進みました。
ところが、有限会社と株式会社が整理され、1円から設立できることとなりましたので、制度を理解している人にとっては株式会社というだけで信用を得ることが難しくなりました。
それでも、一般の多くの人にとっては漠然と株式会社の方がなんとなく良いイメージがあることは事実です。
このメリットを受けるために、株式会社を選択することも一つの考え方かもしれません。
合同会社については、もともと限られた資本主からの出資により会社が設立されること前提としています。
従って、出資金の金額の小さな法人が多く存在しました。
このため、今でも合同会社と言えば小規模で資本力のない、つまり、信用力の低い会社であるとのイメージがあります。
非営利法人について
最初に挙げた5つの法人形態のうち、通常は株式会社または合同会社を選択することになりますが、事業の種類や性質によっては、非営利型の法人を選択した方が良い場合もあります。
非営利型の法人の累計には、財団法人、社団法人、NPO法人の3つがあります。
非営利の意味について
非営利と聞くとどのような内容を想像するでしょうか。
多くの人は、営利を目的としないということは、利益を出さないと勘違いされるのではないでしょうか。
ここでいう営利とは、株主や出資者に対して利益を分配しないということです。
決して、利益を上げる事業をしてはいけないという意味ではありません。
小規模の法人を設立する場合、社員となると同時に代表理事、つまり株式会社でいうところの代表取締役に就任するケースもあると思います。
会社が売り上げをあげて、代表理事に対して役員報酬(給与)を支払うことに全く問題はありません。
基本的に金額の上限もありませんし、通常の株式会社と同様に営業活動を行い社長(理事長)に高い給与を出すことも全く持って問題がないのです。
ただし、株式会社でいうところの株主に相当する社員に対して配当を行うことができません。
これが非営利性の本質的な意味です。
理事長は、法人を運営する報酬としてお金をもらうことはできるが、社員の立場として配当をもらうことができないのです。
小さな会社を設立する際には社員と理事を兼ねることが通例です。
株式会社でいえば、株主と役員は同一の人物であることも珍しくはありません。
金額の大小によって、手取りの変化はありますが、役員報酬でお金をもらおうが、配当でお金をもらおうが受け取る人にとっては大差ありません。
上記の意味においては、「非営利性」という言葉に必要以上に敏感になる必要はありません。
それよりも、その事業を行うために非営利型の法人の方が良いのかどうかを考える方がはるかに重要です。
例えば、少年スポーツのクラブチームを設立する際には、規模がごくごく小さい場合は、人格のない社団であっても特に不都合はありません。
それでも、ある程度人数が増えてくると、取引上法人格が必要となる場合があります。
この時に使用する法人格は株式会社よりも一般社団法人の方がしっくりきます。
クラブの設立者である監督が、監督として業務報酬を受け取るのは自然なことですが、クラブが上げた収益を配当として分配することには抵抗があると思います。
このようなことをしていては、父兄の納得は得られずスムーズな運営は難しいでしょう。
また、各種プロスポーツの運営団体にも同じようなことが言えます。
目的は、そのスポーツの発展にあり、儲かったお金を配当として分配することではありませんから、営利法人の形態によらないほうが世間的な納得も得られやすいです。
ただし、この場合においても、各理事が報酬を受け取れないかというとそうではありません。
実際に、高額の役員報酬を得ている一般社団法人の理事も多くいます。
一般社団法人(財団法人)と公益財団法人(財団法人)
社団法人と財団法人には、一般と公益の分類があります。
どちらも、任意に法人格を作ることはできますが、基本的には最初は一般社団法人(財団法人)になります。
上記で説明した、株式会社や合同会社を設立する手続きと大差なく設立することができます。
ただし、普通に設立しただけでは株式会社等の営利法人と運営上、税制でなんら変わることがありません。
獲得した利益に対しては株式会社と同様の課税を受けます。
これらの法人が公益法人となり、税制優遇を受けるためには公益認定を受けることが必要です。
公益法人になれば、法人税がかからないなどの大きなメリットがあります。
しかし、公益認定を受けることのできる事業はごくわずかであることに加えて、行政の強い監督下に置かれること考えれば、これから事業を始める人にとっては特に検討する必要のない形態かも知れません。
NPO法人について
上記の法人と、まったく異なるのは、法人を設立すること事態にハードルがある点です。
これまで説明してきた法人については、要件をみたし、必要な費用を支払えばだれでも簡単に設立登記を行うことができます。
これに対して、NPO法人は設立の許可を受けなければなりません。
また、理事の人数も10人以上であることが義務となっている等、より公益性の高い設計となっています。
しかし、設立に許可が必要でそれ自体にハードルがあるということは、見方を変えれば行政により一定の公益性が担保されたととらえることができます。
「保健、医療又は福祉の増進を図る活動」や「社会教育の推進を図る活動」など、特定非営利活動として定められた領域の事業を行おうと考えている人にとっては検討の検討すべき法人形態です。
最近は、この法人の形態で福祉や保育の分野で活躍する法人が増えてきました。
取引相手としても、NPO法人であれば安心して取引ができると考えますから、大きなメリットがあります。
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