最終更新日:2024/12/2
株式会社設立の条件を5つ解説!起業時の人数や年齢に要件はある?
この記事でわかること
- 株式会社を設立するための5つの条件
- 株式会社と合同会社の設立条件の違い
株式会社の設立には、資本金1円以上、年齢15歳以上、発起人1名以上といった条件があります。これらに加えて法人登記の手続きも必要です。また、外国人が会社を作る場合には経営・管理ビザの取得も要件になります。
こうして見ると会社設立には多くの条件がありますが、1つ1つの要件をクリアするのは困難ではありません。敷居が高く感じられる法人登記でさえ、自分一人で済ませることが可能です。ここで解説する設立条件を押さえて、ぜひスムーズな起業を実現してください。
目次
会社設立の条件1.資本金は1円以上
会社設立における資本金額の条件は1円以上です。会社を作るには、会社運営の軍資金ともいえる資本金が必要になります。かつての商法には、株式会社の設立要件として資本金1,000万円以上という制約がありました。しかし、2006年の会社法の施行でこの条件は撤廃され、現在では資本金1円から会社設立が可能です。
ただ、設立後の運転資金や社会的信用なども考慮すると、資本金を極端に少なく設定するのは禁物です。とくに株式会社の場合、設立手続きに20万円ほどの費用もかかります。資本金の最低条件が1円だからといって1円で会社を作れるわけではありません。
また、業種によっては許認可の取得に一定以上の資本金が必要なケースもあります。許認可とは、特定の事業の実施を国や自治体に認めてもらう手続きのことです。たとえば一般建設業許可を受けるには、自己資本(自分で集めた返済不要の資金)500万円以上が必要になります。実施予定の事業に資本金の要件があるかどうかは事前に確認しましょう。
会社設立の条件2.年齢は実質15歳以上
会社を設立できる年齢は、実質15歳以上です。会社法に15歳以上と明記されているわけではないですが、民法上の規定や手続き上の制約により15歳以上が実質的な要件となります。会社設立における年齢要件のポイントは、次の2点です。
- 自分の意思のみで設立できるのは18歳以上
- 親などの同意があれば15歳以上で設立可能
自分の意思のみで設立できるのは18歳以上
自分の意思のみで会社を作るには、18歳以上でなければなりません。会社設立は、賃貸借契約などと同様、自らの意思で法的効力を発生させる「法律行為」にあたります。法律行為を行うには成年(18歳以上)である必要があり、会社設立もその制約を受けるというわけです。
親などの同意があれば15歳以上で設立可能
親などの同意がある場合には、未成年でも15歳から会社設立ができます。民法上、親権者(いない場合は後見人)の同意を得れば、未成年者であっても法律行為が可能です。この規定により、18歳未満でも会社を作れることになります。
そのうえで15歳以上という下限があるのは、会社設立の手続きに関わる問題です。設立手続きでは、市町村役場に登録した印鑑とその証明書が必要になります。そしてこの印鑑登録は15歳以上でないとできません。よって、未成年者で会社設立ができるのは「親などの同意がある15歳以上」となります。
なお、起業時の年齢層や平均年齢の推移については、以下の記事をご参照ください。
会社設立の条件3.人数は1名以上
株式会社は1人で設立することが可能です。ただ、内部機関の作り方や業種によって必要な人数が変わる場合もあります。ここでは、会社設立における人数要件のポイントを以下4点に分けて解説します。
- 発起人は最低1人いればよい
- 取締役会を設置する場合は4名以上
- 許認可が必要な事業では要件に注意
- 従業員の数は0人でもよい
発起人は最低1人いればよい
会社設立の企画や手続きを行う人を「発起人」といい、株式会社を作るには最低1名の発起人が必要です。社員が自分だけの株式会社を設立する場合、自身が発起人であり役員(取締役)であり株主でもあるという状態になります。
発起人になることに特別な要件はありません。未成年者や破産者であっても発起人として会社を作ることが可能です。ただ、さきほど解説した年齢要件や後述する取締役の欠格事由には注意する必要があります。
取締役会を設置する場合は4人以上
会社に取締役会を設置するなら、人数要件は4人以上となります。会社法上、取締役会設置会社には最低3名以上の取締役が必要で、加えて監査役を置かなければなりません。とくに上場を目指す場合などには、内部機関の設計も重要になってきます。該当する人は注意しましょう。一方、取締役会非設置会社では、最低1名の取締役がいれば問題ありません。
発起人と同様、未成年者や破産者でも取締役に就任することが可能です。ただ、一定の法律(会社法や金融商品取引法など)に違反した人やその他の罪を犯して禁固刑や懲役刑などを受けた人は、欠格事由に該当して取締役になれない場合があります。
許認可が必要な事業では要件に注意
許認可が必要な事業のなかには、人数に事実上の要件がある業種も存在します。たとえばトラック運送業(一般貨物自動車運送事業)の許可を取得するには、管理者1名、ドライバー5名の最低6名の人員が必要です。資本金の場合と同様、自分が立ち上げたい事業に特定の要件があるかどうかは事前に確認しておきましょう。
従業員の数は0人でもよい
会社設立に従業員の人数要件はありません。先述のとおり、設立人数の最低条件は発起人1名です。従業員がいなくても問題なく会社を作ることができます。従業員を雇用しないで1人で会社を作ろうと考えている人は、以下の記事もご参照ください。
会社設立の条件4.法人登記が必要
会社を設立するには「法人登記」が必要です。法人登記とは、設立する会社の情報を法務局に登録する手続きを指します。一般に、登記申請から完了までの期間は1週間ほどです。ただ、法人登記にはさまざまな準備が必要で、設立手続き全体にかかる期間は最低でも2~3週間は見込まれます。
さらに、法人登記の完了後には税務署や年金事務所などに届出を行わなければなりません。各種の届出には提出期限もあるため注意が必要です。以下では、株式会社の設立手続きから届出までの大まかな流れを見ていきましょう。
株式会社の設立手順は5ステップ
株式会社設立までの流れは、次の5ステップです。
株式会社設立までの流れ
- STEP1会社概要を決める
- STEP2法人印(会社の印鑑)を作成する
- STEP3定款の作成・認証を行う
- STEP4出資金(資本金)を払い込む
- STEP5設立登記の申請を行う
1.会社概要を決める
まずは、会社名や事業目的など、会社の基本事項を決めます。この段階で決めておく会社概要の例は、次のとおりです。
- 商号(会社名)
- 事業目的
- 本店所在地
- 資本金の額
- 役員構成
- 会社設立日
- 事業年度
とくに会社名については「同じ住所で同じ社名を登記できない」「特定の文字や記号は使用できない」などの条件があります。株式会社の場合、社名に「株式会社」を含めることも必須要件です。基本事項とはいえ、どの項目も慎重に決める必要があります。
2.法人印(会社の印鑑)を作成する
会社名を決めたら、法人印(会社の印鑑)を作成します。代表的な法人印は、以下の3種類です。とくに「会社代表者印」は登記申請でも必要になる重要な印鑑です。他の印鑑とあわせて早めに専門業者に作成を依頼しましょう。
- 会社代表者印(会社の実印にあたる印鑑)
- 銀行印(銀行との取引で使う印鑑)
- 角印(主に日常業務で使う印鑑)
3.定款の作成・認証を行う
会社の基本ルールをまとめた書類を「定款」といい、株式会社を作るには定款の作成・認証が必須要件になります。定款認証とは、公証役場で定款の内容をチェックしてもらう手続きのことです。定款には、商号や事業目的など、必ず記載すべき項目も多くあります。必要事項をしっかり把握したうえで作成し、認証を受けましょう。
4.出資金(資本金)を払い込む
定款認証を終えたら、出資金(資本金)の払込みを行います。払い込む金額は定款に記載した資本金額です。この段階ではまだ法人口座が作れないため、出資金は自身の個人口座に払い込むことになります。
5.設立登記の申請を行う
以上4つのステップを終えたら、法務局に登記申請を行います。申請時の必要書類は以下のとおりです。書類に不備がなく登記が済めば、設立手続きは完了となります。この場合、登記申請日が会社設立日です。
- 会社設立登記申請書
- 収入印紙貼付台紙
- 定款
- 発起人決定書
- 就任承諾書
- 印鑑証明書
- 払込証明書
- 印鑑届書
- 印鑑カード交付申請書
- 登記すべき事項を記録した別紙または電磁的記録媒体
設立後には各種届出も必要
登記が終わったら会社設立は完了です。ただ、設立後にもさまざまな機関に届出を行う必要があります。下表がその一例です。それぞれの書類には提出期限があるため、各種届出は迅速に済ませなければなりません。
提出書類 | 提出先 | 提出期限 |
---|---|---|
法人設立届出書 | 税務署 | 会社設立日から2カ月以内 |
青色申告の承認申請書 | 会社設立日から3カ月以内 | |
給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書 | 会社設立日から1カ月以内 | |
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 | 会社設立後、速やかに(提出期限はなし) | |
法人設立・設置届出書 | 都道府県税事務所 | 会社設立日から15日~1カ月以内(自治体によって異なる) |
市町村役場 | ||
健康保険・厚生年金保険 新規適用届 | 年金事務所 | 加入すべき事実の発生から5日以内 |
健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届 |
必要な届出がすべて完了したら、名実ともに会社設立の完了です。以降は本格的に事業を始めていくことになります。なお、ここで解説した手順は、あくまで設立手続きの大枠です。詳しい会社設立の流れは以下の記事でまとめているので、適宜ご参照ください。
会社設立の条件5.外国人は経営・管理ビザが必要
外国人が日本で会社を作る場合、経営・管理ビザ(在留資格「経営・管理」)が必要です。経営・管理ビザは、出入国在留管理庁に申請して取得します。経営・管理ビザを取るためには以下の要件を満たさなければなりません。
- 事業所や店舗が日本にある
- 日本に住んでいる常勤の職員が2人以上
or 資本金または出資金が500万円以上 - 事業の経営または管理の経験が3年以上で、日本人と同等以上の報酬を受ける
なお、在留資格が「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」の場合には経営・管理ビザがなくても会社設立ができます。このほか「技能」や「留学」などの在留資格もありますが、これらを取得していても日本人と同じように会社を作ることはできないため注意が必要です。
合同会社の設立条件との違い
会社形態にはいくつかの種類がありますが、とくに設立件数が多いのは株式会社と合同会社です。ここまで、設立件数が最も多い株式会社の設立条件を解説してきました。ここでは、株式会社と合同会社の設立条件にどのような違いがあるのか見ていきましょう。
結論、資本金額や年齢、設立人数の最低条件については株式会社と合同会社で違いはありません。一方、設立手続きについては大きな相違点があります。下記の比較表の「定款認証」と「登録免許税」がその代表例です。
設立条件 | 株式会社 | 合同会社 |
---|---|---|
1.資本金の額 | 1円以上 | |
2.年齢 | 実質15歳以上 | |
3.人数 | 1名以上 | |
4.設立手続き | ー | |
・定款認証 | 必要 | 不要 |
・登録免許税 | 最低15万円 | 最低6万円 |
5.経営・管理ビザ ※ 外国人の場合 | 必要 (「永住者」や「日本人の配偶者等」などの場合は不要) |
合同会社の設立では定款認証は不要
合同会社の設立では、定款認証は不要です。定款作成はどの会社形態でも必要ですが、認証手続きについては合同会社の設立では必要ありません。また、定款認証には手数料がかかり、株式会社の場合、その金額は1万5,000〜5万円です。合同会社ではこの費用が浮くことになります。
このように定款認証の手続きや費用が少なくなる合同会社ですが、そのぶん定款作成は慎重に行わなければなりません。合同会社の場合、損益分配の割合や配当の請求方法など、重要な事項を定款で自由に決めることができます。定款に記載しないと効力が生じない項目については、とくに注意が必要です。
株式会社の登録免許税は合同会社より高い
法人登記には登録免許税という税金がかかり、その最低額は合同会社より株式会社のほうが高いです。株式会社の設立では最低15万円の登録免許税がかかりますが、合同会社の場合だと最低6万円で済みます(資本金の0.7%が最低額を超えると、登録免許税はその金額になります)。
定款認証の手数料も含めると、株式会社と合同会社の設立費用の差は最低でも10万円以上です。一般に、株式会社の設立には約23万円、合同会社の設立には約11万円かかります。登録免許税の金額は、設立費用全体で見ても大きな差を生むポイントです。株式会社と合同会社とで設立費用の最低条件が変わることは覚えておきましょう。
以上のような手続き面を考えると、合同会社より株式会社のほうが設立のハードルが高そうに思えるかもしれません。ただ、設立条件だけを見て合同会社を選ぶのは早計です。株式会社のメリットもしっかり把握したうえで、自身の理想に合った会社形態を選んでください。
設立条件に関するよくある質問
最後に、会社設立の条件に関してよくある質問をまとめます。以下の3点について、それぞれ確認していきましょう。
- 有限会社は作れる?
- 株式会社を設立したら社会保険に加入しなきゃならないの?
- 法人登記は自分でできる?誰に頼めばいいの?
有限会社は作れる?
現在、新しく有限会社を設立することはできません。設立できる会社形態は株式会社、合同会社、合名会社、合資会社の4種類のみです。
2006年、会社法の施行にともない有限会社法が廃止され、有限会社を新しく作ることはできなくなりました。かつての有限会社は、株式会社あるいは特例有限会社という形態に変わっています。現在「有限会社」を商号に含む会社は、特例有限会社として存続を認められた旧有限会社というわけです。
株式会社を設立したら社会保険に加入しなきゃならないの?
株式会社を設立したら、必ず社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入しなければなりません。株式会社に限らず、合同会社などの他の会社形態についても同様です。社長一人だけの会社でも例外ではないため注意しましょう。
健康保険・厚生年金保険への加入はすべての法人に義務づけられています。社会保険料の支払いが厳しくて経営が傾くケースもあるため、会社を作るときには社会保険料の入念なシミュレーションが必要です。なお、従業員を雇う場合には、雇用保険・労災保険への加入も必要になります。
法人登記は自分でできる?誰に頼めばいいの?
法人登記は自分一人で完了させることができます。会社設立の手続きに特別な資格は不要で、この記事で解説した設立条件を満たしていれば誰でも会社を作ることが可能です。
とはいえ、定款の作成や認証、法人登記など、会社設立に向けてやるべきことは多岐にわたります。スムーズに会社を作るには専門家に代行を頼むのも1つの手です。たとえば、定款作成や許認可申請は行政書士、登記申請は司法書士に代行を依頼することができます。
会社設立の条件を押さえてスムーズに起業しよう
株式会社の設立条件には、資本金1円以上、年齢15歳以上、発起人1名以上といった条件があり、加えて法人登記の手続きも必要です。外国人が会社を作る場合には、経営・管理ビザの取得も1つの要件となります。
株式会社と合同会社の設立条件を比べると、定款認証の要不要や登録免許税の最低額に大きな差があります。合同会社より株式会社のほうが必要な手続きや費用は多いです。面倒な手続きは専門家に任せてスムーズに起業したい場合、行政書士や司法書士に代行を依頼するのもよいでしょう。
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