最終更新日:2026/1/8
代表取締役とは?取締役との違いや任期に関するルールを徹底解説

ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
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この記事でわかること
- 代表取締役と取締役の違い
- 代表取締役の選任や任期のルール
- CEOや社長との違い
株式会社の「代表取締役」は、誰もが聞いたことのある役職でしょう。代表取締役は会社法で定められた役員であり、会社を対外的に代表して重要な意思決定や契約を行う経営陣のトップです。
代表権のない取締役とも、社内の役職である社長とも異なり、法律上の代表権を持つ点が大きな特徴です。
この記事では、代表取締役とは何か、取締役との違い、社長やCEOとの関係、選任方法や任期、複数代表制のメリット・デメリット、登記義務までを専門家の視点でわかりやすく解説します。


代表取締役とは?
株式会社における代表取締役とは、取締役の中から会社を代表して業務を執行する権限を持つ人物のことです。
(株式会社の代表)
第三百四十九条 取締役は、株式会社を代表する。ただし、他に代表取締役その他株式会社を代表する者を定めた場合は、この限りでない。
代表取締役は会社の代表者であり、契約、銀行取引、登記申請など、あらゆる法的な行為の決定権を持っています。
会社の最高責任者
代表取締役は、会社の経営全体を統括する最高責任者です。
取締役会を設置している会社では、取締役会の決議によって代表取締役が選定されます。
代表取締役の職務は単なる意思決定や書類の承認にとどまらず、経営方針の決定、人事や財務、リスク管理まで多岐にわたります。
代表取締役は「業務執行の中心」であり、会社の行為が社会に与える影響について最終的な責任を負う立場です。
代表取締役と取締役の違い
代表取締役と取締役は似たような名称ですが、会社法上の立場と権限は明確に異なります。
取締役は、経営に関与する役員の総称です。一方で、代表取締役は取締役の中から選定され、会社を代表する権限を持つ存在です。
代表取締役には代表権がある
代表取締役と取締役の最大の違いは「代表権の有無」です。
取締役は、会社の意思決定と業務執行を担う役職です。一方、代表取締役は代表権を持ち、会社を代表して法的効力のある外部的な行為を行うことができます。
会社法349条4項では「代表取締役は、株式会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する」と定められており、代表権を持つ者の行為は、原則として会社の行為とみなされます。
銀行融資の契約、不動産の売買契約、雇用契約、訴訟代理など、会社が外部と行う重要な法律行為は、すべて代表取締役が最終的な権限を持っています。
代表権の有無により、社内での責任や権限の線引きが明確になり、経営判断の一貫性や法的安定性を保つことができるのです。
取締役は必ず置かなければならない
株式会社には必ず「取締役」を置かなければなりません。
(株主総会以外の機関の設置)
第三百二十六条 株式会社には、一人又は二人以上の取締役を置かなければならない。
代表取締役を置かない場合は、すべての取締役が代表権を持つことになります。
なお、取締役会設置会社の場合は、必ず代表取締役を設置しなければならないと規定されています(会社法362条3項)。
取締役が1人の場合は代表取締役になる
取締役が1人だけの場合は、その取締役が当然に会社を代表します。この場合、代表取締役を選定する決議は不要です。
たとえば、個人が資本金1円で株式会社を設立し、自身のみを取締役とするケースでは、登記上の役職が「取締役」でも「代表取締役」として扱われ、代表権や責任を持ちます。
責任の範囲が異なる
取締役と代表取締役は、職務の範囲だけでなく、負うべき法的責任の重さにも明確な違いがあります。
代表取締役は会社の業務全般を統括し、外部との法的関係を直接形成する立場にあるため、一般の取締役よりも責任の範囲が広く、重くなります。
共通する責任
取締役全員に共通するのが、善管注意義務と忠実義務です。
善管注意義務とは「委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う」というものです(民法644条)。取締役においては、会社の利益を追求し、損害を与えないように行動する義務を意味します。
また、忠実義務とは「法令及び定款並びに株主総会の決議を遵守し、株式会社のため忠実にその職務を行わなければならない」というものです(会社法355条)。取締役は、自己の利益を優先した行為や、会社に損害を与える行為をしてはなりません。
これらに違反した場合、会社や第三者に対して損害賠償責任を負うことがあります。
なお、会社法429条では、取締役が職務の執行に関して悪意または重大な過失があった場合、第三者に対しても損害賠償責任を負うことを明記しています。
代表取締役がより重い責任を負うケースもある
代表取締役は会社全体の業務執行を統括する立場であり、他の取締役の職務も監督します。
そのため、他の取締役が不正や過失を犯した場合にも、監督義務を怠ったと評価される可能性があります。
たとえば、経理担当の取締役が粉飾決算を行った場合、代表取締役が内部統制や報告体制を十分に整えていなかったと認められると、経営者としての管理監督責任が追及されます。
違法配当や脱税などの会社法違反が生じた際にも、代表取締役が責任を問われることがあります。
さらに、労働災害やコンプライアンス違反においても、安全配慮義務・企業統治上の監督責任を果たしていなければ、代表取締役が民事・行政両面で責任を負う可能性があります。
代表取締役は、経営判断だけでなく、会社の行為に対して広く責任を負っています。
代表取締役社長の責任の範囲
代表取締役社長は、会社のトップとして最終的な意思決定を下す立場にあり、経営判断に責任を負っています。
ただし、代表取締役が合理的な情報収集をしたり、適切な対応をしていた場合には、たとえ結果的に損害が発生しても責任を問われないこともあります。
反対に、情報収集が不十分であったり明らかに不合理な判断を行ったりなど、監督責任を怠った場合には、善管注意義務違反とされる可能性があります。
また、実務面においても代表取締役社長には次のような責任やリスクが存在します。
まず、銀行融資の連帯保証人としての責任です。
中小企業などでは、設立時や業務拡大時の借入金について、代表取締役社長が連帯保証人になることがあります。連帯保証人になっている場合、返済不能になると代表取締役が個人資産で債務を負担しなければなりません。
次に、株主代表訴訟のリスクです。
取締役の違法行為や怠慢により会社に損害が生じたと株主が判断した場合、会社に対して株主代表訴訟を起こすことができます。
代表取締役とCEOの違い
代表取締役とCEOは紛らわしい肩書きですが、法律上の地位や権限は大きく異なります。
日本の会社法には「CEO」という概念は存在せず、法的効力を持つのは代表取締役のみです。ここでは、両者の違いを解説します。
代表取締役は会社法で規定されている役職
代表取締役は会社法で規定されている役職であり、法務局で登記されます。一方「CEO」は、会社法に規定のない概念です。
代表取締役が会社法で定められた責任や義務を負う一方で、CEOは企業の経営体制を明確化するための経営上の肩書きの1つです。
CEOは法的な役職ではない
CEO(Chief Executive Officer)は「最高経営責任者」を意味します。国内企業でも使用されることの多い役職ですが、日本の会社法にはCEOという役職は一切規定されていません。
商業登記簿にCEOと記載されることはなく、CEOだからといって必ず会社法上の「代表権」を持っているわけでもありません。
実務では「代表取締役CEO」「代表取締役社長CEO」といった表記がされるケースがあり、「代表取締役」と併記されている場合は、代表権を持っていることになります。
代表取締役と役職の関係
会社には、代表取締役以外にも取締役や監査役、社長・会長・専務といった多くの役職があります。
しかし、これらの役職すべてが会社法で定められたものではありません。社長・会長・専務・執行役員といった役職は社内での地位や慣習によって使用されるものです。
一方で、会社法上の役員は、代表取締役や取締役、監査役などです。
ここでは、社内の役職と代表取締役の関係、合同会社の「代表社員」との違いを解説します。
代表取締役と社長は別の役職
一般に「代表取締役社長」という肩書きは広く使われますが、代表取締役と社長は異なるものであり、必ずセットというわけではありません。
代表取締役は、会社法で規定された役職であり、会社を法的に代表する権限(代表権)を持ちます。一方で社長は、社内での役職名であり、法律上の定義は存在しません。
つまり、代表権を持たない社長も存在し得るということです。
「代表取締役」という肩書きは登記簿に記載される一方、「社長」や「会長」は登記事項ではないという点がポイントです。
代表権の有無は、社長かどうかではなく、代表取締役であるかで決まります。
合同会社は代表取締役ではなく代表社員
合同会社とは、株式会社とは異なるしくみで運営される会社です。合同会社には「取締役」や「代表取締役」という役職は存在しません。
合同会社を代表する役職は「代表社員」です。
代表取締役の選定と人数
代表取締役の選定方法や人数も、会社法で定められています。
会社設立時の代表取締役の選定方法や人数、会社の形態ごとのルールをまとめて解説します。
会社設立時の代表取締役の選定
会社設立時の代表取締役の選定方法は、取締役会の有無によって異なります。
取締役会を設置する場合:設立時取締役の決議で選定される。ただし、定款で設立時代表取締役を定めることもでき、発起人が選定するよう定めることも可能。
取締役会を設置しない場合:定款に基づく取締役の互選あるいは株主総会の決議、または定款に直接記載することで定める。
代表取締役は取締役の中から選定される
代表取締役は、取締役の中から選定されます。
取締役会を設置しているかで選定方法は異なりますが、いずれの場合でも取締役の中から代表取締役が選ばれる点は同じです。
取締役は株主総会の決議で選任される
代表取締役ではない取締役の選任は、株主総会の決議によって行います(会社法329条)。取締役の解任についても同様です(会社法339条)。
従業員であれば、重要な役職でも雇用契約を結ぶだけで任用できます。
しかし、取締役は会社の重要な意思決定に関わる立場であり、従業員とは異なる法的地位を持つため、株主の意思に基づいて選任・解任できるようになっています。
選任や解任の決議では、議決権を行使できる株主の過半数が出席し、その過半数が賛成することが要件で、経営を担う取締役の人事は、株主の意思を適切に反映したものとなります。
代表取締役は複数名いてもよい
代表取締役の人数に上限は設定されていないため、法律上は複数の代表取締役を置いても問題はありません。
代表取締役は1人というイメージがあるかもしれませんが、1つの会社に代表取締役が2人いるケースも存在します。
代表取締役が複数いる場合にはデメリットがある
複数の代表取締役を置く場合、柔軟な経営判断ができる一方で、デメリットも存在します。
たとえば、同じ権限の人が複数存在することで、意見の不一致やリスクの重複が生じることがあります。たとえば「共同代表」にした結果、指揮系統が不明確になったり、一方の署名が欠けただけで契約が無効になったりするリスクがあります。
そのため、代表取締役を1名とし、他の役員には専務・常務などの役職を付与して責任範囲を区分する方法が一般的です。
代表取締役の任期
代表取締役の任期は、取締役の規定に従うのが原則です。
「代表取締役だけの任期」という概念はなく、取締役としての任期が満了すれば、同時に代表取締役としての地位も失います。
代表取締役の任期は原則2年
代表取締役の任期は、会社法で原則2年と定められています。これは取締役と同様です。
2年を超えて継続的に代表取締役の地位にとどまる場合は、株主総会による再任が必要になります。
代表取締役の変更がない場合、株主総会で再任されるのが一般的です。
非公開会社の場合は10年まで延長できる
代表取締役を含む取締役の任期は原則2年ですが、非公開会社の場合、定款の定めにより任期を最長10年まで延長できます。
家族経営やオーナー企業など、経営体制の安定を重視する会社では、あらかじめ任期を10年に設定して再任登記の手間を省くケースも多いです。
代表取締役と登記
代表取締役は、他の役員と同様に登記されます。
これは、会社の対外的信用や法的安全性を確保するためのものです。以下では、代表取締役に関わる登記ルールを解説します。
代表取締役は登記簿に記載される
代表取締役に就任した者は、必ず登記簿に記載されます。
登記事項の記載義務は会社法で定められており、原則として2週間以内に法務局で申請しなければなりません。
この義務をおろそかにすると「登記を怠った」として100万円以下の過料に処せられる可能性があります。
代表取締役は会社の代表権を持つ最高責任者
代表取締役は、会社の代表権を持つ最高責任者です。
代表取締役と取締役の違いは「代表権」の有無であり、取締役より重い責任を負うこともあります。また、代表取締役は、会社法で規定されている役員であり、選定方法や人数、任期については会社法の規定に従う必要があります。
代表取締役と似ている役職に社長やCEOといった肩書きがありますが、これらは社内的な役職であり、会社法上の役職や地位ではありません。
代表取締役は、必ず登記しなければなりません。変更から2週間以内という期限もあるため、選定や解職があった場合はすみやかに手続きをする必要があります。
代表取締役と取締役、そして他の役職との違いはしっかり整理しておきましょう。


















