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最終更新日:2024/10/7

遺産分割とは?遺産分割の4つの方法と分割の流れ、押さえたいポイントを解説

古尾谷 裕昭
この記事の執筆者 税理士 古尾谷裕昭

ベンチャーサポート相続税理士法人 代表税理士
東京税理士会 登録番号104851

東京、横浜、千葉、大宮、名古屋、大阪、神戸など全国の主要都市22拠点にオフィス展開し、年間2,200件を超える日本最大級の相続税申告実績を誇る。 業界最安水準となる明朗料金ときめ細かいフォローで相続人の負担を最小にすることを心がけたサービスが評判を得る。1975年生まれ、東京都浅草出身。

PROFILE:https://vs-group.jp/sozokuzei/supportcenter/profilefuruoya/
書籍:今さら聞けない 相続・贈与の超基本
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遺産分割とは

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この記事でわかること

  • 遺産分割とは何か
  • 遺産分割の4つの分割方法
  • 遺産分割の流れや押さえたいポイント
被相続人(亡くなった人)が遺言書を残していないときには、相続人全員の遺産分割協議で遺産の分け方を決めなければなりません。「遺産分割にはどのような方法があるの?」「遺産分割はどのように進めたら良いの?」と疑問をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。

この記事では、遺産分割の手続きに不安のある方に向けて、遺産分割の方法、遺産分割の流れ、遺産分割で押さえたいポイントを解説します。遺産分割で失敗しないために、ぜひ最後までご覧ください。

遺産分割とは何か

遺産分割とは、被相続人の遺産を相続人間で分配する手続きのことです。遺言書がある場合、遺産は、遺言書の内容に従って分けられます。しかし、遺言書がないときには、遺産は、法定相続人の共有状態となります(民法898条)。遺産を共有状態のままにしておくと、個別での利用が制限されて遺産を上手く活用できなかったり、相続人間のトラブルに発展したりする可能性があるでしょう。

遺産分割は、遺産の共有状態を解消し、遺産を誰が取得するのかを確定させる手続きとなります。相続が発生したときには、できる限り速やかに遺産分割を進めて遺産を取得する人を確定させるのが望ましいといえます。

遺産分割をするには、法定相続人の間で話し合いを行い、「誰が、どの遺産を、どの程度取得するのか」を決めます。遺産分割の内容を決定するには、法定相続人全員の同意が必要となります。

遺産分割の分割方法は4種類

遺産分割4種類

遺産分割の対象となる遺産には、現金や預貯金など簡単に分けられるものから不動産や自動車など分けるのが難しいものまで、さまざまなものが含まれます。遺産分割の方法は、次の4種類です。

遺産分割の方法

  • 現物分割
  • 代償分割
  • 換価分割
  • 共有分割

遺産分割の話し合いを進める際は、個々の遺産を4種類のうちどの方法で分割するのかを決めていくことになります。ここからは、4種類の遺産分割の方法について、具体的な内容を解説します。

現物分割

現物分割

現物分割とは、遺産それ自体を現物のまま分割する方法です。たとえば、土地と建物は長男、現金は長女などと、遺産そのものについて誰が取得するのかを決めるのが現物分割です。1つの土地を半分に分筆して、長男と長女に分ける方法も、遺産そのものを分けていることに変わりはないため、現物分割に分類されます。

現物分割だけでは、相続人間で格差が生まれてしまうことも少なくありません。たとえば、遺産の内容が5,000万円の現金と、1億円の不動産であった場合、現金を取得する人と不動産を取得する人では大きな差が生まれてしまいます。この場合には、現物分割だけではなく、他の分割方法を組み合わせることで格差を調整します。

代償分割

代償分割

代償分割とは、一部の相続人が遺産を取得する代わりに、他の相続人に代償金を支払う方法です。たとえば、遺産が5,000万円の不動産のみで、法定相続人が長男と次男の2人であった場合、法定相続分では各自が2,500万円ずつの遺産を取得します。このときに、長男が5,000万円の不動産を取得して、代わりに長男の財産から2,500万円の代償金を支払うのが代償分割の方法です。

代償分割は、遺産を物理的に分割するのが難しい場合や、分割することなくそのままの状態で活用したい場合に有効な手段と言えます。実務上では、代償分割の方法を選択したくても代償金の額で折り合いがつかなかったり、十分な代償金を準備できなかったりして、遺産分割協議がまとまらないケースも多くあります。

換価分割

換価分割

換価分割は、不動産や非上場株式などの遺産を売却して、その代金を相続人間で分割する方法です。たとえば、5,000万円の不動産を売却して、2人の相続人で2,500万円ずつの代金を受け取るのが換価分割の方法です。

換価分割を利用すると、分割するのが難しい遺産を簡単に分けることができます。遺産をそのまま残しておきたい場合でなければ有効な手段と言えるでしょう。不動産や非上場株式の評価を巡る争いが起こりそうなときでも、現金化すれば争いにはなりません。

ただし、換価分割をするには、遺産を換価処分するのに費用や時間がかかる点や、譲渡所得税が発生する点には注意が必要です。

共有分割

共有分割

共有分割は、遺産を相続人の共有状態のままで分割する方法です。共有分割では、他の分割方法と異なり、遺産の共有状態は解消されません。たとえば、遺産の中に土地や建物が含まれるときに、誰か個人の単独所有としたり、売却したりせずに共有名義とするのが共有分割です。

不動産が共有名義になっていると、利用方法を巡るトラブルが起こりやすくなります。共有者が亡くなると、相続によってさらに共有する人が増えるという問題もあります。共有分割は、遺産分割を早急に終わらせるには有効な手段となり得ますが、結局のところは問題を先送りしているに過ぎません。

将来的なことも考えた遺産分割をするのなら、共有分割は選択せずに共有状態を解消する方法を検討すべきです。

遺産分割を行う流れ

被相続人が亡くなってから遺産分割が完了するまでの流れは、次のとおりです。

遺産分割が完了するまでの流れ

  1. 遺言書の有無を調べる
  2. 法定相続人を確定する
  3. 相続財産を調査する
  4. 遺産分割協議を行う
  5. 遺産分割調停を申し立てる

遺言書がない場合、遺産分割を成立させるには法定相続人全員の合意が必要です。相続人の中に不満を持つ人がいるときには、いつまでも合意が成立せず、遺産分割の完了までに数年かかるケースもあります。手続きの進行に不安のある方は、専門家に相談するのがおすすめです。

遺言書の有無を調べる

遺産分割を開始するうえで、最初にすべきなのは遺言書の有無を確認することです。有効な遺言書があれば、遺産分割協議は原則として不要になるため遺産分割をスムーズに進められます。遺言書には、次の3つの種類があります。

遺言書の種類

  • 自筆証書遺言
  • 公正証書遺言
  • 秘密証書遺言

自筆証書遺言と秘密証書遺言については、家庭裁判所での検認手続きが必要です。検認前に開封してしまうと、他の相続人から書き換えを疑われたり、最悪の場合には相続人としての権利を失ったりする可能性もあるので注意してください。

公正証書遺言については、公証役場に原本が保管されています。公正証書遺言が作成されているかどうか、公証役場で遺言を検索することも可能です。被相続人が亡くなったときは、まずは被相続人の身の回りや遺品、遺言検索によって遺言書の有無を確認することから始めてください。

遺言書がある場合

遺言書があるときには、遺産分割協議をするまでもなく遺言書の内容に従って遺産分割を行います。

ただし、遺言書が無効になるケースや、遺言書の内容から漏れた遺産があるケースもあるため、遺言書の内容は十分に確認しなければなりません。

遺言書の内容を実現するには、相続人や受遺者の協力が必要です。遺言執行者が指定されているときには、遺言執行者が手続きを行います。遺言書があるときでも、相続人と受遺者全員の合意があれば遺言書の内容を無視して遺産分割協議を行うこともできます。

遺言書がない場合

遺言書がないときには、法定相続人全員の合意による遺産分割協議を行います。遺産分割協議を行うには、前提として法定相続人と分割の対象となる相続財産を確定させなくてはなりません。

遺言書が無効となったケースや、遺言書の内容から漏れた遺産があるケースについても、遺産分割協議が必要です。

法定相続人を確定する

遺産分割協議の前提として、法定相続人の範囲を確定します。法定相続人を確定するには、被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍をすべて確認する必要があります。被相続人に子どもがいるときには、子どもの戸籍も調査しなくてはなりません。子どもがいないときには、父母や兄弟姉妹の戸籍調査も必要です。

令和6年3月から戸籍の広域交付制度が始まりました。戸籍の広域交付とは、本籍地以外の市町村役場が管理する戸籍謄本を一括取得できる制度です。これまでは、本籍地の移動があったときには、複数の役所から戸籍を取り寄せる必要がありました。広域交付制度によって、戸籍収集にかかる時間は大幅に短縮されるでしょう。

被相続人の子どもや兄弟が多い場合、法定相続人を確定する作業は複雑なものとなります。確定作業に不安のある方は、専門家に相談することをおすすめします。

相続財産の調査

相続財産の調査では、プラスの財産は当然のこと、マイナスの財産もすべて確認する必要があります。相続財産の調査漏れがあると、マイナスの財産を相続放棄できなくなったり、遺産分割協議のやり直しとなったりする可能性があるため、確実に調査を進めてください。
調査が必要な相続財産としては、次のものが挙げられます。

調査が必要な相続財産

  • 現金・預貯金
  • 株券、小切手などの有価証券
  • 宝石、貴金属、骨董品、自動車などの動産
  • 不動産
  • 著作権、ゴルフ会員権などの財産的価値のある権利
  • 借金、ローンなどの負債
  • 未払いの税金

相続財産の調査を進めるには、遺品整理が重要です。遺品の中から発見された通帳、権利証、借用書など相続財産にかかわる資料から、相続財産の調査を進めるのが良いでしょう。

遺産分割協議

遺産分割協議では、相続人全員の合意によって、誰がどの遺産をどのくらい相続するのかを決めます。遺産分割協議には、相続人全員が参加しなくてはなりません。戸籍の調査で連絡先も知らない子どもが発見されたときでも、連絡を取らない限りは遺産分割を進められません。

相続人の中に未成年者がいるときには、親権者が法定代理人となりますが、未成年者の親権者も相続人で利益相反となる場合は、特別代理人を選任する必要があります。また、行方不明者がいるときには、不在者財産管理人の選任が必要です。

遺産分割協議を成立させるには相続人全員の合意が必要なため、納得できない相続人がいる限り、遺産分割協議はいつまでも成立しません。親族同士で遺産を巡る相続トラブルに発展すると、遺産分割協議が成立するまでに数年単位の期間がかかるケースも珍しくありません。

まとまった場合は遺産分割協議書の作成へ

相続人全員の同意により遺産分割がまとまったら、遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書に決まった書き方はありませんが、次の内容は必ず記載してください。

遺産分割協議書に記載が必要となる内容

  • 被相続人を特定する内容(氏名、本籍地、死亡日など)
  • 法定相続人全員の氏名、住所
  • 相続財産の内容と誰がどの割合で取得するのか
  • 法定相続人全員の署名・押印

遺産分割協議書には、相続人全員が署名押印します。印鑑は実印を使用して、印鑑登録証明書を添付してください。遺産分割協議書を利用して、遺産分割の手続きを進めるには、被相続人と相続人全員の戸籍謄本などが必要となるので、添付資料として準備しておきましょう。遺産分割協議書と添付書類の準備ができたら、預貯金の解約手続きや不動産の名義変更などを行って遺産分割が完了します。

まとまらなかった場合は遺産分割調停へ

遺産分割協議がまとまらないときには、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てます。遺産分割調停は、調停委員が当事者の話を聞いて、意見の調整を行う手続きです。調停手続きは、1カ月から2カ月に1度のペースで開催されて、終了までには1年以上かかることもあります。
遺産分割調停を申し立てるには、次の書類が必要です。

遺産分割調停に必要な書類

  • 申立書
  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 相続人全員の住民票または戸籍附票
  • 相続財産一覧表など相続財産の内容がわかる資料(財産目録)

また、申立費用として1200円の収入印紙代と5,000円から1万円ほどの郵便切手代がかかります。弁護士に調停手続きの代理人を依頼したときには、弁護士費用も必要です。遺産分割調停では、最終的に裁判所から調停案が提示されます。相続人全員が調停案に同意したときには調停が成立して、その内容で調停調書が作成されます。

最終的には遺産分割審判で決定する

調停が不成立になると、手続きは自動的に遺産分割審判に移行します。遺産分割審判には、調停委員は関与しません。審判期日は裁判官が進行し、当事者から提出された書面や証拠をもとに、手続きが進められます。審判期日も調停期日と同様に、1カ月から2カ月に1度のペースで開かれます。相続人間の意見が激しく対立しているときには、審判確定までに1年以上かかることも珍しくありません。

遺産分割審判では、最終的に裁判所による審判が下されます。審判は、調停とは異なり強制力があるため、審判によって遺産分割の内容が確定します。

遺産分割で押さえたいポイント

ここでは、遺産分割で押さえたいポイントとして、次のポイントを解説します。

遺産分割で押さえたい2つのポイント

  • 遺産分割を行うタイミングはいつ?

遺産分割を行うタイミングはいつ?

遺産分割そのものに期限はありません。しかし、遺産分割をしなければ、遺産は共有状態のままで、有効に活用することができません。

また、相続税の申告は、相続の開始を知った日の翌日から10カ月以内という期限があります。相続税の申告期限までに遺産分割が終わっていなければ、未分割の状態で申告することになるため、相続税の各種特例が使えず相続税が増えてしまったり、遺産分割が確定したら正しく申告し直す手間がかかります。

遺産の有効活用や相続税の申告期限を考慮すると、遺産分割はできる限り早めに行うべきです。法定相続人の特定や相続財産の調査が終わったら、すぐにでも遺産分割協議を始めることをおすすめします。

できるだけ早めに遺産分割を終えて相続税申告の準備をしよう

遺産分割は、相続税の申告をするためにも必要な手続きです。相続税の申告が必要な場合には、できる限り早めに遺産分割を終えて、相続税申告の準備をしてください。遺産の中に、不動産や非上場株式など評価の難しい財産があるときには、専門的な知識がなければ相続税申告書の作成はハードルが高いと思われます。遺産分割の手続きに不安のある方、相続財産の評価に疑問のある方は、税理士に相談することをおすすめします。

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