記事の要約
- 遺族年金は原則として「遺族基礎年金(定額)」と「遺族厚生年金(報酬比例部分の4分の3)」を基本として計算する
- 計算に必要な「平均標準報酬月額」などの数字は、ねんきん定期便やねんきんネットで概算額を確認できる
- 2028年に改正が控えているが、すでに受給中の方や60歳以降に受給権が発生する方は、原則としてこれまでどおりの計算のままでよい
「もしものとき、これからの生活費は足りるだろうか……」
大切な家族が亡くなったとき、あるいは将来に備えるとき、最も気になるのはやはり「遺族年金がいくらもらえるのか」という現実的な数字ではないでしょうか。
遺族年金の計算は一見すると複雑に思えますが、順番を追って整理していけば、ご自身でもおおよその金額を導き出すことができます。
この記事では、令和8年度(2026年度)の最新基準をもとに、計算式や早見表、具体的なケース別の計算例を交えて分かりやすく解説します。
また、遺族年金の制度改正(2028年予定)が話題にのぼることが増えましたが、「すでに受給中の方」や「60歳以降に受給権が発生する方」などは原則として対象外とされ、これまでの計算方法が維持される見込みです。
まずは現状のしくみから確認していきましょう。
なお、VSG相続税理士法人では、相続に関するご相談を無料で受け付けておりますので、相続でご不安なことがございましたら、お気軽にご連絡ください。
目次
遺族年金の計算の全体像:まずは2種類のどちらが対象かを確認
日本の年金が「2階建て」と言われるように、遺族年金にも1階部分と2階部分があります。
- 遺族基礎年金(1階部分)
- 国民年金から支給される年金。子のある配偶者または子が対象
- 遺族厚生年金(2階部分)
- 厚生年金から支給される年金。故人が会社員・公務員などだった場合に対象

どちらの遺族年金の受給対象になるかは、「亡くなった人が加入していた年金制度」で決まります。
| 亡くなった人 | 子がいる場合 | 子がいない場合 |
|---|---|---|
| 自営業・フリーランスなど | 遺族基礎年金 | 原則、遺族基礎年金なし |
| 会社員・公務員など | 遺族基礎年金+遺族厚生年金 | 遺族厚生年金のみ対象になる場合あり |
なお、遺族基礎年金は「子のある配偶者」または「子」が対象であり、子がいない場合は受け取れません。
年金制度における「子」とは、18歳になった年度の3月31日まで(障害のある場合は20歳未満)にある子のことです。
遺族基礎年金の計算は定額ベースでシンプルな一方、2階部分にあたる遺族厚生年金の計算は、計算が少し複雑です。
なお、遺族年金の制度そのものや、もらえる人・手続きの全体像については、以下の関連記事もあわせてご覧ください。
遺族年金の計算に必要な「2つの数字」
遺族年金の計算をする際は、以下の情報を用意しましょう。
- 遺族基礎年金:家族の構成(子の人数)
- 遺族厚生年金:亡くなった人の「平均標準報酬月額」と「厚生年金の加入期間」
この2つが分かれば、おおよその金額を計算できます。
なお、「平均標準報酬月額」については、後の章でお伝えします。
遺族基礎年金の計算方法(定額 + 子の加算)
遺族基礎年金は、ベースとなる「定額の基本額」に、子どもの人数に応じた「加算額」をプラスして計算します。
令和8年度の金額および計算式は、以下のとおりです。
| 項目 | 令和8年度の金額(年額) |
|---|---|
| 基本額 | 847,300円(昭和31年4月1日以前生まれの方は844,900円) |
| 子の加算(第1子・第2子) | 各 243,800円 |
| 子の加算(第3子以降) | 各 81,300円 |
計算式
遺族基礎年金(年額) = 847,300円 +(子の加算)
たとえば、子どもが2人いる場合の受給金額は、以下のとおりです。
例
月額にすると「約111,241円」
対象となる子が18歳になった年度の3月31日を過ぎると、その子に関する加算はなくなります。
対象となる子がいなくなった場合は、遺族基礎年金の受給も終了します。
また、子どもだけが遺族基礎年金を受け取る場合は、「847,300円+2人目以降の子の加算額」を子の人数で割った金額が、1人あたりの受給額になります。
子が2人の場合は、847,300円+243,800円=1,091,100円を2人で分けます。

遺族厚生年金の計算方法(報酬比例部分 × 4分の3)
遺族厚生年金の受給額は、以下の3ステップで算出します。
- ステップ1:亡くなった方の「平均的な給料額」を出す
- ステップ2:厚生年金の「加入期間(月数)」を掛ける
- ステップ3:最後に「4分の3」を掛ける
基本の計算式は次のとおりです。
計算式
報酬比例部分とは?亡くなった人の「給与」と「加入期間」で決まる額
「報酬比例部分」とは、亡くなった人の「過去の標準報酬月額・標準賞与額」と「加入期間」に応じて計算される、老齢厚生年金のうち報酬比例で算出される部分のことです。
つまり、「亡くなった人が将来もらうはずだった老齢厚生年金(2階部分)の金額」を指します。
遺族厚生年金の受給額は、この「報酬比例部分の4分の3」が基本になります。
報酬比例部分の計算式
報酬比例部分の計算では、亡くなった人の給与や賞与をもとにした「平均標準報酬月額」や「平均標準報酬額」を使います。
平成15年(2003年)4月以降、賞与からも年金保険料を納める「総報酬制」が導入されました。
そのため、計算式は平成15年3月を境に、2つに分かれています。
- 平成15年3月以前の期間
- 平均標準報酬月額 × 7.125/1000 × その期間の月数
- 平成15年4月以降の期間
- 平均標準報酬額 × 5.481/1000 × その期間の月数
この、2つの期間の計算結果を合算した金額が、「報酬比例部分」の総額です。
※厳密には、上記の計算式で求めた「本来水準」と、物価変動などを考慮した「従前額保障」を比較し、高いほうの額が採用されます。
なお、標準報酬月額には上限があり、現在は65万円ですが、2027年9月から段階的に引き上げられ、2029年9月には75万円となる予定です。
上限を超える収入があった場合は、上限額をもとに計算します。
加入期間が短いときの救済措置「300カ月みなし」
現役で働いている若い世代の人が亡くなった場合など、厚生年金の加入期間が300カ月(25年)に満たないケースがあります。
その場合は、実際の期間に関わらず「300カ月加入していたもの」とみなして計算を行います(300カ月みなし)。
これは、働き始めてまもない方が亡くなっても、遺された家族には一定の金額が保障される救済措置です。
なお、亡くなった人がすでに老齢厚生年金を受け取れる資格を満たしていた場合(長期要件)は実際の加入期間で計算しますが、現役死亡などの要件(短期要件)にも重なる場合は、原則として遺族に有利になる「300カ月みなし」が適用されます 。
計算に必要な数字の調べ方:平均標準報酬月額とねんきん定期便・公的年金シミュレーター
遺族厚生年金を正確に計算するには、過去の給与・賞与の記録や厚生年金の加入期間を確認する必要があります。
そのため、平均標準報酬額を自分で計算するよりも、ねんきん定期便やねんきんネットで「老齢厚生年金」の金額を確認するほうが分かりやすいでしょう。
「ねんきん定期便」で確認する
毎年、誕生月に届く「ねんきん定期便」を確認すれば、おおよその年金額がわかります。
なお、亡くなった人の年齢によって、確認すべきポイントが変わります。
(1)50歳未満の人
ねんきん定期便には、これまでの加入実績に応じた「老齢厚生年金」の額が記載されています。
この金額は、遺族厚生年金の計算のもとになる報酬比例部分の目安になります。
そのため、記載されている老齢厚生年金の額に4分の3(0.75)を掛けると、遺族厚生年金のおおよその額が分かります。
ねんきん定期便(ハガキ)様式 50歳未満の方(一部抜粋)
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引用元 日本年金機構
(2)50歳以上の人
60歳まで現在と同じ条件で加入を続けた場合の「老齢厚生年金の見込額」が記載されています。
ねんきん定期便(ハガキ)様式 50歳以上の方(一部抜粋)
![]()
引用元 日本年金機構
なお、故人が生前に「ねんきんネット」より電子版の「ねんきん定期便」に切り替えている場合、紙のハガキや封書は届かなくなります。
ねんきんネットでシミュレーションする
より正確な金額を確認したい場合は、「ねんきんネット」が便利です。
パソコンやスマートフォンから、24時間いつでも自身の年金記録や見込額を確認できます。
マイナンバーカードを持っている場合は、マイナポータルから連携して利用登録すると、より簡単に始められます。
【参考】公的年金シミュレーターを使う
厚生労働省にて公開しているツール「公的年金シミュレーター」からも、将来受け取る年金の見込み額を試算できます。
ねんきん定期便(令和4年4月発行分以降)の二次元コードをスマートフォンで読み取るだけで、ID・パスワードの登録なしに利用できますので、個人情報が保存されることもありません。
公的年金シミュレーターで確認できるのは、主に老齢年金の見込額であり、遺族年金そのものを正確に試算できるわけではありません。
ただし、老齢厚生年金の報酬比例部分を把握する手がかりにはなるため、遺族厚生年金の概算をつかむ参考資料として活用できます。
あわせてご自身の老齢厚生年金の見込額も分かるので、後ほどお伝えする「65歳以降の調整の計算」にも役立ちます。
正確な金額は、ねんきんネットや年金事務所で確認しましょう。
妻に上乗せされる加算(中高齢寡婦加算・経過的寡婦加算)
夫を亡くした妻に対しては、年齢などの条件を満たすことで、遺族厚生年金に一定の金額が上乗せされるしくみがあります。
中高齢寡婦加算
中高齢寡婦加算は、夫が亡くなった時点で「40歳以上65歳未満」であり、かつ生計を同じくする子がいない妻などに支給されます。
- 令和8年度の金額:年額63万5,500円
- 支給期間:妻が65歳になるまで
亡くなった夫の厚生年金加入期間が20年以上あること(長期要件の場合)などが条件となります。
また、遺族基礎年金(子がいる場合の年金)を受け取っている間は、中高齢寡婦加算の支給は停止します。
経過的寡婦加算
経過的寡婦加算は、「1956年(昭和31年)4月1日以前生まれの妻」が65歳を迎えた後、それまでの中高齢寡婦加算がなくなることで年金受給額が急激に下がってしまわないよう設けられている制度です。
受給金額は、妻の生年月日に応じて決まります。
【ケース別】遺族年金の計算例
具体的な家族構成や働き方のパターンから、受給イメージを確認しましょう。
- ※
- 以下の計算例はいずれも令和8年度の額および一定の前提(平均標準報酬額・加入期間等)を置いた試算であり、実際の受給額とは異なる場合があります。
ケース1:会社員の夫+専業主婦の妻+子2人
前提:夫の平均標準報酬額は40万円、300カ月みなしとして計算する。
計算
- 遺族厚生年金 = 40万円 × 5.481/1000 × 300カ月 × 4分の3 = 約493,290円(年額)
- 遺族基礎年金 = 847,300円 +(243,800円 × 2人)= 1,334,900円(年額)
- 合計 = 約1,828,190円(年額)/月額 約152,349円
末子が18歳の年度末を過ぎると遺族基礎年金は受け取れなくなりますが、その時点で妻が40歳以上であれば、入れ替わりで「中高齢寡婦加算」が上乗せされます。
ケース2:共働き夫婦+子1人
前提:夫の平均標準報酬額は45万円、300カ月みなしとして計算する。
計算
- 遺族厚生年金 = 45万円 × 5.481/1000 × 300カ月 × 4分の3 = 約554,951円(年額)
- 遺族基礎年金 = 847,300円 + 243,800円 = 1,091,100円(年額)
- 合計 = 約1,646,051円(年額)/月額にすると約137,171円
妻自身が65歳から自分の老齢厚生年金を受け取るようになると、金額の調整が入ります。
詳しくは後の章でお伝えします。
ケース3:子のない妻(夫死亡時に妻45歳)
前提:夫の平均標準報酬額は40万円、300カ月みなしとして計算する。
計算
- 遺族厚生年金 = 約493,290円(年額)
- 中高齢寡婦加算 = 635,500円(年額)
- 合計 = 約1,128,790円(年額)/月額にすると約94,066円
子どもがいないため、遺族基礎年金は受け取れません。
そのかわり、40歳から65歳までは中高齢寡婦加算が上乗せされます。
ケース4:自営業の夫(国民年金のみ加入)
夫が自営業等であり、「国民年金のみ」に加入していた場合は、遺族厚生年金がありません。
支給されるのは遺族基礎年金のみです。
計算
- 子が1人いる場合 = 847,300円 + 243,800円 = 1,091,100円(年額)
- 子がいない場合 = 遺族基礎年金の対象外となるため、遺族年金としては支給されません。
ただし、子のいない妻でも、寡婦年金や死亡一時金を受け取れる場合があります。
ケース5:65歳以上で夫を亡くした妻
65歳以上の人は、自身の老齢年金との調整があるため、計算が少し変わります。
後の章でくわしくお伝えします。
【早見表】夫の年金月額からわかる遺族年金の目安
夫の年金月額から、おおよその遺族厚生年金が分かる早見表を用意しました。
- 夫の年金月額のうち、老齢基礎年金(月額約7.1万円)を除いた厚生年金部分をもとに、「遺族厚生年金=厚生年金部分✕4分の3」として概算した目安です。
実際の受給額は、加入期間や平均標準報酬額、300カ月みなしの適用などによって異なります。 - また、子がいる場合は、別途「遺族基礎年金」が加算されることがあります。
- 妻は65歳未満であり、自分の老齢年金を受け取っていないものとします。
| 夫の年金月額 | 遺族厚生年金(年額・目安) | 遺族厚生年金(月額・目安 |
|---|---|---|
| 12万円 | 約44.1万円 | 約3.7万円 |
| 15万円 | 約71.1万円 | 約5.9万円 |
| 18万円 | 約98.1万円 | 約8.2万円 |
| 20万円 | 約116.1万円 | 約9.7万円 |
| 25万円 | 約161.1万円 | 約13.4万円 |
これらに加え、対象期間であれば「遺族基礎年金」や「中高齢寡婦加算」がさらに上乗せされます。
65歳以上の遺族年金の計算(自分の年金との調整)
遺族が65歳以上になると、遺族自身も「老齢基礎年金」や「老齢厚生年金」を受け取れるようになります。
このとき、遺族厚生年金との間で、「もらいすぎを防ぐための調整」が行われます。
まず、大原則として、「自身の老齢厚生年金」が優先して全額支給されます。
そして、遺族厚生年金の額が大きい場合にのみ、「その差額分」が支給されるしくみになっています(老齢給付の先充て)。
そのうえで、65歳以上で老齢厚生年金(退職共済年金)を受け取れる人の遺族厚生年金は、次の①と②を比較して、金額が多いほうの基準(権利額)とします。
-
① 亡くなった人の報酬比例部分 × 4分の3
② 亡くなった人の報酬比例部分 × 4分の3 × 3分の2 + 自分の老齢厚生年金 × 2分の1
※②で使う自身の老齢厚生年金(退職共済年金)の額は、子の加給年金額を除いた額になります。
計算例
① 120万円 × 4分の3 = 90万円
② 90万円 × 3分の2 + 60万円 × 2分の1 = 60万円 + 30万円 = 90万円
どちらも90万円で並ぶため、基準となる額は「90万円」です。
ここから、妻自身の老齢厚生年金である60万円が優先して支給されるため、実際に支給される遺族厚生年金は、差額の30万円となります。
-
自分の老齢基礎年金(70万円) + 自分の老齢厚生年金(60万円) + 遺族厚生年金の差額(30万円) = 160万円
なお、自身の老齢基礎年金は、調整の影響を受けずに全額そのまま遺族年金とあわせて受け取ることができます(併給可能)。

2028年(令和10年)の改正で計算はどう変わる?
年金制度の改正に関して「遺族年金が廃止される」「5年で打ち切り」といった断片的な情報を目にし、不安に感じた方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、今回の年金制度改正は「廃止」ではなく「時代の変化に合わせた見直し」です。
そして、次のいずれかに当てはまる方は、今回の改正の影響を受けず、これまでどおりの計算方法が維持されます。
- すでに遺族厚生年金を受給している人
- 60歳以降に遺族厚生年金の受給権が発生する人
- 18歳の年度末までの子を養育している期間中の人
- 2028年度末の時点で40歳以上になっている女性(1989年3月31日以前生まれの女性)
主に影響を受けるのは、「若い共働き世代」などです。
- 5年間の有期給付化
- 子どものいない若い配偶者への遺族厚生年金は、男女平等の観点から原則5年間の支給に変わります。
ただし、その5年間は支給額が約1.3倍に引き上げられ、収入が低い方などへの継続救済措置も用意されています。 - 中高齢寡婦加算の段階的廃止
- 段階的に縮小され、最終的には廃止されます。
なお、すでに受給している方の金額は変わりません。 - 遺族基礎年金(子の加算)の増額
- 現在は第1子・第2子と第3子以降で加算額が異なりますが、改正後は子1人あたりの加算額が年約28万円に増額される方向です。
遺族年金の計算でよくある質問
Q1:夫が年金を繰り下げ(繰り上げ)受給している場合、遺族年金の計算は変わる?
Q2:公務員や共済に加入していた場合の遺族年金の計算はどうなる?
Q3:遺族年金は所得税や社会保険料の計算に影響する?
Q4:児童扶養手当と遺族年金は、両方もらえる?
Q5:遺族年金は、いつまで受け取れる?
まとめ:遺族年金は2階建てで計算し、数字はねんきん定期便で確認を
今回は、令和8年度の最新データをもとに遺族年金の計算方法を整理しました。
- 遺族年金は「基礎(1階)」と「厚生(2階)」の組み合わせで計算する
- 計算の鍵となる数字は「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で確かめられる
- 2028年の法改正後も、すでに受給中の方や60歳以降の方は、原則としてこれまでどおりの計算で変わらない見込み
私たちVSG相続税理士法人では、相続税に強い税理士と年金制度に詳しい社会保険労務士が連携し、ワンストップでお客様の相続手続きをサポートできる体制を整えています。
遺族年金の受給に伴う家計の見直しや、相続税申告・手続きでお困りのことがございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

