記事の要約
- 中高齢寡婦加算は、夫を亡くした妻の生活を支えるため、40歳から65歳に達するまでの期間、遺族厚生年金に上乗せして支給される制度
- 子がいる間は遺族基礎年金が優先され、終了後に中高齢寡婦加算へ切り替わる
- 2028年4月より、中高齢寡婦加算の段階的な廃止が決定しており、新規受給者については受給開始時期に応じた経過措置が適用される
夫を亡くした妻の生活を支える公的年金制度のひとつに、「中高齢寡婦加算」があります。
「自分はもらえるのか」「いくら、いつまで受け取れるのか」など、正確な情報を求めている方も多いのではないでしょうか。
また、2025年の年金改正法成立に伴い、「2028年から中高齢寡婦加算が段階的に廃止される」という情報を受け、今後の生活への影響を懸念する声も聞かれます。
この記事では、中高齢寡婦加算の受給要件や金額、65歳以降の年金の切り替わり、さらには法改正による段階的廃止の内容まで、順を追って詳しく解説します。
なお、VSG相続税理士法人では、相続に関するご相談を無料で受け付けておりますので、相続でご不安なことがございましたら、お気軽にご連絡ください。
目次
中高齢寡婦加算(ちゅうこうれいかふかさん)は「遺族厚生年金の加算給付」の1つ
中高齢寡婦加算とは、厚生年金の加入者(被保険者)が亡くなった際、受給要件を満たしている妻に対し、遺族厚生年金に上乗せされる給付です。
中高齢寡婦加算の読み方と意味
中高齢寡婦加算は、「ちゅうこうれいかふかさん」と読みます。
遺族年金制度における「寡婦(かふ)」とは、夫の死亡により配偶者関係が終了した女性(死亡当時、夫に生計を維持されていた妻)を指します。
つまり中高齢寡婦加算とは、中高齢の寡婦、すなわち夫を亡くした40歳以上65歳未満で、一定の要件を満たす妻の生活を支えるための加算給付です。
夫を亡くした「妻」が対象のため、妻を亡くした夫や、夫が亡くなる前に離婚した前妻は対象になりません。
遺族厚生年金に上乗せされる「つなぎ」の役割
中高齢寡婦加算は、厚生年金に加入していた夫(会社員や公務員など)が亡くなったとき、要件を満たす妻の遺族厚生年金に上乗せされて支給されます。
本来、子どものいる世帯には「遺族基礎年金」が支給されますが、もともと子どもがいない場合や、子どもが成長して受給対象から外れた場合は、遺族基礎年金を受け取ることができません。
その結果、妻が受け取れる年金額が大きく減少してしまう問題が生じます。
この収入のギャップを埋め、妻が自分自身の老齢基礎年金を受け取れるようになる65歳までの生活を支える「つなぎ」としての役割を果たすのが、中高齢寡婦加算です。
なお、遺族厚生年金や遺族基礎年金のしくみについては、以下の記事で詳しくお伝えしていますのであわせてご覧ください。

中高齢寡婦加算はいくら・いつまでもらえる?
ここでは、中高齢寡婦加算の「支給金額」と「支給期間」をお伝えします。
支給金額は年額63万5,500円(令和8年度)
中高齢寡婦加算の金額は、老齢基礎年金の満額の4分の3(遺族基礎年金のほぼ4分の3)と定められています。
2026年度(令和8年度)の金額は、年額で63万5,500円(毎月約5万円)です。
なお、支給金額は、物価や賃金の変動に応じて毎年改定されます。
最新の金額は、日本年金機構のホームページでご確認ください。
支給期間は要件を満たしたときから65歳になるまで
中高齢寡婦加算は、要件を満たす妻が40歳から65歳に達するまでの間、支給されます。
65歳以降は、妻自身の「老齢基礎年金」の受給が始まるため、中高齢寡婦加算は支給されなくなります。
なお、2007年(平成19年)3月31日以前に夫が亡くなり、遺族厚生年金を受給している方は、経過措置として「40歳」の要件が「35歳」となります。
受け取れる金額のイメージ
中高齢寡婦加算は、遺族厚生年金への「上乗せ」として支給されます。
実際に妻が受け取る年金額は、「遺族厚生年金」「中高齢寡婦加算」の合計額です。
例
40歳から65歳までの期間は、中高齢寡婦加算の63万5,500円が加算され、合計で年間約143万円が支給されます。
遺族厚生年金の金額は、亡くなった夫の現役時代の収入や厚生年金への加入期間によって異なります。
中高齢寡婦加算をもらえる人・もらえない人のケース
中高齢寡婦加算は、夫を亡くした妻なら誰でも受け取れるわけではありません。
妻自身の要件と、亡くなった夫の要件の、両方を満たす必要があります。

妻(受給者)の要件は2パターン
中高齢寡婦加算の受給対象になる妻は、次のいずれかの条件に当てはまる方です。
- 夫が亡くなった当時、45歳以上65歳未満で、生計を同じくする子がいないとき(※)
- 遺族厚生年金と遺族基礎年金を受けていた子のある妻が、子が18歳到達年度の末日に達した(障害の状態にある場合は20歳に達した)等のため、遺族基礎年金を受給できなくなったとき(その時点で40歳以上65歳未満である場合)
- ※
- 年金制度における「子」とは、「18歳に達する日以後の最初の3月31日を経過していない子」や「20歳未満で障害等級1級または2級の状態にあり、婚姻をしていない子」を指します。
「2」については、夫が亡くなった当時、妻が40歳以上で、子どもがまだ18歳の年度末を迎える前だった場合、子どもが18歳到達年度の末日(3月31日)を迎えるまでの間、妻に遺族厚生年金と遺族基礎年金が支給されます。
その後、子どもが遺族基礎年金の対象から外れると、妻が65歳になるまでの間は、遺族厚生年金に中高齢寡婦加算が上乗せされる形に切り替わります。


亡くなった夫の要件(短期要件・長期要件)
妻が中高齢寡婦加算を受け取るには、亡くなった夫が遺族厚生年金の受給要件を満たしていることが前提です。
夫の要件には、短期要件と長期要件があります。
- 厚生年金保険の被保険者が亡くなったとき(厚生年金の加入中に亡くなったとき)
- 厚生年金の被保険者であった間に初診日がある病気やけがが原因で、初診日から5年以内に亡くなったとき
- 1級または2級の障害厚生年金を受けられる方が亡くなったとき
- 夫の厚生年金の被保険者期間が240カ月(20年)以上であるとき
現役世代で亡くなった場合は、多くが短期要件に当てはまります。
ただし、いずれの場合も一定の保険料納付要件を満たす必要があるため、未納期間が多いケースなどでは受給できないことがあります。
なお、中高齢寡婦加算は、遺族厚生年金の請求手続きをする中で、要件を満たせば自動的に加算されます。
加算単独での特別な申請手続きは、原則として必要ありません。
中高齢寡婦加算がもらえない5つのケース
次のような状況に該当する場合、中高齢寡婦加算は支給されません。
①妻が40歳未満のとき
子どものいない40歳未満の妻には、中高齢寡婦加算は支給されません。
妻が30代の間に夫が死亡し、かつ生計を同じくしている子どもがいない場合、遺族厚生年金のみの受給となります。
子どものいない30歳未満の妻の場合、遺族厚生年金は5年間のみの有期給付となります。
なお、2028年4月以降は、子どものいない30歳以上の妻も、原則5年間の有期給付になることが決まっています。
②遺族基礎年金を受給しているとき
夫の死亡時に40歳に到達していても、子どもがおり、遺族基礎年金を受給している間は、中高齢寡婦加算を受給できません。
子どもの成長などにより、遺族基礎年金の支給が終了した時点で妻が40歳以上65歳未満であれば、加算が開始されます。
妻が40歳になる前に子どもが18歳の年度末に達し、遺族基礎年金の受給権が消滅した場合も、中高齢加算の支給対象外です。
③夫の厚生年金加入が20年未満で、短期要件にも当てはまらないとき
たとえば、夫が会社を辞めたあと国民年金のみに加入しており、厚生年金の加入期間が20年に満たないまま亡くなった場合などは、長期要件(厚生年金加入20年以上)も短期要件(死亡前の一定期間の厚生年金加入)も満たさず、妻が中高齢寡婦加算を受け取れない可能性があります。
④妻が再婚、または事実婚(内縁関係)の状態になったとき
妻が再婚、または事実婚状態になった場合は、遺族厚生年金そのものの受給権が消滅するため、中高齢寡婦加算も受け取れなくなります。
⑤妻が障害厚生年金を受け取ることになったとき
妻が障害厚生年金の受給権を得た場合、原則として遺族厚生年金との同時受給はできません。
65歳未満では、どちらか一方を選択して受給する必要があります。
障害厚生年金を選択した場合、遺族厚生年金は受給停止となり、中高齢寡婦加算も支給されません。
中高齢寡婦加算とほかの年金との併給・選択の早見表
公的年金には「一人一年金」のルールがあり、原則として、支給事由(老齢・障害・遺族)が異なる年金を同時に2つ以上受け取ることはできません(一定の要件のもとで、異なる支給事由の年金を組み合わせて受給できる場合はあります)。
なお、同じ支給事由の「基礎年金」と「厚生年金」はセットで受給可能です(例:遺族基礎年金+遺族厚生年金)。
中高齢寡婦加算は、この遺族厚生年金に付随するものです。
主な制度との関係性は、以下のとおりです。
| 制度 | 中高齢寡婦加算との関係 |
|---|---|
| 遺族厚生年金 | 中高齢寡婦加算の対象となる「本体」であり、セットで受給できます。 |
| 遺族基礎年金 | 同時受給はできません。 子がいる間は遺族基礎年金が優先され、終了後に中高齢寡婦加算へと切り替わります。 |
| 障害厚生年金 | どちらか一方の年金を選択します。 障害厚生年金を選択した場合、遺族厚生年金および中高齢寡婦加算は支給停止となります。 |
| 寡婦年金 | 遺族厚生年金とは原則として選択関係にあります(夫の年金加入履歴によって通常はいずれか一方に定まります)。 |
| 死亡一時金 | 寡婦年金と選択の関係にあります。 |
| 自身の老齢年金(65歳〜) | 65歳に達すると中高齢寡婦加算は終了し、自身の老齢基礎年金・老齢厚生年金との組み合わせに移行します。 |
65歳になったら中高齢寡婦加算はどうなる?
妻が65歳を迎えると、中高齢寡婦加算の支給は終了します。

65歳からは「自分の老齢基礎年金」に切り替わる
妻が65歳を迎えると、妻自身の「老齢基礎年金」の受給が始まります。
中高齢寡婦加算は、妻が自分の年金を受け取れるようになるまでの「つなぎ」であったため、65歳到達をもって支給を終了します。
多くの方は、加算がなくなる代わりに自分の老齢基礎年金を受け取れるため、大きな空白は生じにくい設計になっています。
ただし、生まれた年によっては、自分の老齢基礎年金が中高齢寡婦加算より少なくなり、65歳を境に年金が減ってしまう方もいます。そうした方の減り幅を補うのが、次にお伝えする「経過的寡婦加算」です。
経過的寡婦加算(昭和31年4月1日以前生まれの妻)
経過的寡婦加算とは、65歳以降、中高齢寡婦加算に代わって遺族厚生年金に上乗せされる給付です。
かつて専業主婦の国民年金への加入が任意だった時代、保険料の未納・未加入期間によって、妻自身の老齢基礎年金が満額に届かず、中高齢寡婦加算より少なくなる世代があります。
経過的寡婦加算は、現在の年金制度になる以前に結婚した女性の年金を補填するために設けられた制度です。
- 対象者:1956年(昭和31年)4月1日以前に生まれた妻
- 支給額:生年月日に応じて段階的に減額設定されており、2026年度(令和8年度)は生年月日により年額63万3,700円〜2万1,147円の範囲で支給される。
経過的寡婦加算は、原則として65歳以降も遺族厚生年金に加算されます。
ただし、再婚などで遺族厚生年金の受給権を失う場合や、障害基礎年金との調整がある場合には、支給されないことがあります。
夫が自営業(国民年金)だった妻がもらえるお金
中高齢寡婦加算や経過的寡婦加算は、夫が厚生年金に加入していた場合の制度です。
夫が自営業やフリーランスなどの「国民年金第1号被保険者」だった場合は、中高齢寡婦加算の対象外となります。
その代わり、国民年金独自の給付として以下の制度が用意されています。
寡婦年金
寡婦年金は、夫が国民年金の第1号被保険者として保険料を一定期間納め、老齢基礎年金や障害基礎年金を受け取らずに亡くなった際、妻に支給される給付です。
- 支給期間:妻が60歳から65歳になるまでの5年間
- 支給金額:夫の第1号被保険者期間のみで計算した老齢基礎年金額の4分の3(年額で最大約64万円)
| 項目 | 中高齢寡婦加算 | 寡婦年金 |
|---|---|---|
| 位置づけ | 遺族厚生年金への加算給付 | 国民年金(第1号)独自の給付 |
| 夫の加入要件 | 厚生年金(原則20年以上の加入など) | 国民年金第1号として10年以上納付 |
| 妻の年齢要件 | 40歳から65歳になるまで | 60歳から65歳になるまで |
| 金額の目安(2026年度) | 年額 63万5,500円 | 夫の計算上の老齢基礎年金の4分の3 |
夫に厚生年金と国民年金第1号の双方の期間があり、両方の受給要件を満たす場合は、どちらか一方を選択します。
一般的には支給期間が長く金額も安定している中高齢寡婦加算を選択するほうが有利なケースが多いですが、詳細は年金事務所での試算をおすすめします。
なお、寡婦年金は自動的には支給されず、請求の手続きが必要です。
また、夫が死亡した日の翌日から5年を経過すると請求権が消滅しますので、早めに年金事務所へ相談しましょう。
死亡一時金
死亡一時金は、国民年金の第1号被保険者として保険料を36カ月(3年)以上納めた方が、老齢基礎年金や障害基礎年金を受け取らずに亡くなったとき、生計を同じくしていた遺族に支給される一時金です。
- 支給金額:保険料の納付月数に応じて12万円〜32万円(1回限りの支給)
- 請求期限:死亡した日の翌日から2年以内
「寡婦年金」と「死亡一時金」を両方受け取ることはできず、いずれか一方の選択となります。
一般的には、受取総額の多い寡婦年金を選ぶほうが有利になることが多いです。
中高齢寡婦加算は2028年以降、新規受給者から段階的に廃止される
現行の年金制度は、専業主婦が多い時代につくられたものであり、夫を亡くした妻への保障は手厚い一方で、妻を亡くした夫が受け取れる範囲は狭いという差がありました。
しかし、2025年6月に成立した年金改正法により、遺族年金制度の合理化と「男女差の解消」を目的とした大幅な見直しが行われることとなりました。
これに伴い、中高齢寡婦加算も段階的な廃止が決定しています。
2025年に成立した年金改正法で決まったこと
現行の制度では、遺族厚生年金は30歳以上の妻に対して無期限で支給されており、有期支給となるのは「子どものいない30歳未満の妻」に限られています。
年金法改正後は、子どもがいない20代〜50代の遺族は、性別を問わず「原則5年間の有期給付」となります。
- 男女の取り扱いの差の見直し
- 2028年4月の施行時点で「子どものいない40歳未満の妻」は、5年間の有期給付(従来の終身保障から変更)の対象となり、以降、年齢に応じた対象範囲が20年かけて段階的に移行します。
また、遺族厚生年金の受給対象外だった55歳未満の男性も、新たに受給できる可能性が出てきました。 - 「有期給付加算」の導入
- 支給期間が5年に短縮されることへの配慮として、現在の遺族厚生年金の約1.3倍の額が支給されるしくみが導入されます。
- 「継続給付」の設置
- 障害年金受給者や収入が著しく低い受給者には、5年後以降も支給を続ける特例が設けられます。
中高齢寡婦加算の「段階的廃止」の中身
今回の年金制度改正では「中高齢寡婦加算の段階的廃止」も決まりました。
2028年4月以降に新たに受給権が発生する妻については、中高齢寡婦加算の額が段階的に引き下げられ、最終的に25年をかけて廃止される予定です。
自分は影響を受ける?3つのケースで確認
改正によって自身の年金額に影響が出るかどうかは、受給のタイミングによって異なります。
- すでに中高齢寡婦加算を受給している方
- 法改正の施行前(2028年3月以前)からすでに受給している方は、今回の改正による影響は受けません。
これまでどおり、65歳に達するまで現行の基準に沿った金額が支給されます。 - 2028年4月以降に新しく受給が始まる方
- 新たに受給権が発生する方は、引き下げ措置の対象になる可能性があります。
ただし、受給が開始された時点の金額が減少するわけではなく、受給開始時の金額で固定されます。 - もともと対象外の方
- 子どものいない40歳未満の妻や、65歳以降に夫と死別した子どものいない妻など、もともと中高齢寡婦加算の対象でない方は、影響を受けません。
中高齢寡婦加算に関するよくある質問
Q1:中高齢寡婦加算は再婚すると受給できなくなる?
Q2:内縁の妻でも中高齢寡婦加算はもらえる?
Q3:死後離婚(姻族関係終了届の提出)をしても中高齢寡婦加算はもらえる?
Q4:中高齢寡婦加算に税金はかかる?
まとめ:制度のしくみを理解し、今後の改正を見据えた備えを
中高齢寡婦加算は、夫を亡くした妻の生活を支える大切なお金です。
- 中高齢寡婦加算は40歳から65歳になるまで、遺族厚生年金に上乗せして支給される妻の生活を保障するための制度。
- 「40歳以上65歳未満」「対象となる子のいない世帯」が主な要件であり、妻の老齢基礎年金が始まる65歳までの収入を支える役割を担う。
- 2028年4月より中高齢寡婦加算は段階的に廃止されるが、現在受給中の方への影響はない。なお、今後の新規受給者には受給開始時期に応じた経過措置が適用される。
なお、こうした公的年金の遺族給付は原則非課税ですが、民間の年金や企業年金などには相続税がかかる場合があります。
相続や年金の手続きに少しでも不安があるときは、早めに専門家へ相談することをおすすめします。
私たちVSG相続税理士法人では、相続税に強い税理士と年金制度に詳しい社会保険労務士が連携し、ワンストップでサポートできる体制を整えています。
遺族年金に関するお悩みのほか、相続税申告・手続きでお困りのことがございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

