記事の要約
- 相続税について税務署に相談しても、納税者にとって有利なアドバイスはしてくれない
- 相続税のことを相談したいなら、税理士にするのがおすすめ
- 「どうしても自分で申告したい」「申告が本当に不要か知りたい」という場合には、税務署に相談するのも一手
税務署では無料で相続税に関する相談に応じてくれるため、多くの方が最初の相談先として検討されます。
しかし、税務署へ相談しても、思っていたようなアドバイスが得られないことが多いです。
このため、「これから相続税の申告をする方」が税務署に相談に行くことは、基本的にはあまりおすすめできません。本記事では、その具体的な理由をお伝えします。
なお、VSG相続税理士法人でも、相続に関するご相談を無料で受け付けております。なにかお困りのことがあれば、下記からお気軽にご連絡ください。
目次
税務署への相談はおすすめできない理由

「これから相続税の申告をする方」の相談先として、税務署があまりおすすめできない理由には、次の3つがあります。
ここでは、それぞれの理由について詳しく見ていきます。
理由1:節税のアドバイスはもらえない

税務署の役割は、あくまで法律に沿って「納税者に正しく税金を納めてもらう」ことです。
いわば、スポーツにおける「審判」のような中立的な立場であり、納税者が有利になるようなアドバイスはしてくれません。
たとえば、土地の評価額を最大80%減額できる「小規模宅地等の特例」という、節税効果がとても高い制度があります。税務署でこの特例について尋ねれば、その概要は教えてくれるでしょう。
しかし、相続人の状況から「誰がどのように土地を相続すれば、特例の効果が最大になる」といった、具体的な提案はしてくれません。これは、特例を適用しなくても、申告としては正しいからです。
その結果として、納税者に有利な制度を最大限に活用できず終わってしまうケースもあります。
理由2:税務調査のきっかけになる恐れがある

税務署の職員は「税金を徴収するプロ」として、申告漏れにつながる財産がないか、常に目を光らせています。
たとえば、税務署での相談で「亡くなった夫が生前、私(妻)名義の銀行口座へ、毎年100万円ほど振り込んでくれていた」と話したとします。
これは、税務署側から見れば「申告のとき、直近の生前贈与も、漏れずに相続財産に加算するのか?」と疑うきっかけになり、メモとして残されることがあります。
もし、後になって提出された申告書に、その生前贈与財産が含まれていなかった場合、実態を確認するために「税務調査」の対象に選ばれるかもしれません。
このように、税務署への相談したときの発言とそのメモがきっかけで、数年後の税務調査を呼び込んでしまうことがあります。
理由3:最終的な申告の責任は自分にある

税務署は、申告の方法は教えてくれますが、申告を「代行」してくれるわけではありません。
具体的には、以下のような手続きをすべて自分で行う必要があります。
もちろん、これらの手続きをするなかで、計算ミスや書類の不備などがあった場合、その責任はすべてご自身が負うことになります。
「税務署に相談しながら進めていたから、大丈夫だと思っていた」という言い訳は通用しませんので、ご注意ください。
相続税の相談は「税理士」にするのが基本

相続税について誰かに相談したいのであれば、「税理士」を選ぶことをおすすめします。
税務署が中立な「審判」だとすれば、税理士はあなたの「コーチ」のような存在で、適切な申告ができるように責任を持ってサポートしてくれます。

税理士に相談することには、具体的には次のようなメリットがあります。
- 税負担を最大限に軽くする方法を教えてくれる
- 相談だけではなく「申告の代行」もしてくれる
- 申告した後に税務調査が入っても、代わりに対応してくれる
もちろん、税理士に「申告の代行」まで任せるとなると、費用がかかります。
税理士への報酬は、遺産総額の「0.5〜1.0%」が目安で、仮に遺産が1億円であれば「50〜100万円」ほどになります。
ただし、相続に強い税理士に依頼すれば、この報酬額を上回る節税ができるケースも少なくありません。
たとえば、相続する土地の評価額を査定し直したり、特例を上手に使ったりすることで、数百万円単位で税金が安くなることもあります。
多くの税理士事務所では、初回の相談を無料で受け付けています。まずは「そもそも自分は、相続税の申告が必要なのか?」「税額はいくらかかりそうか?」といった点だけでも、確認してみてはいかがでしょうか。
相続に強い税理士の探し方は、下記の記事でお伝えしているので、併せてチェックしてみてください。
当事務所でも、無料で相談を承っております。なにかお困りのことがあれば、下記からお気軽にご連絡ください。
税務署への相談を推奨できるケース

ここまでお伝えしたとおり、基本的には相続税のことは「税理士」のサポートを受けることをおすすめします。
ただし、次の2つのケースに当てはまる場合には、税務署への相談も推奨できます。
これらのケースについて、詳しく見ていきましょう。
ケース1:どうしても自分で申告をしたい
1つ目は、税理士に頼らずに「自分の力で申告したい」と考えているケースです。
たしかに、税理士のサポートを受けることで、税負担を最小限に抑えられますが、同時に「報酬の支払い」という負担が生じます。
「税理士に頼むことで減らせる税額」よりも「税理士に支払う報酬」のほうが高くなりそうであれば、税務署に無料で相談しながら手続きを進めるのも一手です。
ただし、税理士に申告を依頼するメリットは、税額を抑えられることだけではありません。
プロのサポートを受けながら、正しい内容で申告することで税務調査が入る可能性が低くなり、もし調査になっても、代わりに対応してもらえる安心感があります。
そのため、相続税の申告を自分でするかどうかは、慎重に判断するようにしましょう。
ケース2:遺産総額が明らかに基礎控除以下
2つ目は、「遺産総額が明らかに基礎控除以下になる」のケースです。
相続財産の総額が「基礎控除額」を下回っている場合、相続税の申告は不要です。
計算式
たとえば、相続人が1人の場合、基礎控除額は3,600万円です。これに対して、たとえば遺産が「預貯金2,000万円のみ」であれば、申告の義務はありません。
しかし、「計算間違いがないか不安……」「本当に申告しなくていいのか、お墨付きが欲しい」という方もいるかもしれません。
このような場合、「申告が不要なことの最終確認」をするためには、無料で利用できる税務署への相談が最適です。
なお、遺産のなかに「土地・家屋」がある場合は要注意です。「自分で計算した評価額が間違っていて、実際には基礎控除額を超えていた」というケースも珍しくありません。
このため、不動産がある場合は、はじめから税理士に相談することを強くおすすめします。
【参考】税務署への相談の流れ
ここでは、実際に税務署に相談するときの流れを簡単にお伝えします。
一般的には、次の4ステップを踏むことになります。
| ステップ | 概要 |
|---|---|
| ①管轄の税務署を調べる |
■ 相続税の申告は「亡くなった方の最後の住所地を管轄する税務署」で行うため、相談もその税務署にする ■ 管轄の税務署は、国税庁のWebサイトで確認できる |
| ②面談の予約をする |
■ 相談は予約制のため、管轄の税務署に電話をかけて、日程調整をする ■ 電話をかけると音声ガイダンスが流れるので、案内に従って進める ■ 一般的な質問であれば「電話相談センター」につながって、オペレーターが回答してくれる |
| ③資料を準備する |
■ 相談をスムーズに進めるため、事前に資料を準備しておくのがおすすめ ■ 具体的には、相続関係がわかる「戸籍謄本」や、財産の内容がわかる「預金通帳」・「固定資産税の課税明細書」などを用意する ■ 必要な書類がわからなければ、予約電話をした際に確認しておくとよい |
| ④税務署で相談する | ■ 予約した日時に税務署へ出向き、職員に相談をする |
よくある相談内容
相続税について、多くの方が相談したいと考えるのは、次のような内容です。
税務署や税理士に相談する前に、まずはここで概要をつかんでおきましょう。
Q1:自分の場合、相続税の申告は必要?
「正味の遺産額※1」が「基礎控除額」を超えた場合に、相続税の申告が必要になります。
- ※1
- 預貯金や不動産などの「プラスの財産」から、債務などの「マイナスの財産」を差し引いた金額
計算式
ご自身のケースで申告が必要かどうか判断する方法は、下記の記事で詳しくお伝えしています。
Q2:申告・納税は、いつまでにすればよい?
相続税の申告は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から「10カ月以内」にしなければなりません。
この期限を過ぎると、本来の税額に加えて「延滞税」などのペナルティが課されるためご注意ください。
Q3:どんな財産が相続税の対象になる?
相続税の対象となるのは、次のような財産です。
これらの財産でも、課税対象にならないものがあるため、詳細はリンク先でご確認ください。
また、「借入金」や「葬儀費用」などの債務は、課税対象となる財産の価額から差し引いて、税額を計算できます。
Q4:不動産の評価は、どうすればいい?
土地の評価は、国税庁が定める「路線価」をもとに、その土地の状況に合わせて価格を調整します。
一方、家屋については、基本的に「固定資産税評価額」をそのまま用います。
特に、土地を正しく評価するには、専門的な知識が必須です。このため、税理士に任せることを強くおすすめします。
Q5:配偶者は、相続税が安くなるって本当?
「配偶者の税額軽減(配偶者控除)」という制度により、配偶者が相続した財産のうち、「1億6,000万円」または「法定相続分相当額」のいずれか多い金額までは、相続税がかかりません。
この制度については、下記の記事で詳しくお伝えしています。
Q6:「小規模宅地等の特例」ってなに?
「小規模宅地等の特例」とは、ご自宅などの土地の評価額を最大80%減額できる制度です。
適用を受けるための要件などは、下記の記事をご参照ください。
Q7:税務署から届いた書類には、どう対応すればいい?
税務署が「相続税の申告が必要な可能性が高い」と判断した方には、「相続税についてのお知らせ(ご案内)」という書類が届くことがあります。
ご自身の状況によって必要な対応は異なりますので、書類が届いたら、なるべく早めに税理士に相談することをおすすめします。
相続税のことは、とりあえず税理士に相談してみよう
この記事では、相続税の相談を税務署にする際の注意点をお伝えしました。
税務署への相談は「何回でも無料」なことが魅力ではありますが、思うような回答を得られないこともあります。
そこで、相続税についてわからないことがあれば、とりあえず「税理士」に相談してみることをおすすめします。
「自分の場合、相続税の申告は必要か?」「かかるとしたら、税額はいくらくらいか?」程度の質問であれば、初回の無料相談で答えてくれることがほとんどです。
当事務所でも、相続に関する相談を無料で受け付けております。相談を受けたからといって、強引に営業をかけることは決してありませんので、お気軽にご連絡ください。





