東京弁護士会所属。
メーカー2社で法務部員を務めた後、ロースクールに通って弁護士資格を取得しました。
前職の経験を生かし、実情にあった対応を心がけてまいります。 お気軽に相談いただければ幸いです。
イヤホンをつけたまま自転車に乗っている人を見かけて、違反ではないのかと気になった経験はありませんか?
または自分でイヤホンをつけたまま自転車を運転して、音が聴こえずに危ない目にあった方もいるかもしれません。
今回は、このような疑問について分かりやすく解説していきます。
今後は2026年までに自転車にも青切符(反則金)が課されるようになります。
改正の情報についても詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
自転車運転中のイヤホンは、2024年10月までは法律(道路交通法)で直接禁止する規定はなく、各都道府県の条例や規則等により禁止されていました。
この点について、道路交通法において70条の安全運転義務を根拠として、違反になる可能性があります。
引用:
道路交通法70条
車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。
道路交通法第107条の2の2
次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
8号チ第70条(安全運転の義務)の規定に違反する行為
たとえばイヤホンをつけることで周りの音が聴こえず、ハンドルやブレーキ操作に支障が出たような場合は、本条により罰せられる可能性があります。
また、事故を起こした場合には刑事罰にならなくても、民事責任として過失を問われる可能性が高くなります。
事故における過失割合が高くなると、賠償金の支払いがより高額になります。
2024年5月17日、道路交通法の改正法案が可決されました。
これにより公安委員会遵守事項の違反が法律による罰則の対象となり、イヤホン装着での自転車運転も違反行為に追加されます。
改正法は2024年11月1日から施行されました。
ただし、2024年11月時点で青切符による取り締まりはまだ導入されていません。
青切符による取締りについては、2024年5月24日の法律交付から2年以内に施行される予定です。
改正法は可決から2年以内に施行となりますので、2026年までの間に改正法での運用が開始されます。
2024年11月現在における、自転車運転中のイヤホン装着について主要都市のいくつかの条例・規則等を紹介します。
罰則は省略しますが、各自治体ともに5万円以下の罰金と定めるところが多いようです。
東京都においては、東京都道路交通規則の第8条(運転者の遵守事項)(5)により、下記のとおりイヤホン利用は禁止されています。
(5)高音でカーラジオ等を聞き、又はイヤホーン等を使用してラジオを聞く等安全な運転に必要な交通に関する音又は声が聞こえないような状態で車両等を運転しないこと。
ただし、難聴者が補聴器を使用する場合又は公共目的を遂行する者が当該目的のための指令を受信する場合にイヤホーン等を使用するときは、この限りでない。
(※『イヤホーン』は原文通り)
引用元:東京都道路交通規則
神奈川県道路交通法施行細則の11条では、自転車を含む車両の運転者に関して、以下の規定が定められています。
神奈川県道路交通法施行細則第11条(運転者の遵守事項)(5)
大音量で、又はイヤホン若しくはヘッドホンを使用して音楽等を聴く等安全な運転に必要な音又は声が聞こえない状態で自動車、原動機付自転車又は自転車を運転しないこと。
宮城県道路交通規則では、次のとおり定められています。
宮城県道路交通規則第14条
⑾高音量でカーラジオ、カーステレオ等を聞き、ヘッドホン又はイヤホンを使用して音楽を聞くなど、安全な運転に必要な交通に関する音又は声が聞こえないような状態で車両を運転しないこと。ただし、公共目的を遂行する者が当該目的のための指令を受信する場合にヘッドホン又はイヤホンを使用するときは、この限りでない。
引用元:宮城県道路交通規則
愛知県の道路交通規則におけるイヤホンの規制は、次の通りです。
愛知県道路交通法施行規則第7条四
大きな音量で、カーラジオ等を聞き、又はイヤホン等を使用して音楽等を聞くなど安全な運転に必要な交通に関する音又は声が聞こえないような状態で車両等を運転しないこと。ただし、難聴者が補聴器を使用する場合又は公共目的を遂行する者が当該目的のための指令等を受信する場合は、この限りでない。
引用元:愛知県道路交通規則
大阪府の道路交通規則では、下記のとおり自転車運転中のイヤホン使用に関する規定が設けられています。
大阪府道路交通規則第13条(5)
警音器、緊急自動車のサイレン、警察官の指示等安全な運転に必要な交通に関する音又は声を聞くことができないような音量で、カーオーディオ、ヘッドホンステレオ等を使用して音楽等を聴きながら車両を運転しないこと。
引用元:大阪府道路交通規則
広島県道路交通法施行細則におけるイヤホンに関する条文は、次のとおりです。
広島県道路交通法施行細則第10条(10)
大音量でカーラジオ等を聞き、又はイヤホン、ヘッドホン等を使用して音楽を聞くなど警音器、緊急自動車のサイレン、警察官の指示その他の安全な運転に必要な交通に関する音又は声を聞くことができないような状態で車両を運転しないこと。ただし、難聴者が補聴器を使用する場合又は公共目的を遂行する者が当該目的のための指令を受信する場合にイヤホン、ヘッドホン等を使用するときは、この限りでない。
引用元:広島県道路交通規則
福岡県では『福岡県自転車の安全で適正な利用の促進及び活用の推進に関する条例』において次の通り定められています。
引用:
福岡県自転車の安全で適正な利用の促進及び活用の推進に関する条例(自転車利用者の責務)第5条(5)
傘を差し、携帯電話用装置等の通話若しくは操作をし、又はイヤホン若しくはヘッドホンを使用して大音量で音楽等を聞きながら運転しないこと。
福岡県自転車の安全で適正な利用の促進及び活用の推進に関する条例
片耳や骨伝導イヤホン・ワイヤレスイヤホン等においても、原則として違反になると考えられます。
前述の各都道府県の条例や規則のとおり、趣旨として重要なのは『公共の危険を生じさせないこと』であるためです。
片耳や・骨伝導イヤホン・ワイヤレスイヤホンであっても、使用によって注意力が低下し周囲の音や危険に対する反応が遅れる場合があります。
音楽ではなく通話に使う場合も、公共に危険が出る可能性があれば同様の規制を受けると考えられるでしょう。
またノイズキャンセリング機能だけを使用し、音楽を流さずに耳栓代わりに使う人もいます。
こうした使い方であっても、やはり外部の音が聴こえなくなり危険が増すと考えられるため、自転車運転中はそうした使用でも行わない方がいいでしょう。
危険が生じやすくなると、他人だけでなく自分がケガをするリスクも大きくなります。
ルール違反かどうかという視点だけでなく、自分の身を守るためにも自転車運転中のイヤホン使用は避けることが望ましいでしょう。
道路交通法改正において、自転車運転で気をつけたいポイントは次のとおりです。
では、1つずつ解説していきます。
2024年5月17日に道路交通法の改正法案が可決され、同年11月1日に施行されました。
ただし、青切符による取締りについては2026年5月ごろ(法律を交付した2024年5月24日より2年以内)に開始される予定です。
施行までに国土交通省の発表やニュースから正確な情報を得るようにしましょう。
改正の内容をしっかりと理解し、家族や周囲の人達で共有して、違反にならないよう気をつけましょう。
改正後は、より事故の危険が大きい違反や、事故につながりやすい違反が優先的に取締りの対象になるとされています。
特に下記の行為は日常的に見かけやすいため、違反にならないよう注意しましょう。
青切符の対象となるのは16歳からです。
青切符を切られると、違反の内容に応じた反則金を支払わなければなりません。
自転車の違反で青切符を切られた際の違反金は5,000円~1万2,000円ほどになるとみられています。
反則金を支払わないと刑事手続きに移行し、罰金や懲役等の可能性も出てきます。
なおこれまで通り、赤切符は14歳から対象です。
16歳未満でも違反を取られないわけではない点に注意が必要です。
今回は、イヤホンをつけたままでの自転車運転を中心に交通違反について解説しました。
イヤホン利用について、2024年10月までは各都道府県の条例による取締りのみ行われていました。
しかし、2024年11月に改正法が施行され、イヤホンの使用やスマホのながら運転が罰則化されました。
2026年の5月ごろまでには、青切符による取締りも実施されるようになるでしょう。
なお、罰則のあるなしに関わらず、このような運転が危険であることに変わりありません。
普段から安全運転を意識し、怪我のない生活を心掛けましょう。