東京弁護士会所属。
交通事故の被害者にとって、弁護士は、妥当な慰謝料をもらうための強い味方になります。
特に、加害者の保険会社との示談交渉がうまくいかず悩まれていたり、後遺症が残ってしまい後遺障害慰謝料請求を考えていたりする方は、 ぜひ検討してみてください。
交通事故の後、普段の生活でなんとなく眠気を感じてしまうことがあります。
眠気の原因はいくつか考えられますが、事故の後数週間や数カ月が経過してから症状が出始める場合もあり、事故が原因と気づきにくいことも少なくありません。
また、医師の診察においても不定愁訴(原因がわからないが、心身に異常がある状態)とみられることもあります。
この記事では、事故後に眠くなる理由とその後の治療の流れ、治療費、および後遺障害等級認定について順番に解説していきます。
目次
交通事故後に眠くなる原因は、身体的な痛みに伴うものか、精神的なものかに分かれます。
また、事故以前からの持病が事故によって顕在化することも考えられます。
そのような場合には医師も判断が難しい場合があるため、通院しながら原因を探していくことになるでしょう。
ここでは、眠気の原因となり得るものを詳しく解説いていきます。
眠気の原因の一つ目はむちうちです。
むちうちの症状として、以下のようなものが挙げられます。
これらの痛みや体調不良が重なると、不眠になり、日中に眠くなることが考えられます。
また、しっかり睡眠の時間を取っていても、実は眠りが浅かったということもあるため、症状として自覚しにくい場合もあるようです。
むちうちは、事故の翌日から症状が出始めて、2~3カ月で治まることが一般的ですが、数週間または数カ月してから症状が出始める場合もあり、やはり自覚症状として気づきにくいことがあります。
むちうちは追突されたときに特になりやすいので、そうした事故の場合には、むちうちは原因の候補のひとつとなるでしょう。
また、むちうちから、以下の症状が派生することも考えられます。
バレリュー症候群は、後部頸交感神経症候群とも呼ばれ、むちうちの一種にあたります。
名前のとおり、首の後部周りの交感神経を損傷することで発症し、主な症状としては不眠、めまいなどがあります。
神経の損傷であるため、その他にも身体に現れる症状は様々なものがあります。
また、消化器官では以下の症状がみられます。
バレリュー症候群は、事故後2週間~4週間後に現れることが多く、むちうちと思われる症状がなかなか治まらない場合には、バレリュー症候群に当てはまる可能性があります。
間接的に眠気に繋がる原因のひとつとして、睡眠時無呼吸症候群が考えられます。
睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に呼吸が止まり、夜中に何度も目が覚める、眠りが浅くなるなどの症状がみられます。
一般的には、睡眠時無呼吸の原因となるのは、肥満や飲酒、鼻づまり、ストレス、または個人差として顎が小さく舌根沈下しやすいなどがあり、交通事故が直接的な原因ではありません。
しかし、顔の外傷またはその治療によって鼻呼吸しにくくなった場合や、痛みによって普段と寝相が変わり呼吸しづらくなる場合、またはストレスによっても発生するおそれがあります。
睡眠時無呼吸症候群になると、睡眠時間をしっかり確保していても実際には睡眠の効果が充分に得られないことがあり、日中の眠気につながります。
次に精神的症状です。
大きな事故の場合はもちろん、軽い怪我で済んだとしても、一歩間違えれば命に係わるのが交通事故。
その際の記憶がフラッシュバックし、事故がトラウマとなってPTSDになると、不眠の原因になります。
ここからは、上記の原因別に、治療方法を解説していきます。
むちうちが原因の場合、医療機関でむちうちの治療を行います。
医療機関の科目としては、整形外科が専門です。
一般的な治療方法は『保存療法』で、薬や湿布などで痛みを緩和しつつ、安静にして自然回復を目指します。
頚椎に痛みがあれば固定用のカラーを用います。
その他には電気療法、運動療法(ストレッチ)温熱療法などがあり、症状によってこれらの治療法を併用することになるでしょう。
バレリュー症候群の一般的な治療方法は。『交換神経ブロック療法』です。
麻酔によって痛みを緩和しつつ自然回復を図る方法で、2カ月ほどで改善することが多いようです。
専門は麻酔科、ペインクリニック科となります。
睡眠時無呼吸症候群の専門は、耳鼻咽喉科または呼吸器内科です。
まずは症状の有無から検査し、症状がある場合には原因から治療していくことになるでしょう。
症状の有無は、簡易検査または精密検査によって判断できます。
簡易検査は自宅でも行うことができ、電子機器を装着して睡眠時のデータを取り、睡眠時の呼吸停止の回数や、眠りの深さを知ることができます。
データからは、うつ伏せや横向きなどの睡眠時の姿勢が予測できますので、不眠の原因を調べる一つの手段になるでしょう。
外傷による鼻づまりや、痛みから呼吸がしにくくなっているのであれば、それらの回復に伴い、不眠も緩和される可能性があるでしょう。
事故のトラウマやPTSDが原因の場合、精神科による治療が必要です。
治療方法には、認知行動療法、心理療法(暴露療法)、薬物療法、その他の精神的なケアなどがあります。
主にトラウマ・PTSDの原因となるのは事故の恐怖であるため、主に以下のような治療が行われます。
一般的には事故後1カ月くらいから時間と共に薄くなると言われており、ゆっくり時間をかけたケアが必要になるでしょう。
交通事故後の眠気についての具体的な治療費は、怪我の重さや通院期間によって大きく変わるため、一概には言えません。
ただし事故との因果関係が証明できれば、加害者(加害者の保険会社)へ請求することができます。
そのため、治療費については、眠気と事故との因果関係を充分に示せるかどうかが重要となります。
因果関係を立証するには、まずは医師の診断書と、場合によっては事故の追加調査によって適正な証拠を集める必要が出てくるでしょう。
事故との因果関係を示して治療費を相手方に請求するには、医師の診断書が必要になります。
むちうちやバレリュー症候群は、事故から数週間たってから症状が出てくることもあり、症状が軽いと感じても、今が初期症状でこの後重くなっていく可能性も考えられます。
なんとなく眠い、気のせいかもしれない、そう思っていてもまずは医療機関にかかることが大切です。
また、早めに医療機関にかかっておくと、症状の経過をより詳しく記録してもらうことができますので、後遺障害が発生した場合の等級認定の際にも役立ちます。
なお、整骨院や整骨院は医療機関ではないため、診断書が発行されません。
診断書が発行されなければ、人身事故として後遺障害認定を受けることができず、結果として治療費を加害者側に請求できなくなる可能性があります。
整骨院や接骨院に通っていけないわけではありませんが、医師のいる病院・医療機関での受診は必ず行うようにしましょう。
保険会社による事故発生状況報告書に納得がいかない場合や裁判に踏み切る場合、追加の調査を弁護士に依頼するのもよいでしょう。
弁護士が、現場におけるミラーの位置や角度、ブレーキ痕、事故の時間帯の信号の切り替えや交通量など、様々な情報を調査し検証を行うことで、初期の事故資料の誤りが見つかり、因果関係の立証につながることもあります。
眠気の原因としてむちうち症状やPTSDが認められた場合、第12級、第14級、または9級の10号の後遺障害等級を得られる可能性があります。
むちうちの場合、以下のいずれかに該当すれば、その該当する等級を得られることになります。
引用:
第9級10号 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
第12級 局部に頑固な神経症状を残すもの
第14級 局部に神経症状を残すもの
トラウマ・PTSDが後遺障害となる場合は、むちうちと同様に第9級、12級、14級が該当します。
上記で引用した国交省による表では、備考の⑥が根拠となります。
備考⑥ 各等級の後遺障害に該当しない後遺障害であって、各等級の後遺障害に相当するものは、当該等級の後遺障害とする。
ただし、第9級10号を得られることは少なく、ほとんどが12級または14級となるでしょう。
交通事故後の眠気について、後遺障害認定を受けるまでの大まかな流れは以下のとおりです
ここでは、手続きのポイントを解説していきます。
後遺障害認定の申請方法には『事前認定』と『被害者請求』の2種類があります。
『事前認定』とは、加害者側の任意保険会社に申請を任せる方法です。
事故証明書などの必要書類のほとんどを加害者の任意保険会社が集めることになります。
そうすると被害者本人の手続き負担は少なくて済むのですが、その反面、被害者にとってよい結果はあまり期待できないことが考えられます。
『被害者請求』は、被害者から加害者の自賠責保険会社へ、直接申請をする手続きです。
証拠資料集めが難しくなりますが、自分で可能な限りの資料を準備することができるため、より適正な後遺障害等級の認定を受けられる可能性があります。
弁護士に申請を依頼した場合は、被害者請求で行うことになります。
後遺障害等級認定の申請後、等級に納得がいかない場合には異議申立てをすることが可能です。
また、初めの申請が事前認定の場合には、異議申立てのときに被害者請求に切り替えることもできます。
等級認定が確定しても、見過ごせない症状があり、等級に反映されないような場合には、裁判による解決を目指すこともできるでしょう。
眠気の原因がトラウマやPTSDである場合、後遺障害の等級認定を得ることは難しい手続きになります。
理由としては、以下のものが挙げられます。
やはり外部から判断しにくいことが難点ですが、後遺障害の9級10号が得られた例もあります。
自分では判断せず、医師、弁護士等それぞれ専門家の意見を聞くことをおすすめします。
今回は、交通事故による眠気の症状について、考えられる原因と治療法などを解説しました。
眠気は原因の特定が難しいため、自己判断せずに、まずは早めに医師の診断を受けることが大切です。
早めに受診して詳細な経過をカルテに残してもらうと、後遺障害等級認定の際にもより効果的な資料となることがあります。
また、症状を放置して重くなってしまうと、後遺障害の等級認定を得ようと思っても、体力的にも手続き的にも難しくなる可能性があります。
手続きをよりスムーズに進めるためには、早めに弁護士にも相談しておくとよいでしょう。