東京弁護士会所属。
交通事故の被害者にとって、弁護士は、妥当な慰謝料をもらうための強い味方になります。
特に、加害者の保険会社との示談交渉がうまくいかず悩まれていたり、後遺症が残ってしまい後遺障害慰謝料請求を考えていたりする方は、 ぜひ検討してみてください。
交通事故の衝撃で膝を強打すると、膝蓋骨骨折(しつがいこつこっせつ)を受傷する場合があります。
簡単にいうと「膝のお皿の骨折」ですが、手術で治療するケースがあり、治療期間も長くなりやすいので、私生活や仕事に支障をきたす可能性があるでしょう。
また、膝蓋骨骨折になると、可動域制限などの後遺症が残る場合があるため、後遺障害が認定されれば、加害者にその分の慰謝料等を請求できます。
今回は、膝蓋骨骨折の症状や治療期間、後遺障害が認定されるケースなどをわかりやすく解説しますので、交通事故で膝を負傷した方はぜひ参考にしてください。
目次
膝蓋骨骨折(しつがいこつこっせつ)とは、膝の皿の骨折のことで、いわゆる「膝の皿が割れる」ことです。
膝の前面を強打すると膝蓋骨を骨折する場合があり、バイクや自転車で転倒したときや、自動車に衝突された歩行者が受傷することもあります。
また、自動車の衝突が激しかった場合、搭乗者がダッシュボードで膝を強打し、膝蓋骨骨折を受傷するケースも少なくないようです。
交通事故では発生頻度の高い骨折になっており、関節部分の骨折は後遺症が残りやすいため、適切な検査や治療を受ける必要があるでしょう。
交通事故の被害で膝蓋骨骨折を受傷した場合、痛みなどの症状が発生するため、ある程度の治療期間が必要です。
具体的な症状や、完治までの治療期間は以下を参考にしてください。
膝蓋骨骨折を受傷すると、膝関節に強い腫れや痛みが生じます。
膝蓋骨には膝の動きを滑らかにし、大腿部(太もも)の筋肉を膝に伝える役割があるため、骨折すると立ち上がりや膝を曲げる動作がしづらくなります。
事故の直後は興奮状態になっており、痛みを自覚しないケースもありますが、時間が経つと膝に血液が溜まり、膝が大きく腫れる場合もあるので注意が必要です。
骨折により膝蓋骨が大きくずれてしまうと、骨折部に窪みが生じる場合もあります。
膝蓋骨骨折の治療期間は受傷部の状況によって変わりますが、概ね1ヶ月程度はギプスによる保存治療が行われます。
ただし、骨がバラバラに折れる粉砕骨折になったときや、骨の癒合(くっつき)が遅いときは、6ヶ月~1年程度の治療期間になる場合もあります。
膝蓋骨骨折は入院が必要になるケースも多いので、短ければ数日の入院ですが、骨折の程度によっては1か月以上の入院期間になることもあるでしょう。
膝蓋骨を骨折すると膝に負担をかけられないため、しばらくは松葉杖が必要になり、正座などの膝を曲げる動作も制限されます。
交通事故で膝蓋骨骨折を受傷した場合、膝関節に機能障害などの後遺症が残るケースがあります。
膝の痛みや可動域制限など、以下のような症状が残ったときは、後遺障害等級に認定される可能性があるでしょう。
膝蓋骨がうまく癒合せずに偽関節となり、著しい運動障害が残ったときは、以下の後遺障害等級に認定される可能性があります。
著しい運動障害とは、以下のような状況です。
後遺障害7級10号の認定を受ける場合、硬性補装具を常に装着していなければならない状態である必要があります。
膝蓋骨骨折により膝関節がまったく動かない、または腱側(骨折していない方の膝)の10%以下しか動かなくなると、以下の後遺障害に認定される場合があります。
手術により人工関節や人工骨頭を挿入置換した場合、可動域が腱側の可動域角度の1/2に制限されたときも、8級7号の認定要件を満たします。
膝蓋骨骨折がうまく癒合せずに偽関節になった場合、以下の後遺障害等級に認定されるケースもあります。
偽関節によって以下のような状態になると、8級9号の認定要件を満たします。
具体的には、膝蓋骨の骨折により、隣接する骨に変形障害が発生する状態です。
膝蓋骨骨折により関節機能に著しい障害が残ったときは、以下の後遺障害等級に認定されるケースがあります。
著しい障害とは、以下のどちらかの状態を指しています。
膝蓋骨の粉砕骨折や、骨が皮膚を突き破って露出する解放骨折の場合、可動域制限の後遺症が残りやすいでしょう。
膝蓋骨骨折の後遺症で膝関節の可動域に障害が残った場合、以下の後遺障害等級に認定されるケースがあります。
12級7号の機能障害とは、膝関節の可動域が健側の3/4以下に制限された状態です。
膝蓋骨骨折を受傷した場合、比較的残りやすい後遺障害といえるでしょう。
膝蓋骨骨折の後遺症で痛みが残ったときは、以下の後遺障害等級に認定される場合があります。
12級13号は痛みの存在について医学的な証明を必要としますが、14級9号の場合は治療などの経緯から、痛みの存在を医学的に説明できることが要件です。
具体的には、膝蓋骨骨折により関節面に転位(ずれ)や欠損が生じた場合、その程度によって12級13号または14級9号に認定されるでしょう。
膝蓋骨骨折で後遺症が出た場合、加害者側から入通院慰謝料と後遺障害慰謝料をもらえます。
12級7号や12級13号などの違いがあっても、同じ等級の場合は慰謝料も同額になるので、金額の目安は以下を参考にしてください。
なお、慰謝料の算定基準には自賠責保険基準や任意保険基準、弁護士基準の3種類があり、もっとも高額になるのは弁護士基準です。
入通院慰謝料とは、膝蓋骨骨折による入院・通院の精神的苦痛に対し、償いの意味で支払われる賠償金です。
例えば、膝蓋骨骨折の程度が軽く、通院による治療期間が1ヶ月だった場合、弁護士基準では28万円程度が見込まれます。
弁護士基準は過去の判例を参考にしており、裁判所とほぼ同じ算定基準になるため、保険会社の提示額よりも高くなるケースが多いです。
膝蓋骨骨折の後遺症が残った場合、痛みや可動域制限などの症状に精神的苦痛が伴うため、以下の相場で後遺障害慰謝料が支払われます。
等級 | 自賠責基準 | 任意保険基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|---|
7級 | 419万円 | 500万円 | 1,000万円 |
8級 | 331万円 | 400万円 | 830万円 |
10級 | 190万円 | 200万円 | 550万円 |
12級 | 94万円 | 100万円 | 290万円 |
14級 | 32万円 | 40万円 | 110万円 |
後遺障害慰謝料も弁護士基準がもっとも高額になるので、保険会社の提示額をそのまま鵜呑みにせず、弁護士に慰謝料を計算してもらいましょう。
交通事故の被害で膝蓋骨骨折した場合、補償については以下のような注意点があります。
休業によって収入が減少したときや後遺症が残ったときは、必ず休業損害や後遺障害慰謝料を受け取れるように対応してください。
膝蓋骨骨折は軽症でも1ヶ月程度の治療期間になり、歩行にも支障をきたすため、職業によっては休業を余儀なくされる可能性があります。
休業によって収入が減ったときは休業損害が補償されるので、必ず加害者側に請求してください。
休業損害は「1日あたりの収入×休業日数」が補償額になっており、有給休暇を使って治療したときも請求可能です。
就労していない家事労働者(専業主婦など)や学生も休業損害を請求できる場合があるので、弁護士に相談するようにしてください。
膝蓋骨骨折の後遺症が残ったときは、必ず後遺障害等級の認定を受けてください。
後遺障害等級は自賠責保険調査センター調査事務所が認定機関になっており、書面のみで審査されるため、後遺障害診断書や添付資料が重要です。
後遺障害診断書の内容や画像検査が不十分だった場合、後遺障害等級を申請しても非該当になるため、後遺障害慰謝料を請求できなくなります。
後遺障害等級の認定に詳しくない医師もいるので、適切な後遺障害等級の認定を目指すときは、弁護士の協力が必要になるでしょう。
弁護士に申請書類をチェックしてもらうと、追加検査の必要性などを医師に助言してもらえるので、適切な後遺障害等級に認定されやすくなります。
膝蓋骨骨折のために、痛みなどの神経障害や可動域制限の機能障害があるときは、必ず後遺障害等級を申請しておきましょう。
ただし、後遺障害の認定機関は後遺障害診断書や添付資料だけで等級を判断するため、非該当や下位の等級で認定されてしまう可能性があります。
後遺症の申請にあたっては、検査や診断書の作成を医師任せにせず、交通事故に詳しい弁護士のサポートを受けておくとよいでしょう。