東京弁護士会所属。
交通事故の被害者にとって、弁護士は、妥当な慰謝料をもらうための強い味方になります。
特に、加害者の保険会社との示談交渉がうまくいかず悩まれていたり、後遺症が残ってしまい後遺障害慰謝料請求を考えていたりする方は、 ぜひ検討してみてください。
交通事故の強い衝撃により仙骨を骨折すると、後遺症が長引き、その後の生活に大きな支障を来たす恐れがあります。
仙骨とは、骨盤を構成する重要な部位であるため、損傷すると神経をはじめ様々な箇所に影響を及ぼすこともあります。
仙骨骨折の後遺症が残る場合は、正確な後遺障害等級の認定を受けることが必要です。
しかし、加害者側の保険会社と交渉がうまくいかないと、適正な賠償が受けられなくなります。
そこで本記事では、交通事故で仙骨を骨折した場合の後遺症、後遺障害等級や慰謝料・逸失利益について、基本的な知識を解説します。
目次
交通事故による仙骨骨折とは、交通事故で腰部や臀部など骨盤周辺の部位を強打することで、骨盤中の仙骨を骨折することです。
骨盤とは、大腿骨と脊柱の間にある骨格で体の中心に位置しています。
そして、仙骨・恥骨・座骨・腸骨からなる骨盤輪と、大腿骨と股関節を構成する寛骨臼から構成されているのです。
骨盤は、身体の中心で上半身を支えて足の衝撃を吸収し、排泄器官や生殖器官を保護するなどの生命を維持する上でも重要な役割を担う部位出るため、これを損傷すると大きな支障を伴います。
仙骨骨折は、歩行中や自転車・バイクの走行中など露出部の多い状態で接触事故を起こした際に、起こりやすい怪我です。
ここでは、仙骨骨折の症状や完治までの期間、後遺症や後遺障害等級、慰謝料相場や後遺障害認定の手続きについて解説します。
仙骨は、骨盤の中心に位置し上半身と下半身をつなぐ需要な部位です。
仙骨骨折は、骨盤の一部を骨折することから、まず激しい痛みが生じます。
骨盤はさらに、臓器や生殖器を保護する役割もあるため、損傷により大量の出血や臓器を損傷する危険も高いです。
特に、骨盤の内側は排泄器官や生殖器官があるため、泌尿器系の臓器を損傷すると排泄が困難になり、血尿などの症状が出ることもあります。
女性の場合はさらに、仙骨骨折により妊娠や分娩に影響を及ぼす可能性が高くなります。
仙骨骨折によって神経が損傷したことで、足のしびれや痛み、麻痺などの神経症状が出ることもあるでしょう。
仙骨骨折は、尻もちや打撲など外部から強い衝撃が加わることで起きますが、仙骨は骨盤内部に位置するため、レントゲン写真でも骨折を発見することが難しいと言われています。
仙骨骨折は、レントゲンやCT、MRI、あるいは3D-CTを使用するなどして検査を行います。
骨盤骨折の治療は、2週間程度ベッド上で安静にした後で車いす移動を開始し、4週間程度から松葉杖歩行などのリハビリを開始するのが一般的です。
軽症の場合は、1週間程度でリハビリが開始されるケースもあります。
仙骨骨折の全治までの期間は、事故の被害者の年齢や体力、負傷した部位や手術の有無により異なりますが、完治するまでに約3~6ヶ月かかるといわれています。
交通事故後に仙骨骨折による後遺症が残ってしまった場合、程度に応じて後遺障害等級1~14級の等級が認定されます。
等級の数が小さいほど障害は重くなります。
以下は、骨盤骨折により生じる後遺障害と等級をまとめたものです。
それぞれみていきましょう。
後遺障害 | 等級 |
---|---|
変形障害(骨盤変形) | 12級5号 |
運動障害(股関節の可動域制限) | 8級、10級、12級 |
神経障害(しびれや痛み) | 12級、14級 |
正常分娩困難 | 11級 |
変形障害とは、骨盤骨折を起こした際に骨折した骨がうまく元のようにつながらずに変形したままで治ってしまった状態です。
骨盤内の仙骨に著しい変形を残すと、後遺障害12級5号に該当します。
仙骨骨折が変形障害に認定されるかどうかは、仙骨に著しい変形の有無により判断されます。
著しい変形は、裸になった状態で変形が目視できるかどうかが基準です。
運動障害とは、交通事故の骨盤骨折により、治療後も股関節が元通りに動かせなくなる後遺障害のことです。
運動障害の等級は、後遺症が残っていない足を基準にして、どこまで可動域が制限されているのかにより等級が決められています。
両足に後遺症が残った場合には、日本整形外科学会・日本リハビリテーション医学会による可動域を基準にして判定します。
以下は、仙骨骨折による運動障害の症状と等級をまとめたものです。
8級7号の症状は、股関節が動かない、あるいは人工関節の使用によっても可動領域が2分の1以下に制限される場合です。
10級11号の症状は、股関節が半分しか動かない、あるいは人工関節の使用によれば可動領域が2分の1以上に動く場合です。
12級7号の症状は、股関節の可動域が4分の3に制限されている場合を指します。
神経症状とは、交通事故の強い衝撃により骨盤内の神経が圧迫されて痛みやしびれが残る症状です。
こうした神経症状が見られると、後遺障害等級12級13号または14級9号に認定されます。
以下は、仙骨骨折による神経症状の具体的な症状と等級をまとめたものです。
12級13号は、神経症状の原因がレントゲンやMRIなどの検査により他覚的所見が認められる場合に認定されることが多くなります。
たとえば、しびれのある部分をMRIで検査してみたら、骨折箇所の癒合部分が神経を圧迫していたといったケースもあるでしょう。
反対に、画像などによっても他覚的所見が見られない場合でも、神経症状が残っていることが医学的に認められる場合には、14級9号に認定されることもあります。
女性の仙骨骨折では、骨盤が変形することで産道が狭まり、正常分娩が困難になるケースがあります。
また、男性の場合でも、骨盤骨折により生殖器に後遺障害が残り、9級に認定されることもあります。
以下は、仙骨骨折による正常分娩困難の症状と等級をまとめたものです。
仙骨骨折による後遺障害を認定してもらうためには、どのような点に注意したらいいのでしょうか?
ここでは、後遺障害等級を認定してもらうときのポイントをみていきます。
仙骨骨折により後遺障害を認定してもらうためには、ひとつの領域だけの後遺障害だけを申請するのではなく、いくつかの領域にわたって後遺症をみることが重要です。
たとえば、仙骨を骨折すると整形外科だけではなく、泌尿器科、婦人科、消化外科などの領域でも後遺症が発生するケースが高くなります。
ひとつの領域だけに集中して後遺障害をみていくと、他の領域で起きている後遺障害を見逃してしまうこともあります。
見逃した後遺障害が大きな障害を招く危険もあるでしょう。
整形外科の医学的意見についても、仙骨や寛骨臼骨折では股関節専門の外科医に意見を聞くことをおすすめします。
実際に骨折の執刀経験の有無により、病態に対する理解度が全く異なるからです。
仙骨骨折による後遺障害認定を受けるためにも、専門家の意見が重要になります。
何をどう依頼したらよいのか分からない場合、まずは弁護士に相談してみることをおすすめします。
仙骨骨折で複数の後遺症が残り、それ以外の部位に後遺障害が残ることもあるでしょう。
たとえば、骨盤の変形としびれが出て、骨盤の変形があり足が動かないなどのケースです。
後遺障害が複数ある場合は、重い方の等級を以下のとおり引き上げます。
たとえば、10級と11級の後遺障害があるケースでは、10級の等級をひとつあげる9級が障害等級に認定されるようになります。
仙骨骨折の後遺障害が認定された場合の慰謝料の相場をみてきましょう。
慰謝料の相場は、自賠責基準、加害者の任意保険基準、弁護士・裁判基準の3つの基準があります。
自賠責とは、3つの基準のうち最も安価の金額で、被害者に最低限の補償をします。
任意保険会社は各会社により相場が異なりますが、基本的には自賠責と同額かそれより少し高いくらいです。
弁護士・裁判基準が一番高額になります。
以下、それぞれの後遺障害の慰謝料相場をみていきましょう。
変形障害の慰謝料相場は、自賠責の94万から最高額である弁護士基準の290万まで約3倍近く賠償額が異なります。
運動障害の慰謝料相場についても、自賠責と弁護士基準では約3倍近く賠償額が異なります。
神経症状の慰謝料相場は、以下のとおりです。
正常分娩で後遺障害認定してもらうためには、正常な出産が困難であることを証明する産婦人科の検査結果が必要になります。
仙骨骨折で後遺障害等級の認定を受けるには、自分で申請する「被害者請求」と相手の保険会社に申請してもらう「事前認定」の2つの方法があります。
どちらの方法でも、後遺障害等級の申請手続きは以下のような流れになります。
後遺障害申請手続きの流れは、①症状固定②医師の後遺障害診断書の作成と提出③自賠責保険料算出機構が後遺障害等級認定④自賠責保険の受取と大別できます。
症状固定はこれ以上治療効果が望めない状態ですが、担当医とこれ以上治療が必要かどうかをよく相談して決めることが重要です。
症状固定になって後遺症が残る場合に、医師の後遺障害診断書の作成を依頼します。
担当医に後遺障害の申請をするために診断書が必要である旨を伝えれば、診断書を出してもらえるでしょう。
後遺障害診断書を取得してから、窓口に提出して後遺障害認定の申請を行います。
被害者請求の場合は自賠責保険会社へ、事前認定の場合は加害者の任意保険会社に診断書を提出して申請しましょう。
数ヶ月後に自賠責保険料算出機構が後遺障害の等級を認定します。
認定後は、自賠責保険金が支払われます。
万が一、後遺障害等級が認定されなかった場合でも、異議申し立てを行い、再審査してもらうことが可能です。
交通事故で仙骨骨折を負うと、様々な後遺症が残る可能性が高くなります。
仙骨のある骨盤は、下肢や内臓器官、生殖器官、排泄器官などを保護する役割もあるため、仙骨骨折によりこれらの器官に支障を来す危険もあるでしょう。
仙骨骨折で後遺障害認定を受けるには、症状により手続き内容が異なることもあるため、診断書作成の前に交通事故を専門とする弁護士に相談することをおすすめします。