東京弁護士会所属。
交通事故の被害者にとって、弁護士は、妥当な慰謝料をもらうための強い味方になります。
特に、加害者の保険会社との示談交渉がうまくいかず悩まれていたり、後遺症が残ってしまい後遺障害慰謝料請求を考えていたりする方は、 ぜひ検討してみてください。
交通事故による肩甲骨骨折は、肩を地面などに強く打ち付けたときに起こることがほとんどで、その発生率は低いものです。
しかし実際に肩甲骨を骨折するような強い衝撃を受けてしまうと、肩甲骨以外にも損傷が及び重傷度の高いものとなってしまうことがあります。
この記事では、交通事故による肩甲骨骨折の後遺障害について、その障害の種類と症状、治療法を解説します。
目次
肩甲骨とは、背中の上部に左右対称にある逆三角形の平たい骨で、大きな筋肉に支えられて背中に浮くようなかたちで存在しています。
また、人体の中でもかなり自在に動くことが可能な部位です。
肩甲骨骨折では、大きな筋肉が肩の周辺を保護しているため、肩甲骨のみが骨折することは稀で、肋骨や鎖骨の骨折、肩鎖関節脱臼、腱板損傷など様々な外傷を併発します。
肩甲骨を骨折すると、以下のような症状が出ます。
このような症状が1つでも出れば、肩甲骨骨折が疑われます。
また、交通事故にあった後、これらの症状がすべてそろった場合には、ほぼ間違いなく肩甲骨骨折とみて間違いありません。
肩甲骨骨折はレントゲンでは発見しにくいため、事故後の症状を知ることが重要になります。
交通事故によって肩甲骨を骨折するのは、その事故にあった時に肩が地面にたたきつけられたり、自動車の車体に打ちつけられたりするためです。
肩甲骨骨折となった場合、肩甲骨体部の横骨折または縦骨折となることがほとんどです。
ただ、肩甲骨により大きなダメージが加わると、鎖骨骨折や肋骨骨折あるいは肩鎖靭帯の脱臼骨折が発生することもあります。
中には、肩甲骨骨折が引き金となって障害が発生し、障害者認定を受けるようなケースもあります。
肩甲骨骨折が発生した場合、手術によって治療するケースは、あまり多くありません。
手術をせずに保存療法を選択し、三角巾や装具を装着して肩を固定するのが、一般的な治療法となります。
3週間程度、肩を固定した後は、振り子運動をはじめとするリハビリや温熱療法などの理学療法を行います。
肩甲骨骨折だけであった場合は、これらの治療を適切に行うと、3ヶ月程度で完治し、後遺症が残ることもありません。
ただし、骨折した箇所によっては、手術が必要になることがあります。
例えば、特定の箇所で鎖骨骨折が起こっている場合は、骨折した後不安定な状態になるので、鎖骨の内側を固定する手術を行います。
この場合、関節窩関節面骨折となり骨片が大きいと、将来的に脱臼しやすくなることから、これを防ぐ狙いもあります。
このほか、烏口突起骨折となって肩鎖関節脱臼が同時に起こった場合、あるいは肩峰骨折となり肩峰がずれてしまった場合、さらに肩峰棘骨折となった場合なども、保存両方では対応できず、手術が必要となります。
交通事故による肩甲骨骨折で起こる可能性のある後遺症は、「運動障害」「変形障害」「神経障害」の3種類です。
詳細については、次から説明します。
肩甲骨の骨折が治っても、肩が「まったく動かない」「事故前よりも可動域(動く範囲)が小さくなった」などの症状が起こります。
肩甲骨の骨折した部分が上手くつながらない(癒合不全・変形癒合)状態で、レントゲンなどの検査によらなくても、服を脱いだ状態で見てはっきりと変形していることが確認できます。
骨折したときの衝撃で神経が圧迫される又は傷つくなどして、骨折が治った後も損傷部周辺に「痛み、しびれ」などの症状が残ります。
肩甲骨骨折の後遺障害では、「運動障害」「変形障害」「神経障害」の3種類の後遺障害に応じて認定される等級がありますので、それぞれ解説していきます。
運動障害による後遺障害等級と認定基準は、次のとおりです。
等級 | 認定基準 |
---|---|
8級6号 | 「一上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの」 まったく動かない、正常な関節と比べて可動域が10分の1以下になった状態 |
10級10号 | 「一上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの」 正常な関節と比べて可動域が2分の1以下になった状態 |
12級6号 | 「一上肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの」 正常な関節と比べて可動域が4分の3以下になった状態 |
変形障害による後遺障害等級と認定基準は、次のとおりです。
等級 | 認定基準 |
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12級5号 | 「鎖骨、胸骨、ろく骨、肩甲骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの」 |
神経障害による後遺障害等級と認定基準は、次のとおりです。
等級 | 認定基準 |
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12級13号 | 「局部に頑固な神経症状を残すもの」 痛みやしびれ 医学的に証明できる他覚的所見が必要 |
14級9号 | 「局部に神経症状を残すもの」 自覚症状を医学的に説明できる所見が必要 |
参考:国土交通省
1度の交通事故によって起こる後遺障害は、必ずしも1つではなく複数のこともあります。
この場合、後遺障害等級の認定は基本的に「複数ある後遺障害のうち、最も重い等級を繰上げる」という方法がとられ、複数ある後遺障害の等級に応じて繰上げる等級の数が決まっています。
存在する後遺症 | 併合の結果 |
---|---|
5級以上の後遺障害が2つ以上 | 重い方の等級を3つ繰上げる |
8級以上の後遺障害が2つ以上 | 重い方の等級を2つ繰上げる |
13級以上の後遺障害が2つ以上 | 重い方の等級を1つ繰上げる |
14級の後遺障害が2つ以上 | 14級のまま |
交通事故で肩甲骨骨折をしてしまった場合、肩の後ろに腫れや痛みなどの症状が出て、肩や肘が動かしにくくなります。
さらに、治療をしても「運動障害」「変形障害」「神経障害」といった後遺症が残る可能性もあります。
もし肩甲骨骨折で後遺症が残ってしまった場合は、後遺症を後遺障害として認定してもらうことが大切です。
肩甲骨骨折の後遺障害は、認定される等級が多岐にわたり、後遺障害が併発することもあるので、専門的な知識がないと後遺障害の申請は難しいかもしれません。
被害者の苦痛を和らげ、安心してリハビリを続けてもらうためにも、最高の損害賠償がなされる必要がありますので、ぜひ交通事故に精通している弁護士へ依頼することも検討してください。
最後になりますが、この記事が交通事故に遭われた被害者とその家族の一助になれば幸いです。