東京弁護士会所属。
交通事故の被害者にとって、弁護士は、妥当な慰謝料をもらうための強い味方になります。
特に、加害者の保険会社との示談交渉がうまくいかず悩まれていたり、後遺症が残ってしまい後遺障害慰謝料請求を考えていたりする方は、 ぜひ検討してみてください。
交通事故で怪我をして後遺障害が残ると、後遺障害慰謝料を受け取ることができます。
ただし、そのためには症状に応じて後遺障害等級認定を正しく受ける必要があります。
後遺障害14級は後遺障害等級のなかで最も低い等級です。
後遺障害14級の認定を受けることができなければ、「非該当」として後遺障害慰謝料は一切もらえません。
ところが、後遺障害14級と非該当は症状の違いを判断することが難しい場合も少なくありません。
適切な賠償金を受け取るためには、後遺障害の種類や後遺障害等級認定の申請方法などを正しく理解しておく必要があります。
この記事では、正しい後遺障害等級認定と賠償金を獲得する方法や、後遺障害14級の慰謝料の相場をご紹介します。
目次
交通事故の損害賠償の対象となる「後遺障害」とは、交通事故による負傷で治療を受けても完治せずに痛みなどが残った症状のうち、後遺障害等級認定を受けたもののことです。
後遺障害等級は最も重い1級から最も軽い14級までの段階に分けて様々な症状が分類されています。
認定例の多い主な後遺障害としては、以下のようなものがあります。
むち打ちとは、交通事故の衝撃で首がむちのように過度に伸展したことにより、頚部の筋肉や靱帯などが損傷する負傷で、交通事故による後遺障害のなかで最も多い負傷です。
首・肩・腕・背中などの痛みやしびれ、頭痛やめまい・吐き気、倦怠感などをはじめとして様々な症状があります。
これらの症状によって後遺障害等級が認定される場合は、12級または14級に認定されます。
低髄液圧症候群とは、交通事故の衝撃によって脳髄液が漏れ出すことによって発生する傷病です。
主な症状はめまい、頭痛、倦怠感などで、特に起き上がったときに強い頭痛が起こる(起立性頭痛)のが特徴的です。
当初はむち打ちと診断されていても、詳しく検査をしてみると低髄液圧症候群だったというケースも少なくありません。
低髄液圧症候群の症状が残った場合は、症状の程度に応じて9級、12級、14級のいずれかに認定されます。
高次脳機能障害とは、交通事故で脳が損傷したことによって知的活動に障害が生じる傷病のことです。
記憶力や言語能力、思考能力、学習能力などが低下するのが典型的な症状ですが、注意力が散漫となったり、人格変化が生じることもあります。
低髄液圧症候群の症状が残った場合は、症状の程度に応じて1~3級、5級、7級、9級のいずれかに認定されます。
上肢・下肢の機能障害とは、腕や足の関節が強直して動かなくなるか動きにくくなったり、麻痺してしまう傷病のことです。
人工関節などを挿入したものの可動域が狭くなった場合も含まれます。
上肢・下肢の機能障害が残った場合は、症状の程度に応じて1級、5級、6級、8級、10級、12級のいずれかに認定されます。
外貌醜状とは、交通事故によって顔面や頭部、頚部など日常的に露出する部分を負傷し、その傷痕が消えずに残ることをいいます。
痛みや運動障害などが残らなくても、顔面などに傷跡が残ると精神的苦痛も大きく、仕事に影響が出る場合もあることから、外貌醜状は後遺障害の対象とされています。
上肢・下肢の機能障害が残った場合は、傷跡が残った部位や傷痕の大きさ・程度に応じて7級、9級、12級のいずれかに認定されます。
後遺障害慰謝料の金額は等級に応じて定められています。
そのため、後遺障害慰謝料を受け取るためには後遺障害等級の認定を受けなければなりません。
後遺障害等級の認定を受けるには、「損害保険料率算出機構・自賠責損害調査事務所」というところに申請をします。
申請方法には、「事前認定」と「被害者請求」という2種類があります。
ここでは、この2つの申請方法がどのように違うのかをご説明します。
事前認定とは、加害者が加入している任意保険会社に後遺障害等級認定の申請を任せる方法のことです。
交通事故の負傷で治療を続けても、症状が良くも悪くも変化しない状態になったら、主治医が「症状固定」の診断書を発行します。
症状固定診断書を保険会社の担当者へ提出すれば、あとは保険会社において申請手続きを全てやってくれます。
事前認定には、自分で申請手続きをしなくていいので手間がかからないというメリットがあります。
しかし、保険会社は「自賠責損害調査事務所」へ必要最低限の書類・資料しか提出してくれません。
そのため、必ずしも後遺障害等級が正しく認定されるとは限らないというデメリットもあります。
一方の被害者請求とは、自分で「自賠責損害調査事務所」へ後遺障害等級の認定を申請する方法です。
申請する際は、診断書や診療報酬明細書、検査結果資料など必要最低限の資料の他、どのような参考資料を提出してもかまわないことになっています。
そのため、被害者請求によれば自分に有利な資料を収集して提出することにより、正しい後遺障害等級認定を受ける可能性を高めることができます。
被害者請求には手間がかかりますが、正しい認定を受けるためには被害者請求によることがおすすめです。
交通事故で大怪我をして重大な後遺障害が残れば高い等級が認定されますが、実際の認定例として多いのは12級~14級といった比較的軽い等級です。
むち打ちの場合も、12級または14級に認定されることになります。
ここでは、むち打ちの場合を例として、12級と14級の症状の違いをご説明します。
後遺障害等級12級に認定されるのは、局部に頑固な神経症状が残った場合です。
むち打ちで12級に認定される場合の主な症状としては首や肩の痛み、手足のしびれなどが挙げられます。
実は、むち打ちの場合は12級の場合も14級の場合も自覚症状はあまり変わらないことが少なくありません。
12級に認定されるのは、交通事故によって後遺障害が生じたことが医学的に証明可能な場合です。
レントゲンやCT、MRIなどの画像や神経学的検査によって医学的に症状を証明できる場合に限り、12級に認定されます。
後遺障害等級14級に認定されるのは、局部に神経症状が残った場合です。
12級と14級の違いは、局部に残った神経症状が「頑固」かどうかです。
とはいえ、必ずしも自覚症状が重いかどうかで区別されるわけではありません。
14級に認定されるのは、交通事故によって後遺障害が生じたことが医学的に説明可能な場合です。
12級の場合のように検査結果によって医学的に証明できない場合でも、事故直後から症状固定までの治療経過から見て医学的に「説明」可能な場合は14級に認定されます。
例えば、事故で負傷した箇所に一貫した症状があって症状固定した場合、その症状は事故によって生じたものと医学的に説明可能です。
これに対して、事故で負傷した箇所とは別の箇所に痛みやしびれが発生した場合、その症状が事故によって生じたものであると医学的に説明できない可能性が高いです。
医学的に説明できない場合は、後遺障害「非該当」となります。
後遺障害等級が認定された場合、どれくらいの慰謝料を受け取ることができるのでしょうか。
最も認定される件数の多い14級の場合を例として、慰謝料額の相場をご紹介します。
後遺障害等級14級の慰謝料額は、自賠責保険では32万円と定められています。
加害者が自賠責保険にしか加入していなかった場合、示談後に受け取れる後遺障害慰謝料は32万円となります。
同じ後遺障害等級14級でも、「裁判所基準」という基準が適用されると110万円の後遺障害慰謝料を受け取ることができます。
加害者との示談が成立せず、裁判をして勝訴した場合に後遺障害慰謝料は110万円となります。
自賠責保険と裁判所基準では、受け取れる慰謝料額大きく違います。
実は、慰謝料の算定基準には「自賠責基準」「任意保険基準」「裁判所基準」の3つがあり、どの基準が適用されるかで賠償額は大きく変わります。
自賠責基準とは、自賠責保険から賠償金が支払われるときに適用される慰謝料の算定基準のことです。
そもそも自賠責保険は、交通事故の被害者に対して最低限の補償を行うことを目的として運営されている保険です。
そのため、自賠責基準は3つの基準のなかで最も賠償額が低額となります。
自賠責基準による後遺障害慰謝料は、等級に応じて以下のとおりに定められています。
後遺障害等級 | 慰謝料額 | 後遺障害等級 | 慰謝料額 |
---|---|---|---|
第1級 | 1,100 | 第8級 | 324 |
第2級 | 958 | 第9級 | 245 |
第3級 | 829 | 第10級 | 187 |
第4級 | 712 | 第11級 | 135 |
第5級 | 599 | 第12級 | 93 |
第6級 | 498 | 第13級 | 57 |
第7級 | 409 | 第14級 | 32 |
任意保険基準とは、自動車保険の任意保険会社がそれぞれ独自に定めている慰謝料の算定基準のことです。
具体的な基準は公表されていないため不明ですが、賠償額は自賠責保険と裁判所基準の中間となります。
もっとも、後遺障害慰謝料については上記の自賠責基準に準じて賠償されるのが一般的です。
裁判所基準とは、原則として裁判をした場合に適用される慰謝料の算定基準のことです。
交通事故の慰謝料をめぐっては、過去に数多くの事例が裁判で争われてきました。
今では、集積された裁判例の分析によって後遺障害等級別に慰謝料額が基準化され、原則としてその基準どおりの金額で判決が言い渡されます。
裁判所基準は3つの基準のなかで最も賠償額が高くなっています。
具体的な後遺障害等級別の慰謝料額は、以下の表のとおりです。
後遺障害等級 | 慰謝料額 | 後遺障害等級 | 慰謝料額 |
---|---|---|---|
第1級 | 2,800 | 第8級 | 830 |
第2級 | 2,370 | 第9級 | 690 |
第3級 | 1,990 | 第10級 | 550 |
第4級 | 1,670 | 第11級 | 420 |
第5級 | 1,400 | 第12級 | 290 |
第6級 | 1,180 | 第13級 | 180 |
第7級 | 1,000 | 第14級 | 110 |
ここまで、後遺障害の種類や後遺障害等級認定の申請方法、14級の後遺障害慰謝料の相場などをご紹介してきました。
ただ、交通事故で同じような怪我を負ったケースでも、様々な事情によって賠償額が異なってしまうおそれがあります。
そのため、後遺障害で適正な賠償を受けるためには弁護士に依頼するのがおすすめです。
弁護士に依頼することで、以下のようなメリットを受けることができます。
後遺障害が残るような負傷をした場合に多いのですが、ある程度の期間、治療を続けていると保険会社から「治療費の打ち切り」を打診されることがあります。
むち打ちの場合、治療開始からおおむね3か月か経過すると治療費打ち切りを打診されます。
この打診に応じてしまうと、入通院慰謝料の対象となる治療期間はそこまでとなります。
負傷が治っていない場合は、後遺障害等級認定の申請をすることになります。
ところが、この段階ではまだ症状固定の状態に至っていない場合もあり、その場合は後遺障害等級の認定も正しく受けられない可能性が高いです。
保険会社からの治療費打ち切りを打診されたら、弁護士に依頼して正しく対応してもらうのが有効です。
後遺障害等級認定の申請をする際は「被害者請求」による方が有利であることを先ほどご説明しましたが、自分で正しく申請するのは大変です。
必要書類も多いですし、さらに認定に有利な資料としてどのようなものがあるのかについてはわからないことが多いでしょう。
弁護士に依頼すれば、被害者請求の手続きを代行してもらえます。
申請手続きを正しくできることはもちろん、被害者に有利な資料の収集についてもサポートしてもらえます。
実際に賠償金を受け取るためには、後遺障害等級の認定を受けた後、相手方と交渉する必要があります。
通常は、加害者が加入している保険会社の担当者と交渉することになります。
保険会社の担当者は交通事故の示談交渉のプロなので、素人が対等に交渉するのは困難です。
しかし、弁護士に依頼すれば示談交渉も代行してもらえるので、有利な内容で示談できる可能性が高くなります。
先ほどご説明した慰謝料の算定基準についても、弁護士に依頼すれば裁判をしなくても裁判所基準による賠償額で示談できることもあります。
後遺障害等級14級で正しい賠償を受けるためには、正しい後遺障害等級の認定を受けることが前提となります。
同じ症状でも、治療の受け方や後遺障害等級認定の申請の仕方などによって認定結果が異なってしまう場合もあります。
正しい後遺障害等級認定と賠償金を獲得するためには、弁護士によるサポートが重要です。
後遺障害でお困りなら、一度、弁護士に相談なさってみてはいかがでしょうか。