東京弁護士会所属。
メーカー2社で法務部員を務めた後、ロースクールに通って弁護士資格を取得しました。
前職の経験を生かし、実情にあった対応を心がけてまいります。 お気軽に相談いただければ幸いです。
免停とは、交通違反の取り締まりや交通事故によって違反点数が累積され、決められた点数に達した場合、運転免許の効力が行政処分によって停止されることをいいます。
この違反点数は、過去3年間の交通違反・交通事故に応じて、所定の点数が累積されていきます。
減点されていく方式と誤解されることが多いですが、あらかじめ持ち点があるのではなく、0点から加算されていく累計方式となっています。
駐停車違反や座席ベルト装着義務違反、スピード違反など、比較的軽度な違反行為でも、積み重なると免許停止の行政処分を受けることになります。
免停になると、出頭した日から決められた停止期間の満了日までの間、運転ができなくなります。
もしこの間に運転すると、無免許運転として25点が加算され、免許取り消しとなってしまいます。
また、万が一、免停中に運転をして交通事故を起こしてしまった場合は、任意保険が使えないため、多額の損害賠償を負ってしまう可能性があります。
免停中の運転はリスクが高く、非常に厳しい処分を受けることになりますので、注意しておきましょう。
免停になる違反点数と免停期間は、過去3年間の違反点数の累計と、過去に免停や免許取り消しなどの処分を受けたことがあるかどうかによって変わります。
前歴 | 違反点数 | 免停期間 |
---|---|---|
なし | 6点~8点 | 30日間 |
9~11点 | 60日間 | |
12~14点 | 90日間 |
これまで、免停や免許取り消しなどの行政処分を受けたことがない場合には、累積点数が6点~8点で30日間、9~11点で60日間、12~14点で90日間の免許停止処分となります。
違反点数の累積が15点以上になった場合は、免停ではなく免許取り消しになります。
例えば、アルコール量0.15mg以上の酒気帯び運転や、高速道路での時速30km以上の速度超過、麻薬等運転、共同危険行為等禁止違反など点数の高い違反は、1回の違反だけで免許取り消しの対象となります。
前歴 | 違反点数 | 免停期間 |
---|---|---|
1回 | 4点〜5点 | 60日間 |
6点〜7点 | 90日間 | |
8点〜9点 | 120日間 | |
2回 | 2点 | 90日間 |
3点 | 120日間 | |
4点 | 150日間 | |
3回 | 2点 | 120日間 |
3点 | 150日間 | |
4回以上 | 2点 | 150日間 |
3点 | 180日間 |
これまでに、免停や免許取り消しなどの処分を受けたことがある場合は、前歴の回数によって免停になるまでの点数や期間が異なります。
前歴の回数が増えるごとに、免停になるまでの違反点数が下がり、免停期間が長くなります。
免許停止期間が終了した後、1年以上無事故・無違反で過ごせた場合は、点数は0点に戻ります。
0点に戻る日付は、最後の違反をした日からではなく、免許停止処分の終了日から起算して計算します。
免許停止が決まった場合、取り締まりを受けてからすぐに免停講習を受講できるかというと、そうではありません。
違反点数が6点を超えてから約1週間~2か月後に免停通知書が届きます。
この免停通知書の中に免許停止の開始日が記されており、その日付から正式に免許停止となります。
免停講習に関する書類についても、取り締まりを受けてから1~2か月後に届くので、その書類を受け取ってから受講が可能となります。
免停通知に記載されている日時に指定場所へ出頭すると、「免許停止処分書」を渡され、免許を返納します。
免許を返納をした時点で免許停止処分が始まります。
免停講習を受ける場合は、その後に免停講習受講上の注意について、説明を受けることになります。
動体視力や視覚刺激反応、夜間視力等の身体的な測定を行います。
例えば、ランプが点いたらペダルを踏むといった動作を測定し、急に人が飛び出してきた場合に、すぐにブレーキを踏めるかどうかといった点などを検査します。
この適正検査・診断によって、受講者の反応時間や運転操作の正確性等を判断します。
筆記による心理テストや性格診断等を行い、受講者の運転時の意識や態度等を測定します。
万が一、危険な運転をする可能性があると判断された場合には、安全運転のための指導が行われます。
この「筆記による適正検査・診断」の結果が、免停講習の成績に影響することはありませんので、素の自分のままで検査を受けましょう。
教本が配布され、その教本をもとに講義が進められます。
講義中に居眠り等をしてしまうと、受講時の態度で減点されますので注意が必要です。
講義の内容は、交通事故の現況や交通事故に遭った場合の惨状、交通事故加害者の社会的責任等、安全運転をするために必要な知識や安全運転へ意識を向けるためのものです。
車の運転をシミュレーションできる、ゲームセンターにあるような運転シミュレーターの機械を使用して、交通事故や運転に際して危険な状況を体験します。
この運転シミュレーター指導の結果も、免停講習の成績には影響しません。
運転シミュレーターで安全運転の指導を受けたら、実車の運転によって指導が行われます。
普通車の場合、指導員を含めて数人で1台の車に乗り、順番に試験場のコースを運転します。
実車運転は、免停日数の短縮の結果には影響しませんので、普段通りの運転でかまいません。
免停講習での実車運転・指導における走行距離や走行時間は講習の種類によって異なります。
また、この実車運転・指導で乗車する車については、MT免許保持者でもAT車の選択が可能です。
一般的なコースには、外周から内側への進入や、S字型道路や右左折、見通しの悪い交差点等があります。
ここで見られるポイントは、加速や減速の対応やハンドル操作等です。
講習の最後には筆記試験があります。
この筆記試験は、制限時間が20分で42点満点、通常の運転免許取得時の学科試験と同様に○×形式です。
主な出題内容としては、交通ルールというよりも、講義で習ったような運転時の注意点等となっています。
特別に猛勉強するというよりも、常識的な知識や感覚が身についていれば取れる試験でしょう。
しかし、この試験結果で免許停止日数の短縮日数が決められてしまいますので、可能ならば成績「優」を取れるように、免停講習は集中して受講しましょう。
免停講習の種類には、短期講習・中期講習・長期講習の3つがあります。
短期講習は1日6時間の講習で、中期講習は2日で合計10時間の講習、長期講習は中期講習と同じく2日間ですが合計12時間の講習と定められており、講習ごとに合計時間が異なっています。
【短期講習】免許停止日数が30日の場合を対象
短縮日数は成績「優」で29日、成績「良」で25日、成績「可」で20日
受講費用 約14,000円
【中期講習】 免許停止日数が60日の場合を対象
短縮日数は成績「優」で30日、成績「良」で27日、成績「可」で24日
受講費用 約23,000円
【長期講習】 免許停止日数が90日以上の場合を対象
短縮日数は、成績「優」で45日、成績「良」で40日、成績「可」で35日
受講費用 約28,000円
このように、免許停止日数に応じて受講する講習がわかれており、講習を受講してから成績に応じて免許停止日数の短縮日数が決められます。
受講料は現金ではなく、免許センター内で収入印紙を購入して支払います。
既にご説明したとおり、免停講習では様々な内容の検査や講義が行われます。
そして、免停講習の最後に行われる試験の成績と、講習の受講態度の総合評価で、免許停止日数の短縮が決まります。
成績「優」はテストの点数が36点以上、正答率は85%以上必要で、一番短縮日数が大きくなります。
免許停止日数が30日の場合に、免停講習でこの成績「優」を取ると、免許停止日数が29日短縮されます。
成績「良」はテストの点数が30〜35点で正答率70%以上の場合、成績「可」はテストの点数が21〜29点で正答率50%以上の場合に与えられる評価です。
免許停止日数はこの成績に応じて短縮されることになりますが、試験の点数が20点以下で正答率50%未満の成績「不可」を取った場合は、免許停止日数は短縮されません。
免停講習の受講は、免許停止日数の2分の1が経過するまで受講可能です。
例えば、免許停止日数が30日の場合なら15日、免許停止日数が60日の場合なら30日を経過するまでの期間で免停講習の受講が可能です。
さらに、免停講習の受講条件として、違反者講習を受講済みであることが必要です。
免停講習と違反者講習は、言葉が何となく似ているので違いがわからない、という人もいるかもしれませんが、この2つはまったく違う講習です。
違反者講習は、違反点数が3点までの軽微な違反を重ね、その合計が6点になった人を対象とした講習です。
例えば、酒気帯び運転や速度超過のような、1回あたりの違反で6点になるような大きな違反行為をした場合には違反者講習の対象外となります。
違反者講習とは免許停止処分を受けないために受講する講習ということになり、免停処分を受けた後に免許停止日数を短縮するために受講する免停講習とは別物です。
免停講習は、受講の義務はありませんし、受講を強制されるものではありませんので、講習を受けるかどうかはその人個人の自由です。
仕事や学校が忙しい等の諸事情で免停講習を受講できない場合でも、免停講習以外の方法で免許停止日数を短縮短縮することはできません。
また、免許停止日数が30日の場合に、免停講習の短期講習を受講して29日の短縮で済んだとしても、自分が免許停止処分を受けたという意識が薄くなりがちで、再び免許停止処分を受けてしまう可能性があります。
免停日数が大幅に短縮された場合でも、免許停止処分を受けたという事実を受け止め、しっかりと安全運転を意識するようにしましょう。
免停講習は、開始時間や終了時間が決められており、講習の開講日は講習の種類によって異なりますので、事前にしっかりと免停講習の開講日時について把握しておきましょう。
また、免停講習は免許停止日数を短縮するための講習ですので、持ち物も万全にして受講するようにしましょう。
免停講習で使用する持ち物として、必要最低限のものは下記のとおりです。
免停講習に必要な持ち物
他にも、免停講習で指定されたものがあれば持参しましょう。
服装についても、車を運転しやすい服装と靴で受講するようにしましょう。
免停講習の開始時間および終了時間は会場によって異なりますが、多くの場合は午前9時前後に開始、夕方に終了するのが一般的です。
大規模な免許センターでは、短期講習は平日なら毎日開講している場合が多いですが、中期講習や長期講習は開講日時が予め指定されている場合があります。
免停講習を受講する時に、自分で車を運転して免停講習の会場まで行くことは許されません。
なぜなら、免停講習を受けるということはその時点で運転免許は停止されているからです。
これを破ると、無免許運転に該当してしまいますので注意しましょう。
ちなみに、免許停止中に無免許運転をすると、25点の違反点数が加算されることになります。
免停講習の会場へ行く際には、必ず公共交通機関を利用するようにしましょう。
免停講習の流れや受講上の注意点等について説明してきました。
仕事や日常生活で車を利用している人にとっては、免許停止処分を受けることは避けたいことです。
しかし、どうしても免許停止処分を受けてしまった場合には、免停講習を受講することで、可能な限りで免許停止日数を短縮できます。
免停講習は、「どうせ免許停止日数が短縮されるのだから」という適当な気持ちではなく、違反をして免許停止になったという事実をしっかりと受け止めて受講することが大切です。