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耳の症状は、眼の症状と同じように耳自体の問題が原因の場合と、それ以外が原因の場合にわかれます。
耳は通常みなさんが体を見たときに外から見える耳介と、骨の中で保護されている外耳・中耳・内耳、脳との間の神経の通り道である聴神経に分かれます。
またそれ以外が原因の場合は、耳からの神経信号を受け取る脳自体に問題がある場合に分かれます。
耳が切れたり、変形したりするため見た目にはかなりびっくりしますが、耳介はあくまでも効率よく音を聞くための組織です。
耳介自体に傷がついたとしても音は聞こえます。
むしろ困るのは、外見上の美醜の問題が主になります。
治療としてはできるだけ早く病院して縫合してもらえば2週間程度できれいに治りますが、中にある軟骨に傷がついたりして変形が強く残ったりするようであれば、形成外科で手術ができるかどうか相談するのがよいでしょう。
外耳は音を受け取る鼓膜までの道です。
プールなどで外耳炎を経験した人はわかりやすいと思いますが、外耳は感覚が敏感なため耳の痛みが出やすいです。
また耳からの出血がでることもありますが、数日ぐらいで出なくなります。
耳介同様に治ってしまえば音が聞こえなくなることはありません。
治療としては自然によくなることが多いですが、出血が続くようであればガーゼを詰めたり、細菌の感染を予防するために抗生物質入りの軟膏をつけたりします。
通常は1~2週間程度でよくなります。
耳の周囲の骨が折れることにより、耳からの出血をきたす状態です。
他のものと比べると、耳の周りの腫れが強くでたり、青あざができたりしやすい傾向にあります。
他の神経の症状がなく変形が強くなければ、そのまま自然に骨がつくのを待ちますが、のちにあげる耳小骨離断や顔面神経麻痺を合併しやすいため注意が必要です。
顔面神経は顔の表情を作る筋肉に分布した神経であり、耳の後ろから側頭骨を通って脳に至ります。
そのためこの骨折の際に損傷されやすく、損傷された側の目が閉じられなくなったり、口から水がこぼれたり、舌の半分の味が感じられなくなったりします。
安静や薬物療法でよくなることもありますが、交通外傷に伴ったものの場合は神経の圧迫を起こしている骨を治すような手術が必要になることが多いです。
脳と顔面の骨の境界である、頭蓋底というところ骨折を起こすと、耳から水のようなものが出てくることがあります。
これは脳の周りを満たしている脳脊髄液がもれてきているのです。
特にまゆのあたりの打撲や耳の後ろの打撲をした時にこのような骨折をすることが多く、同時に目の周りに青あざができてパンダのようになり、耳の後ろや下側に青あざができることがよくあります。
耳から水がでてこなくても、パンダのようになったり、耳の後ろに青あざができたりした場合は強く疑われますので、すぐ病院を受診した方がいいです。
基本的には1週間の絶対安静をして骨折部から髄液が漏れてくるのが止まるのを待ちます。
7~8割ぐらいは3週間以内に自然に止まるといわれていますが、ずっと続くようであれば手術をすることもあります。
また同時に心配をする必要なのが細菌の感染であり、髄膜炎という脳の感染になるためできるだけ早めの抗生剤の投与が必要です。
頭蓋底骨折だけであれば通常は深刻な後遺症を残すことはありません。
ただ目や耳に通じる神経が走っているところでもあるため、その神経が傷害されてしまったりすると目が見えづらくなったり、耳が聞こえづらくなったり、めまいやふらつきが残ったりといった後遺症が残る場合があります。
耳かきなどで直接損傷をする場合と異なり、顔の横側をぶつけたりするときに耳の中の気圧があがることにより鼓膜に損傷をきたすことがあります。
交通事故ではそれほど多くはありません。
鼓膜は音をうけとる器官のため、うまく音を聞くことができなくなります。
このような症状があれば早めに耳鼻科を受診しましょう。
通常は1~2か月ぐらいで自然に鼓膜が修復されることが多く、最初は様子を見ます。
ただ2週間ぐらいしても改善がみられない場合は、手術で穴をふさぐような場合もあります。
中耳には鼓膜と内耳をつなぐ、ツチ骨・キヌタ骨・アブミ骨という骨があり、3つあわせて耳小骨といいます。
これを損傷すると音が聞こえなくなりますが、交通事故では側頭骨骨折に伴っておこることがあります。
また音の聞こえにくさだけでなく、めまいや吐き気などの症状を伴うことがあります。
治療としては早めに耳鼻科を受診しましょう。
通常は緊急手術は必要ありませんが、のちにあげる外リンパ漏を伴う場合はできるだけ早めに手術をする場合があります。
CTなどを撮影して、緊急性がなければ数か月程度で鼓室形成術という手術を行うことがあります。
頭をぶつけた際に、強い振動で内耳がゆさぶられて障害されることが原因です。
音の聞こえづらさ、めまい、耳鳴りなどの症状が起こります。
めまいがひどくなると歩けなくなったりする場合もありますが、通常は一過性であり2~3週間で自然によくなってきます。
内耳にはリンパ液が満たされており、そのリンパ液が振動することによって音が伝わり、流れることによって平衡機能を司どっています。
頭をぶつけたりしたときに中耳と内耳の境に穴があいてしまい、リンパ液が外に漏れる状態を外リンパ漏といいます。
音が聞こえづらくなったり、耳鳴りがしたり、めまいがでたりといった症状がでます。
悪化する場合には音の聞こえづらさが酷くなり、頭の重い感じや平衡感覚がなくなるせいでうまく歩けないなどの後遺症が残ってしまうこともあるようです。
このような症状がでた際はすぐ耳鼻科を受診してください。
通常はまず1週間程度安静にして自然に穴がふさがるのを待ちます。
それで治らない場合や、悪化もしくは症状に激しい波がある場合は、手術でその穴をふさぐことがあります。
いわゆる首のむちうちで、首が前後に揺さぶられることにより首の筋肉にダメージを負った状態です。
特に信号待ちなどで、停車中などに追突された際は首に力を入れたりといった予備行動ができないため症状が長く続くケースがあります。
他の症状と違い耳の聞こえづらさは少なく、耳鳴りやめまい、肩こりなどが大きな症状になります。
事故直後からではなく、しばらくたってから症状が出てくることもあるため、注意が必要です。
通常は首を安静にするために、頚椎カラーといわれる首の装具を使用することが多いですが、最近では長期間使用すると症状が続きやすいという話もあるため、症状がひどくなければ数日程度の使用にとどめる方が望ましいです。
また症状の継続する期間に関しては、心理的や社会的な要素も関係しているという報告もあるため治療に難渋することもあります。
イニシャル O.M
診療科目 整形外科
医師経験年数 10年
平成5年 大阪大学医学部附属病院整形外科 勤務
現在 大阪市住吉区長居の北脇クリニックにて院長を務める
日本整形外科学会・専門医/脊椎脊髄病院/麻酔科標榜医
日本ペインクリニック学会所属
骨折・むちうち・捻挫・脱臼などの症状から背中や首の痛み・手足のしびれ・肩こり・腰痛・関節痛などの慢性的な症状まで、整形外科に関するあらゆる症状に精通する。
地域のかかりつけ医として常に患者の立場に立った診察には定評があり、治療内容や医薬の分かりやすい説明をモットーとしている。