東京弁護士会所属。
交通事故の被害者にとって、弁護士は、妥当な慰謝料をもらうための強い味方になります。
特に、加害者の保険会社との示談交渉がうまくいかず悩まれていたり、後遺症が残ってしまい後遺障害慰謝料請求を考えていたりする方は、 ぜひ検討してみてください。
勤務中に交通事故の被害者になってしまった場合、怪我の治療の入院や通院のために、仕事を休まなければならないことがあります。
このような場合、運悪く交通事故で負傷したうえに休職によって収入が減ってしまい、踏んだり蹴ったりという状態になってしまうでしょう。
そういった被害者を救済するために、交通事故の怪我の治療による欠勤や減給された分の給与を補償する休業補償という制度があります。
本記事では労災で休職したときに受け取れる補償や、支給を受ける際の注意点について解説していきます。
目次
会社員の方の場合、労働契約により定められた日数や時間数、勤務をしなければなりません。
たとえどのような理由があったとしても、その日数や時間数に足りない場合は、労働契約上の義務を履行していないこととなり、欠勤控除という形で給料の金額は減額されます。
とはいえ、勤務中の事故など労災による心身の不調により欠勤を余儀なくされる場合、給料が減らされるのは納得がいかないでしょう。
やむを得ない事情によって給料が減らされないよう、補償制度が設けられています。
労災で仕事を休まなければならなくなった場合に、減額した給与額を補填してくれる補償があります。
休業補償で受けられる給付金額は、事故前のその被害者の給与相当額の一定割合になります。
具体的には、給付基礎日額の60%を受け取ることができます。
給付基礎日額とは、労働基準法で定められた金額で、事故発生の直前の3か月間に被害者に支払われる金額総額を、労働日数で割った一日当たりの賃金額です。
なお、この計算にあたっては、ボーナスなどと臨時収入は含まれないので注意しましょう。
企業が労災に加入している場合は、交通事故による休業から3日目までは企業自身で補償金を負担する必要がありますが、4日目からは労災から給付がおります。
業務中や通勤途中に交通事故に遭ってしまい、負傷して仕事ができない被害者が、賃金カットされてしまったときに、労災保険から給付が受けられる保険金です。
時給で働いている場合や、有休を使い切ってもまだ治療が必要で欠勤扱いになってしまう場合にも役立つ制度です。
業務上の交通事故による休業補償では「休業補償給付」、通勤途中の交通事故の場合には「休業給付」という補償をそれぞれ受けることができます。
また、休業補償の金額は、交通事故前の3ヶ月間の平均給与日額を給付基礎日額として、その給付基礎日額の60%です。
支給額は給付基礎日額の60%×休業日数で計算されます。
さらに、給付基礎日額の60%とは別に、「休業特別支給金」というものが給付基礎日額の20%支給されるので、休業給付としては、給付基礎日数の80%が支給されることになります。
ちなみに、休業補償は課税対象とはなりません。
対象となるのは、直接雇用されている労働者のみで、派遣社員や請負契約等で直接雇用されていない社員は除外されます。
療養補償給付は、労災により病気やケガを負った場合に、医療機関で発生する費用を補償する制度です。
病院や診療所、薬局のうち労災指定となっている医療機関であれば、労災保険から給付が受けられます。
給付される金額は、労災と認定された事故により発生した診療、治療、入院、投薬などにかかった費用の全額です。
労災保険から直接指定医療機関に対して給付が行われるため、患者が窓口で支払う必要はありません。
なお、労災の指定医療機関でない場合は、いったん窓口で支払いを行います。
その後、労災保険から銀行振込による給付を受けることとなります。
労災により病気やけがを負った後、その治療を行いますが、障害が残ってしまう場合があります。
このような場合には、障害補償給付という補償を受けられます。
労災による病気やけがの治療が終わり、治癒したものとされた後も障害が残った場合、その障害の程度により障害等級が決定されます。
このうち、障害等級1級から7級までは障害補償年金の対象となります。
また、障害等級8級から14級までは障害補償一時金の対象となります。
なお、障害補償年金の給付が行われる際には、障害特別年金も支給されます。
また、紹介補償一時金が給付されるときには、障害特別一時金もあわせて支払われます。
労災事故のために働くことができなくなると、休業を余儀なくされることがあります。
休業した場合には、給料の補償が受けられるケースがあると説明しましたが、ボーナスについてはどうなるのでしょうか。
労災は業務上の事故であり、労災による休業の結果、ボーナスが減額されるのはおかしいと考える方もいるでしょう。
一方、休業したという結果だけをみれば、ボーナスが減額されるのもやむを得ない部分があります。
労災で休業した場合、ボーナスの金額が減らされるかどうかは、勤務先の企業の考え方次第です。
労災により休業した場合、ボーナスの金額が減額される会社もあります。
このような場合には、労災保険からボーナス特別支給金が支払われ、減額されたボーナスの額を補填できる可能性があります。
ボーナス特別支給金は平均賃金ではなく、3か月を超える期間ごとに支払われる特別給与を基礎として計算します。
労災の補償に関する注意点を紹介していきます。
休業損害の休業日数は、個人の事情を考慮した治療期間の範囲内で認められ、一般的な基準は仕事を実際に休んだ日数となります。
ここで注意したいのは、医師から「自宅で療養するように」という指示をされてから休業することが認められるという点です。
つまり、医師からこのような指示が出ていないのに、自己判断で勝手に仕事を休んだ場合には、請求する保険会社によっては休業損害を算定してくれない場合があります。
会社で働く人は、業務中のほかに通勤途中で事故にあうことがあります。
通勤途中で事故にあうことを通勤災害といい、業務中に発生する業務災害とは区別されます。
通勤災害により休業が発生しても、会社はその休業により発生した収入減を補償する義務はありません。
そのため、通勤災害により仕事を休んだときに給料の額が減額されても、会社はその収入を補償する必要はありません。
通勤災害なのか、あるいは業務災害なのかは、非常に大きな意味を持ちます。
自賠責保険と労災保険は、まったく異なるものと思われがちですが、両方とも国が補償する制度です。
つまり、自賠責保険と労災保険の両方を二重取りすることは不可となっており、重複して補償されることがないように調整されます。
どちらを優先して給付できるかどうかについて、厚生労働省から自賠責保険を優先させるように通達されています。
しかし、あくまでもこの通達には拘束力がありませんので、自賠責保険と労災保険のどちらをとるか、自由に選択することができます。
自賠責保険は、慰謝料や仮渡金制度があったり、補償範囲が広かったりとメリットもありますが、自分の過失割合が大きい、もしくは過失割合について長く争っている、事故の相手方の加入保険が自賠責保険のみである等の場合には、労災保険を先行して使用するとよいでしょう。
どちらの保険を使用するかについては、損害賠償額の計算等を含め、専門的な部分がありますので、弁護士等に相談することをおすすめします。
休業補償は、先に説明した別途支給される「休業特別支給金」と合計でも8割までしか補償されません。
そのため、収入を下げたくないという場合には、有給を使用することも可能です。
しかし、休業補償は有給の賃金と二重に受け取ることはできないので注意しましょう。
休業補償支給対象期間に有給を使ってしまうと、その日の休業補償はもらえません。
有給はいざというときに残しておき、休業補償がもらえる期間は休業補償によって補償してもらうのが無難でしょう。
労災認定を受けるような大きな労災が発生した場合、基本的には労災保険による補償を受けることができます。
ただ、労災保険の給付は労災が発生する前の収入を100%保証するものではなく、減収になることは確定してしまいます。
そこで、会社に非があることがはっきりしている場合は、損害賠償請求を行うことも視野に入れて検討しましょう。
安全配慮義務違反などの問題がある場合、会社に対して損害賠償請求を行うことができます。
交通事故によって負傷した場合、治療費などで何かと持ち出しが多くなるため、確実に損害賠償を受けることが大切です。
勤務中や通勤中の交通事故で休業補償の対象となる場合は、ぜひ手続きをして給付を受けましょう。
休業補償の基準は労災保険で規定されていますので、労働者災害補償保険法といった労災保険に関する法律や規則等が変更になれば、休業補償の基準もそれによって変更になります。
休業補償を請求する場合には適宜確認するようにしましょう。