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加害者や相手方保険会社が弁護士を立てた場合、弁護士名義で「受任通知」と呼ばれる書面が届きます。
受任通知とは、弁護士が代理人になったことを相手方に伝える書面です。
通常の郵便物とは違い内容証明郵便で届くケースが多いので、突然弁護士名義で届く書面にびっくりしてしまうかもしれません。
しかし、受任通知は代理人になったことを知らせるだけの書面であり、その書面自体に何らかの法的効果があるわけではありません。
わざわざお金のかかる内容証明で郵送されるてくるのは、受任通知の内容や郵送履歴を証拠として残すためです。被害者に対して何らかのアクションを求める書面ではないので、特に返事もしなくて問題ありません。
多くの場合、その後に弁護士から示談案を提示されたタイミングで初めて対応が必要になります。
受任通知と併せて示談案の提示が届いた場合には、その示談案を受け入れるか拒否するかを決めて返答する必要があります。
この際に送られてくる示談案は、少しでも賠償金額を減らすために、加害者側に有利な過失割合を主張してくるケースも多いです。
「弁護士が算定した金額だから合っているのだろう」と決めつけるのではなく、内容は慎重に判断しましょう。
相手方が突然弁護士を立ててきた場合、おおごとになるのではないかと不安に感じてしまうでしょう。
交通事故の加害者が弁護士を立てることが多いケースは、以下のとおりです。
なお、加害者側が弁護士に依頼する心理をくわしく知りたい方は、以下の記事をご参照ください。
大きな事故で慰謝料を含む賠償金が高額になる場合、少しでも賠償額を減らすために弁護士を入れてくる場合があります。
とくに死亡事故や被害者が重度の後遺障害を負うようなケースでは、慰謝料や逸失利益などで賠償金額が数千万円単位になる可能性があるため、弁護士を立ててくる可能性が高まります。
示談交渉は被害者の治療が終了してからおこなわれます。しかし、症状によっては被害者が「やっぱりまだ痛むので治療を続けたい」などと言って、まとまりかけた示談を白紙に戻してしまうこともあります。
むちうちでよくあるケースですが、この場合には交渉がもつれることが予想されるため、早い段階で保険会社が弁護士を立ててくることがあります。
事故状況や症状から見て治療期間が長いと判断された場合、保険会社が治療費の支払いを打ち切ってくることがあります。一般的にむちうちであれば3カ月程度で完治するケースが多いと言われていますが、保険会社も事故から3カ月を過ぎたあたりで「もうけがは治っているのはずだ」と主張してくるケースが多いです。
もちろんまだ完治していないのであれば治療を継続すべきですが、この場合、保険会社が弁護士を立てて治療費の打ち切りを打診してくる可能性があります。
治療期間が短くなれば、その分、治療費や入通院慰謝料などを減額できます。そのため、想定されている治療期間よりも長引いている場合には、弁護士を立てて交渉を強制的に進めようとしてくるケースが多いです。
示談交渉の結果、被害者の人格的に対応できないと判断された場合には、手間を省くために弁護士を立ててくる場合があります。
たとえば、以下のようなケースです。
保険会社の主張に反論しただけでクレーマー扱いされることはありませんが、被害者の態度次第では弁護士が出てくるケースもあることを覚えておきましょう。
また、事故状況が複雑で過失割合などで専門的な判断が必要になる場合には、法律の専門家である弁護士に対応を依頼してくるケースもあります。
人身事故で刑事責任を問われる場合、少しでも刑事処分を軽くするために加害者が弁護士を立てて来る場合があります。
損害賠償の支払い義務である民事責任と、懲役や禁錮などの罰則を科される刑事責任は別の手続きです。しかし、損害賠償に関する示談交渉が円満に成立すれば、被害者の処罰感情が薄いとして重い刑事処分になる可能性を下げることができます。
反省している証拠として見舞金を提示されたり、被害届の取り下げを依頼されることもあるでしょう。このように少しでもスムーズに交渉を進めるために、交通事故に精通した弁護士を立ててくるケースがあるのです。
なお、示談書に刑事処罰を軽くして欲しい旨の文言を記載されるように頼まれたとしても、無理に応じる必要はありません。
また、相応の見舞金を受け取っても賠償金が減らされることは基本的にありません。
被害者に保険金詐欺の疑いがあったり、反社会的勢力とのつながりを匂わせるような言動があったりすると、保険会社は早い段階で弁護士を立ててきます。
たとえば、以下のようなケースです。
このようなケースでは、対応を間違えるとより大きなトラブルに発展する可能性があります。今後起こりうるであろうリスクに備えて、早めに法律の専門家に対応してもらう場合があります。
もし相手方が弁護士を立ててきたら、次の対処法を検討してみましょう。
なお、加害者が弁護士を立てているにもかかわらず、こちらが何の対策もせずに自力で交渉するのはおすすめできません。
法律のプロフェッショナルである弁護士と対等な立場で交渉を進めるためには、こちらも専門家のサポートを受ける方がよいと考えておきましょう。
被害者自身が任意保険に加入していれば、示談代行サービスを使うことで保険会社に示談交渉を代行してもらえます。
交通事故の専門的知識を持ち交渉に慣れている保険会社の担当者であれば、被害者自身が交渉するよりも対等な立場で交渉しやすくなるでしょう。
注意点としては、交渉を代行してくれる保険会社が法律の専門家ではないという点です。複雑な事故や賠償金が高額になるケースでは、複雑な論点に対応できない恐れがあります。
また、もらい事故など被害者にまったく過失が認められないケースでは、示談代行サービスを利用できないことも頭に入れておきましょう。
交通事故紛争処理センター(ADR)や日弁連交通事故相談センターでは、当事者間で交渉がまとまらない場合に公正・中立の立場で紛争解決の支援をおこなってもらえます。
弁護士が間に入ってくれるため、被害者個人で交渉するよりも示談がまとまりやすくなるでしょう。
ただし、間に入ってくれる弁護士は公正・中立の立場で和解がまとまるようにサポートします。被害者の味方に立って交渉してくれるわけではないので、必ずしも希望通りの結果を得られるわけではないことに注意が必要です。
相手方弁護士と対等な立場で交渉したいのであれば、こちらも交通事故に強い弁護士に相談するのがベストです。
弁護士に依頼する主なメリットは、以下のとおりです。
相手が弁護士を立ててきている以上、こちらも弁護士を立てるのが有効です。早めに弁護士が対応すれば相手が反論するスキを与えないことも可能です。
弁護士費用特約を使えば多くのケースで実質負担なく弁護士への依頼が可能です。後悔する前に早めに弁護士に相談しましょう。
もし加害者や相手方保険会社が弁護士を立ててきたら、次の点に注意してください。
相手方弁護士は、賠償金を少しでも少なくする目的を持って交渉します。もしこちらが不利になるような発言をした場合、その発言を賠償金減額の事情として使われてしまう恐れがあります。
軽い気持ちで「お互いに落ち度はあったので…」などと発言すると、示談交渉の際に被害者側の過失を主張される恐れがあります。
また「けがもよくなってきたので日常生活に支障はなくなりました」との発言から、まだ治療中にもかかわらず治療費を打ち切られる可能性もあるでしょう。
弁護士は被害者のささいな言動を交渉の材料として使ってきます。うっかり発言で大幅に賠償金を減額することにもなりかねませんので、対応はプロである弁護士にまかせることをおすすめします。
相手方が弁護士を立ててきた以上、交渉の窓口は弁護士に一本化されます。示談交渉だけでなく、事務的な手続きも含めて今後のやり取りは全て弁護士とおこなうことになります。
加害者や保険会社に連絡しても、「やり取りは弁護士に一任しています」と言われてしまい対応してくれません。
相手方保険会社がわざわざ弁護士を入れてきたということは、交渉が難航する可能性が高いことを意味します。弁護士が被害者に有利な条件を提示してくるケースはまずないので、示談がまとまらずに裁判にまで発展する可能性が高くなるといえるでしょう。
裁判では、過去の裁判例や事故状況を示す証拠を基に法的に有効な主張をおこなう必要があります。専門的知識のない状態で裁判を有利に進めるのは困難なので、対応は弁護士に任せることをおすすめします。
加害者側の弁護士が提示してきた賠償金額に納得できず、示談交渉がなかなか前に進まないケースもあるでしょう。
こういったケースの場合、加害者側の弁護士が「債務不存在確認訴訟」を起こして、加害者側に一定額を超える賠償金を支払い義務がないことを主張してくる場合があります。
ただ必ずしもこうした法的手段を取ってくるわけではなく、「納得できないのであればそちら(被害者側)から裁判を起こしてください」と言われて対応を放置されるケースも多いです。長期間示談交渉がまとまらないと、法律上の時効が完成してしまい損害賠償を請求できなくなってしまう恐れがあります。
事故から時間が経っている場合には、なるべく早めに弁護士に対応を依頼しましょう。
なお時効期間は、原則として交通事故が発生した翌日から3年(物損事故)もしくは5年(人身事故)です。
交通事故の示談で相手が弁護士を立ててきたら、対等な立場で交渉するためにも早めに弁護士に依頼しましょう。法律のプロフェッショナルである弁護士を相手に、専門的知識なしで立ち向かうのは適切な対処法とはいえません。
死亡事故や重度の後遺障害が残るケースでは、加害者側が弁護士を立てやすいです。感情的になって暴言を吐いたり、不用意な発言はしないよう注意が必要です。
もし依頼先に迷ったら交通事故の経験豊富な”VSG弁護士法人”にぜひお気軽にご相談ください。