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交通事故に精通している弁護士法人ベンチャーサポート法律事務所 > 交通事故弁護士コラム > 怪我・後遺障害等級 > 【医師が説明する】交通事故による下肢機能障害と治療について

【医師が説明する】交通事故による下肢機能障害と治療について

この記事の監修者 
北脇クリニック 院長 北脇文雄

交通事故によって、下肢に後遺障害が残ることがあります。

下肢の後遺障害としては欠損または機能障害、変形障害(大腿骨または下腿骨)、醜状障害があります。

下肢の中には足趾も含まれますが、足趾の機能障害としては欠損または機能障害があります。

ここでは主に交通事故による下肢機能障害とその治療についてお伝えします。

(”足趾”は”足指”と同意義です。)

下肢機能障害とは

下肢機能障害とは下肢の3大関節および足趾での可動域制限のことです。

下肢の3大関節とは、股関節・膝関節・足関節を言います。

股関節から膝関節までを大腿、膝関節から足関節までを下腿といいます。

大腿には大腿骨、下腿には太い脛骨とその外側にある細い腓骨があります。

下肢の機能障害の認定は、日本整形外科学会および日本リハビリテーション医学会により決定された「関節可動域表示ならびに測定法」に基づき測定された可動域により行います。

関節可動域の測定方法には、自動運動と他動運動の2種類があります。

自動運動とは他人の力を使わず自分の力で動かせる関節可動運動、他動運動とは他人の力を使って動かせる関節可動運動のことをいいます。

機能障害の認定では、原則として他動運動による測定値によりますが、他動運動による測定値が適切でないものは、自動運動による測定値を参考として障害の認定を行います。

各関節の機能障害の認定では、原則として左右両下肢のうち、障害のある側の関節可動域(患側)と、他方の関節可動域(健側)の両方を測定し、それらを比較して評価を行います。

この患側と健側の可動域の差が後遺症障害の認定に関わってきます。

ただし、健側に元々障害がある場合や両側事故によって障害を残した場合には参考にする値がないため、平均的な参考可動域角度と比較して認定することになります。

具体的には、下肢の機能障害は、「下肢の用を全廃したもの」、「関節の用を廃したもの」、「関節の機能に著しい障害を残すもの」、「関節の機能に障害を残すもの」を分けられます。

「下肢の用を全廃したもの」

第1級6号両下肢の用を全廃したもの
第5級7号1下肢の用を全廃したもの

下肢の用を全廃したものとは、3大関節のすべてが強直したものをいいます。

「強直」とは、完全強直または完全強直に近い状態にあるものをいいます。

完全強直したものとは、関節の可動域が全くないものをいい、完全強直に近い状態になったものとは、原則として健側の関節可動域の10%程度以下に制限されているものをいいます。

「関節の用を廃したもの」

第6級7号1下肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの
第8級7号1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの

関節の用を廃したものとは、関節が強直したもの、関節の完全弛緩性麻痺またはこれに近い状態にあるもの、人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節のうち、その可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもののことをいいます。

用を廃した関節の部位が1関節か2関節かによって、後遺障害の級が変わります。

また、完全弛緩性麻痺に近い状態にあるものとは、他動的には可動するもの、自動的には健側の関節可動域の10%程度以下になったものをいいます。

なお、関節可動域が10度以下に制限されている場合は全て「これに近い状態」として取り扱います。

「関節の機能に著しい障害を残すもの」

第10級11号1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの

関節の機能に著しい障害を残すものとは、関節の可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもの、または人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節のうち、その可動域が可動域角度の1/2より動く関節のことをいいます。

「関節の機能に障害を残すもの」

第12級7号1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの

関節の機能に障害を残すものとは、関節の可動域が健側の可動域角度の3/4以下に制限されているもののことをいいます。

一方、足趾の機能障害は、「足指の用を廃したもの」であり、その部位、数によって更に細かく分けられます。

「足指の用を廃したもの」

第7級11号両足の足指の全部の用を廃したもの
第9級15号1足の足指の全部の用を廃したもの
第11級9号1足の第1の足指を含み2以上の足指の用を廃したもの
第12級12号1足の第1の足指又は他の4の足指の用を廃したもの
第13級10号1足の第2の足指の用を廃したもの
第2の足指を含み2の足指の用を廃したもの
又は第3の足指以下の3の足指の用を廃したもの
第14級8号1足の第3の足指以下の1又は2の足指の用を廃したもの

足指の用を廃したものとは、第1の足指は末節骨の半分以上、その他の足指は遠位趾節間関節以上を失ったもの又は中足趾節関節もしくは近位趾節間関節(第1の足指にあっては趾節間関節)に著しい運動障害を残すものをいいます。

具体的には、第1の足指の末節骨の長さの1/2以上を失ったもの、第1の足指以外の足指を中節骨もしくは基節骨を切断したもの又は遠位趾節間関節もしくは近位趾節間関節において離断したもの、中足趾節関節または近位趾節間関節(第1の足指にあっては趾節間関節)の可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されるものをいいます。

下肢機能障害の評価に必要な可動域測定とは

下肢機能障害における可動域は3大関節、足趾のそれぞれで計測します。

可動域は、“主要運動”と“参考運動”を測定することになっています。

主要運動とは、各関節における日常の動作のなかで重要な運動のことをいい、参考運動とは、各関節における日常の動作のなかで主要運動ほど重要でない運動のことをいいます。

下肢では参考運動は股関節にしかありません。

機能障害評価に必要な下肢の関節可動域測定をそれぞれ関節ごとに見ていきましょう。

(1) 股関節

股関節の主要運動には、屈曲/伸展、外転/内転があり、参考運動には、外旋/内旋があります。

参考可動域角度は、主要運動では屈曲/伸展が125/15度、外転/内転の参考可動域角度は45/20度となります。

参考運動では外旋/内旋は45/45度となります。

引用元:医学書院 「http://www.igaku-shoin.co.jp/seigo/201403_04.pdf」

(2) 膝関節

膝関節以遠は主要運動しかなく、参考可動域角度は屈曲/伸展で130/0度となります。

引用元:医学書院 「http://www.igaku-shoin.co.jp/seigo/201403_04.pdf」

(3) 足関節

足関節の主要運動の参考可動域角度は屈曲(底屈)/伸展(背屈)で45/20度となります。


引用元:医学書院 「http://www.igaku-shoin.co.jp/seigo/201403_04.pdf」

(4) 足趾

足趾の各指は、母趾のみ末節骨と基節骨、その他の4趾は末節骨、中節骨、基節骨に分かれます。

母趾にある関節は、趾節間関節(IP関節)と中足趾節関節(MTP関節)、その他の4趾の関節は、遠位趾節間関節(DIP関節)、近位趾節間関節(PIP関節)、中足趾節関節(MTP関節)となります。

足趾の参考可動域角度は母趾とその他の趾で異なります。

母趾の参考可動域角度は屈曲(MTP)/伸展(MTP)が35/60度となり、屈曲(IP)/伸展(IP)が60/0度となります。

その他の足趾の参考可動域は、屈曲(MTP)/伸展(MTP)が35/40度、屈曲(PIP)/伸展(PIP)が35/0度、屈曲(DIP)/伸展(DIP)が50/0度となります。


引用元:医学書院 「http://www.igaku-shoin.co.jp/seigo/201403_04.pdf」

主要運動が複数ある関節の場合、主要運動のいずれか一方の可動域が健側の関節可動域の1/2以下または3/4以下に制限されていれば著しい機能障害または単なる機能障害を認定することができます。

下肢の場合、股関節の主要運動が屈曲/伸展、外転/内転と複数あるため、いずれかの可動域が認定基準に該当すれば、機能障害を認定することが出来ます。

そのほかの関節機能障害として、運動制限とは別に関節の機能障害として取り扱われるものの一つに、動揺関節があります。

動揺関節とは、関節の可動性が参考可動域角度以上、あるいは異常な方向に運動可能であるものをいい、明らかな器質的損傷が認められるものが認定の対象となります。

動揺関節は、他動的、自動的に関わらず、以下の基準で等級を認定します。

常に硬性補装具を必要とするものは、第8級、時々硬性補装具を必要とするものは第10級、重激な労働等の際以外には硬性補装具を必要としないものは12級として取り扱います。

後遺障害診断書

一定期間の治療後、後遺障害が残った場合に医師に後遺障害診断書を書いてもらうことになります。

後遺障害診断書は医師しか記載出来ません。

この診断書により後遺障害が認められるとそれ以降の治療は実費となることがあるため、医師としっかり相談し、基本的には一定期間の治療後、それ以上の新規の治療を行う予定がなくなった症状固定の時期に記載することとなります。


ここに医師が計測した値を書き込み、保険会社へ、さらに損害保険料率算出機構・自賠責損害調査事務所へとまわされます。

つまり、後遺障害を認定しているのは後遺障害診断書を書いた医師ではありません。

しかし、この診断書などをもとに判断されるため、可動域測定は正しく記載してもらいましょう。

下肢機能障害の治療

下肢機能障害における治療は怪我の種類、状態によって異なります。

受傷起点、受傷部位、受傷形態など、人によって治療の方法は多岐に渡ります。

切断を認める場合には、再接着(血管、神経、骨、腱をつなぐ)できるまでのタイムリミットがあるので救急車を呼びましょう。

また、再接着など微小血管吻合(マイクロサージャリ)ができる病院・医師は限られています。

もし、指が切断されてしまった場合は、切断された先のものをサランラップやビニール袋で包み、それを氷の入った容器・袋に入れて病院へ運んでください

当たり前ですが先端がなければ繋ぐことは出来ませんし、再接着の適応もどの部位で切れているか、切れ方などによって判断されます。

骨折は手術をせずに保存的に経過を見ることもありますが転位が大きい場合、関節にかかるような骨折の場合は手術となります。

機能障害は骨がくっついた後に見えてくるものが大半ですが、受傷早期から理学療法士・作業療法士によってリハビリテーションを行うことで機能障害を残さずに済むこともあるため、まずは病院を受診しましょう。

手術としてはプレート固定やスクリュー固定、経皮的ピンニング固定など多岐に渡ります。

骨折形態によって手術方法も異なるため、まずは骨折が疑われる際にはレントゲンを撮影しましょう。

まとめ

下肢は日常動作の中で特に荷重、歩行に関して非常に重要な役割を果たしています。

出来るだけ機能障害を残さないように早期に病院を受診して適切な治療を受けましょう。

どの怪我にも共通して言えることは、生活習慣病や喫煙により治癒は遷延し、動脈硬化など血管状態が悪くなり治療成績は圧倒的に悪くなります。

生活習慣病があれば普段からしっかりと治療を行い、禁煙を心がけましょう。

医師プロフィール

イニシャル:M.S

診療科目:整形外科
医師経験年数 5年

関東甲信越にて日々、三次救急病院にて外傷治療にあたっている。

外傷、スポーツ整形がメイン。

この記事の監修者

北脇クリニック 
院長 北脇文雄

平成5年 大阪大学医学部附属病院整形外科 勤務
現在 大阪市住吉区長居の北脇クリニックにて院長を務める
日本整形外科学会・専門医/脊椎脊髄病院/麻酔科標榜医
日本ペインクリニック学会所属

骨折・むちうち・捻挫・脱臼などの症状から背中や首の痛み・手足のしびれ・肩こり・腰痛・関節痛などの慢性的な症状まで、整形外科に関するあらゆる症状に精通する。
地域のかかりつけ医として常に患者の立場に立った診察には定評があり、治療内容や医薬の分かりやすい説明をモットーとしている。

保険会社とのやり取りを私たちが代行し、最後まで妥協することなく示談交渉していきます。事故直後にできる対策もありますのでお早めにお電話ください。 保険会社とのやり取りを私たちが代行し、最後まで妥協することなく示談交渉していきます。事故直後にできる対策もありますのでお早めにお電話ください。

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