東京弁護士会所属。新潟県出身。
破産してしまうかもしれないという不安から、心身の健康を損ねてしまう場合があります。
破産は一般的にネガティブなイメージですが、次のステップへのスタート準備とも言えます。
そのためには、法律上の知識や、過去の法人破産がどのように解決されてきたかという知識が必要です。
法人破産分野を取り扱ってきた弁護士は、こういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって納得のいく措置をとることができます。
PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/kawasaki/
書籍:この1冊でわかる もめない遺産分割の進め方: 相続に精通した弁護士が徹底解説!
事業を一時的に休止したいときの選択肢として、会社の休眠が挙げられます。
会社を廃業にせず、事業を再開させる可能性がある場合に取る選択です。
「事業再生のために時間を確保したい」「経営者の後継を見つけたい」など、様々な事情で事業の一時停止を考える方が多くいます。
休眠会社は税金などを抑えられるメリットがありますが、銀行口座の取り扱いなどには注意が必要です。
ここでは休眠会社の銀行口座の取り扱い、そして銀行口座を放置してしまうリスクについて解説します。
Contents
休眠会社は12年以上登記がされていない状態の会社のことを指します。
廃業とは異なり、登記は残るため、法的には存在していることになります。
事業活動を行っていない一方で、会社自体は存続しているので、銀行口座の取り扱いには注意が必要です。
結論として、休眠会社は預金を全て引き出すべきです。
休眠したばかりだと税金などが残っている場合がありますので、その処理が終わるまでは待っても構いません。
しかし、資金の支出がひと段落したら、預金をゼロにしておくことをおすすめします。
預金をゼロにすることには以下の2つのメリットがあります。
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
休眠会社でも納税の義務はあります。
基本的に利益がゼロであれば課税されませんが、中には課税されるものもあります。
課税されるものの一つが法人住民税の均等割です。
均等割は自治体の管轄内に所在する事業所全てに課税されるものですので、休眠会社でも例外ではありません。
休眠中だからと無申告のまま放置すると、滞納税金が毎年増えていくことにもなりかねません。
自治体の申請をして休眠会社と認められれば、均等割の免除を受けることができます。
均等割の免除は「継続して事業を行っているか」が判断基準の1つです。
よって、わずかでも売上や経費が発生していると、休眠会社と認められない可能性があります。
預金口座をゼロにしておくと、資金の動きが発生しないので、均等割を免除される可能性が高まります。
休眠会社と認められやすくするためにも、あらかじめ預金は引き出しておくようにしましょう。
休眠会社にした場合でも、法人登記は残っているため、決算で税務申告をする必要があります。
口座の入金・出金があれば、所得がなくても資産の動きがあります。
この資産の動きについては決算書を作成しなければなりません。
銀行口座の預金を全て引き出しておけば、資金の動きはなくなりますので、決算がかなり楽になります。
決算では会計上の預金残高と実際の預金残高の一致を証明するため、金融機関が発行する残高証明書を添付することがあります。
残高証明書の添付は義務ではありませんが、決算の正確性を担保することが可能です。
会社で複数の口座を持っている場合は計上漏れが発生しやすいので、よく残高証明書が活用されます。
しかし、複数の銀行口座の残高証明書を申請し、添付するのはかなりの手間です。
特に休眠会社では、できるだけ事務手続きを減らしたいはずです。
口座管理や決算の手間を省くためにも、不要な口座は閉鎖することをおすすめします。
休眠会社が銀行口座の預金をゼロにしておくことで、課税免除の可能性が高まることや、決算の手間が省けるなどのメリットがあります。
反対に、休眠中も銀行口座を放置することで、問題が生じることがあります。
あくまでも休眠であり、会社自体は存続しているので、銀行口座の放置にはリスクがあることを認識しましょう。
ここでは、銀行口座の放置することのリスクについて紹介します。
休眠会社は事業を一時停止している状態なので、売上も経費もゼロのはずです。
売上がなければ利益も当然ゼロになるため、基本的に課税されません。
法人住民税の均等割についても、課税免除の手続きをきちんとしていれば問題ありません。
しかし、銀行口座に預金を放置しておくと、課税のリスクがあります。
預金があると、一定期間後に利息が発生します。
すると、わずかな利息であっても、事業活動が継続していると見なされてしまうことがあります。
休眠会社と認められなければ、法人住民税の均等割が課税されてしまいますので、預金は放置せず、ゼロにしておくのが安心です。
休眠会社の口座に残高がある状態で放置すると、取締役などに私的利用されてしまうこともあります。
休眠していても、法的には存続している会社です。
たとえ取締役の入出金だとしても、不透明な資金だと認識されてしまうリスクがあります。
最悪の場合、法的措置を取られてしまう可能性が存在します。
そこで、あらかじめ預金をゼロにしておくことで、個人利用を避けることが可能です。
10年以上取引がない銀行口座は休眠口座として扱われます。
2018年から「休眠預金活用法」が施行され、休眠口座にある預金は国のお金になることが決まりました。
休眠口座の預金は金融機関から預金保険機構に移管され、公益活動に活用されることになります。
休眠預金になった後でも預金を引き出すこと自体は可能ですが、金融機関への申請が必要です。
調査に時間がかかりますし、個別に費用請求を受けることもあります。
余計な手続きを防ぐためにも、預金は引き出しておくことをおすすめします。
休眠中に代表取締役が死亡または退任した場合には、銀行口座から預金を引き出せなくなります。
預金を引き出せるようにするためには、役員の変更登記をしなければなりません。
そして、変更登記には株主総会を開いて、代表取締役を選定する必要があります。
変更登記1件に対し、1万円〜3万円の登録料も求められます。
このように、代表取締役の変更にはかなりの手間がかかります。
必要な時に預金が引き出せないという事態にならないためにも、あらかじめ預金は引き出しておくと安心です。
会社を休眠させる場合、銀行口座の取り扱いには特に注意が必要です。
事業活動を一時停止しているとはいえ、会社は法的には存続している状態です。
銀行口座の預金をゼロにしておくことで、不必要な課税を避けることができ、決算の手間を省くことができます。
また、口座の私的利用の抑止力になるほか、代表取締役の死亡や口座の休眠など一定の事項が起こった際の煩雑な手続きを防ぐことにも繋がります。
休眠前にしっかりと手続きを行うとともに、銀行口座の預金は全て引き出しておきましょう。