東京弁護士会所属。新潟県出身。
破産してしまうかもしれないという不安から、心身の健康を損ねてしまう場合があります。
破産は一般的にネガティブなイメージですが、次のステップへのスタート準備とも言えます。
そのためには、法律上の知識や、過去の法人破産がどのように解決されてきたかという知識が必要です。
法人破産分野を取り扱ってきた弁護士は、こういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって納得のいく措置をとることができます。
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現在の日本経済において、中小企業を取り巻く環境は必ずしも万全ではありません。
そのため、これまで行ってきた事業を見直し、新たな事業に着手したいと考える会社もあるでしょう。
そのような取り組みを積極的に行う会社が利用できる補助金が、事業再構築補助金です。
事業再構築補助金とはどのようなもので、どういった会社が利用できるのか、確認していきましょう。
事業再構築補助金とは、思い切った事業の再構築を試みる中小企業に対して、その手助けをしてくれる経済産業省の補助金です。
経済産業省のパンフレットには、新分野展開や業態転換、事業・業種転換、事業再編などを行う企業を支援すると書かれています。
新型コロナウイルスの感染拡大により、これまでのビジネスモデルが破綻した業種では、新しい取り組みを行う際にも利用できます。
そのため、非常に注目度が高く、利用者も多い補助金の1つとなっています。
事業再構築補助金を申請して受け取ることができるのは、どのような会社なのでしょうか。
ここでは、事業再構築補助金の申請要件について確認していきます。
事業再構築補助金を受け取るためには、会社の売上が減少していなければなりません。
売上が減少しているため、事業再構築をしようとしているが資金が足りないために補助金を利用するのです。
具体的に、いつの売上と比較していつの売上がどれくらい減っている必要があるのでしょうか。
その要件は以下のようになっています。
○減少した売上高
2020年4月以降の連続する6か月間のうち任意の3か月の合計売上高
○比較する売上高
コロナ以前(2019年又は2020年1~3月)の連続する6か月間のうち任意の連続する3か月の合計売上高
○減少割合の要件
売上高が10%以上減少している
○減少した売上高
2020年10月以降の連続する6か月間のうち任意の3か月の合計売上高
○比較する売上高
コロナ以前(2019年又は2020年1~3月)の連続する6か月間のうち任意の連続する3か月の合計売上高
○減少割合の要件
売上高が5%以上減少している
要件1と2の双方を満たしていなければなりません。
事業再構築補助金を申請するためには、事業再構築に実際に取り組む必要があります。
具体的には、以下のような内容が事業再構築にあてはまります。
認定経営革新等支援機関と一緒に策定した事業計画がなければなりません。
事業計画は、実現可能なものでなければならず、合理的で説得力のある内容が求められます。
また、補助金額が3,000万円を超える場合は、金融機関も参加しなければなりません。
なお、事業計画の内容は、補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均3.0%以上の増加を達成する見込みが必要です。
それでは、実際に事業再構築補助金の申請を行うためには、どのような手続きが必要となるのでしょうか。
その流れに沿って、手続きの流れと必要書類を確認しておきましょう。
事業再構築補助金は、すべて電子申請システムで受付が行われます。
ここで用いられる電子申請は「jGrants」と呼ばれ、利用するためにはあらかじめIDを取得しておく必要があるのです。
なお、このIDの取得はgBizIDのホームページから書類を取得後、郵送で行います。
「GビズIDプライム」というアカウントを作成するためには、ホームページから取得した申請書と印鑑証明書が必要です。
郵送後2週間以内に審査が行われ、不備がなければアカウントが作成されます。
補助事業が事業再構築指針に示す「事業再構築」の要件にあたらなければ、この補助金を利用することはできません。
そのため、これから行おうとする取り組みが事業再構築にあてはまるのか、確認しておきましょう。
また、事業計画作成にあたっては、まずは会社自身で作成した事業計画がたたき台となります。
まずは会社としてどのような取り組みを行うのか、どのような計画を立てるのか、明確にしておく必要があります。
事業再構築補助金の申請を行う際には、必ず事前に事業計画を作成しなければなりません。
補助金の申請を行っても、必ず申請が通るわけではありません。
限られた補助金を他社と奪い合う形になることを想定して、できるだけ詳細な計画を策定するようにします。
以下の内容は特にポイントとなるため、必ず記載するようにしましょう。
事業計画の策定のためには、認定経営革新等支援機関と何度も話し合いを重ねることとなります。
打ち合わせを行い、会社の事業計画に対して認定経営革新等支援機関の理解を得られたら、文書発行依頼を行います。
依頼書や事業計画などの内容を確認してもらい、問題がなければ認定経営革新等支援機関に確認書を発行してもらいます。
事業再構築補助金の申請は、電子申請システムを利用しなければできません。
そのために、事前に(1)電子申請の準備を行う必要があるのです。
電子申請を行う際の入力については、電子申請システム操作マニュアルにしたがって行います。
認定経営革新等支援機関によっては代理申請を依頼できますが、別料金となることもあるため、事前に確認しておきましょう。
電子申請を行う際に必要となる書類は、以下のとおりです。
電子申請に必要な書類
この他、補助金の内容によっては賃金引上げ計画書、海外事業の準備状況を示す書類などが必要となります。
どのような枠で補助金を受けようとするのか、その内容を整理して、必要な書類を準備しておくようにしましょう。
事業再構築補助金を受ける際に、どれだけの補助金を受け取ることができるかは、その補助金の枠により異なります。
上限額と補助率で計算した金額のいずれか低い方が、実際の補助金の金額となります。
ここでは、その上限額と補助率について確認していきます。
事業再構築補助金の上限額は、【通常枠】の場合、従業員の人数により異なります。
(従業員数20人以下)100万円~4,000万円
(従業員数21人~50人)100万円~6,000万円
(従業員数51人以上)100万円~8,000万円
この他の枠については、以下のように定められています。
【大規模賃金枠】(従業員数101人以上)8,000万円超~1億円
【卒業枠】6,000万円超~1億円
【グローバルV字回復枠】8,000万円超~1億円
【緊急事態宣言特別枠】
(従業員数5人以下)100万円~500万円
(従業員数6人~20人)100万円~1,000万円
(従業員数21人以上)100万円~1,500万円
【最低賃金枠】
(従業員数5人以下)100万円~500万円
(従業員数6人~20人)100万円~1,000万円
(従業員数21人以上)100万円~1,500万円
補助率は、補助金の枠の種類の他、会社の区分によって定められています。
中小企業法に定める中小企業は原則として「中小企業」となり、業種ごとに資本金額や従業員数に違いがあります。
ただ、直近3年の平均課税所得金額が15億円を超える場合は、「中堅企業」となります。
【通常枠】
(中小企業者等)2/3、ただし6,000万円を超える部分は1/2
(中堅企業等)1/2、ただし4,000万円を超える部分は1/3
【大規模賃金枠】
(中小企業者等)2/3、ただし6,000万円を超える部分は1/2
(中堅企業等)1/2、ただし4,000万円を超える部分は1/3
【卒業枠】
(中小企業者等)2/3
【グローバルV字回復枠】
(中堅企業等)1/2
【緊急事態宣言特別枠】
(中小企業者等)3/4
(中堅企業等)2/3
【最低賃金枠】
(中小企業者等)3/4
(中堅企業等)2/3
事業再構築補助金の対象となるのは、具体的にどのような経費なのでしょうか。
その対象となるものを確認します。
建物を建設したり改修したりする費用の他、既存の建物の取り壊し費用なども対象となります。
補助事業のために使用する機械装置・工具器具・ソフトウェアの購入や製作・借用にかかる経費が対象となります。
また、機械装置などの改良・修繕、備え付けや運搬費用も含まれます。
補助対象事業を遂行するために必要となる知的財産権の導入に係る費用が対象となります。
おもに特許権・商標権などの使用料などが発生します。
補助対象となる事業を遂行するために、様々な専門家に依頼した際の費用が補助金の対象となります。
運搬料・郵送料や宅配料は、補助金の対象となる経費です。
ソフトウェアやサーバーを購入するのではなく、クラウドサービスを利用するという選択肢も増えています。
この場合、クラウドサービス利用料は補助金の対象となる経費に含まれます。
デザインや設計、機械装置の一部の製造・加工など、外部の業者に委託することがあります。
そのような委託費用は、補助金の対象となる経費に含まれます。
特許権などの取得に関する手続き代行費用や、外国特許出願のための翻訳料などが対象となります。
新事業の商品やサービスに関する広告の作成や、セミナー開催、展示会への出展に関する費用が含まれます。
補助対象となる事業を始めるために必要な教育訓練、講座の受講などに関する費用です。
このように様々な項目が補助金の対象となる一方で、人件費やパソコン・車両・デスクなどの購入費用、水道光熱費、商品の原材料費などは補助金の対象になりません。
中小企業が新たな事業を始めるためには、資金的にも人材的にも余裕がない場合が多いことでしょう。
そこで、今回ご紹介した事業再構築補助金のような補助金を、積極的に利用することを考えてみることをおすすめします。
新事業を始めるにあたって必要となる経費の多くが補助の対象となるため、取り組みやすいはずです。
会社を取り巻く環境の変化に柔軟に対応し、新たな事業を始めるきっかけとして活用していきましょう。