東京弁護士会所属。新潟県出身。
破産してしまうかもしれないという不安から、心身の健康を損ねてしまう場合があります。
破産は一般的にネガティブなイメージですが、次のステップへのスタート準備とも言えます。
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書籍:この1冊でわかる もめない遺産分割の進め方: 相続に精通した弁護士が徹底解説!
会社の事業再編を行う際の手法の1つに、会社分割があります。
多くの人にとってはなじみのない制度かもしれませんが、会社の事業を再構築するうえでは重要な制度です。
そこで、会社分割とはどのような制度なのか、事業分割との違いにも注目しながら解説します。
また、弁護士に依頼した場合の報酬の相場や、弁護士事務所を選ぶ際の注意点についても確認していきます。
Contents
会社分割とは、文字どおり会社が行っている複数の事業のうち、一部を分割することをいいます。
会社分割は、その承継先と対価を受け取るものの違いにより、全部で4種類に分けることができます。
吸収分割は、既存の会社に分割した事業を承継する方法です。
さらに、対価を受け取るものの違いから、分社型と分割型に区分することができます。
分社型吸収分割は、分割された事業の対価を分割会社が承継会社から受け取るものです。
一方、分割型吸収分割は、対価を分割会社の株主が受け取ります。
新設分割は、分割した事業を新たに設立した会社が承継する方法です。
こちらも同じように、分社型新設分割と分割型新設分割に分けることができます。
会社分割と同じように、会社の事業の一部を別の会社が承継する方法として、事業分割があります。
この事業分割は、事業を譲渡した会社の株式が変動することはなく、事業を承継する会社との契約で成立します。
これに対して、会社分割は組織再編行為と定められており、債権者保護手続きが必要とされています。
また、会社分割では従業員との雇用関係も承継されますが、事業分割の場合は個別に雇用契約を結ぶ必要があります。
さらに、会社が許認可を要する事業を行う場合、事業分割では新たに許認可を取得しなければなりません。
これに対して、会社分割の場合は許認可を承継できるものとできないものがあるため、事前の確認が不可欠です。
会社分割を行う場合、どのような費用がどれほどかかるのでしょうか。
ここでは、その費用の種類と金額について確認していきましょう。
会社分割を行う際には、法務局で登記しなければなりません。
登記を行う際には、法務局に定められた登録免許税を納める必要があります。
会社分割にかかる登録免許税の額は、分割会社、吸収分割の承継会社、新設分割の新設会社でそれぞれ異なります。
分割会社が納める登録免許税の額は、吸収分割・新設分割の違いに関係なく、一律3万円と決められています。
吸収分割の承継会社の資本金の額に変動がない場合は、登録免許税の額は3万円となります。
一方、吸収分割により資本金の額が増加する場合は、「資本金の増加額×0.7%」で計算します。
ただ、この計算の結果3万円に満たない場合は、登録免許税の額は3万円となります。
たとえば吸収分割により資本金の額が1,000万円増加した場合は、1,000万円×0.7%=7万円が登録免許税となります。
一方、資本金の額が300万円増加した場合は、300万円×0.7%=21,000円<3万円となるため、登録免許税は3万円になります。
新設分割の新設会社の登録免許税の額は、「資本金の額×0.7%」で計算します。
ただ、この計算の結果が3万円に満たない場合、登録免許税の額は3万円となります。
つまり、最低でも登録免許税として3万円が必要ということです。
会社が合併したり決算を行ったりした場合には、官報という国が発行する機関紙にその内容を掲載する必要があります。
この官報に掲載してもらうためには、公告費用を支払う必要があります。
官報の公告費用は、掲載する文字数や行数により金額が異なります。
会社分割に関する事項だけの公告を行う場合は、7~8万円程度となります。
また、あわせて決算公告も行う場合はさらに10万円ほど必要となり、全部で17~18万円程度が目安となります。
登記を自分で行うこともできますが、一般的には司法書士に依頼することが多いです。
特に会社分割の登記は複雑で自分で行うことは難しく、時間を無駄にしないためにも、専門家に依頼するのが無難です。
司法書士に依頼した場合の報酬額は依頼する事務所によって異なりますが、20~30万円程度と考えておきましょう。
会社分割の手続きを行う際、必ず弁護士に依頼しなければならないわけではありません。
しかし、会社分割は会社法にもとづく法律行為であり、法的に問題がないかを確認する必要があります。
また、第三者の立場から専門家としてのアドバイスをもらうことができれば、会社にとっては非常に有益です。
そこで、会社分割を行う際には、弁護士に相談し、あるいは弁護士に手続きを依頼して進めるのが賢明です。
この場合の報酬については、次に詳しく解説していきます。
弁護士報酬は、日本弁護士連合会による報酬規定をもとに計算されていました。
しかし、平成16年4月にその規定は廃止され、現在はそれぞれの弁護士が自由に報酬を決めることができます。
ただ、現在でも以前の報酬規定で弁護士報酬を計算している弁護士事務所も多くあるため、まずはその規定にのっとった金額を確認しておきます。
分割に関する報酬金額は、資本額もしくは総資産額のうち高い額または増減資額をもとに計算することとされています。
なお、分割の場合は200万円が最低金額とされています。
つまり、どれだけ規模の小さな会社分割であっても、200万円の弁護士費用が必要であるということになります。
現在は、弁護士報酬は一律でないため、この規定どおりに計算しているとは限りません。
その金額をホームページなどで公開している事務所もあるため、検索してみるといいでしょう。
会社分割の弁護士報酬の一例として、着手金50万円~、成功報酬50万円~というケースがありました。
この事務所では、遠方へ出張した際の日当や、交通費などの実費が別に計算されます。
そのため、旧規定の最低金額200万円より低くなる可能性もありますが、逆に高くなる可能性もあります。
それでは、会社分割を弁護士に依頼する際には、どのように弁護士事務所を選ぶといいのでしょうか。
ここでは、費用面の違いから発生する注意点について解説していきます。
大半の弁護士は、費用が他より安いからといって、その質が落ちるというわけではありません。
ただ中には、実績が少ない分、費用を他の事務所より安めに設定して、仕事を取ろうとしている弁護士がいるのも事実です。
注意しなければならないのは、ホームページで表示されている金額は最低限の金額であるということです。
案件の内容によっては、追加で報酬が発生することも考えられます。
そのような追加の料金についても、計算の根拠がしっかり明記されているかを確認しておきましょう。
会社分割など会社法に強い弁護士事務所に依頼する場合、その報酬が高くなる場合があります。
安心して仕事を依頼することができる一方で、その負担は決して少なくありません。
少しでも費用負担を減らすためには、会社側でできることを自分で行うようにしましょう。
たとえば、株主総会議事録などの書類の作成や、官報公告の手続きを会社で行うのです。
こうすることで、弁護士費用を抑えられる場合があります。
会社分割は、法律にもとづいた手続きが必要であり、要件を満たさなければ有効に成立しない可能性もあります。
そのため、1つ1つの過程を慎重に進めていく必要があります。
必ず事前に弁護士に相談し、アドバイスをもらいながら進めるようにしましょう。
また、会社分割を行う前に、そもそも会社分割を行うべきなのか、それ以外の選択肢がないのかも相談するようにしましょう。