東京弁護士会所属。
破産をお考えの方にとって、弁護士は、適切な手続きをするための強い味方になります。
特に、周りに相談できず悩まれていたり、負債がかさんでしまいそうで破産を考えていたりする方は、ぜひ検討してみてください。
会社の経営状態が苦しい場合、債務超過の状態に陥ってしまう場合があります。
債務超過になっているかどうかは決算書で簡単に確認できるため、債務超過となった場合はすぐに手を打つべきです。
ただ、経営状態が苦しいのに、決算書では債務超過になっていない場合もあります。
このような場合、実際に債務超過となっていないかを自分で計算しなければなりません。
実質債務超過にあるかどうかを確認する方法、そして債務超過を解消する方法について解説していきます。
Contents
大半の方は、債務超過という言葉は聞いたことがあり、それは会社にとって良くない状態だということはご存知でしょう。
ただ、債務超過とはどのような状態をいうのか、詳しく知っている方は意外に少ないかもしれません。
そこで、債務超過とはどのような状態かを解説します。
また、実質債務超過の考え方についても確認していきます。
債務超過とは、会社の保有する資産より会社が保有する負債の方が多い状態をいいます。
債務超過という文字どおり、会社の債務(負債)の方が財産(資産)を上回っている状態をいうのです。
債務超過になると、どのような問題があると考えられているのでしょうか。
それは、一言でいえば「お金が回らない」状態になっているのではないかと懸念される状態にあることです。
会社の資産には、現金や預金のほか、売掛金や未収入金、有価証券、土地や建物などの不動産などが計上されています。
このうち、現金や預金は、会社が支払いを行う時に自由に使うことができます。
また、売掛金や未収入金などは、数か月のうちに回収して現金や預金になることが想定されます。
有価証券は、売却する予定のあるものであれば、売却して現金化することができます。
不動産については、売却する予定はないかもしれませんが、いざという時に売却すれば現金化することが可能です。
このように、会社の資産はすべて、会社の負債を支払うために必要な現金や預金と同じように考えることができるのです。
債務超過の状態にある場合、現在保有している資産をすべて現金化しても、すべての負債を支払うことができない状態にあります。
そのため、会社が保有する負債の債権者は、会社が支払い不能となる前に現金で回収を急ぐこととなるかも知れません。
また、会社が新たに借入れをしようとしたり、新たな取引先と取引を開始したりしようとしても、断られてしまうかもしれません。
会社の決算書を見ると貸借対照表の資産の部と負債の部の金額を比較して、債務超過の状態にあるかどうかを判定することができます。
その時、経営状態が苦しいのに決算書上は債務超過とはなっていない場合があるかもしれません。
これは、決算書に計上されている金額は、現在の会社の財務状況を表しているとはいえない部分もあるために起こることです。
というのは、決算書に計上されている資産の額は、その資産を購入した時の金額だからです。
実際に資産を購入してから長い時間が経過すると、その価値が大きく変わっている可能性があります。
また、当初は資産としての価値があったものの、その価値がなくなってしまったものもあります。
そこで、現在の資産の価値を表す「時価」に資産の金額を置きかえて、債務超過になっていないかを判定する必要があるのです。
決算書上は債務超過でなくても、時価で判定すると債務超過になっている状態、実質債務超過といいます。
時価に置きかえる資産には、以下のようなものが考えられます。
売掛金・未収入金・貸付金 | 長期間にわたって未回収のままとなっている場合、そのまま回収できない可能性があります。 |
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棚卸資産 | 売れないまま不良在庫となっているものは、その金額を下げたり、その価値をゼロとしたりしなければならない場合があります。 |
有価証券・土地 | 現在の時価で評価額を計算し直す必要があります。 |
仮払金・前払費用・ソフトウェア等 | 売却したり現金を回収したりという資産としての価値はないものがあります。 |
また、負債についても決算書に計上されていないものが隠れている可能性があります。
たとえば、リース契約している場合、解約した場合にはその総額を支払う必要があるため、隠れた負債として考える必要があります。
決算書の内容から判定して債務超過の状態にあることがわかっても、それは会社の現状を反映したものとはいえません。
そのため、現在の会社の状態を知るためには、実質債務超過にあるかどうかを知る必要があるのです。
実質債務超過にあるかどうかを判定した場合、逆に債務超過でなくなる場合もあるかもしれません。
たとえば、購入した有価証券がその後大きく値上がりし、価値が大きくなっていることが考えられるためです。
債務超過にあるかどうかを調べるのは、新たに銀行や取引先と取引を開始するときが多いでしょう。
こういった場合には過去の会社の状況ではなく、現在の会社の状況を反映した実質債務超過にあるかどうかを説明する必要があるのです。
それでは、実際に実質債務超過となった場合、どのようなデメリットがあるのでしょうか。
実質債務超過となった会社に起こることにはどのようなものがあるのか、確認しておきましょう。
実質債務超過となった会社は、いずれ現金や預金が不足して、支払いが滞ってしまう可能性があります。
支払いが滞ってしまうと、債権者は債権の回収ができなくなり、多額の損失が発生してしまうのです。
そのため、銀行としては実質債務超過の状態にある会社に対しては、基本的に融資をしたくないと考えます。
新規事業で収益性が大幅に改善するような見込みがなければ、実質債務超過の会社が融資を受けることは難しいのです。
会社が新しい事業を始めたり、新たな商品を取り扱うようになったりした場合、新しい事業者との取引が始まることがあります。
新しい事業者との取引を開始する場合、相手方から決算書の提出を求められる場合があります。
決算書の提出が求められるのは、おもに新たな仕入先から仕入を始める場合です。
1か月間の仕入金額を翌月に支払うという買掛での取引ができるのは、相手方からの信用があるからなのです。
しかし、実質債務超過の状態では、相手からの信用は得られません。
そのため、取引をしてもらえなかったり、現金仕入れでの取引となってしまったりすることがあるのです。
実質債務超過となってしまった会社は、債務超過の状態を一日も早く解消する必要があります。
そこで、債務超過をどのように解消するのか、その方法について考えてみましょう。
会社が債務超過に陥るのにはいくつか原因が考えられますが、結局のところ、会社が利益をあげられていないことが一番の問題です。
そこで、会社の経営状態を改善することが求められます。
会社の経営改善を行って利益をあげることができるようにし、その利益により債務超過を解消することが一番理想的です。
ただ、赤字の会社が利益をあげるようになるのは、決して簡単なことではありません。
売上の金額を増やすか、費用を減らすかのいずれかを行う必要がありますが、どちらもすぐにできることではないのです。
また、仮に利益を出すことができるようになっても、債務超過を完全に解消するためには、長い時間がかかります。
すぐに債務超過を解消したいという場合には、経営改善を待っていられないかもしれません。
そういった場合には出資を募って増資を行い、債務超過を解消する方法があります。
増資を行うと、会社の資本金の額が増え、財務体質が改善します。
ただ、資本金の額が増えると会社の税負担が増える場合があります。
また、既存の株主以外の人が出資を行うと、新しい株主が増えることとなります。
新しい株主が増えると経営方針が対立して、これまでのような経営ができなくなる可能性もあるので注意しましょう。
会社の債務を直接的に減らす方法として、債権者に債務免除をしてもらう方法があります。
ただ、外部の債権者に債務免除を依頼しても実現する可能性はほとんどありません。
経営者やその親族から借入を行っている場合に、その債務を減額してもらうことができるかどうか、検討してみましょう。
債務免除を行った場合、会社には債務免除益という利益が計上されます。
そのため、場合によっては多額の法人税が発生する可能性があります。
債務を減額しても税金が発生して、結局お金が足りなくなるということのないよう、あらかじめよく検討する必要があります。
会社が有する借入金の中には、経営者やその親族から行った借入があるかもしれません。
この借入について、債務免除ではなく資本金に振り替えるのがDESと呼ばれる方法です。
資本金に振り替えることで、債務の返済を行う必要がなくなるのです。
債務免除とは違い、多額の債務免除益が生じないことから、法人税の額が発生することはありません。
ただ、増資したのと同じであるため、その後は毎年法人税の負担が増える可能性があることは事前に検討しておくようにしましょう。
赤字が何期も続いているような会社は、資金繰りが苦しい状態になっている可能性があります。
そのような場合は、会社の決算書を確認して債務超過になっていないか確認しましょう。
また、債務超過が疑われる場合には、資産の中身を確認して、実質債務超過となっていないか確認しましょう。
債務超過となっている場合は、銀行からの融資を受けようとしても、融資が受けられない可能性があります。
この場合、債務超過を解消することを優先すべきなので、どのように債務超過を解消するのか、その方法について検討しましょう。