定款認証とは?費用や手続きの流れ、2024年の最新動向などを解説!
ベンチャーサポート行政書士法人代表行政書士。
東京都行政書士会 中央支部所属(登録番号:07080055)
1980年生まれ、山形県出身。
都内にある行政書士法人での勤務経験を経て、2014年1月ベンチャーサポート行政書士法人を設立。
PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-hon
会社を設立するには、会社の基本ルールを定めた「定款」を作成しなければなりません。さらに、持分会社(合同会社など)以外の会社設立では、定款認証という手続きも必要になります。
定款認証とは、定款の正当性を証明するための手続きのことです。公証役場という役所で、法務のエキスパートである公証人によって行われます。
会社設立のなかでも最も件数の多い株式会社の設立では、定款認証が不可欠です。この記事では、定款認証の概要や手続きの流れ、最新の動向などをわかりやすく解説します。
定款認証とは「定款の正当性を証明する手続き」
定款認証とは、定款の正当性を証明する手続きのことです。ただ、ひと言で「定款の正当性を証明する」といっても、手続きのイメージが湧かない人も多いでしょう。
ここでは、そもそも定款には何を記載するのか、定款認証とはどこで誰が何をすることなのかを解説します。
そもそも定款には何を書くの?
株式会社や一般社団法人などを設立する場合、定款の作成だけでなく定款の認証の手続きも必須になります。
そもそも定款とは、法人を運営していくうえでの基本的な規則をまとめた書類のことです。一般に、定款には次の3つの事項を記載します。
- 絶対的記載事項
- 相対的記載事項
- 任意的記載事項
絶対的記載事項
絶対的記載事項とは、定款に必ず記載しなければならない事項のことです。以下の5項目が絶対的記載事項にあたります。
- 商号(会社名)
- 事業目的
- 本店(本社)所在地
- 設立時の出資額またはその最低額
- 発起人の氏名と住所
これらの事項に書き漏らしがあると、定款全体が無効になってしまいます。定款の作成にあたり、絶対的記載事項には特段の注意が必要です。
相対的記載事項
相対的記載事項とは、定款に記載しないとその効力が認められない項目のことです。株式の譲渡制限、現物出資する財産などが相対的記載事項にあたります。
たとえば、設立する会社を非公開会社(すべての株式に譲渡制限を行う会社)とする場合、株式の譲渡に会社の承認が必要であるという旨を定款に明記しなければなりません。
任意的記載事項
任意的記載事項とは、記載してもしなくてもよい自由な項目のことです。事業年度や役員の人数、公告の方法などが任意的記載事項に該当します。
任意的記載事項は自由度の高い項目ですが、変更時には株主総会などの手続きが必要になります。あとで余計な手間を増やさないためにも、他の事項と同様、慎重に検討すべき項目です。
定款は公証役場で認証してもらう必要がある
先述のとおり、持分会社(合同会社など)を除いたすべての法人の設立には「定款認証」が必要です。さまざまな記載事項をまとめたあと、管轄の公証役場に在籍している公証人から認証を受けなければなりません。
公証役場は、公証人が業務を行う事務所のことで、全国に約300カ所あります。役場と銘打ってはいますが、すべての市区町村にあるわけではないため注意しましょう。
また、公証人とは、法務大臣からの任命を受けた、高度な法的知識と豊富な法務経験を持つ公務員の一種です。かつて裁判官や検察官、弁護士だった人が従事しています。
その公証人が「定款の内容や体裁に問題がないか」を確認するプロセスが定款認証になります。正当な手続きによって定款が作成されたことを公証人が証明してくれるわけです。
具体的な手続きは後述しますが、定款認証の全体像は「公証役場で公証人に定款をチェックしてもらい、認証文が付いた定款を返却してもらう」という流れになります。
定款の認証へ向けた事前準備
定款認証を受けるには事前準備が必要です。定款の作成はもちろん、いくつかの必要書類を用意しなければなりません。
ここでは、定款認証へ向けた事前準備について解説します。
会社の基本事項を決める
定款には、商号(会社名)や本店所在地などの絶対的記載事項をはじめ、会社の基本情報をさまざま記載する必要があります。会社設立の第一歩として、以下のような項目をまとめていきましょう。
- 商号
- 本店所在地
- 事業目的
- 資本金の額
- 役員の構成
- 会社設立日
- 事業年度 など
なお、記載事項のなかには制限や注意点がある項目も存在します。「商号に使用できない文字がある」や「本店所在地は最小行政区画までにとどめるほうがよい」などがその例です。
会社の基本事項は、個々の決まりや慣例などに注意しながら決めていく必要があります。
必要書類をそろえる
会社の基本事項をまとめたら、認証手続きに必要な書類を準備します。具体的な書類名は下表のとおりです。
必要書類 | 概要・備考 |
---|---|
定款 | 印刷・製本した3部を提出する(書面認証の場合)。 |
印鑑証明書(印鑑登録証明書) | 押された印鑑が実印であることを証明する書類。発起人全員分の証明書(発行から3カ月以内)が必要。 |
実質的支配者となるべき者の申告書 | 経営を実質的に支配できる人が暴力団などの反社会的組織と無関係であることを申告する書類。 |
委任状 | 代理人が手続きをする場合に必要な書類。 |
発起人とは、株式会社の設立を企画し、出資や各種手続きを行う人のことです。以降では、株式会社の定款認証を想定して解説を進めていきます。
まずは、上記の必要書類について詳しく見ていきましょう。
定款(3部)
定款認証にあたり、定款は3部作成します。それぞれ「公証役場への提出用」「会社での保存用」「法務局への登記申請用」です。
なお、定款認証には「定款の原案の事前確認」というプロセスがあります。体裁を完全に整えた定款を3部作成するのは、公証人の事前チェック後です。
発起人の印鑑証明書
定款には、発起人の実印(市区町村の役所に登録してある印鑑)を押します。
印鑑証明書(印鑑登録証明書)とは、押された印鑑が実印であることを証明する書類です。また、定款に記載された発起人の氏名・住所の正確性の確認にも利用されます。
印鑑証明書の有効期限は、発行から3カ月以内です。発起人が複数名いる場合には、全員分の印鑑証明書が必要になります。
実質的支配者となるべき者の申告書
「実質的支配者となるべき者の申告書」とは、経営を実質的に支配できる人が暴力団などの反社会的組織と無関係であることを申告する書類です。
実質的支配者は、おもに株式の保有割合で決定されます。たとえば設立する会社の50%を超える株式を持つ個人は、実質的支配者の代表例です。
参考:日本公証人連合会「Q4. 実質的支配者とは、どのような者を指すのですか。」
参考:日本公証人連合会「実質的支配者となるべき者の申告書(株式会社用)」(PDF)
委任状
発起人自身が公証役場に行けない場合、委任状を作成することで代理人に手続きを任せることができます。
委任状が必要になるのは、第三者に委任する場合だけではありません。たとえば、3名いる発起人のうち1名が手続きに同行できないケースでも、出頭する発起人を代理人とする委任状が必要です。
なお、発起人でない者に手続きを委任する場合、代理人の身分証明書も必要になります。
参考:日本公証人連合会「委任状(紙定款 個人 複数用)」(PDF)
定款認証にかかる費用
すべての必要書類をそろえたら、定款認証の準備はほぼ完了です。最後に、収入印紙や手数料の準備を行いましょう。
定款認証にかかる費用をまとめると、下表のようになります。
用途 | 費用 |
---|---|
収入印紙代 ※電子定款の場合は不要 | 4万円 |
認証手数料 ※合同会社の場合は不要 | 3~5万円 |
謄本手数料 ※1ページあたり250円 | 約2,000円 |
収入印紙代4万円
紙の定款を作成する場合、収入印紙代として4万円が必要です(電子定款の場合は不要)。
収入印紙はあらかじめ郵便局などで購入しておきましょう。準備する定款は3部ですが、収入印紙を貼るのは1部のみです。
認証手数料3~5万円
定款の認証には、認証手数料がかかります。株式会社の場合、その金額は3~5万円です。認証手数料は資本金の額によって変わってきます(下表)。
資本金の額 | 認証手数料 |
---|---|
100万円未満 | 3万円 |
100万円以上300万円未満 | 4万円 |
300万円以上 | 5万円 |
謄本手数料2,000円前後
登記申請用に提出した定款は「謄本」として返却されます。この謄本の交付にかかる費用が謄本手数料です。
謄本手数料は1ページあたり250円で、定款のページ数によって金額が変わります。1部の相場としては2,000円程度が一般的です。
電子定款の場合、紙の定款の謄本交付にあたる手続きに「同一の情報の提供」があります。手数料は700円(書面交付の場合は「700円+20円 × 枚数」)です。また、同一の情報の提供を請求するには「電磁的記録の保存(手数料300円)」も必要になります。
定款認証の流れ
事前準備が整ったら、いよいよ定款認証の手続きに入ります。手続きの流れは、紙の定款の場合と電子定款(PDF化した定款)の場合とで異なるため注意が必要です。
とくに電子定款の認証手続きは、迅速な会社設立を促進すべくたびたび改善されています。従来の電子定款の認証は準備するものが多く、初めて会社設立する人にとっては敷居の高い手続きでした。しかし、今後は電子定款で手続きを行うハードルも低くなるでしょう。
ここでは、紙の定款の場合と電子定款の場合に分けて、定款認証の流れを解説します。
紙の定款の認証手続きの流れ
まずは、紙の定款の認証手続きの流れを見ていきます。全体の流れは、次の3ステップです。
- 定款の原案を事前にチェックしてもらう
- 管轄の公証役場に予約の連絡をする
- 定款認証を受ける
以下、それぞれのステップについて解説します。
1.定款の原案を事前にチェックしてもらう
定款の内容に大きな不備があると、予定した日に認証が完了しない事態も起こり得ます。このようなロスが発生しないよう、公証役場は「公証人による定款案の事前チェック」を実施しています。
事前チェックの方法は公証役場によってさまざまです。たとえば、メールやFAXで定款の原案を送信して確認してもらう方法などがあります。このとき、先述の「実質的支配者となるべき者の申告書」も定款案とあわせて提出するのが一般的です。
具体的な事前チェックのやり方は、それぞれ管轄の公証役場に確認しましょう。
2.管轄の公証役場に予約の連絡をする
定款案に大きな不備がないことを確認できたら、管轄の公証役場に予約を入れます。電話での連絡や予約申込フォームの利用など、予約方法は公証役場によってさまざまです。
原則として、予約をしていないと定款認証を受けることはできません。また、必ずしも指定どおりの日時に予約できるとも限りません。予約の連絡は、時間に余裕があるうちに行いましょう。
3.定款認証を受ける
最後のステップは「定款認証を受ける」です。予約した日時に公証役場へ出向き、定款や印鑑証明書などの必要書類を提出します。手数料の支払いも窓口で対応しています。
定款認証は、発起人または代理人の面前で行われます。定款の内容や体裁に問題がないかを公証人が確認し、認証文が付された定款を2部返却してくれるという流れです。
誤字脱字のような軽微な修正点が見つかった場合、この段階での訂正は許されます。万が一に備えて、定款の最終ページに発起人全員分の捨印を押しておくとよいです。
とくに問題がなければ、定款認証は20~30分程度で完了します。
電子定款の認証手続きの流れ
続いて、電子定款の認証手続きの流れを見ていきます。全体的な流れは、次の4ステップです。
- オンライン申請システムや専用ソフトの準備をする
- 作成した定款の事前チェックを受ける
- 申請用総合ソフトで面前審査を申請する
- ウェブ会議で審査・認証を受ける
以下、それぞれのステップについて解説します。
1.オンライン申請システムや申請用総合ソフトの準備をする
電子定款の認証手続きには、法務省が提供する登記・供託オンライン申請システム「登記ねっと 供託ねっと」への登録が必要です。また、同システムからダウンロードできる「申請用総合ソフト」の準備も行います。
「申請用総合ソフト」は、オンライン申請システムで取り扱うすべての手続きを行うソフトウェアです。
なお、電子定款の作成には、日本公証人連合会の「定款作成支援ツール」を使用するのも1つの手です。これを使うと、後述の「48時間処理」などのメリットを受けられる場合があります。
2.作成した定款の事前チェックを受ける
紙の定款と同様、電子定款についても事前の確認が必要です。作成した定款のデータをメールで送信し、公証人による事前チェックを受けます。
「実質的支配者となるべき者の申告書」をあわせて提出する点も、紙の定款の場合と同様です。
3.申請用総合ソフトで面前審査を申請する
事前チェックが完了したら、申請用総合ソフトを使って面前審査を申請しましょう。面前審査は原則、ウェブ会議によって行われます(来所を希望する場合にはその旨を記載した申出書の提出が必要です)。
申請後、公証役場と面前審査の日程調整を行います。日程が決まったら、当日までに認証手数料の支払いを済ませなければなりません。支払いにはクレジットカード決済またはインターネットバンキングが利用可能です。
4.ウェブ会議で審査・認証を受ける
事前に送られてくるウェブ会議用のURLをクリックすると、公証人による面前審査がスタートします。審査では身分証明書の提示が求められるため、あらかじめ準備しておきましょう。
面前審査では、定款どおりの会社を設立して活動する意思、発起人として法的責任を負う認識などを確認したうえで認証の可否が判断されます。
認証されると、オンライン申請システムを介して認証済みの電子定款のデータが送られてきます。これにより電子定款の認証手続きは完了です。
定款認証の完了後にやること
定款認証は大変な手続きですが、会社設立という広い視野で見るとまだまだ道半ばです。定款認証の完了後も、やるべきことは多くあります。
ここでは、定款認証が終わったあとに行うべき手続きについて解説します。代表的な手続きは、以下の3点です。
- 資本金を払い込む
- 法務局で登記申請をする
- 各所に届出を行う
資本金を払い込む
定款認証を終えたら、発起人の個人口座に資本金を払い込みます。払い込む金額は、定款に記載した資本金額です。
なお、会社名義の銀行口座は次の「登記」の完了後でないと開設できません。振込先はあくまで個人の口座である点には注意が必要です。
法務局で登記申請をする
会社設立の最終ステップが「法務局への登記申請」です。法人登記(会社の情報を法務局に登録する手続き)を行うことで、会社設立が完了します。
登記申請では、定款認証以上に多くの書類を準備しなければなりません。株式会社を設立する場合、以下のような書類が必要になります。
- 会社設立登記申請書
- 認証が完了した定款の謄本
- 発起人決定書(発起人の同意書)
- 就任承諾書
- 印鑑証明書
- 払込証明書(払込みを証する書面)
- 印鑑届書
- 印鑑カード交付申請書
- 登記すべき事項を記録した別紙または電磁的記録媒体 など
これらに加え、登記申請にかかる費用(登録免許税など)の準備も必要です。とくに大きな出費である登録免許税は、株式会社の場合だと最低15万円かかります。
自身の状況に合った書類を把握するには、法務局のWebサイトを確認するとよいです。また、必要に応じて司法書士などの専門家に相談するのも有効でしょう。
なお、法人登記の流れや費用については以下の記事でも詳しく解説しています。適宜ご参照ください。
各所に届出を行う
法人登記が完了したら、晴れて会社設立の完了です。ただ、このあとにも税務署や年金事務所などに多くの届出を提出する必要があります。とくに重要な書類は、下表のとおりです。
提出書類 | 提出先 |
---|---|
法人設立届出書 | 税務署 |
青色申告の承認申請書 | |
給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書 | |
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 | |
法人設立・設置届出書 | 都道府県税事務所 |
市町村役場 | |
健康保険・厚生年金保険 新規適用届 | 年金事務所 |
健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届 |
これら書類のほとんどには、提出期限があります。定款認証後のみならず、会社設立後にも重要な手続きが多く控えているわけです。
定款認証の最新情報
ここまで、定款認証の概要や手続きの流れ、認証の前後にやるべきことについて解説してきました。初めての会社設立ではとくに戸惑いやすい定款認証ですが、大枠のイメージはつかめたのではないでしょうか。
ただ、先述のとおり、定款認証の手続きは折にふれて効率化やコスト削減のために改善されています。ここでは、定款認証(とりわけ小規模な会社をつくる際の定款認証)の最新情報を確認していきましょう。
専用ツールを使えば48時間以内に手続きが完了する?
日本公証人連合会のWebサイトでは、定款の作成・認証をスムーズにするための「定款作成支援ツール」が公開されています。
2024年1月10日からは、東京都と福岡県の公証役場を対象に、定款作成支援ツールを使用した場合の定款認証手続きを48時間以内に完了させる取り組みが開始されました。
ここでの48時間の範囲は、定款の事前チェックから定款認証の完了までを指します。この「48時間処理」は、利用状況を踏まえつつ順次拡大していく予定です。
参考:日本公証人連合会「スタートアップ支援のため、定款認証に関する新たな取組を開始します。」
2024年度中に認証手数料が1万5,000円になる?
株式会社の場合、定款認証の手数料は3〜5万円です。2021年までは一律5万円でしたが、2022年1月より資本金の額に応じた3〜5万円に改定されました。
政府は、この最低額3万円を、2024年度中に半額へと引き下げることを検討しています。今後、資本金100万円未満の株式会社を設立する場合、定款の認証手数料が1万5,000円になる可能性があるというわけです。
小規模の会社設立を考えている人は、スタートアップ支援に関する制度改正の動向には常に目を向けておく必要があります。
定款認証で迷ったら専門家に相談しよう
定款認証は、定款の正当性を証明してもらう手続きで、公証人とやり取りをしながら進めていく必要があります。
また、定款認証の手続きは、紙の定款を作成する場合と電子定款を作成する場合とで異なります。
紙の定款を認証してもらうには、管轄の公証役場へ直接出向くことが必要です。電子定款の認証では準備すべきものが増えますが、政府のさまざまな取り組みによって少しずつ手続きのハードルは低くなっています。
とはいえ、定款認証の前後にもやるべきことは多く、初めての定款認証をスムーズに進めるのは簡単ではありません。限られた時間を有効に使いながら円滑に手続きを進めるためには、行政書士などの専門家のサポートを検討するのもよいでしょう。
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