最終更新日:2022/6/7
白色申告ではどこまでが経費となる?青色申告との違いと合わせて解説
ベンチャーサポート税理士法人 税理士。
大学を卒業後、他業種で働きながら税理士を志し科目を取得。
その後大手税理士法人を経験し、現在に至る。
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この記事でわかること
- 白色申告の概要がわかる
- 白色申告での経費にはどんなものがあるかわかる
- 経費にできるもの、私費となるものの違いがわかる
個人事業主やフリーランスとなって、確定申告を行わなければならないとき、青色申告と白色申告のうち、どちらかを選ぶことになります。
税務署へ開業届を提出する際に、青色申告を選ぶ場合は、青色申告承認申請書を合わせて提出します。
青色申告承認申請書は後日提出とすることもできますが、基本的には開業届の提出時点で、青色か白色かを選ぶ必要があります。
ふたつの申告の違いは「青色申告は得だけど難しそう」「白色申告は簡単」と認識されていることも多いですが、現在では一概にそうとは言えません。
会計ソフトの発達に伴い、帳簿付け自体はとても簡単になってきているからです。
ここでは、白色申告の概要と経費にできるもの、できないものなど、青色申告との違いを交えながら説明していきます。
目次
白色申告とは?概要についておさらい
確定申告の際に青色申告する場合は、事前に「青色申告承認申請書」を税務署へ提出します。
この青色申告承認申請書を提出せずに確定申告するときは、すべて白色申告になります。
つまり白色申告は、自分で選択する必要なく、何もしなければ白色申告になるということです。
白色申告は、青色申告すれば受けられる青色申告特別控除などの特典はありませんが、単式簿記という比較的簡単な記帳で所得と税額を計算して申告することができます。
提出書類は、どちらも「確定申告書B」が必要で、白色は「収支内訳書」、青色は「青色申告決算書」が別途必要となります。
白色申告で経費とされるもの
ここでは、白色申告において経費にできるものを説明していきます。
一部、青色申告では経費にできても、白色では経費にできないものもありますが、ほとんどは白色、青色共通となっています。
交通費
事業のために使った費用であることが必要です。
この後の経費に関しても、業務のためではなく、私用で使ったものは経費として計上できませんので、ご注意ください。
交通費は、電車・バスの運賃以外にも、駐車料金、有料道路の通行料、宿泊代なども経費計上できます。
通信費
事業で使った電話代やインターネット料金です。
自宅事務所等で、電話やインターネットを私用としても使っている場合は、何割を私用で使用しているかを計算し、経費から差し引く必要があります。
運送費・梱包資材
商品発送時の宅配便の配送料や、郵送料、また梱包するために使用する段ボール箱やテープ、緩衝材などの梱包部材も経費です。
接待飲食費
取引先との飲食代は経費計上できます。
消耗品費
文房具やコピー用紙などの事務用品は消耗品費として経費計上します。
机や椅子といったオフィス家具のようなものは、一見「消耗しないから消耗品費ではない?」と考える方もいますが、金額10万円未満であれば、消耗品費で計上します。
自動車関連費用
事業用で使う自動車に関する費用は経費に計上できます。
もし、自家用として兼用している自動車の場合は、その割合で経費から差し引きます。
事業についての保険料
商品や備品等に関する損害保険料や、事業用車のための自動車保険料は、経費になります。
事業に関連した保険料のみが経費計上されますので、事業者自身の生命保険料などは経費に入れることはできません。
書籍や参考資料代など
事業に関連しているものであれば、書籍代や新聞代などを経費とすることができます。
私用で読む小説や映画代などは、基本的に経費計上できません。
配偶者や親族などの給与
事業主の配偶者や親族が事業に従事している場合、これらの人を事業専従者と呼びます。
白色申告の場合、事業専従者へ支払った給与について、配偶者の場合86万円、配偶者以外の親族の場合50万円を上限に経費とすることができます。
この事業専従者控除を受けるための事前の届出書の提出は不要です。
ただし、この白色申告の事業専従者控除を利用するためには条件があります。
- (1) 申告者の事業に次の要件すべてに該当する事業専従者がいること
- ・申告者と生計を同じくする配偶者または親族。
- ・申告する年度の12月31日現在で年齢15歳以上。
- ・申告年度のうち6ヵ月を超えて事業に専ら従事している。
- (2) 確定申告書に、この控除について必要な事項、金額を記載すること
こちらの事業専従者控除ですが、白色申告の場合、経費にできる金額には上限が設定されていますが、青色申告の場合は、「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出すれば全額を経費として計上できます。
経費と私費はどのように分けられるか
生活費などの事業と関係のない私費と経費が混在しているような場合は、注意が必要です。
例えば、自宅兼事務所として自宅の一部を事業用に使用している場合、家賃全部を経費とすることはできません。
事業で使用している部屋の面積を、自宅の合計床面積で割って比率を出すなど、客観的な基準が必要とされます。
事業用経費とできるのは、この比率の部分のみです。
ですから、自宅家賃が月20万円で、事業用として自宅全体の約30%を使用している場合は、家賃の30%である6万円を経費として計上することができます。
経費にあたるかどうかは、「事業に関連しているか」を基準に判断されます。
例えば建築士が、建築デザインを勉強するために購入した「近代の建築」という書籍は経費となりますが、自身の趣味の「釣りマガジン」を購入したというような場合は、経費に計上することはできません。
また、事業主の給料、所得税、住民税、税金の滞納延滞金、事業主の健康保険料、健康診断料、各種の罰金なども経費とすることができません。
これらは、例え事業と関連していると主張したとしても経費計上できませんので、ご注意ください。
説明できないものは経費に計上しない
経費にできるかどうかは「事業に関係した支払いか」がポイントになります。
しかし「これは事業で使っているけど、私的な利用でもある」という微妙な支払いがあるかもしれません。
そこで経費にするかどうかの判断は、「自分で説明できるかどうか?」になります。
例えば毎朝コーヒーを飲んで仕事のスイッチを入れている人は「仕事に集中するためにコーヒーを飲んでいるから経費だ」と説明できるかもしれません。
このように自分の中で経費としての説明ができるかどうかは重要なポイントになります。
経費としての正当性を説明できるのであれば、経費として計上もできるでしょう。
そのため「これは経費にならないけど、とりあえず経費にしよう」と説明できない支払いを計上するのは危険です。
経費としての説明ができなそうな支払いに関しては、経費計上しないように気をつけてください。
専門家のアドバイスに従おう
「経費として計上できるか?」という疑問に対して、間違いないアドバイスをくれるのは専門家の税理士・税務署のみです。
周りに自営業・法人経営者がいると、確定申告の手続きについてアドバイスをくれるかもしれません。
専門家ではない人のアドバイスに従うのは危険です。
なぜならアドバイスされたことが税務的に間違っている可能性があるからです。
過去に確定申告をして「自分はこれを経費として計上して問題なく受理された」という人がアドバイスをくれるかもしれません。
確定申告が受理されたからといって、正しい申告ができるとは限りません。
間違って申告がスルーされているだけで、数年後の税務調査が入る可能性もあります。
確定申告でミスをしたくない人は、専門家にアドバイスに従いましょう。
白色申告と青色申告の経費の違いとは
白色申告と青色申告の場合の経費の内容としての違いは、大きいところで事業専従者控除の金額の差です。
青色申告の場合は、上限なく全額を控除できますので、家族で事業を経営している方にとっては、とても有利です。
そのほか、白色申告と青色申告では、経費の取扱い、記帳方法などの違いがありますので注意が必要です。
確定申告の際、青色申告では「青色申告決算書」として損益計算書、貸借対照表を作成し提出する必要がありますが、白色申告では「収支内訳書」の作成、提出という違いがあります。
青色申告の損益計算書では、収支内訳書と比較して作成する上で、下記のような特徴があります。
- ・記入する項目が多い(製造原価、貸倒引当金の繰入計算など)
- ・月毎の売上明細が必要となる
また、これらの書類を作成する上で管理する帳簿にも違いがありますので、ご注意ください。
以前は、白色申告の場合、「事業所得」「不動産所得」「山林所得」という最大3種の所得合計額が300万円未満の場合は、記帳を行う義務はありませんでした。
ですが、2014年以降、300万円未満の事業者であっても、記帳を行うことが義務となりましたので、白色申告の書類作成がとても簡単で楽というわけでもなくなりました。
白色申告と青色申告で悩んだら
「確定申告するなら白色・青色のどちらがいいのか?」と悩んでいる人もいるでしょう。
できれば青色申告の方がおすすめです。
なぜなら青色申告の方が節税効果が大きく、うまく使えば支払う税金を抑えられるからです。
青色申告は手続きが難しいイメージがあるかもしれませんが、会計ソフトを使えば簡単に終わります。
青色申告は思ったほど手続きが難しくなく、節税などのメリットが多いため、おすすめです。
ただし事前に青色申告承認申請書の提出が必要なので、注意してください。
青色申告承認申請書の詳細については、下記の記事をご覧ください。
まとめ
個人事業主やフリーランスとして確定申告する場合、青色申告、白色申告のいずれかを選択することができます。
配偶者や家族が従業員として働いている場合は、受けられる控除に違いはありますが、それ以外では、白色申告を選んだとしても、経費に対する考え方に大きな違いはありません。
経費計上の際は、事業用で使用した経費と、生活費など私用で使用した私費との違いを理解しましょう。
青色申告、白色申告どちらの場合でも、適正な経費計上を行うよう、ご注意ください。