最終更新日:2024/5/29
外国人が日本で会社設立するときの必要書類|手続きの流れと条件を解説
ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネルを運営。
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書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック
この記事でわかること
- 外国人が日本で会社設立するときに必要な書類
- 外国人が日本で会社を設立するときの条件や注意点
外国人が日本国内で会社を設立する場合、日本人が設立する場合とは異なるポイントがあります。
とくに外国人が発起人となって会社を設立する場合、いくつかの注意点もあるため、事前に確認しておきましょう。
この記事では、外国人が日本で会社設立をするための手続きや必要書類について解説します。
外国人が日本で会社を設立するパターン
外国人が日本で会社を設立する場合、次のようなパターンが考えられます。
- ① 発起人が外国人または外国法人で、取締役も外国人となる場合
- ② 発起人が外国人または外国法人で、取締役は日本人となる場合
- ③ 発起人が日本人または日本法人で、取締役が外国人となる場合
会社設立においてとくに重要な役割を果たすのが「発起人」です。
発起人とは、会社設立の際、資本金の出資や設立手続き(定款の作成など)を行う人のことをいいます。
一方、会社設立のあとに会社の経営に大きく関わってくるのが「取締役」です。
取締役には、代表取締役を選定・解任したり、設立手続きが正しく行われているかを調査したりする役割があります。
外国人が日本で会社を設立する場合、外国人の取締役がいるというケースもあるでしょう。
そういったケースでは、発起人が外国人である場合とは区別して考えるほうがよいかもしれません。
外国人が日本で会社設立する流れ
会社設立には、多くの手続きが必要です。
ここでは、会社設立の手続きの流れを解説します。
外国人が日本で会社設立する手続きの流れ
- 1. 事前準備
- 2. 定款の作成
- 3. 資本金の払込み
- 4. 登記申請
- 5. 経営・管理ビザの取得
(1)事前準備
会社設立にあたっては、まず会社の種類を決めなければなりません。
その際、主に株式会社と合同会社のいずれかから選択することになります。
株式会社は、合同会社に比べて取引先や金融機関からの信用度が高いです。ただ、会社の設立費用が高く、手続きも多いというデメリットがあります。
合同会社の場合、設立にかかる費用は抑えられます。ただ、経営形態の認知度が低く、取引先からの信用や人材の募集などの面で苦労があるかもしれません。
会社の種類が確定したら、次は会社の基本的な内容を決めなければなりません。
必ず決めるべきなのは、商号(会社名)、事業目的、本店所在地、設立日と事業年度、機関設計、資本金です。
これらの情報は会社を設立する際に法務局で登記する必要があります。登記の変更には費用がかかるため、慎重に決めましょう。
また、会社の印鑑は登記申請で必要になるため、早い段階で作成しなければなりません。
代表者印(会社の実印)、銀行印、角印、ゴム印(住所印)をまとめて作成するようにしましょう。
(2)定款の作成
定款とは、会社の規則をまとめた書類のことです。会社の憲法と呼ばれるほど、会社にとっては重要な書類になります。
定款にはひな形があり、それを参考に誰でも定款を作成することが可能です。
ただ、必ず記載すべき事項などの細かい決まりもあるため、不安な場合は専門家に相談しましょう。
株式会社の場合、定款作成後は公証役場で認証を受ける必要があります。
一方、合同会社の場合は認証を受ける必要はないため、作成したら次の段階に進みましょう。
(3)資本金の払込み
会社設立のための資本金は、発起人の口座(合同会社の場合は代表社員の口座)に振り込みます。
注意点として、発起人の口座に直接入金(預入れ)すると誰からの入金なのかわからなくなるため、必ず「振込み」を行ってください。
入金後は通帳の表紙や該当ページなどのコピーをとって、払込証明書を作成する必要があります。
(4)登記申請
法務局に登記しなければ、会社は正式に設立されたことになりません。
必要書類をそろえて、会社の本店所在地を管轄する法務局で会社設立の登記を行う必要があります。
必要書類の詳細については、次の章で解説します。
(5)経営・管理ビザの取得
外国人が日本で会社を設立する場合、経営・管理ビザの取得が必要です。
入国管理局(出入国在留管理庁)へ経営・管理ビザを申請するときは、以下のような条件を満たしていなければなりません。
- 事業所や店舗が確保されている
- 資本金または出資額が500万円以上、あるいは2名以上の常勤職員を雇用している
- 事業に適正性・安定性・継続性があり、経営者本人の経営能力を証明できる
「技能」や「留学」などの在留資格の場合、会社設立は制限されてしまいます。必ず経営・管理ビザを申請してください。
なお、在留資格が「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」であれば、経営・管理ビザがなくても会社設立は可能です。
外国人が日本で会社設立するときの必要書類
会社設立に向けた手続きは多岐にわたります。また、多くの書類の準備が必要です。
ここでは、会社設立の必要書類とその取得方法を解説します。
設立登記の際に一般的に必要な書類
会社を設立する際の必要書類には、以下のようなものがあります。
- 登記申請書
- 定款
- 本店所在地決定書
- 就任承諾書
- 発起人・取締役の印鑑証明書またはサイン証明書
- 資本金の払込証明書
- 代表社印の印鑑届書
登記申請書
会社を設立する際、一般的に必要となる書類を確認していきます。
登記申請書とは、会社の基本事項を記載して法務局に申請する書類のことです。
会社の登記を行う際には、商号(会社名)、本店所在地、資本金の額など、多くの登記事項をまとめることになります。
登記申請書は、法務局の窓口またはWebサイトから入手可能です。
会社の種類によって使用する申請書は異なるため、間違えないようにしましょう。
定款
定款は、会社にとって極めて重要な規則をまとめた書類です。
株式会社の場合は公証役場で認証を受けているため、認証後の定款の謄本を取得しておきます。
合同会社の場合は認証を受ける必要がないため、書面で準備しておきましょう。
本店所在地決定書
本店所在地決定書は、会社設立時に決定した本店の所在地を証明する書類です。詳細な住所を定款に記載していない場合に作成します。
定款に記載する住所は、市区町村までにしておくのが一般的です。その区画内であれば、あとで本店を移転することになったときに本店移転登記が不要になるためです。
本店所在地を変更する可能性があるなら、本店所在地決定書を作成しておきましょう。
就任承諾書
就任承諾書とは、役員(取締役、監査役など)への就任を承諾したことを証明する書類です。
役員は、会社からの委任を受けて就任します。就任に承諾する旨を明らかにするため、就任承諾書は必ず作成しなければなりません。
日本居住の外国人が役員に就任する場合、「永住者」などの活動制限のない在留資格か、経営・管理ビザが必要になります。
一方、海外居住の外国人が役員に就任する場合、とくに在留資格は必要ありません。
発起人・取締役の印鑑証明書またはサイン証明書
会社を設立する場合、法務局へ登記申請をするときに取締役全員の印鑑証明書が必要です。
また、公証役場の定款認証では発起人の印鑑証明書が必要となります。
いずれも発行から3カ月以内が有効期限です。
日本で印鑑登録をしておらず、印鑑証明書を取得できないときは、サイン証明書で代用できます。
サイン証明書は、日本国内の大使館または本国の役所で取得可能です。国によって取り扱いが異なるケースもあるため、事前に問い合わせたほうがよいでしょう。
なお、本国に印鑑証明の制度がある場合には、本国の印鑑証明書を使用できます。
資本金の払込証明書
資本金の払込証明書とは、発起人の個人口座に資本金が払い込まれたことを証明する書類です。
払込証明書は設立時の代表取締役が作成者となり、払込み金額や設立時発行株式数などを記載します。
代表社印の印鑑届書
会社の実印である代表者印は、法務局に届出をして登録しなければなりません。
この印鑑登録の手続きを行うために、印鑑届書を提出します。
印鑑届書の様式は、法務局の窓口で交付してもらえます。また、法務局のWebサイトから事前に取得することも可能です。
外国人が日本で会社設立するときの注意点
外国人が日本で会社を設立する場合、取引する銀行によっては資本金の払込み口座に指定できないこともあるため注意が必要です。
発起人の口座は日本の銀行法に規定された銀行に限られる
会社設立にあたって必要な手続きの1つに、資本金の払込みがあります。
資本金を払い込む段階では会社の銀行口座を開設できないため、発起人の個人口座に振り込みます。
発起人が複数名いるときは、誰の口座に払い込んでも構いません。
振込みが完了すると会社の設立登記が可能になります。法務局に登記申請するときは、設立時の代表取締役が作成した払込証明書を提出してください。
なお、資本金を払い込む口座は、以下のいずれかに限定されます。
- 日本の銀行の本支店口座
- 外国銀行の日本支店口座
どの口座についても、日本の銀行法で規定された金融機関の口座であることが条件です。
代表発起人の口座が日本の金融機関の海外支店である場合
日本の銀行が海外におく支店の口座は、銀行法が規定する金融機関の口座にあたります。よって、資本金の払込みに利用することが可能です。
ただし、海外支店の口座の場合、取引される通貨が日本円でないかもしれません。
日本円以外の外貨建ての口座の場合、レートの証明が必要になります。別途、準備しておきましょう。
銀行法で規定された金融機関の口座を発起人が持っていない場合
日本の銀行法で規定された金融機関の口座を発起人が開設していない場合、以下のように資本金を払い込む方法もあります。
- 有効な口座を開設している協力者を探す
- 協力者が設立取締役となり、発起人から協力者へ払込みに関する権限を委譲する
- 協力者の口座に資本金を払い込む
- 発起人が経営・管理ビザを取得した後、協力者に退任してもらう
協力者の口座に資本金を払い込むときは、権限移譲を明らかにする必要があります。そのため、委任状を作成してください。
上記の方法を使えば、発起人が有効な口座を保有していなくても資本金の払込みができます。
日本の銀行法に規定された銀行口座を持っていない場合
有効な銀行口座を持つ協力者もいない場合、発起人か取締役の1人が口座を開設するしかありません。
外国人が日本の金融機関で口座を開設するには、次の条件を満たす必要があります。
- 仕事や留学のために日本に6カ月以上滞在している
- 住民票を取得している
発起人のなかで上記の条件を満たす人を探して、日本の金融機関で口座開設をしましょう。
外国人のみで行う日本での会社設立の条件に注意
経済活動のボーダレス化により、日本で外国人が会社を設立する機会は今後さらに増えると予想されます。
日本での会社設立をスムーズに行うために、口座開設などの手続きや、書類取得のポイントを確認しておきましょう。
とくに発起人や取締役が外国人のみの場合、預金口座の準備から手をつける必要があります。早めに準備することが大事です。
外国人が日本で会社設立をする場合、多くの特殊な手続きを乗り越えなければなりません。必要書類の作成などで困ったことがあれば、専門家に相談するのも有効です。
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