最終更新日:2020/6/24
法人設立に必要な期間はどのくらい?具体的な準備や手続きの費用と流れも紹介
この記事でわかること
- 法人の設立に必要な手続きや設立までにかかる時間が分かる
- 法人の種類やその手続きの違いを知ることができる
- 法人設立のタイミングにより消費税の納税に差が出ることが分かる
これから法人を立ち上げようとしている方の中には、法人設立がどれくらいの時間や作業が必要なのか分からず、不安を感じている人も多いと思います。
そこで、法人の設立に必要な手続きや、実際に設立するまでにかかる期間について解説します。
また、法人の種類による手続きや費用の違い、設立時期による消費税の納税の違いについても説明していきます。
目次
法人設立にかかる期間と手続きの種類
法人を設立する際に必要となる手続きには、どのようなものがあるのでしょうか。
実際に会社が設立されたといえるのは法務局での登記を行ったタイミングですが、それまでに多くの手続きが必要です。
その手続きの内容を最初から確認していきましょう。
法人設立の手続き⑴事前の準備
法人を設立する具体的な手続きに入る前に、その法人についてさまざまなことを決めておく必要があります。
決めなければならない事項は以下のとおりです。
①法人の名称(商号)
株式会社や合同会社といった会社の種類を必ず含めなければなりません。
有名な企業と同じ名前や真似したような名前は使えないことに注意しながら、覚えてもらいやすい名前にするのが良いでしょう。
②事業目的
法人がどのような事業を行って収益を得るのかを決めて、定款に記載します。
定款には事業目的をいくつも書くことができます。
今行っている事業だけでなく、これから行うかもしれない事業や興味を持っている事業についてもあわせて定款に記載できるように準備しておきます。
③本店所在地
法人として独立した事務所を持っている必要はありません。
自宅やレンタルオフィスでも問題なく法人を設立できます。
④事業年度
会社の決算を行う時期を自由に決めることができます。
この事業年度の決め方が、消費税の納税に関係する可能性があります。
詳しくは「法人設立日を決めておく税制上のメリットとは」を参照してください。
⑤資本金
資本金の額は1円でも良いこととされています。
ただし、その後の法人運営を円滑に行うためには、1円で起業するというわけにはいきません。
数百万円程度の資本金で開業できるようにしておけば、その後も大きな問題は生じないと思われます。
⑥出資者(株主)
通常は、個人事業を行っている人が全額を出資して法人を設立するケースが多いと思います。
ただ、他のメンバーと一緒に設立する場合や、親族に出資してもらうことも考えられるため、あらかじめ出資者となる可能性のある人にはその旨を打診しておきましょう。
⑦株式譲渡の有無
中小企業の場合、通常は株式を勝手に譲渡できないようにしておきます。
このことを譲渡制限といいます。
譲渡制限付きの株式とするには、その旨を定款に記載しておく必要があります。
⑧役員の人数と構成
役員の人数について、現在は1人でも会社を設立することが可能です。
役員の数によって会社の機関の設計が変わってくるため、あらかじめ誰が役員になるか決めておきましょう。
法人設立の手続き⑵定款作成
法人の重要事項を定めたら、定款の作成に取りかかることができます。
定款は、会社にとっての憲法とも言われるほど重要なものです。
定款には必ず記載しなければならないことがあります。
そのようなものを「絶対的記載事項」といいます。
絶対的記載事項には、以下のようなものがあります。
- ・商号
- ・目的
- ・本店所在地
- ・設立に際して出資される財産の価額またはその最低額
- ・発起人の氏名及び住所
- ・発行可能株式総数
これらの記載がない場合、定款として成立していないためその後の手続きに進むことはできません。
法人設立の手続き⑶定款の認証と資本金の振込
作成した定款は、そのままでは何の効力も持たないため、公証役場で認証を受けなければなりません。
定款の認証を受ける際には、作成した定款の他、収入印紙、発起人の印鑑証明書と実印、本人確認書類を持参します。
定款の認証は、必要なものを揃えていけば30分~1時間程度で終了します。
定款の認証を受けたら、発起人個人名義の銀行口座に資本金を振り込み、払込証明書という書類を作成します。
資本金として払い込まれた金額は、会社名義の銀行口座ができた時に資金移動されるため、そのまま残しておきます。
登記申請して会社を立ち上げよう
払込証明書まで作成したら、法務局で登記を行います。
法務局での登記に必要なこと
法人設立の登記申請を行う際には、定款や払込証明書のほか登記申請書、発起人の決定書、就任承諾書、取締役の印鑑証明書などが必要です。
登記申請書は法務局のHPでダウンロードできるので、そちらから事前に準備しておくといいでしょう。
このほか法務局に準備されている書類があるため、窓口で入手し記載のうえ登記の申請を行います。
設立登記は、発起人が定めた日から2週間以内に申請することとされています。
また、申請から登記完了までは1週間から10日ほどかかります。
登記完了後に行うこと
無事に設立登記が完了して法人の設立が認められても、まだしなければならないことがあります。
1つ目は会社印の作成です。
代表者印や銀行印など、いくつかの印鑑が必要となります。
また、実務上はゴム印なども必要となるため、まとめて準備しておくようにしましょう。
2つ目は法人名義の銀行口座の開設です。
法印名義の口座を開設するのは、法人の登記事項証明書が必要です。
つまり、登記が完了しなければ銀行口座を作ることができないため、登記が完了したらすぐに手続きを行いましょう。
このほか、法人の設立により税務署や労働基準監督署、年金事務所などへの届け出が必要です。
必要に応じて専門家に確認しながら進めるようにしましょう。
株式会社と合同会社では法人設立の期間が違う
ここまで法人設立の大まかな流れについて説明してきましたが、これから会社を設立しようという人にとって、実は2つの選択肢があります。
一般的によく知られている法人の形態といえば株式会社ですが、これ以外に合同会社という選択肢もあります。
両者にはどのような違いがあるのでしょうか。
まずは、それぞれの特徴を解説したうえ、設立時の期間について確認しまていきます。
株式会社と合同会社の違い
株式会社とは、会社の形態の1つであり、会社の運営を行う経営者(社長や取締役)と出資者(株主)が別の人である法人です。
もっとも、ほとんどの中小企業は経営者と会社のオーナーが同一人物ですが、株主でない者が会社の役員になることや、会社の経営に関係ない者が株主になることもできます。
一方、合同会社は2006年に新設された新しい制度です。
合同会社は出資者と経営者が分離していない形の法人であり、経営者は必ず出資者でなければなりませんが、出資するだけの出資者の存在は認められています。
会社を設立して経営していくうえでは、株式会社でも合同会社でも大きな差はありません。
ただし、今後会社を大きくしていきたいとのであれば、新株発行により外部からの資金調達が容易にできる株式会社にメリットがあります。
株式会社と合同会社の違いを理解し、会社の方向性などからより良い選択をするようにしましょう。
株式会社と合同会社の設立における共通点
株式会社と合同会社の設立に関して、共通する部分は以下のとおりです。
- ①資本金は1円から設立できる
- ②会社の設立に必要な出資者の数は1人以上
- ③出資者は有限責任
- ④定款に収入印紙を貼らなければならない(4万円)
定款の作成を電子定款により行えば、収入印紙は不要とされています。
しかし、電子証明書を交付してもらう必要があることや電子署名を付加できるソフトウェアやカードリーダーが必要です。
その後の業務に必要でなければ定款は書面で作成する方が安く、早く法人設立ができるといえます。
ここまでの手続きに関しては、株式会社、合同会社ともに共通なので、期間に差はありません。
株式会社と合同会社の設立における違い
株式会社と合同会社の設立手続きにおいて、大きく異なる点が1つあります。
それは、株式会社を設立する際は、公証役場で定款の認証を受けなければならないということです。
合同会社の場合は定款の認証は不要です。
定款の作成後に公証役場に行く必要がなく、直接法務局に行って登記申請をすればよいので、その分会社の設立にかかる時間が短くなるのです。
そういった点を考慮すると、合同会社のほうが良いと思われる方もいるでしょう。
しかし、会社の商号や目的などは、一度定款を作成し登記をしたら簡単に変更できません。
どうしてもということであれば変更はできますが、定款を作り替えて登記し直す必要があります。
したがって、時間と費用を抑えるためには、手続きの簡便さだけでなく、それぞれの特徴を理解したうえ最適な選択するのが、最も重要なのです。
法人設立にかかる費用の準備も忘れずに
法人を設立するためには費用がかかります。
株式会社と合同会社では設立費用にどれくらい違いがあるのでしょうか。
また、設立だけでなくその後の事業を開始するためにも資金が必要です。
はたしていくらくらいの資金が必要となるのかも見ていきたいと思います。
株式会社と合同会社の設立費用の違い
実際に法人設立から登記完了までの間に必要な金額は、株式会社と合同会社では若干異なります。
①定款認証の費用(株式会社のみ)
公証役場で作成した定款の認証をしてもらう際には5万円ほどの費用がかかります。
②登記申請時の登録免許税(株式会社・合同会社)
基本的には資本金額×7/1,000で変わりはありませんが、最低金額が株式会社の場合は15万円、合同会社の場合な6万円とされています。
資本金額が約2,142万円を超えなければ、合同会社の方が安くなります。
したがって、最低金額での計算となる場合、合同会社の方が14万円ほど設立費用は少なく済みます。
会社が事業開始するために必要な金額
会社が事業開始するために必要な金額、つまり資本金は、その事業の内容や従業員の有無、本社事務所の形態などによって大きく異なるため、一概には言えません。
ただ、事業を開始してすぐに収益が上がるわけではないため、毎月発生する家賃や給料、光熱費などの費用を2か月分程度は用意しておきたいです。
また、開業直後はパソコンや備品の購入、広告宣伝やチラシ・名刺の作成など、かなりの費用が必要となりますので、そのための資金も確保しておく必要があります。
開業直後の資金は資本金がすべてとなるため、まずは資本金としてまとまった金額を準備しておきましょう。
法人設立日を決めておく税制上のメリットとは
法人として売上があっても、すべての法人が消費税を納付しているわけではありません。
消費税の納税義務は、課税事業者に該当する場合に発生することとされているためです。
設立したばかりの法人が消費税の課税事業者となるのは、資本金が1,000万円以上である場合です。
資本金の額を1,000万円未満に抑えることで、設立1期目は消費税の免税事業者となります。
設立2期目については、資本金に加えて設立1期目の前半6か月間における課税売上高もしくは給与の支払額が1,000万円以下であれば、消費税の免税事業者となります。
もし設立1期目から大きな売上が計上できそうな場合は、設立から6か月を経過してから売上を計上することができると、2期目も免税事業者となる可能性があります。
また、設立1期目が7か月以下の場合は、課税売上高や給与の支払額による判定は行わないこととされています。
例えば、設立1期目を7か月、設立2期目以降は通常どおり12か月で決算を行う場合、自動的に19か月間は消費税の免税事業者となることができるのです。
なお設立3期目以降からは、前々事業年度の課税売上高が1,000万円を超えると課税事業者になるため、自分の意思で免税事業者となることはできません。
設立直後に免税事業者となって、少しでも利益を確保できるようにしておきましょう。
まとめ
個人事業主が法人を設立しようと考えている時は、事業が順調に推移している状態にあると思います。
少しでも早く法人を設立したいと考えるのであれば、合同会社を設立するといいでしょう。
ただ、会社の設立にあたっては事前に決めておかなければならないことがたくさんあります。
まずはそれらを決めるとともに、法人設立時に必要な資金を用意しておきましょう。
また、法人設立のタイミングがその後の消費税の納税義務に影響するため、いつを法人の設立日とするか、慎重に検討しましょう。