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最終更新日:2020/5/25

会社設立前に立替えた費用はここまで経費にできる!創立費や開業費の仕訳方法も含めて解説

個人事業主として事業を行ってきた方が会社を設立する際の支出や開業するための支出は、決して少ない額ではありません。

そのため、会社として本格的に収益が計上されていない段階では、大きな負担となる可能性があります。

また、それだけ大きな支出をする以上は、経費として少しでも節税につなげたいと考えることと思います。

ここでは、会社設立や開業の際に必要な費用の取り扱いについて解説します。

会社設立や登記費用などは経費化可能

会社を設立するためにかかる費用を支出しているのは、その会社を設立しようと考えた個人です。

そのため、会社設立の費用を支出しても、その会社宛の請求書をもらったり、会社名の入った領収書を受け取ったりすることはありません。

そうすると、会社を設立するための支出は、会社の経費にならないのではと考える方がいるかもしれません。

しかし、それでは会社設立前に多額の支出をしても、税金の計算上は考慮されずに法人税を支払わなければならなくなるため、あまりにも不合理です。

そこで、会社設立や登記費用など、会社設立のための費用であることが明らかである場合には、会社の経費とすることが認められるのです。

創立費と開業費の期間や仕訳の違いとは

会社設立や開業のための費用として支出をした場合、創立費か開業費のいずれかの勘定科目を用いて会計処理することとなります。

会計処理をする際の注意点について確認しておきましょう。

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創立費や開業費の計上方法

創立費や開業費として計上した金額は、会計上の繰延資産であると同時に、税務上も繰延資産として取り扱われます。

この繰延資産とは、その内容は費用に該当するが、その支出の効果が将来にわたって継続するものであるため、支出した年度の費用とすることなく、資産に計上したものです。

開業費と創立費は、一見するとよく似たものであるため、混同してしまうかもしれません。

しかし、創立費は会社を設立する前の個人が支出するものに限定される一方、開業費は個人も会社も支出するという違いがあります。

創立費や開業費の償却方法

創立費や開業費は、会計上の繰延資産に該当します。

会計上の繰延資産に該当するものは、税法上、任意償却することが認められます。

任意償却とは償却を行う期間や、償却費の上限額が設定されていない償却方法です。

固定資産の償却費を計算する際、その資産の種類に応じた耐用年数を用いて減価償却費の限度額を計算しますが、会計上の繰延資産について税務上償却を行う際には、そのような計算は行いません。

そのため、支出した年度に全額を償却することもできますし、利益となった年度にあわせて償却することもできます。

何年以内に償却しなければならないという決まりもないため、黒字となるまで何年もの間、繰延資産として残しておくことが可能です。

具体的な仕訳の方法

それでは、創立費や開業費を使った実際の仕訳を見てみましょう。

⑴会社の設立登記費用や定款の作成費用の合計25万円を個人で支払った。

借方金額貸方金額
仕訳なし

この段階では会社はまだ設立されておらず、会社の経費を個人で立替払いしているだけなので、支払った日に仕訳処理をすることはできません。

登記費用や定款の作成費用など、会社設立のための費用であることが分かるように、請求書や領収書は保管しておく必要があります。

⑵資本金100万円を払い込んで会社を設立した。

借方金額貸方金額
現金1,000,000資本金1,000,000

現物出資という方法もありますが、基本的には現金を払い込んで会社を設立します。

⑶会社が設立されたため、立替払いしていた設立費用25万円を現金で精算した。

借方金額貸方金額
創立費250,000現金250,000

会社を設立したら、個人が立替払いしていた費用を会社が精算します。

この時、会社は個人で立替えていた費用が会社の設立のために必要なものであることを確認し、その請求書や領収書を個人から預かっておかなければなりません。

⑷開業準備のために、チラシを10万円で作成した。

借方金額貸方金額
開業費100,000現金100,000

事業を始めるために支払った費用は、開業費となります。

まだ会社として売上が計上されていない時期であっても、資本金として払い込んだ現金から支払を行います。

⑸決算の際に、創立費や開業費として計上した金額を全額償却した。

借方金額貸方金額
創立費償却250,000創立費250,000
開業費償却100,000開業費100,000

会計上の繰延資産は、税務上いつ償却しても構いません。

また繰延資産は、会計上5年で均等に償却することとされていますが、税務上はその5年を経過してから償却費を計上することもできますし、好きな額を償却して一部を残しておくこともできます。

主な創立費の例

創立費とは、会社を設立するためにかかった費用をいいます。

そのポイントは、会社設立のために必要な費用であるため、会社を設立する前の個人が支出していること、そして会社法上は設立時の定款に記載する必要があることです。

ただ、法人税の実務上は、定款への記載がなくても会社を設立するために実際に支出した費用は、創立費として計上できることとされています。

そのため、定款に記載がなくても、会社設立のための費用を創立費として処理することが一般的ですし、それで問題になることはありません。

それでは、創立費となる会社を設立するために必要な費用とは、どのようなものがあるのでしょうか。

以下にあげるものは、主な創立費となる費用です。

  • ①定款や就業規則などの規則を作成するための費用
  • ②事務所の賃借料(会社設立までの期間)
  • ③従業員の給料(会社設立までの期間)
  • ④創立総会における費用
  • ⑤発起人が受け取る報酬(定款への記載があるもの)
  • ⑥設立登記の登記費用や登録免許税

このほか、出資者を公募する場合には、株式募集の広告費や株券・目論見書などの印刷費、証券会社の取扱手数料などが必要となりますが、あまり一般的なケースではないでしょう。

基本的に、会社設立のためにかかった費用は、すべて創立費になると考えることができます。

主な開業費の例

会社を設立したからといって、すぐに事業を開始して収益を得ることができるわけではありません。

事業を始めるまでにはさまざまな準備が必要であり、そのための費用がかかります。

その会社が事業を開始するまでに支出した準備費用を開業費といいます。

そのポイントは、開業準備のためにかかった費用であること、そして、会社を設立してから実際に営業を開始するまでに支出したものであることです。

実際に開業費となる費用には、どのようなものがあるのでしょうか。

創立費と違って、開業費の中身は会社や業種によってさまざまですが、一例をあげれば以下のようなものがあります。

  • ①開業にあたって作成する広告やチラシの作成費用
  • ②名刺の作成費用
  • ③店舗を開く際の市場調査のための交通費(ガソリン代、旅費、宿泊費)
  • ④関係者との打ち合わせのために飲食費
  • ⑤店舗や事務所で使用するパソコンなどの備品の購入代金
  • ⑥関係者への手土産代
  • ⑦開業までの借入金利子

開業費を計上する際に、注意しなければならないことがあります。

それは、開業費となるのは開業準備をしている間に支払われるすべての費用をいうものではないことです。

上記の費用はすべて事業開始のために支出するものであるため、開業費と認められます。

一方で、従業員の給料や店舗・事務所の家賃など、開業準備のために支払っているわけではない費用については開業費に該当しないため、実際にその費用が発生した時に費用として計上する必要があります。

また、備品を購入した際に1つあたりの金額が10万円を超えるものについては、原則として固定資産となるため、開業費に含めることはできません。

さらに、商品や材料の仕入については、そのものが売れたときに初めて売上原価として費用化されるものであり、それまでは在庫として会社の資産となるため、開業費として処理することはできません。

個人事業主時の車やパソコンなどはどうなる?立替え費用はどこまで経費化?

個人事業主として活動した後に、会社を設立する人も多いと思います。

その際、個人と会社の線引きが難しいため、さまざまな疑問が生じることでしょう。

車やパソコンなどの処理方法

個人事業主の方が法人成りして会社を設立する場合、それまで事業のために使っていた車やパソコンなどをそのまま使うことがあります。

このとき、どのような処理が必要となるのでしょうか。

個人で使用していた車やパソコンを会社が使うためには、①現物出資、②譲渡、③賃借の3つの方法が考えられます。

このうち、①現物出資は手続きが複雑なためおすすめできません。

また、③賃借は会社が使用する間は賃料を支払う必要がありますし、賃貸収入が発生する個人は、毎年確定申告しなければなりません。

そのため、最も簡単に個人の資産を会社に移転するためには、②譲渡を行うべきです。

個人事業主である時に使用していた資産を譲渡する場合、その価格は減価償却を終えた後の未償却残高とします。

こうすれば、売却する個人に所得は発生しません。

一方、未償却残高の金額で購入した会社は、その価格が1台あたり10万円を超える場合、原則として固定資産としたうえで減価償却の計算を行うこととなりますが、10万円未満であれば取得した時の費用として計上できます。

立替え費用の注意点

会社設立のために必要な手続きは、通常2~3か月程度あれば完了することができます。

もちろん、急いで会社を設立するのであれば、これより短い期間で設立することも可能です。

そのため、会社設立のための費用として立替えた費用であっても、会社設立前よりかなり以前に支出されたものである場合には、会社の創立費とすることができない場合があります。

一般的に、会社設立の6か月より前に支出されたものについては、創立費とすることができないと考えられているため、注意が必要です。

まとめ

創立費や開業費として計上した金額は、会社の利益が出たときに償却して費用化することができるため、将来的に法人税などの税金を抑えることができます。

節税のために、少しでも多くの金額を創立費や開業費に計上したいと考えることでしょう。

ただ、会社設立前や開業前に支払ったものであれば、どのような費用でも創立費や開業費にできるわけではないことに注意しなければなりません。

また、創立費や開業費の額が大きくなると、資金繰りが苦しくなるため、その点も注意が必要です。

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