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最終更新日:2026/6/25

相続税の納税義務者は誰?対象者や課税範囲を詳しく解説

古尾谷 裕昭
この記事の執筆者 税理士 古尾谷裕昭

VSG相続税理士法人 代表税理士
東京税理士会 登録番号104851

東京、立川、千葉、埼玉、横浜、名古屋、大阪、神戸、福岡などの全国の主要都市15拠点にオフィス展開し、年間3,500件を超える日本最大級の相続税申告実績を誇る。業界最安水準となる明朗料金ときめ細かいフォローで相続人の負担を最小にすることを心がけたサービスが評判を得る。1975年生まれ、東京都浅草出身。

PROFILE:https://vs-group.jp/sozokuzei/profilefuruoya/
書籍:今さら聞けない 相続・贈与の超基本
Twitter:@tax_innovation
YouTube:相続専門税理士チャンネル【VSG相続税理士法人】

相続税の納税義務者は誰?対象者や課税範囲を詳しく解説

記事の要約

  • 相続税の納税義務者とは、原則として「相続または遺贈・死因贈与等により財産を取得した個人」を指す
  • 相続(遺贈)で財産を取得していなくても「相続時精算課税」で贈与を受けた場合、相続税の納税義務者となる
  • 相続時に日本に住んでいない人が関係する場合、相続税の納税義務者の考え方が複雑になる

個人が相続または遺贈(死因贈与を含みます)により財産を取得した場合、原則として相続税の納税義務者となります。

相続税の納税義務者の判定は、日本国内の住所や日本国籍の有無などの要素に応じて変わるため、判断が難しい面もあります。

そこで、この記事では相続税の納税義務者の種類や課税範囲について、詳しく解説します。

納税義務者でも相続税を納めなくてもよいケースも取り上げるので、ぜひ参考にしてください。

相続税の納税義務者とは

相続税の納税義務者

相続税の納税義務者とは、原則として「相続または遺贈死因贈与等により財産を取得した個人」のことを指します。

ここで重要なのが、「被相続人の財産を引き継いだ場合、法定相続人であるか否かを問わず納税義務者となり得る」点です。

法定相続人とは、民法が定める相続の権利を持つ人のことで、配偶者・子・父母・兄弟姉妹など、被相続人と一定の血縁関係にある人が該当します。

法定相続人が相続等で被相続人の財産を実際に取得した場合、相続税が発生していれば納税義務者となります。

ポイント

法定相続人であっても、遺産分割協議の結果として財産を一切取得しなかった場合には、相続税の納税義務者にはなりません。

たとえば子が3人いて、うち1人が「自分は財産を受け取らない」と遺産分割協議で合意した場合、その1人には納税義務は生じません。

一方、財産を取得した人が法定相続人でなくても、「遺贈」や「死因贈与」「みなし相続財産の受け取り」などによって財産を取得した場合、相続税が発生していれば納税義務者となります。

法定相続人でなくても納税義務者となるケース

遺贈で財産を取得した場合
法定相続人以外が被相続人が遺した遺言によって財産を受け取った場合、「受遺者」として相続税の納税義務者となります。

たとえば、被相続人が遺言で「孫に自宅不動産を遺贈する」と記したとしましょう。

この場合、孫は法定相続人ではありませんが、相続税が発生していれば納税義務者となります。
死因贈与で財産を取得した場合
死因贈与とは、生前に被相続人と第三者が契約を交わしたうえで、贈与者が亡くなることで効力が発生する贈与契約を指します。

死因贈与された財産は、相続税法上「遺贈によって取得したもの」として扱われることから、贈与者の遺した他の相続財産と合算して相続税が計算されます。

そのため、死因贈与で財産を取得した受贈者は、相続税が発生していれば納税義務者となります。
みなし相続財産を取得した場合
相続または遺贈で財産を取得していなくても、被相続人が亡くなったことをきっかけに死亡保険金や死亡退職金などの財産を取得した場合、相続税法では「相続や遺贈等で取得した」とみなされて相続税の課税対象となります。

したがって、受取人が取得した死亡保険金や死亡退職金等の金額が相続税の基礎控除を超えている場合、相続税の納税義務者となります。

なお、死亡保険金には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠がありますが、法定相続人以外の人はこの非課税枠を適用することはできません。

納税義務者の種類

相続税の納税義務者に該当するかどうかを判定する上で、重要な要素が「住所」です。

被相続人も相続人も日本に住んでいる一般的な相続の場合は、もちろん納税義務が生じます。

特に考え方が複雑になるのは、相続時に日本に住んでいない人が関係する場合です。

以下の表は、被相続人と相続人の状況に応じた納税義務者の区分を示しています。ここからは、こちらの表の記載内容をより深堀りする形で解説します。

相続税の納税義務者の区分表

相続税の納税義務者の区分表

引用元 国税庁

無制限納税義務者

無制限納税義務者とは、遺産を取得した人のうち、日本と海外の双方にある財産に相続税が課税される人を指します。

納税義務者の判定は、日本国籍の有無だけで一律に判断されるわけではありません。

相続人が相続発生時に海外に住んでいても、「日本国籍があって10年以内に日本に住所があった人」は、被相続人のステータスにかかわらず国内・海外財産の両方に対して相続税が課税されます。

一方、相続人に「日本国籍があって10年以内に日本に住所がない」場合、または「日本国籍がない」場合であっても、被相続人が日本国内に住所があるときは、同様に国内・海外財産の両方に課税されます。

課税範囲が国内財産のみになるケース

相続人に「日本国籍があって10年以内に日本に住所がない」場合、または「日本国籍がない」場合に加えて、「被相続人も10年以上日本を離れている」などの一定の要件を満たすケースでは、課税範囲が国内財産のみ(制限納税義務者)となります。

居住無制限納税義務者

居住無制限納税義務者とは、相続または遺贈で財産を取得した人のうち、その財産を取得した時に日本国内に住所を有している人を指します。

なお、財産を取得した人が「一時居住者」に該当し、かつ被相続人が「外国人被相続人」または「非居住被相続人」に該当するならば、無制限納税義務者の対象から除かれ、後述する「居住制限納税義務者」となります。

「一時居住者」「外国人被相続人」「非居住被相続人」

「一時居住者」とは
相続発生時に在留資格を有しており、その相続の発生前15年以内に日本国内に住所を有していた期間の合計が10年以内の人
「外国人被相続人」とは
相続発生時に在留資格を有しており、かつ日本国内に住所を有していた当該相続に係る被相続人
「非居住被相続人」とは
相続発生時に日本国内に住所を有していなかった被相続人で、以下のいずれかに該当している人

①相続の発生前10年以内のいずれかの時において日本国内に住所を有していたことがある人のうち、そのいずれの時においても日本国籍を有していなかった人

②その相続の開始前10年以内に日本国内に住所を有していたことがない人

参考:No.4138 相続人が外国に居住しているとき|国税庁

居住無制限納税義務者に該当する場合、課税財産の範囲は以下のようになります。

居住無制限納税義務者の場合の課税財産の範囲
  国内財産 国外財産 相続時精算課税適用財産
居住無制限納税義務者 課税 課税 課税

非居住無制限納税義務者

相続または遺贈で財産を取得した人のうち、その財産を取得した時に日本国内に住所を有しておらず、かつ以下のいずれかの条件に当てはまる人を指します。

非居住無制限納税義務者の条件

財産の取得時に日本国籍を有している場合で、以下のいずれかに該当する人

① その相続または遺贈に係る相続の発生前10年以内に、日本国内に住所を有していたことがある人

② その相続または遺贈に係る相続の発生前10年以内のいずれの時においても、日本国内に住所を有していたことがない人(被相続人が外国人被相続人または非居住被相続人である場合を除きます)

財産取得時に日本国籍を有しない場合で、かつ被相続人が外国人被相続人、非居住被相続人のいずれにも該当しない人

参考:No.4102 相続税がかかる場合|国税庁

非居住無制限納税義務者に該当する場合、課税財産の範囲は以下のようになります。

非居住無制限納税義務者の場合の課税財産の範囲
  国内財産 国外財産 相続時精算課税適用財産
非居住無制限納税義務者 課税 課税 課税

制限納税義務者

制限納税義務者に該当するケースの相続人は、原則として日本国内にある財産のみに課税されます。

制限納税義務者は「居住制限納税義務者」と「非居住制限納税義務者」の総称であり、その判定は相続人や被相続人の住所、国籍、過去の居住歴、在留資格等の組み合わせで詳細に定められています。

制限納税義務者に関する注意点

制限納税義務者は、被相続人の葬式費用を負担していても、相続税額の計算上、控除できない点に注意が必要です。

また、制限納税義務者に該当する場合は、国内財産に係る債務についてのみ債務控除を適用できます(国外財産に係る債務は控除できません)。

居住制限納税義務者

相続または遺贈で財産を取得した相続人が、その財産を取得した時に日本国内に住所を有しており、かつ「一時居住者」に該当し、さらに被相続人が「外国人被相続人」または「非居住被相続人」のいずれかに該当する場合、その相続人は「居住制限納税義務者」となります。

居住制限納税義務者に該当する場合、課税財産の範囲は以下のようになります。

居住制限納税義務者の場合の課税財産の範囲
  国内財産 国外財産 相続時精算課税適用財産
居住制限納税義務者 課税 課税なし 課税

非居住制限納税義務者

相続または遺贈で財産を取得した相続人が、その財産を取得した時に日本国内に住所を有しておらず、かつ以下のいずれかの条件を満たす場合、その相続人は「非居住制限納税義務者」となります。

非居住制限納税義務者の条件

相続人が日本国籍を有している場合
相続人が日本国籍を有している場合で、その相続または遺贈に係る相続の発生前10年以内のいずれの時においても日本国内に住所を有していたことがなく、かつ被相続人が外国人被相続人または非居住被相続人のいずれかに該当する場合
相続人が日本国籍を有しない場合
相続人が日本国籍を有しない場合で、かつ被相続人が外国人被相続人、非居住被相続人のいずれかに該当する場合

参考:No.4102 相続税がかかる場合|国税庁

非居住制限納税義務者に該当する場合、課税財産の範囲は以下のようになります。

非居住制限納税義務者の場合の課税財産の範囲
  国内財産 国外財産 相続時精算課税適用財産
非居住制限納税義務者 課税 課税なし 課税

相続(遺贈)で財産を取得していなくても納税義務者となるケースがある

「相続時精算課税制度」を適用して被相続人から生前贈与を受けていた場合、たとえ相続や遺贈で財産を取得していなくても、その贈与財産について相続税が課税されます。

相続時精算課税制度とは

相続時精算課税制度とは、60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫への贈与について、「生前に贈与した時点では一定額までは税金を払わず、贈与者が亡くなったときに、まとめて相続税として精算する」という課税方法です。

相続時精算課税制度の適用を受けた人のうち、無制限納税義務者および制限納税義務者に該当しない人を「特定納税義務者」と呼びます。

この特定納税義務者が相続税の納税義務を負うのは、「相続時精算課税適用財産」のみです。

あくまでも「被相続人から過去に相続時精算課税の適用を受けて贈与された財産」に限定して、相続税の課税対象となります。

納税義務者でも相続税を納めなくてよいケース

相続税の納税義務者に該当すれば、必ず相続税が発生するというわけではありません。

相続税の納税義務者であっても、実際には相続税がかからないケースがあるため、以下で解説します。

納税義務者でも相続税を納めなくてよいケース

  • 正味の遺産額が相続税の基礎控除を下回るケース
  • 「小規模宅地等の特例により財産額が基礎控除を下回る」ケースや「配偶者の税額軽減」の適用を受けるケース
  • 税額控除の適用を受けるケース

正味の遺産額が相続税の基礎控除を下回るケース

相続税の計算では、被相続人が亡くなった時に保有していた財産やみなし相続財産を加算した額から、債務や葬式費用などを差し引いた「正味の遺産額」を算出します。

相続税の申告・納付義務が発生するのは、この「正味の遺産額」が基礎控除(3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数)を超える場合です。

基礎控除額以下であれば、納税義務者に該当しても相続税の申告・納付義務は発生しません

「小規模宅地等の特例により財産額が基礎控除を下回る」ケースや「配偶者の税額軽減の適用を受ける」ケース

正味の遺産額が基礎控除額を超える場合でも、特例や税額控除の適用によって相続税が発生しないケースがあります。

相続財産の評価額を減らす特例の代表例が、小規模宅地等の特例です。

小規模宅地等の特例の適用要件を満たしているならば、被相続人の自宅などを相続した場合に敷地の評価額を最大で8割減額できます。

また、配偶者の税額軽減(相続税の配偶者控除)を適用した場合、配偶者の取得した財産のうち、1億6,000万円または配偶者の法定相続分相当額のいずれか多い金額までは相続税はかかりません。

なお、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減の適用には、相続税の申告が必要です。

こうした特例の適用で相続税が0円になったとしても、申告を行わなければなりません

小規模宅地等の特例に関する注意点

小規模宅地等の特例は、被相続人の配偶者や同居親族でなくとも適用ができる「家なき子」と呼ばれる規定があります。

この「家なき子」の規定は相続人が海外に住んでいる場合であっても、相続発生時に居住している家屋を過去に一度でも所有したことがあれば、適用することはできません。

税額控除の適用を受けるケース

相続税の計算では、相続税の総額を算出した後にその税額を各相続人が実際に取得する相続割合で按分し、相続人ごとの納税額を求めます。

さらに、相続人が未成年者である場合や、相続人が障害を抱えている場合、過去10年以内に被相続人が相続税を支払っていた場合などには、税額控除ができます。

これらの税額控除の適用によって相続税額がゼロとなった場合、相続税の負担は発生しません。

相続税の税額控除の例

未成年者控除
未成年者が相続人になった場合、その「未成年者が満18歳になるまでの年数×10万円の税額」が控除されます。
障害者控除
障害を抱えている方が相続人になった場合、その相続人が85歳になるまでの年数×10万円の税額が控除されます。

また、特別障害者に該当する場合は、85歳になるまでの年数×20万円の控除ができます。
相次相続控除
父が亡くなった後、次に母が亡くなった場合のように、相続が連続して発生することがあります。

最初の相続で相続税を支払っており、最初の相続から10年以内に発生した2回目の相続でも相続税がかかる場合、最初に発生した相続税額の一部が控除されます。

なお、未成年者控除や障害者控除の適用を受けて税額を計算した結果、当初の税額から控除しきれないこともあります。

このような場合には、控除しきれなかった金額をその相続人の扶養義務者の相続税額から控除できます。

他の納税義務者が相続税を納めない場合はどうなる?

相続税は、各相続人(受遺者)が自身の取得財産に応じた税額をそれぞれ納付するのが原則です。

このとき、相続人や受遺者の中に相続税を期限までに払おうとしない人がいる場合、他の相続人に「連帯納付義務」が生じることがあります

連帯納付義務とは

連帯納付義務とは、同じ被相続人から財産を取得した人の中に未納者がいる場合、他の相続人が「自身が相続等によって得た利益の価額」を上限として、その未納分を代わりに納付する義務を負う制度です。

連帯納付義務はすぐに発動するわけではありません。

まず税務署が未納の本人に督促・差し押さえなどの手続きを行い、それでも「納税が不可能と判断された場合」に、他の相続人へ連帯納付義務の通知が届きます。

仮に自身が取得した財産に対する相続税を全額支払っていたとしても、「他の相続人や受遺者が相続税を滞納している」等の場合、未払い分の相続税を肩代わりして支払う必要が生じます。

連帯納付義務 説明

この連帯納付義務は法的に「納付しなければならない」と定められていることから、通知が来たときに拒否することはできません

そのため、以下のような対策を行い、相続税を滞納する人が出ないようにしましょう。

対策

相続税の納税資金を早い段階で確保しておく
相続財産を分配するときは、先に納税資金を確保してから残りを分ける方法を検討しましょう。

特に納付を終わらせられるか不安な人がいる場合、財産を渡す際に前もってその人の納税分の金額を「天引き」しておき、他の相続人が代わりに納税を済ませてしまう方法もあります。
相続人同士の連携や声かけを行う
納税忘れを防ぐためにも、相続人同士で「納税は済ませたかどうか」を確認し合うことを心がけましょう。

なお、代わりに税金を支払った人は本来の納税義務者に対して、立て替えたお金を請求する権利(求償権)を得ます。

求償権を放棄したり、返還を求めないまま放置したりした場合、「本来の納税義務者に金銭を無償で与えた」とみなされます。

この場合、本来の納税義務者に別途で贈与税が課される可能性があるため、注意しましょう。

相続税の支払いや計算に不安がある場合は税理士に相談しよう

相続税の課税対象となる人は、遺産を相続した法定相続人だけではありません。遺言や死因贈与によって遺産を受け取った人も、相続税の納税義務者となります

ただし、納税義務者になったからといって、必ず納付すべき税額が発生するとは限りません。相続税の基礎控除や特例など、税負担を軽減するための制度が多く設けられているので、その内容について確認しておくといいでしょう。

そのような相続に関する疑問が生じた場合は、相続専門の税理士に相談してみるのもおすすめです。

我々VSG相続税理士法人は、相続人の皆さまのお悩みについて、平日夜21時まで、土日祝も無料相談を受け付けております。ぜひお気軽にお問い合わせください。

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