この記事でわかること
- 法定相続分について
- 法定相続人や相続順位ごとの法定相続分
- 法定相続分で遺産分割する具体例
法定相続分とは、法律によって定められた遺産分割の割合です。相続人同士で遺産分割協議をする際、それぞれがいくら相続するかの目安となります。相続人の状況によって遺産分割の割合は異なるため、誰が相続人になって、どれだけ相続できるのかを知っておきましょう。
この記事では、法定相続分を利用するケースをはじめ、遺留分との違いや法定相続分を利用した遺産分割の具体例を解説します。
目次
法定相続分とは遺産分割の目安の割合
法定相続分とは、「民法によって定められた遺産分割の割合」のことで、相続人同士で遺産分割協議をする際、それぞれがいくら相続するかの目安として用いられます。
配偶者と誰が相続するかによって、配偶者の法定相続分も変わってきます。例えば、配偶者と子どもが相続人の場合、法定相続分はそれぞれ1/2ずつですが、配偶者と親が相続する場合は配偶者が2/3、親が1/3です。その他の法定相続分は、以下の表のようになります。
同順位の法定相続人が複数人いる場合は、その人数で均等に分けます。配偶者がいない場合、一番高い相続順位の人が相続します
■法定相続分の一覧表
しかし、法定相続分は必ず従わなければならない割合ではありません。あくまで目安のため、遺産分割協議で相続人全員が同意すれば、誰が1人に全ての遺産を相続することもできます。
なお、遺産分割の際に相続人同士でもめて、調停や審判になった場合は、裁判官が法定相続分に基づいて相続割合を決定します。
相続人に特別受益を受けていた人がいた場合
生前贈与や寄贈などを被相続人から受けた場合、そのときの利益を特別受益と呼びます。
他の相続人との間に不公平が生じないようにするため、特別受益を相続財産に足し戻したものを相続財産全額とします。特別受益を受けていた人は相続財産から特別受益が差し引かれます。
ただし、他の相続人が納得している場合には、特別受益分は考慮されずに遺産分割協議を行われることがあります。
相続人に寄与分がある人がいた場合
被相続人の財産維持や増加のために特別に貢献した人は、法定相続分+寄与分で財産を取得できます。
寄与分の主な例としては、以下のようなものがあります。
- 被相続人の事業を一緒に行って貢献した場合
- 被相続人の事業に対して資金を提供した場合
- 看護・介護や入院中の付き添いをしていた場合
遺言書がある場合は遺言書の内容が優先される
相続分には「法定相続分」と「指定相続分」があり、指定相続分とは被相続人が遺言書で指定した遺産の分け方を指します。遺言書がある場合は、法定相続分よりも遺言書による指定相続分が優先されます。
遺言書で指定された指定相続分以外の方法で遺産分割するには、遺産分割協議で相続人全員の合意が必要です。
遺言書で指定された指定相続分が遺留分よりも少ない場合、遺留分侵害額請求を行うことができます。
遺言書がある場合の遺産分割については関連記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。
法定相続分と遺留分の違い
法定相続分は、法律で定められた遺産分割の目安となる割合です。一方、遺留分は、相続人が最低限得られる遺産の割合のことを指します。
遺留分は相続人に最低限保障された財産の取り分を主張できる権利であるため、遺言書によっても遺留分を奪うことはできません。遺留分が侵害された場合、相続人は一定期間内に遺留分侵害額請求を行う権利を有しています。
遺留分の割合は以下の表でご確認ください。
■相続人ごとの遺留分の割合
※複数人いる場合は、人数で分ける
相続人 | 全員の遺留分の合計割合 | 各相続人の具体的な遺留分割合 | |||
---|---|---|---|---|---|
配偶者 | 子ども | 父母 | 兄弟姉妹 | ||
配偶者のみ | 1/2 | 1/2 | |||
配偶者と 子ども | 1/2 | 1/4 | 1/4 ※ |
||
配偶者と父母 | 1/2 | 1/3 | 1/6 ※ |
||
配偶者と兄弟姉妹 | 1/2 | 1/2 | なし | ||
子どものみ | 1/2 | 1/2 ※ |
|||
父母のみ | 1/3 | 1/3 ※ |
|||
兄弟姉妹のみ | なし | なし |
法定相続人と相続順位
法定相続人とは、被相続人の遺産を相続する権利がある人のことを指します。
法定相続人は民法で定められており、配偶者は常に法定相続人となり、配偶者以外の法定相続人には相続順位があります。相続順位は第1~3順位までありますが、実際に相続できるのは存在する相続人のうち、相続順位の最上位の人のみです。
ここからは、法定相続人と相続順位を詳しく紹介します。
配偶者は常に法定相続人
配偶者は常に法定相続人となります。配偶者の中には、内縁関係にある夫や妻は含まれないため注意が必要です。
なお、民法では法律上の夫婦のみを相続人として財産上の保護を与えています。内縁の配偶者に対して財産を遺したい場合は、生前贈与や遺言などを利用するほかありません。
第1順位は被相続人の子ども
法定相続人の第1順位は被相続人の子どもです。「普通養子縁組」では養親と養子縁組をしても実親との親族関係は消滅しません。したがって、実親および養親双方の法定相続人になります。
一方、子どもが幼いうちに戸籍上もほぼわからないような形で行う「特別養子縁組」は、実親との親族関係が終了するため、実親の法定相続人ではなくなり、養親のみの法定相続人となります。
第2順位は被相続人の直系尊属(父母、祖父母)
第2順位の法定相続人は被相続人の直系尊属(父母、祖父母)です。
第1順位の法定相続人がいない場合や、相続放棄で権利を失っている場合に直系尊属が相続人となります。
直系尊属が複数人いる場合は、親→祖父母→曾祖父母といった順に被相続人に近い者から優先して相続人となります。
第3順位は被相続人の兄弟姉妹
第3順位の法定相続人は、被相続人の兄弟姉妹です。
第1順位および第2順位の法定相続人が不在か、全員が相続放棄をしているような場合に兄弟姉妹が相続人となります。
相続権がない人とは?
被相続人と生前深く関わっていた場合でも、相続権のない方がいます。相続権がない人の中には、手続きを行うことで財産を取得することができる場合もあります。以下に挙げた例を詳しく見ていきましょう。
<相続権がない人>
離婚した元配偶者
離婚した元配偶者は相続権がなくなります。その後事実婚の状態で生活していたとしても同様です。
逆に、別居状態や離婚協議中でも、離婚が成立していなければ相続人になります。
ただし、その元夫婦の子どもは離婚後も相続権があります。
内縁関係にある人
内縁関係にある夫や妻には相続権はありません。内縁配偶者にも相続させたい場合には、遺言で包括遺贈を行う必要があります。
包括遺贈させたい旨の遺言書があれば、法定相続人と共に遺産分割協議を行うことができます。
養子縁組をしていない配偶者の連れ子
配偶者は相続人になるため、相続権があります。
しかし、配偶者の連れ子は、被相続人と養子縁組をしていないと相続権はありません。連れ子にも相続権を与えたければ、養子縁組をしておく必要があります。
相続欠格に該当する人
相続欠格とは、相続人となる資格をはく奪する制度です。法定相続人に当たる場合でも、以下の欠格事由に該当する場合は相続権がありません。
- 被相続人や相続権を有していたはずの人を故意に、被相続人や相続権を有する人を死亡または死亡させようとして、刑に処された
- 被相続人が殺害されたと知っていたのに告発や告訴しなかった
- 詐欺または脅迫によって、被相続人の遺言作成や、撤回、取り消し、変更を妨げた
- 詐欺または脅迫によって、被相続人の遺言作成や、撤回、取り消し、変更させた
- 被相続人の遺言書を偽造、変造、破棄、隠匿した
相続廃除された人
被相続人に相続廃除された人に相続権はありません。廃除は、家庭裁判所の手続きや遺言によって行われます。主な廃除事由には、「被相続人に対する虐待」「著しい非行」「被相続人に対する重大な侮辱行為」が挙げられます。
なお、遺留分のない兄弟姉妹は相続廃除できません。
相続放棄した人
相続放棄は、被相続人の財産を相続する権利を放棄するもので、マイナスの財産だけでなくプラスの財産も含みます。相続放棄すると、初めから相続人ではなかったものとみなされ、相続権は他の相続人に移るのです。
なお、相続放棄するには、相続の開始を知った日から3カ月以内に家庭裁判所に申述する必要があります。
相続人の範囲の確認方法
相続人に該当する人を調べるためには、被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本を取得する必要があります。戸籍には、両親の情報、出生に関する情報(生年月日、兄弟関係など)、婚姻歴、子どもの情報などが記載されているため、その情報をもとに相続人の洗い出しを行います。
また、相続手続きを行う際には、相続人全員の戸籍謄本が必要です。
相続人の状況による法定相続分の具体例
相続人の状況によって法定相続分は異なります。配偶者は必ず法定相続人となり、相続分を持つことになるため、「配偶者がいる場合」と「配偶者がいない場合」の具体例をそれぞれ挙げています。
また、被相続人よりも早く相続人が亡くなっている場合、代襲相続人として、直系卑属といわれる下の世代が相続人に代わって相続財産を受け継ぎます。
この代襲相続人がいる場合の法定相続分や、相続放棄した人がいる場合など、ご相談が多い事例についても解説しています。ぜひ、ご参考にしてください。
<法定相続分の具体例>
具体例1:相続人が配偶者だけの場合
具体例2:相続人が配偶者と子どもの場合
上図の場合では子どもが2人であるため、それぞれの相続分は1/4となります。
具体例3:相続人が配偶者と直系尊属の場合
この場合では父母で均等分割を行うため、それぞれの相続分は1/6となります。
具体例4:相続人が配偶者と兄弟姉妹の場合
上図では兄弟姉妹が2人であるため、それぞれの相続分は1/8となります。
具体例5:被相続人に配偶者がいない場合
上図では子どもが相続人となるため、長男・長女が遺産を1/2ずつ相続します。
具体例6:代襲相続人がいる場合
したがって、上図のように孫がまだ幼い場合であっても、長女と同様の相続分1/2を相続することが可能です。
具体例7:養子がいる場合
上図では、実子と養子あわせて3人の子どもがいるため、それぞれの相続分は1/6となります。
具体例8:相続放棄した方がいる場合
なお、相続放棄については以下のページで詳しく解説しています。ご参考にしてください。
法定相続分に関して気をつけたいポイント
ここからは、法定相続分に関して気をつけたいポイントを2つ紹介します。
どちらも失念するとトラブルの原因になりかねないため、ぜひ参考にしてください。
法定相続人以外に財産を譲る場合は遺留分の侵害に注意
前述したように、相続人が最低限得られる取り分として遺留分が定められています。
そのため、たとえ遺言書で指定されていたとしても、赤の他人に財産の過半数を遺贈するなど極端なケースの場合、遺留分の侵害となる可能性があるのです。
遺留分を侵害している場合は訴訟に繋がる可能性もあるため、法定相続人以外に遺贈する場合は注意しましょう。
非嫡出子の被相続人が男親の場合では認知が必要
被相続人の子どもであれば、実子をはじめ、養子や嫡出子や非嫡出子でも相続順位は第1順位となります。
しかしながら、非嫡出子の被相続人が男親の場合、被相続人の認知が必要です。非嫡出子は法律上、父親との親子関係がありません。
そのため、仮に認知していない非嫡出子を法定相続人に含めたい場合は、必要書類を作成したうえで認知の手続きをを行わなければならないのです。
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