この記事でわかること
- 遺産分割協議証明書の概要がわかる
- 遺産分割協議証明書の4つのメリットがわかる
- 遺産分割協議証明書の作成方法がわかる
- 遺産分割協議証明書作成時の注意点と文書の例がわかる
- 遺産分割協議証明書が必要な手続きがわかる
亡くなった家族が遺言書を遺していなかったときは、相続人全員の話し合い(遺産分割協議)で遺産の分け方を決めていきます。
話し合いが決着すれば「遺産分割協議書」を作成しますが、相続人全員の署名捺印も必要です。
相続人同士の住所が離れていると簡単には集まれないので、電話やメールで遺産分割を進め、遺産分割協議書を郵送で一巡させる場合もあるでしょう。
しかし、郵送にかかる日数は時間のロスになってしまい、紛失リスクも想定されるため、より安全でスピーディな手段を選びたいところです。
このようなケースには「遺産分割協議証明書」を活用できるので、仕組みや書式などを理解しておくとよいでしょう。
今回は遺産分割協議証明書をわかりやすく解説しますので、遺産相続を控えている方はぜひ参考にしてください。
遺産分割協議証明書とは
遺産分割の成立を証明する書類が「遺産分割協議証明書」です。
遺産の分け方を決める話し合いを遺産分割協議といい、一般的には決定内容から「遺産分割協議書」を作成しますが、相続人全員の署名捺印が必要になります。
つまり、一つの書類を相続人全員で作成するという考え方ですね。
一方、遺産分割協議証明書の場合は、相続人ごとの個別作成になります。
本文(遺産分割協議の決定内容)はすべて同一ですが、相続人Aさん用、相続人Bさん用の要領で個別に作成し、それぞれが単独で署名捺印する方法です。
最終的には一冊にまとめるので、各相続人の署名捺印も揃い、遺産分割協議書と同等の効力を持つ書類に仕上がります。
つまり、遺産分割協議書を「バラした状態」と理解しておけばよいでしょう。
金融機関や法務局で相続手続きする場合、どちらを提出しても構いませんが、できるだけ早めに手続きしたいときは遺産分割協議証明書をおすすめします。
遺産分割協議証明書の4つのメリット
遺産分割協議証明書は相続手続きに使用しますが、連絡が取れない相続人がいても対応しやすく、相続人同士が離れて住んでいても作成しやすいというメリットがあります。
特に次のようなケースでは遺産分割協議証明書が便利でしょう。
相続人が多いときに便利
相続人が多くても電話やメールで遺産分割協議は進められますが、それぞれ仕事や家族都合などがあるため、一同に会して署名捺印する時間は取りにくいでしょう。
相続人同士の住所が近くても、人数が多ければそれなりの日数がかかるため、早めに遺産分割を成立させたいときは遺産分割協議証明書が効率的です。
連絡しにくい相続人がいても対応しやすい
多忙な相続人や仲の悪い相続人など、連絡が取れない、または連絡しにくい人がいる場合、遺産分割協議書の郵送がストップするかもしれません。
このようなケースでは遺産分割協議書が完成しないため、各種相続手続きの期限に間に合わない可能性も出てくるでしょう。
しかし、遺産分割協議証明書であれば、ひとまず協力的な相続人の書類だけは回収できるので、後は連絡しにくい相続人だけ個別に対応することが可能です。
相続人の住所が遠くても作成がスムーズ
各相続人の住所が全国に分散している場合、遺産分割協議を成立させるだけでも相当な時間がかかります。
さらに遺産分割協議書を郵送にすると、一巡するまでに日数がかかり、紛失リスクも発生します。
ただし、現在はオンラインで遺産分割協議もできるため、遺産分割協議証明書の概要を伝えておけば、各相続人が早めに対応してくれる可能性が高くなります。
各機関の相続手続きに遅れが生じない
相続人が多い、住所が遠く集まりにくいなどの理由から、現在でも5月の連休やお盆休み、正月休みを待って遺産分割協議を行う例が多いようです。
結果として相続手続きが連休明けに集中してしまい、金融機関や法務局などの処理能力を超えてしまうケースがあります。
各機関では繁忙体制も組んでいますが、通常の処理日程をオーバーする可能性は十分考えられるでしょう。
しかし遺産分割協議証明書は全員で集まる必要がなく、各機関の繁忙とも重なりにくいため、通常の日程で処理してもらえます。
遺産分割協議証明書の作成方法
遺産分割協議証明書には2タイプの作成方法があります。
すべての財産を記載する方式もありますが、自分の取得した財産だけの記載でも構いません。
それぞれ具体的な文例を解説しますので、扱いやすい作成方法を選択してください。
すべての財産を記載する方式
遺産分割の内容をすべて記載する場合、遺産分割協議証明書は以下のようになります。
上記の例に倣い、他の相続人(相続太郎)の遺産分割協議証明書も作成します。
自分の取得した財産だけを記載する方式
各相続人が取得した財産だけを記載する場合、遺産分割協議証明書は以下のようになります。
上記の例に倣い、分割良子が相続した財産についても、個別に遺産分割協議証明書を作成します。
遺産分割協議証明書を作成するときの注意点と文書の例
遺産分割協議証明書は相続人ごとに作成するので、作成日がバラバラになるケースもありますが、できるだけ揃えた方がよいでしょう。
また、遺産分割協議書と同じく直筆で署名し、実印で捺印したことを証明するため、印鑑証明書の添付が必要になります。
書式にもいくつか注意点があるので、次の項目は必ずチェックしておいてください。
必ず相続人全員が署名捺印する
遺産分割協議証明書は各種相続手続きに使用するため、第三者へ「誰が何を相続するか」と「相続人全員の同意」を証明しなくてはなりません。
したがって、相続人全員の署名捺印が必要であり、不足があれば差し戻されてしまいます。
作成日はできるだけ揃えるようにする
遺産分割協議証明書を各相続人が個別に作成した場合、作成日がバラバラになる可能性があります。
作成日が異なっても相続手続きには問題なく使えますが、遺産分割協議はもっとも遅い日付で成立したことになります。
相続人同士の認識に行き違いが発生するかもしれないので、全員が納得したタイミングで日付を記入するよう、各相続人と連絡を取り合っておくとよいでしょう。
署名は必ず直筆する
遺産分割協議証明書は手書き・パソコン作成のどちらでも構いませんが、署名だけは本人自署(直筆)になります。
署名までパソコン作成すると無効になってしまうので注意してください。
なお、手の震えなどにより署名できない場合は代筆も認められますが、本人の意思であることを担保しなければなりません。
遺産分割協議証明書に代筆である旨を記載する、または代筆する旨の書面を別に作成するなど、何らかの措置を講じておくべきでしょう。
捺印には実印を使用する
署名とセットになる印鑑の押印を「捺印」といいますが、遺産分割協議証明書は必ず「実印」を使用します。
実印は市町村役場に登録している印鑑なので、認印やインク染み出し式(いわゆるシャチハタ)のハンコは使わないようにしてください。
相続手続きには印鑑証明書も必要
遺産分割協議証明書に署名捺印した場合、実印であることを証明するために印鑑証明書も必要になります。
印鑑証明書は役場で発行してもらえるので、遺産分割協議証明書を郵送(返送)するときには必ず添付しておきましょう。
ただし、金融機関等では発行から3ヶ月や6ヶ月などの有効期限を指定しているため、発行日の古いものは使わないように注意してください。
金融機関等に遺産分割協議証明書の受付けを確認する
遺産分割協議証明書の認知度はあまり高くないため、金融機関等の担当者が知らないケースもあります。
法的に有効な書類なので必ず受け付けてもらえますが、受付可否を本店に確認するなど、窓口でかなり長い時間待たされることも想定されます。
遺産分割協議証明書を提出するときは、問題なく受け付けてもらえるか、事前確認しておくとよいでしょう。
捨印を押印した方がよい場合もある
遺産分割協議証明書に軽微な作成ミスがあった場合、再作成すると手間や時間もかかるため、捨印を押印した方がよいケースもあります。
捨印は遺産分割協議証明書の余白部に押印しますが、捨印の傍らに誤字・脱字などの訂正内容を記載すれば、訂正印として機能します。
遺産分割協議証明書の書き方に関する注意点
大前提になりますが、表題は必ず「遺産分割協議証明書」とし、「遺産分割協議が成立したことを証明する」の一文も記載してください。
うっかり「遺産分割協議書」にすると機能しなくなるので要注意です。
また、各相続人が取得する財産のみを記載する場合、自分が知らない財産を他の相続人が取得してしまう可能性があります。
遺産分割に疑いが生じるとトラブルになりかねないため、すべての財産を記載した遺産分割協議証明書の作成、または全員に財産目録を渡しておくとよいでしょう。
遺産分割の完了後に新たな財産が見つかる場合もあるので、以下のような一文を添えておく必要もあります。
- 後日判明した遺産は○○が取得する
- 後日判明した遺産は、相続人全員で分割方法の再協議を行う
遺産分割協議証明書が必要な手続き
遺産分割協議証明書は以下の相続手続きに必要です。
- 預貯金口座の解約や名義変更
- 不動産の相続登記(名義変更)
- 株式の名義変更
- 自動車や船舶の名義変更
- 相続税申告
被相続人名義の預貯金口座は基本的に解約ですが、定期預金などは名義変更も可能です。
どの相続手続きも印鑑証明書や戸籍謄本、住民票などの必要書類があり、漏れがあると手続きには応じてもらえないので、事前に各機関へ確認しておきましょう。
なお、相続税申告だけは期限があるので要注意です。
相続税は「相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内」が申告期限であり、期限を過ぎると延滞税などのペナルティがあります。
税負担を抑える各種特例なども使えなくなるので、遺産分割協議証明書が送られてきたら、できるだけ早めに署名捺印して返送してください。
まとめ
遺産分割協議は一般的に「全員集合」のもとで行われますが、相続人全員が近くに住んでいるケースは少なく、連休などを利用する方が多いようです。
しかし自然災害やコロナ禍の影響、相続人の健康状態などから、時間はあるが簡単に集まれないという状況も増えています。
このような状況では遺産分割協議証明書のメリットが活かせるので、遠方の相続人や多忙な相続人がいても遺産分割を進められるでしょう。
ただし、記載内容に誤りがあると相続手続きには使えず、添付書類も漏れなく揃えておかなければなりません。
「有効な遺産分割協議証明書を作成できるか?」や「書類を集める時間がない」などの悩みがあれば、早めに相続の専門家へ相談して不安や悩みを解消してください。
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