この記事でわかること
- 兄弟姉妹が遺産を相続するケース・相続割合
- 兄弟姉妹が遺産相続でもめる要因
- 兄弟姉妹の相続争いを避けるために親ができる対策
親が亡くなったときなど、兄弟姉妹で遺産を相続する場合には、下記のような状況からトラブルが起こることがあります。
- 音信不通だった弟が、急に現れて一方的に権利を主張してきた
- 長女が当然のように実家を相続することに、次女が納得していない
- 1人で親の介護をしてきた長男が、遺産を多めに相続したいと申し出た
この記事では、兄弟姉妹が遺産相続でもめる原因を見たうえで、争いを避けるための対策を解説します。
目次
【確認】兄弟姉妹が遺産を相続するケースと相続割合
ひとくちに「兄弟姉妹が遺産を相続する」といっても、具体的には次の2パターンがあります。
- 親の遺産を子どもの兄弟姉妹が相続する
- 兄弟姉妹の遺産を別の兄弟姉妹が相続する
混同を避けるため、まずは上記の2つを簡単に見ていきます。
パターン1. 親の遺産を子どもの兄弟姉妹が相続する
1つ目に紹介するのは、「親」が亡くなったとき、その「子ども」にあたる兄弟姉妹が相続するパターンです。
上の図の家族で「父親」が亡くなった場合、法定相続分どおり遺産を分割するなら、遺産総額の「1/2」を母親が相続し、残り「1/2」を兄弟姉妹の人数で按分します。
この例では、父親が残した遺産が「1億円」なので、長男と次男が相続するのは「2,500万円」ずつです。
なお、その後に母親が亡くなったときは、下記のように母親の遺産を兄弟で等分します。
パターン2. 被相続人の兄弟姉妹で遺産を相続する
2つ目は、亡くなった「兄弟姉妹」の遺産を「別のきょうだい」が相続するパターンです。
そもそも、相続人になる人の優先順位は、民法で下記のように決められています。
兄弟姉妹は「第3順位」のため、上位にあたる「子ども・孫」や「両親・祖父母」などがいない場合にのみ、相続人となります。
法定相続分は、被相続人に配偶者がいる場合には「遺産総額の1/4」、配偶者がいない場合には「遺産のすべてを兄弟姉妹で等分」します。
ちなみに、この「被相続人の兄弟姉妹で遺産を相続する」パターンでは、法律用語として「兄弟姉妹」を「けいていしまい」と読むことが通例です。
さて、以上で見てきたパターンのうち、この記事では主に「パターン1」に焦点を当てて解説していきますので、それを念頭に置きながらご覧ください。
兄弟姉妹が遺産相続でもめる6つの要因
兄弟姉妹が遺産相続でもめるときのよくある要因は、以下の6つです。
- 被相続人から贈与など特別な援助を受けた兄弟姉妹がいる
- 被相続人の介護などを担った兄弟姉妹がいる
- 兄弟姉妹の配偶者が遺産分割に介入する
- 絶縁状態だった兄弟姉妹がいる
- 隠し子など存在を把握していなかった兄弟姉妹がいた
- 遺言書の内容に納得していない兄弟姉妹がいる
要因1. 被相続人から贈与など特別な援助を受けた兄弟姉妹がいる
次のケースのように、被相続人の生前に特別な援助を受けていた兄弟姉妹がいると遺産相続でもめやすいです。
- 父親が亡くなり、相続人は長男・次男の2人
- 長男は以前、父親から住宅の購入費用として1,000万円をもらっていた
- 一方で、賃貸に住み続けている次男はなにも支援を受けていない
この例の長男が受け取っていたようなお金は、「特別受益」に該当するケースがあります。特別受益がある場合、生前に受け取った財産を相続財産に持ち戻したうえで分割します。
先ほどの例で「遺産総額は3,000万円」だとすると、遺産分割の計算は次のとおりです。
1. 遺産総額に特別受益を持ち戻す | 3,000万円+1,000万円=4,000万円 |
---|---|
2. 法定相続分で遺産を分割する | 4,000万円×1/2=2,000万円 →長男・次男で「2,000万円」ずつになる |
3. 特別受益の分を差し引く | 【長男】 2,000万円ー1,000万円=1,000万円 |
【次男】 2,000万円ー0円=2,000万円 |
要因2. 被相続人の介護などを担った兄弟姉妹がいる
被相続人の介護をしていた兄弟姉妹がいると、心情的に「苦労した分、多めに遺産をもらいたい」と感じることはよくある話です。
そのようなケースでは、介護をした人に「寄与分」が認められ、ほかの相続人より多く財産を相続できる可能性があります。寄与分については、下記の記事をご参照ください。
要因3. 兄弟姉妹の配偶者が遺産分割に介入する
遺産相続でトラブルが起きる要因の1つに「兄弟姉妹の配偶者が相続に口を出す」ことが挙げられます。
たとえば、下記のような事例では、もともと仲が良かった兄弟姉妹でも話がこじれかねません。
- 母親が亡くなり、相続人は長女・次女の2人
- 亡くなった母親の介護は、主に長女が担っていた
- 姉妹としては、母親の遺産は2人で平等に分けるつもりだった
- 相続について話をしているとき、長女の旦那が「(長女は)親の介護を積極的にしたのだから、遺産を多くもらうべきだ」と言い始めた
このようなケースは意外と多いため、遺産分割の話し合いの場には相続人の配偶者は入れないことをおすすめします。
要因4. 絶縁状態だった兄弟姉妹がいる
親が亡くなって相続が始まると、今まで連絡が取れなかった兄弟姉妹がどこからか噂を聞いて、実家を訪ねてくることがあります。
相続において、兄弟姉妹は平等に遺産を分けるのが基本ですが、このようなケースでは心情的に「今までどこにいるかもわからなかったのに、遺産だけ相続するなんて不公平だ」と感じやすいものです。
もし親としても、「絶縁状態だった子どもには、ほかの兄弟姉妹よりも相続額を少なくしたい」と考えているなら、遺言書を残すことをおすすめします。
遺言書で分割方法を決めておけば遺留分を侵害していない限り、基本的には亡くなった人の意思が尊重されます。
要因5. 隠し子など存在を把握していなかった兄弟姉妹がいた
相続が始まったら、法定相続人の確認のため、被相続人の出生から死亡までの連続するすべての戸籍謄本を確認します。その結果、「愛人との間に子どもがいた」などの事実が発覚するかもしれません。
非嫡出子(婚姻関係のない男女の間に生まれた子ども)は、被相続人が母親の場合は「無条件」で、父親の場合は「認知しているとき」に相続人になります。
ただでさえ、親に隠し子がいて動揺しているなか、その人と遺産の分け方について話し合わなければならないため、トラブルに発展することも少なくありません。
要因6. 遺言書の内容に納得していない兄弟姉妹がいる
被相続人が遺言書を残していた場合、その内容が不公平なものだとトラブルになりやすいです。たとえば「長男にすべての財産を相続させる」と書かれていた場合、他の兄弟姉妹が不満を感じるのは当然です。
民法では相続財産について「遺留分」という権利が設定されています。遺留分を下回る不公平な遺言が残されていた場合には、権利を侵害されている分の返還請求ができます。
兄弟姉妹の相続争いを避けるために親ができる3つの対策
兄弟姉妹の相続争いを避けるために親ができる対策は、以下の3つです。
- 遺言書を作成する
- 生命保険を活用する
- 必要に応じて弁護士に相談する
対策1. 遺言書を作成する
遺言書を残しておくことで、自分が亡くなった後に子どもが相続争いすることを防げます。これは、親としての「希望」を書面で伝えることで、子どもも納得しやすいからです。
たとえば、2人兄弟のうち長男だけが生前に多額の贈与を受けていた場合、遺言書に記載する次男の相続額を多くすることで、兄弟は納得して遺産を分割しやすくなります。
遺言書の簡単な書き方は、下記の動画をご覧ください。
対策2. 生命保険を活用する
兄弟姉妹の相続争いを回避させるためには、生命保険の活用も有効です。
生命保険金の受取人を相続させたい親族にすれば、生命保険金は原則として当該受取人固有の財産であるため、財産を渡せるのが通常です。ここには「被相続人の意思」が反映されるため、相続人としても納得しやすくなります。
なお、生命保険には、下記のとおり相続税の非課税枠が設けられています。
生命保険の非課税枠=
500万円×法定相続人の数
相続人が受け取る保険金の合計がこの枠内であれば、相続税はかかりません。
対策3. 必要に応じて弁護士や司法書士に相談する
相続争いを避けるために遺言書を作成しても、要件を満たしていないと効力は発揮されません。そこで、作成する段階で弁護士や司法書士に相談しておくとより安心です。
また、遺言書で弁護士を「遺言執行者」に指定しておくことで、第三者の立場から当事者の意見を調整して手続きを進めてくれます。ただし、相続争いが生じた場合には、遺言執行者の弁護士は利益相反となるため、特定の相続人の代理人となることはできません。
なお、ベンチャーサポートグループには、相続を専門にしている弁護士や司法書士が在籍しています。遺言書の書き方などでお困りのことがありましたら、お気軽に下記からご相談ください。
被相続人の兄弟姉妹で遺産を相続する場合の注意点
ここからは参考として、「被相続人の兄弟姉妹で遺産を相続する」パターンでの注意点として、以下の2つを簡単に紹介します。
- 兄弟姉妹は2割加算の対象となる
- 兄弟姉妹には遺留分が認められていない
注意点1. 兄弟姉妹は2割加算の対象となる
相続税は、被相続人との血縁関係の薄い人が相続するときに「税額が2割加算になる」制度があります。兄弟姉妹から財産を相続する際も、2割加算の適用対象です。
なお、2割加算の対象になる人は、下記の図のとおりです。
注意点2. 兄弟姉妹には遺留分が認められていない
兄弟姉妹から財産を相続するとき、遺留分は認められていません。このため、下記のケースでは、基本的には三女がそのまま遺産の全額を相続できます。
- 三姉妹の長女が亡くなった
- 相続人は、次女と三女の2人のみ
- 長女が遺言書で「三女に遺産のすべてを相続させる」と書き残した
- 次女には遺留分がないため、三女が遺言どおり全財産を相続する
生前に対策して、兄弟姉妹の相続争いを回避しよう
この記事では、兄弟姉妹が遺産相続でもめる原因とその対策を紹介しました。
相続争い対策として、有効な手段の1つが「遺言書」を残すことです。しかし、書き方を間違えてしまうと効力が発揮されない恐れがあるため、不安な方はあらかじめ弁護士や司法書士に相談することをおすすめします。
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