東京弁護士会所属。
交通事故の被害者にとって、弁護士は、妥当な慰謝料をもらうための強い味方になります。
特に、加害者の保険会社との示談交渉がうまくいかず悩まれていたり、後遺症が残ってしまい後遺障害慰謝料請求を考えていたりする方は、 ぜひ検討してみてください。
交通事故における指の後遺症として、マレットフィンガーがあります。
マレットフィンガーとは、手指の突き指で指先が曲がったままの状態になり、指先をまっすぐ伸ばせなくなることです。
突き指自体は大したケガではないと思われがちですが、突き指の一種であるマレットフィンガーはケガの程度も重く、放置をすると指が伸ばせなくなり、痛みが残る後遺症につながります。
交通事故でも、転倒などの際に指の骨折や腱の損傷によってマレットフィンガーになる方がいらっしゃるのです。
この記事では、交通事故の被害者がマレットフィンガーになった場合の後遺障害の等級や慰謝料、後遺障害等級認定の申請の手続きなどについて解説します。
目次
マレットフィンガーの症状と、どのような場合にマレットフィンガーになるのかを解説をします。
マレットフィンガーとは、医学的にはマレット変形(槌指)とも呼ばれることもあり、指の第1関節(DIP関節)が木槌のように曲がったまま伸ばせなくなった状態になることをいいます。
マレットフィンガーには2つの病態があり、腱性マレットフィンガーと骨性マレットフィンガーに分類され、病態によって症状に違いがあります。
腱性マレットフィンガーは、指先を伸ばすために指の上側についている腱(伸筋腱)が切れたことにより生じるものです。
指の第1関節を自力で伸ばすことができませんが、痛みは軽い場合が多いといわれています。
骨性マレットフィンガーは、指の第1関節の関節内の骨折により、伸筋腱がついている骨が関節内骨折を起こして生じるものです。
指の第1関節を自分で伸ばせず、骨折による強い痛みと腫れがあることが特徴です。
マレットフィンガーは、指先が急激に屈曲を強制された際に生じます。
日常的には、バレーボールなどの球技で、指先に力が入った状態でものにぶつけるなどの場合です。
自転車やバイクなどは乗車時に指が外に出ているため、交通事故で転倒した際に指を損傷するケースが多く見受けられます。
マレットフィンガーは、適切な治療とリハビリを行うことにより、完治する場合はあります。
しかし、以下のような症状が残る場合も少なくありません。
では、適切な治療とリハビリとはどのような内容なのかを見ていきましょう。
前述したように、マレットフィンガーには腱性と骨性とがあります。
それぞれの治療法を見ていきましょう。
腱性の場合は、一般にスプリントと呼ばれる装具を使用した保存療法が行われます。
指の第1関節を真っすぐに伸ばした状態でスプリントを装着し、第一関節が曲がらないように固定を行い、安静にする方法です。
腱が治るまでに約8週間前後かかることが多く、腱が再度切れないように、この間は常にスプリントを装着する必要があります。
受傷から時間が経っている場合など、自然治癒が見込めない場合は、手術による腱形成が必要になる場合もあります。
骨性の場合は、手術による治療が一般的となります。
皮膚の上から細い鋼線を刺し、切開することなく行うことが多く、固定期間は4~6週間が目安になります。
その後は、第一関節を自由に動かせるまでリハビリを行います。
腱性マレットフィンガーは3ヵ月程度、骨性マレットフィンガーは2~3ヵ月程度が全治の目安といわれます。
医師の診断により、これ以上治療を続けても症状の改善が認められない状態になったことを、症状固定と言います。
後遺障害とは、症状固定後の後遺症のうち、医学的に交通事故が原因であることの証明と、労働能力の低下・喪失が認められ、自賠責保険等級に該当するものとなります。
後遺障害等級の認定を受けるためには、医師による後遺障害診断書などを添えて保険会社を通じて申請し、後遺障害別等級表にもとづき、損害保険料率算出機構の等級認定を行う必要があります。
マレットフィンガーが該当する可能性のある等級を確認しましょう。
第1関節が曲がらなく変形が残る場合(機能障害)は、14級7号に該当する可能性があります。
指を動かそうとすると痛みが生じる場合(神経症状)は、14級9号または12級13号に該当する可能性があります。
このように、マレットフィンガーは後遺障害に認定され得る後遺症なのです。
交通事故にあった場合の被害者が請求する損害賠償の費目として、時期によって以下のような違いがあります。
治療中の損害としては、治療費・通院交通費・入通院慰謝料などが、後遺障害がある場合は、症状固定後の後遺障害慰謝料と後遺障害による逸失利益が加わるのです。
慰謝料は、もっとも金額の低い自賠責基準と、弁護士が関与する場合のもっとも高い裁判所基準で見ていきます。
入通院慰謝料とは、症状固定前までの治療中の慰謝料を言います。
自賠責基準での慰謝料は、1日につき4,300円となり、これに治療期間の範囲内での日数を掛けます。
そのうえで、以下のいずれか少ない方の金額が通院慰謝料とされます。
たとえば、通院期間の全日数が90日、実際に通院した日数が50日の場合は、以下の通りです。
いずれか少ない方の金額が採用されますので、受け取れる金額は38万7,000円となります。
赤い本(公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部発行 民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準)に掲載されている算定基準を用います。
たとえば、入院がなく通院のみで通院期間が3ヶ月の場合、赤い本の別表Ⅰを見ると、入通院慰謝料は73万円となります。
後遺障害慰謝料とは、症状固定後の後遺障害に対する慰謝料を言います。
自賠責基準での後遺障害慰謝料は、その等級区分により金額が決まっています。
後遺障害等級12級で94万円、14級で32万円です。
赤い本の基準を用いてみると、後遺障害等級12級で290万円、14級で110万円となります。
事故による後遺障害によって、労働ができないことや、労働能力に制限がかかることがあります。
後遺障害がなければ、本来得られたであろう将来の収入を逸失利益といいます。
後遺障害逸失利益の例として、たとえば、年収400万円のサラリーマン40歳の男性が、マレットフィンガーの後遺症により、後遺障害等級12級と14級それぞれに認定された場合を考えてみます。
後遺障害逸失利益の例後遺障害等級12級に認定された場合
労働能力喪失割合は14/100、ライプニッツ係数は18.327
計算上の後遺障害逸失利益は、400万円×0.14×18.327=1,026万3,120円
後遺障害等級14級に認定された場合
労働能力喪失割合は5/100、ライプニッツ係数は18.327
計算上の後遺障害逸失利益は、400万円×0.05×18.327=366万5,400円
ただし、後遺障害等級が14級9号の場合は、労働能力喪失期間を5年とする場合があり、その場合は、労働能力喪失割合は5/100、ライプニッツ係数は4.580となります。
計算上の後遺障害逸失利益は、400万円×0.05×4.580=91万6,000円
慰謝料の算定基準の違いと後遺障害の認定等級により、請求できる賠償額に大きな差が生じることがおわかりいただけるでしょう。
後遺障害認定を受けるための手続きについて解説します。
認定を受けるための書類に不備があると、目的の等級の認定がされない場合がありますので、不備のない申請書類を用意することが重要です。
認定の申請方法には、次の2つの方法があります。
事前認定の手順は、以下のようになっています。
被害者は、後遺障害診断書を加害者側の保険会社に提出を行うだけで、あとは保険会社に手続きを任せる方法となります。
この方法のメリット、デメリットは以下のようになっています。
事前認定のメリット・デメリットメリット
必要な書類が後遺障害診断書のみとなり、被害者の手間が少ない
デメリット
加害者側の保険会社が申請書類作成に関与するため、以下の点から被害者が納得いく認定が受けられない可能性がある
後遺障害の症状が客観的に明らかな画像によって裏付けられる場合であれば、事前申請は被害者にとっては簡便な手続きといえます。
被害者請求は、以下の手順で行います。
被害者自ら認定のための申請書類を用意し、保険会社を通じて申請する方法となります。
この方法のメリットとデメリットは以下のようなものが挙げられます。
被害者請求のメリット・デメリットメリット
申請書類を自分で用意するため、適正な認定を受ける可能性が高い
後遺障害認定を受けた時点で、示談成立前でも自賠責保険限度額分の保険金を受け取れる
デメリット
申請のための書類を自ら準備しなければならない
書類作成に専門知識が必要
被害者請求に必要な主な書類等は、以下のものが挙げられます。
必要な書類
確実に認定を受けたい、手間がかかっても妥協したくない、加害者側の保険会社が信用できないなどの場合は、被害者請求を選ぶのが適しているといえるでしょう。
事前認定または被害者請求での認定の結果、後遺障害に非該当(後遺障害でない)、もしくは認定された等級に不服がある場合は、異議申立てをすることができます。
異議申立てについては、時効期間内であれば何度でも申立てを行うことができます。
事前認定の場合は損害保険会社を通じて、被害者請求の場合は自賠責保険会社を通じて、損害保険料率算出機構あてに異議の申立てを行います。
異議申立ての理由の裏付けとなる新たな医学的証拠がない場合は、異議が認められない、つまり結果が変わらない可能性が高いです。
交通事故の被害者としてマレットフィンガーの後遺症がある方は、後遺障害に認定される可能性があります。
弁護士が関与することで、認定される後遺障害等級を上げることや、賠償額の基準を被害者により有益な裁判基準に近づけることができます。
また、後遺障害の認定においても被害者請求においてしっかりとした申請を行うことができることも、弁護士に依頼するメリットです。
交通事故に強い弁護士法人ベンチャーサポート法律事務所では、無料相談をお受けしております。
後遺障害の認定についてわからない方、賠償額など交渉に納得が行かない方は、お気軽にご相談下さい。