東京弁護士会所属。
交通事故の程度によっては、入院が必要になったり、定期的な通院、精神的にも疾患を負ったり、PTSDとして現れることもあります。
こうした状況の中で、交渉ごとを被害者本人でまとめようとすることは非常に大変です。
弁護士に示談交渉を依頼することで、直接示談交渉をしたり、資料を準備したりする精神的負担が軽減できます。
つらい事故から一日でもはやく立ち直るためにも、示談交渉は弁護士に任せて、治療に専念してください。
レジャーや帰省のシーズンになると、毎年のように玉突き事故のニュースが報道されます。
「車間距離を取れば回避できる」といわれますが、自分で調整できるのは前方車両との距離だけですし、間隔が開くとすぐに別車両が割り込んできます。
過度な渋滞ではいつ発生してもおかしくない事故ですが、むちうちなどの後遺障害も残りやすいため、低速で発生した玉突き事故でも油断はできません。
また、玉突き事故は当事者が多くなるため、誰に治療費や慰謝料を請求してよいかわからなくなるでしょう。
過失も1人だけとは限らないので、玉突き事故では過失割合の考え方も複雑になります。
今回は玉突き事故の過失割合をわかりやすく解説しますので、交通事故の被害者になられた方や、慰謝料などの請求先が分からない方はぜひ参考にしてください。
目次
3台以上の車が連鎖的に追突する状況を玉突き事故といいます。
具体的には、先頭車両Aの後にBとCが続いており、最後尾のCがBに追突した反動で、BがAに追突してしまう連鎖的な事故です。
このケースではCの責任が100%となりますが、責任の重さは以下の観点で考えます。
観点
基本的には後方車両の責任ですが、状況によっては他の車両も一定の責任を負わなければなりません。
玉突き事故は多重衝突の一種であり、最初に追突した車両の基本過失割合が100%となります。
後方車両の前方不注視や、不適切な車間距離などが問題となるため、過失割合の考え方は追突事故と同じです。
ただし、事故状況によっては追突された側の車両にも過失が発生するため、被害者であっても損害賠償請求される可能性があります。
慰謝料などの請求にも影響するので、玉突き事故はケース別に過失割合を理解しておきましょう。
先頭A、真ん中B、後方Cの順で走行し、CがBに追突したことでBが押し出され、BがAに追突した玉突き事故の場合、各車両の過失割合は以下のようになります。
このケースは車両Cの一方的な過失となるため、AやBが徐行中、または停車中であってもCの過失割合が100%となります。
他のケースにも共通しますが、玉突き事故専用の基準があるわけではなく、一般的な追突事故を基準に過失割合を考えるものと理解してください。
高速道路上等で先頭A、真ん中B、後方Cの順で走行し、不用意にBが急ブレーキを踏んだことでCに追突され、その反動でBがAに追突したときは、以下の過失割合になり得ます。
追突の場合でも不必要な急ブレーキは過失が認められます。
Bにも一定の過失が認められますが、最後尾となるCの過失割合がもっとも高くなるでしょう。
先頭A、真ん中B、後方Cの順で走行し、先頭Aが不必要に急ブレーキを踏んだことでBに追突され、さらにCがBに追突した場合、過失割合は以下のようになります。
急ブレーキは追突事故の発生確率を高めてしまうため、先頭車両のAは30%の過失を負う可能性があります。
CとBは過失の内容によるため、車間距離や速度、前方不注視などを考慮して過失割合が決まります。
先頭AにBが追突し、2車が停車しているところにCが追突(CがBに追突)した場合、順次衝突という状況になります。
順次衝突の場合、すでに発生している追突事故と、後から発生した追突事故を別に考えるため、連鎖的な玉突き事故とは過失割合の考え方が異なります。
なお、Cが追突した反動でBがAに追突し、Aの被害がさらに大きくなった場合、CはAに対する過失も負うことになります。
高速道路では車両のスピードも上がっているため、駐停車や急ブレーキを踏んだ車両の過失割合が高くなります。
道路交通法では高速道路上の駐停車を禁止しており、同様の玉突き事故でも一般道の過失割合とは異なるため、以下のケースを参考にしてください。
先頭Aが不必要な急ブレーキを踏んだことでBに追突され、さらにCがBへ追突した場合、高速道路上の玉突き事故であれば以下の過失割合になります。
なお、Bに対するいやがらせでAが急ブレーキを踏んでいた場合、Bの過失割合は修正(減算)される可能性があります。
ただし、Cの追突により、Aの損害を拡大させたと認められる場合は、Aとの関係でもCに過失が認められる場合もあります。また、BとCの関係では、Cにも過失が発生します。
先頭Aには自らの過失がなく、やむを得ない事情で停車したところへBが追突し、さらにCがBへ追突した場合、過失割合は以下のようになります。
ただし、Cの追突により、Aの損害を拡大させたと認められる場合は、Aとの関係でもCに過失が認められる場合もあります。
また、路肩や路側帯に停車していたAにBが追突したときは、Bの過失割合が100%になります。
なお、BとCの関係では、Cにも過失が発生します。
先頭Aが自らの過失で停車したところへBが追突し、さらにCがBに追突して玉突き事故となった場合、高速道路であれば以下の過失割合になります。
ただし、Cの追突により、Aの損害を拡大させたと認められる場合は、Aとの関係でもCに過失が認められる場合もあります。
何らかの事情により高速道路の本線で停車する場合、必ずハザードランプや三角表示板、発煙筒を使用してください。
なお、BとCの関係では、Cにも過失が発生します。
玉突き事故が発生したときは、事故類型から基本的な過失割合を算定し、さらに修正要素を反映させて最終的な過失割合を決めていきます。
事故類型とは、事故当時の車両の動きや、事故の当事者(車同士や車と人の事故)などの分類であり、前半で解説した事故パターンが事故類型にあたります。
玉突き事故では最初に追突した車両の過失が高くなりますが、他の車両にも過失があれば、以下のように修正要素を反映させます。
玉突き事故の基本過失割合が決まったら、各車両の著しい過失を修正要素として考慮します。
著しい過失には前方不注視やわき見運転などがあり、過失割合は10%程度加算されますが、玉突き事故の場合は以下の過失も修正要素となります。
著しい過失による修正要素
交通事故の重過失には無免許運転や居眠り運転などがあり、基本過失割合に20%程度加算されますが、玉突き事故には以下のような修正要素もあります。
重過失による修正要素
著しい過失や重過失は被害車両にも適用されるので、慰謝料や損害賠償金に影響する可能性もあるでしょう。
一般的な追突事故の場合、被害車両にまったく過失がなければ、追突したドライバーに慰謝料や損害賠償を請求することになります。
しかし玉突き事故では当事者が複数いるため、他のドライバーに慰謝料などを請求しつつ、自分も請求される側になる可能性があります。
考え方が少々複雑になるため、まず1人のドライバーに100%の過失があるケースから整理してみましょう。
最後尾の車両CがBに追突し、押し出されたBが前方のAに追突した場合、A・Bにまったく過失がなければ、過失割合はCが100%となります。
したがって、AとBの慰謝料や損害賠償は、車両Cのドライバーへ請求します。
玉突き事故の場合、直接追突してきた車両であっても、過失がなければ慰謝料等は請求できないので注意してください。
先頭A、真ん中B、後方Cが玉突き事故を起こした場合、事故原因が車両Bの急ブレーキであれば、A・B・Cの過失割合は0:3:7となります。
このケースで慰謝料等を請求する場合、請求先は以下のように考えます。
ちなみに過失のあるBとCは、Aに対する共同不法行為者となるため、Aはどちらか一方に慰謝料や損害賠償の全額を請求しても構いません。
玉突き事故が発生した場合、過失ありのドライバーは共同不法行為者となり、被害者に対して慰謝料や損害賠償の連帯債務を負うことになります。
前述のケースでは、BとCがAに対する連帯債務を負っているため、どちらか一方にAから慰謝料等の全額を請求される可能性もあります。
玉突き事故で被害者となった場合、むちうちの後遺障害が残りやすいので要注意です。
むちうちの治療は長引きやすく、治療費もかさんでしまうため、十分な慰謝料を請求しておかなければなりません。
重度のむちうちは治療期間が長くなり、治療費の総額が数十万円になるケースもあります。
しかし、慰謝料は示談交渉で決めるため、十分な金額を支払ってもらえない可能性もあるでしょう。
仕事に影響すると治療費以外の損害も発生するので、保険会社の提示内容に納得できないときは、必ず弁護士に相談してください。
弁護士基準(裁判基準)でむちうちの慰謝料を算定した場合、任意保険基準の2倍以上になる可能性もあるため、十分な治療費を確保できるでしょう。
玉突き事故には様々な発生原因があり、当事者も複数になるため、過失割合の考え方や慰謝料などの請求先がわかりにくくなります。
事故直後は冷静さを欠いているため、過失のないドライバーを責めてしまう可能性もあるでしょう。
警察や保険会社が事故原因を調査するので、最終的には責任の所在が明らかになりますが、過失割合の決定は保険会社が行います。
相手側に有利な過失割合はまず提示しないため、納得できないときは示談書への署名・押印を拒否してください。
示談が決着すると後から覆せなくなるため、不利な内容で交渉が進むときは、早めに弁護士へ相談しておきましょう。