東京弁護士会所属。
交通事故の程度によっては、入院が必要になったり、定期的な通院、精神的にも疾患を負ったり、PTSDとして現れることもあります。
こうした状況の中で、交渉ごとを被害者本人でまとめようとすることは非常に大変です。
弁護士に示談交渉を依頼することで、直接示談交渉をしたり、資料を準備したりする精神的負担が軽減できます。
つらい事故から一日でもはやく立ち直るためにも、示談交渉は弁護士に任せて、治療に専念してください。
まずは、巻き込み事故とはどのような事故なのか、原因や注意すべきポイントを確認して、今後の巻き込み事故防止につなげましょう。
自動車が道路を右左折する場合、後方にいる二輪車や歩行者に気付かず、接触事故を起こすケースがあります。
事故の発生状況から「巻き込み事故」と呼ばれますが、左側後方のバイクや自転車はドライバーの死角に入りやすいため、左折時によく発生する交通事故です。
右左折の巻き込み事故はドライバー側の過失割合が大きくなり、自動車の運転中は誰もが引き起こす可能性があるので、まず事故原因と防止策を理解しておきましょう。
巻き込み事故の類型はさまざまですが、主な発生原因は4つに絞られます。
人によっては習慣になっているケースもあるので、自分の運転に当てはまるかチェックしておきましょう。
4輪車以上になるとカーブの際に内輪差が出るため、後輪の軌道は前輪よりも内側となります。
多くのドライバーが知ってはいるものの、実際の運転では意識されていないケースが多く、停止中のバイクや自転車、歩行者も巻き込んでしまう可能性があります。
内輪差を失くすことはできませんが、ミラーや目視で後方をよく確認し、後輪の軌道もイメージしておけば、巻き込み事故を回避できる確率は高くなるでしょう。
なお、車両が大型になるほど内輪差も大きくなるといわれますが、実際には前輪から後輪までの長さ(ホイールベース)が影響しています。
ルームミラーやサイドミラーには死角ができてしまうため、車の左側後方や、ほぼ真横に接近したバイクに気付かない場合があります。
また人によっては、ミラーの確認不足が習慣化しているケースもあるので要注意です。
ミラーの角度に問題があれば速やかに調整し、目視とともに後方確認する習慣を身に付けましょう。
車やバイクが左折するときは巻き込み事故を防ぐため、あらかじめ道路の左端に車両を寄せて、直進車が追い越しできないようにしておきます(道路交通法34条1項)。
左車線を走行していれば大きな過失とはなりませんが、直進車を妨害するように大回りした場合は、過失割合の加算要素となってしまいます。
前もって左寄せしておけば、後方車両も巻き込み事故を回避しやすくなるでしょう。
巻き込み事故の発生原因として、前方車両が方向指示器で左折指示を出していない、または左折指示と同時に左折を開始するケースがあります。
いずれも後方車両の減速が間に合わないため、高確率で巻き込み事故が発生します。
左折するときは「曲がります」の意思表示が重要となるため、交差点の手前30メートル程度の位置から方向指示器を出すようにしましょう。
交差点を車が左折するとき、後方から直進してきたバイクを巻き込むと、車とバイクの基本的な過失割合は80対20となります。
巻き込み事故の状況によっては90対10の過失割合もあるため、加害者側の一方的な過失になるケースはそれほど多くありません。
今回は事故類型に応じた過失割合を解説しますが、まず巻き込み事故が発生する状況や、主な原因と回避策をおさらいしておきましょう。
左折しようとした車が後方から直進してきたバイクに気付かず、そのまま巻き込んでしまうと、車とバイクの基本的過失割合は80対20になります。
車は交差点の手前30メートルの地点から方向指示器を出していたものとしますが、バイクが前方の注意を怠らなければ、回避できた可能性のある巻き込み事故です。
したがって、バイクにも一定の過失が認められることになります。
前方を走行するバイクを車が追い越し、左折巻き込み事故が発生したときは、車とバイクの基本的な過失割合が90対10になります。
このケースでは、交差点の手前30メートルは追い越し禁止であることや、バイクを認識した上での進路妨害となっているため、車の過失割合が高くなります。
前方を走行するバイクが左折によって車を巻き込んだ場合、バイクと車の基本的な過失割合は60対40となります。
このケースはバイクが道路の左側(または左車線)に寄らず、車の右側から大回りで左折しているため、バイクの過失割合が高くなります。
なお、バイクが左折指示を出していなかった、あるいは左折指示が遅れたときは、バイク側の過失が加算されるので注意が必要です。
バイクが交差点の手前で前方の車を追い越し、そのまま左折して巻き込み事故が発生した場合、バイクと車の基本的な過失割合は80対20になります。
このケースは交差点手前が追い越し禁止であることや、車の進路妨害と大回りの左折が考慮されるため、バイクの過失割合が高くなります。
巻き込み事故が発生したときは、加害者・被害者双方の保険会社が交渉して過失割合を決定します。
まず、事故の態様や類型から基本的な過失割合を算定し、加害者と被害者の過失から修正要素を加味したうえで、最終的な過失割合が決まります。
ただし必ずしも公正な結果になるとは限らないので、基本的な過失割合や修正要素の考え方は、ある程度理解しておかなければなりません。
一度決着した示談交渉はあとから覆せなくなるため、相手側が過失割合を提示しても、内容をよく吟味して、安易に応じないように注意しましょう。
基本的な過失割合は事故態様と類型から決定しますが、追突や巻き込みといった事故のタイプが態様となります。
車両等の区別(車なのか人なのか)や当事者の行動などが事故の類型となり、別冊判例タイムズ(通称)に照らし合わせて確定させます。
事故態様・類型から基本的な過失割合が決まったら、次に加算・減算となる修正要素を過失割合に反映させます。
なお、別冊判例タイムズとは「別冊判例タイムズ・民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準・全訂5版」を指しており、誰でも通販サイトなどで購入できます。
最終的な過失割合には加害者・被害者の過失も反映するため、巻き込み事故では以下の修正要素が加算されます。
直近左折とは、後方車両が間近に迫っている状態で左折したケースのことを指し、著しい過失には前方不注意やわき見運転、酒気帯び運転などがあります。
無免許運転や居眠り運転、時速30キロ以上の速度超過や酒酔い運転などが重過失となり、巻き込み事故の被害者であっても過失割合が高くなります。
巻き込み事故に限らず、交通事故の発生直後は気持ちが動転しているため、具体的な事故状況を思い出せないケースがあります。
記憶が曖昧な状態では相手側の保険会社に言われるままに交渉を終える可能性があり、十分な慰謝料や賠償金が支払われないリスクもあるでしょう。
ただし、証言だけで過失割合が決まることはないため、証拠の収集が交渉時には役立ちます。
交渉が苦手な方は弁護士に代理を依頼できるので、不利な過失割合になりそうなときは早めに相談しましょう。
事故現場の状況は再現できないため、車両が撤去された後は、証拠収集が不可能になります。
手元にスマートフォンやカメラがあれば、必ず事故現場を撮影しておきましょう。
車両の損傷個所や現場全体の写真は重要な証拠となるため、相手が事実と異なる供述をしても十分に対抗できます。
また、警察が到着するまでは現場を保全しておきたいところですが、道路の状況などからやむを得ず車両を移動させる場合もあります。
このようなケースでは事故直後の写真が重要となり、車両の位置関係などもわかるため、警察も重要証拠として扱ってくれます。
ドライブレコーダーの映像も証拠として役立つので、SDカードなどの記録メディアは必ず取り出してください。
保険会社の担当者は示談交渉のプロであり、過失割合の算定根拠も熟知していますが、基本的には自分達に有利な過失割合を提示してきます。
お互いの主張が噛み合わない場合、最後は担当者の交渉力次第となるため、相手側に有利な展開になる可能性もあるでしょう。
事実を主張しても聞き入れてもらえないときや、不利な交渉になるときは、速やかに弁護士に示談交渉を依頼しましょう。
弁護士には優れた交渉力があり、依頼人の利益になるよう十分な理論構成を練ってくれるため、有利な条件で交渉がまとまる可能性が高くなります。
事故には至らなかったものの、左折開始と同時に直進するバイクに気付き、慌ててブレーキを踏んだ経験のある方は多いのではないでしょうか。
後方車両となるため気付きにくく、ミラーの死角にも入りやすいため、巻き込み事故はすべてのドライバーが背負うリスクといえます。
しかし、後方にも十分な注意を払い、早めに左に寄せて後方車両に左折を意思表示すれば、事故の発生確率はかなり低くなるでしょう。
人身事故は、自分や被害者はもちろん、各々の家族の人生も大きく変える恐れがあるため、まず事故を発生させない工夫が必要です。
不幸にして事故が発生し、過失割合でも不利な状況になるときは、必ず交通事故に強い弁護士へ相談してください。