東京弁護士会所属。
交通事故の程度によっては、入院が必要になったり、定期的な通院、精神的にも疾患を負ったり、PTSDとして現れることもあります。
こうした状況の中で、交渉ごとを被害者本人でまとめようとすることは非常に大変です。
弁護士に示談交渉を依頼することで、直接示談交渉をしたり、資料を準備したりする精神的負担が軽減できます。
つらい事故から一日でもはやく立ち直るためにも、示談交渉は弁護士に任せて、治療に専念してください。
目次
追突事故の発生原因が後方車の前方不注意だったときは、原則として100%後方車の過失となります。
前方車の状態(走行中や停車中)は問われないため、事故の責任はすべて追突したドライバーが負わなければなりません。
ただし、前方車にも何らかの過失があれば、過失割合は「前方車30%:後方車70%」のように変わるため、事故発生時の状況を正確に把握する必要があります。
前方不注意による交通事故には以下のようなケースがあるので、過失割合の考え方を理解しておくとよいでしょう。
車線変更は追突リスクを高めてしまうため、追突事故が起きたときは前方車にも過失が発生します。
また、車両の種類によって過失割合は以下のように異なります。
前方車が車線を変更する場合、後方車の進行を妨害しないように注意しなければならず、道路交通法第26条の2第1項でもみだりな進路変更を禁止しています。
追突事故が発生した場合、後方車の一方的な過失になるとは限らず、被害者側に過失があったかどうかも十分に検証しなければなりません。
前方不注意で追突事故が発生した場合でも、前方車が急ブレーキを踏んでいれば以下の過失割合になります。
車両の種類や前後関係が同じでも、車線変更のケースとは過失割合が大きく違うので注意してください。
前方不注意の状態で赤信号の交差点に進入し、対角車線の直進車両と衝突事故を起こした場合は、加害者100%の過失割合になります。
被害者側の信号が青であれば車両の種類(車またはバイク)は問われないため、信号無視したドライバーがすべての責任を負わなければなりません。
一時停止に気付かないまま交差点に進入し、対角車線の直進車両と衝突した場合、一時停止規制の有無や車両の種類が過失割合に影響します。
スマホなどに気を取られた歩行者が赤信号を無視した場合、車と衝突した際には以下の過失割合になります。
このケースでは車両側も前方不注意となるため、30%の過失が認められることになります。
なお、ここまでに解説した過失割合を「基本過失割合」といい、さらに修正要素を考慮して最終的な過失割合を決定します。
具体的な修正要素は以下のとおりですが、事故発生時の状況によっては被害者でも過失割合が加算されるため、慰謝料などに大きく影響するでしょう。
事故の当事者に著しい過失や重過失があったときは、修正要素として基本過失割合に加算します。
著しい過失は5~10%の加算となり、重過失は20%程度加算されるので、相手側に以下のような過失があったかどうかを確認する必要があります。
著しい過失
重過失
なお、自動車対自転車、自動車対歩行者の事故であれば、以下の修正要素も考慮します。
自動車対自転車の交通事故であれば、以下のような減算・加算の修正要素があります。
自転車側の過失が減算される要素
自転車側の過失が加算される要素
以下のような状況で交通事故が発生したときは、歩行者の過失にも修正要素を考慮します。
歩行者側の過失が減算される要素
歩行者側の過失が加算される要素
歩行者に被害があったときは100%自動車の過失と思われがちですが、必ずしも10対0の過失割合になるとは限りません。
交通事故が発生した場合、一般的には被害者・加害者双方の保険会社が交渉し、相手側の保険会社から過失割合が提示されます。
ただし、どちらの保険会社も顧客優先の立場で示談交渉するため、交渉力次第では事実が封じ込められてしまい、不利な過失割合になる可能性も十分にあります。
示談に応じてしまうと後から覆すことは困難になるため、相手にも非があるのに10対0の過失割合を提示されたときは、以下のように対処してください。
片側賠償とは、本来であれば10対0や9対1の過失割合になるところ、9対0や8対0などの過失割合にして、片方だけが損害賠償責任を負う解決策です。
たとえば事故の当事者Aが10対0を主張し、Bが9対1を主張している場合、10%分の過失割合をめぐって示談交渉が難航するケースがあります。
交渉の長期化は双方にとってメリットがないため、Aに10%の過失を認めてもらう代わりに、Bは10%分の損害賠償請求をしないという譲歩提案になります。
BはAからの損害賠償を諦めることになりますが、過失は0%のままになるため、保険料が増額されることはありません。
交渉がまったくまとまらないときは、妥協案として検討してみるのもよいでしょう。
保険会社の担当者に任せても期待どおりの結果にならないときは、自分で直接交渉することも検討してください。
担当者には十分な知識があるため、過失割合の算定を間違えることはまずありませんが、最終的には交渉力の差が出てしまいます。
業務繁忙などを理由に、適正な過失割合の算定よりも早期決着を優先するケースがあるため、相手の過失を主張しても聞き入れてもらえない可能性があるでしょう。
保険会社との直接交渉には十分な知識も必要ですが、相手の過失を裏付ける映像などがあれば、素人であっても対等な交渉が可能です。
事故の発生状況から10対0の過失割合が明らかであっても、もっともらしい理由で9対1や8対2を提示されるケースは少なくありません。
相手側が提示する過失割合にどうしても納得できないときは、弁護士に示談交渉の代理人を依頼してみましょう。
弁護士に依頼すれば適正な過失割合を算定してくれますが、法的理論を構成して相手側と交渉するため、不利な過失割合になる可能性はまずありません。
また、保険金は自賠責基準や任意保険基準から算定する例が一般的ですが、弁護士に依頼すると弁護士基準(裁判基準)で適正額を算定してくれます。
保険会社の提示額よりも大幅な増額になる可能性があるため、十分な修理費や治療費も確保できるでしょう。
前方不注意は誰もが犯しやすい交通ルール上のミスですし、事故が発生したときの過失割合も高くなります。
ただし、今回の解説にもあるように、必ずしも10対0の過失割合になるとは限りません。
交通事故では相手にも何らかの過失があるケースが多いため、安易に示談交渉を決着させず、事故の発生状況を十分に検証する必要があるでしょう。
ドライブレコーダーや防犯カメラの映像は有力な証拠となり、相手の過失を証言してくれる人が現れる可能性があります。
交渉が苦手な人は弁護士に依頼できるため、不利な内容で示談交渉が進むときは、できるだけ早めに相談するとよいでしょう。
当然ながら弁護士への報酬も発生しますが、十分な費用対効果を期待できます。